Fate/Sunshine〜浦の星聖杯戦争録〜   作:フィッシュボール

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今回は黒澤姉妹編です。


♯2 幸運E

 

 召喚の儀〜黒澤姉妹〜

 

 

 「―――ぴぎゃあああああああああ!!!」

 

 黒澤家、ルビィの部屋にて。

 その夜、『ワンちゃんさんのぬいぐるみ』にて召喚をした彼女は突如として出現した全身青タイツの男に卒倒寸前の大絶叫を挙げた。

 手には剣呑な朱槍を持っている。

 

 「かぁ〜、こりゃまた五月蠅ぇマスターだ。自分から呼び出しといてそんなに絶叫するとわな……主人は選べないとはいえ、いい加減この運の悪さには呆れるぜ」

 「……(ガタガタガタガタガタガタ)」

 

 部屋の隅で捨てられた仔犬のようにガタガタと震えるルビィ。

 完全に怯えきっていた。

 無理もない話である、なにせ目の前で急に訳の分からない物騒な槍を持った全身青タイツが現れた上に黒澤 ルビィは父親としか話したことがないほどの男性恐怖症なのだ。

 

 「よう、マスター。そんなところでブルってないで外に行こうぜ。アンタもマスターなら―――っ!! 馬鹿な!? マスター!! ここは危険だ!! 逃げるぞっ!!!」

 「へっ? って―――っ!!」

 

 突然、何者かの気配を察知した男が軽々とルビィを抱き上げ、部屋から飛び出した。

 悲鳴を挙げようにも身体が怯えきって声を出すことすらできない。

 どうしよう……このまま悪魔さんに殺されちゃうのかなぁ―――お姉ちゃん、助けて……っ!!

 ルビィは固く目を閉じる。

 

 「サーヴァント、しかもこの屋敷の中だ。まさか、もう攻めてきたのか……クソッ、出遅れたってわけか!」

 「……」

 

 男はルビィを抱えたまま、客間の前まで行くとそこでルビィを降ろした。

 

 「……えっ?」

 「マスター、あの客間にサーヴァントがいる。俺が様子を見てくる。いいか、決して動くなよ」

 「……! (こくっ……)」

 「よし、約束だぞ、マスター」

 

 そう言って、男はまるで煙のように姿が消えた。

 瞬間、ルビィの脚から力が抜けてその場でへたれ込む。

 突然現れた全身青タイツの男は自分を抱えて部屋を出たと思ったら今度はそこにいろ、と命令する。

 まるで事態についていけない、心臓が張り裂けそうなくらいに高鳴っている。

 ……でも、一つだけ分かることがある。

 

 ―――あの人は私を守ろうとしている。

 

 それだけは確かな事実だった。

 

 「あ、あの悪魔さん、悪い人じゃないみたい……」

 

 ルビィは誰に言うわけでもなく呟いた。

 

………

……

 

 一方、その頃、客間にて。

 

 霊体となった男は客間にいる二人の人物に驚愕する。

 

 「……ほう、これはなかなか良い物です。『わびさび』というものを感じます」

 「あら、あなたの時代には無い筈のものですのに随分とお詳しいのですね」

 「えぇ、以前のマスターも似たような造りの邸宅に住んでいました。そこでこの国の様々な文化に触れました。ところでダイヤ、ここには『道場』はないのですか? あの空間が私は一番落ち着くのです」

 「いくら黒澤家といえど道場はさすがに……」

 「むっ……それは申し訳ない、ダイヤ。ですが、この家に召喚されたことは幸運といえます」

 

 二人は湯呑みを片手に談笑していた。

 片方の人物は浦の星女学院の制服を纏った如何にも堅物といった様相の黒髪をした少女。

 そして、もう一人は青いドレスに白銀の西洋甲冑を纏い、座る佇まいから滲み出るあまりあるほどの清廉潔白さを持った金髪の少女剣士(・・・・)

 

 『……あいつは―――っ!』

 「―――っ! 誰です!! 私達を覗いている者は!」

 

 霊体化している筈の男の気配を金髪の少女は察知した。

 本来であれば悟られる筈のないものだが、それは偏に彼女の『直感』によるものであった。

 少女は立ち上がり、構える。

 

 『ちっ! 相変わらず勘の鋭い奴め!』

 

 男は舌打ちすると客間にその姿を晒した。

 それは異様な光景だった、朱槍を手にした男とまるで透明な剣を持っているような構えを取る少女、この両者が一つの部屋で睨み合っているのだ。

 

 「よう! セイバー。……久しぶりじゃねーか」

 「ランサー。貴方も呼ばれていたのですね」

 

 多くを語らずとも、二人にはその会話だけで充分だった。

 なにせ二人はかつて、互いに殺し合った仲なのだから……。

 

 「ってことは、そこの黒髪のお嬢ちゃんがアンタのマスターか……」

 「えぇ、ですがここでダイヤは取らせません! 貴方はマスターを連れていないのですね」

 「あぁ、あの赤い髪したビビリなマスターならそこの影で隠れてるぜ、だが仕留められるなんて思うなよ……この俺が―――」

 「ルビィ!!」

 

 二人の会話に突如としてダイヤが割り込んだ。

 ランサーは自分のマスターのことを赤い髪をした臆病な奴と言った。

 つまり、それは自分の妹が『槍兵』の英霊を召喚したことに他ならない。

 

 「お、お姉ちゃん……」

 

 ルビィがおろおろしながら客間の障子を開ける。

 

 「マスター! 動くなって言ったろ!! ここは危険だ! 今すぐに逃げろ!! ……って、お姉ちゃん?」

 

 ルビィの出現にセイバーも少なからず驚きを感じたようで目を開いて彼女を凝視している。

 

 「まさか、ダイヤから妹がいると聞いてはいましたが、その彼女がランサーのマスターとは……」

 「ってことは、オメーら姉妹なのかっ!? 姉妹で聖杯戦争に参加したのか!?」

 「―――ぴぎぃ!?」

 

 ランサーの大声にルビィは身体を震わせて怯える。

 すかさず、ダイヤが妹を抱きしめて頭を撫でてランサーを睨む。

 

 「妹をいじめないでもらえますか、ランサーさん!」

 「ほぉ……気の強い女だな。嫌いじゃねぇ」

 「……っ!」

 「ランサー、止めなさい! ダイヤ、これはどういうことか説明してもらえませんか? このままでは混乱が生じます。ランサー、どうやら何か事情があるようです」

 「だな、やりあうのはいつでもできるからな、今は話を聞くとするか」

 「ダイヤ……」

 

 セイバーに促されダイヤはルビィを諭し客間の席につける。

 セイバーとランサー、ルビィとダイヤがそれぞれ向かい合うように座る。

 そして、彼女はここまでの経緯を説明した。

 

 「ってことは、アンタらは何も知らず遊び半分で俺等を呼び出したのか!?」

 「ダイヤ、それは聞いていません。なぜ黙っていたのですか?」

 「申し訳ありません。話す機を失ってしまって……これが聖杯戦争というシステムであることはセイバーから聞いて、初めて……」

 「今まで巻き込まれて召喚されることはあったが、こんな風に遊び半分で召喚されるのは初めてだな」

 

 ランサーの言葉には遊び半分で召喚されたことに対する怒りが込められていた。

 それはセイバーも同じく、何も言わないがしっかりと黒澤姉妹の方を見ている。

 

 「あ、あの! お姉ちゃんを責めないで下さい。元々、ルビィが遊び半分でこんなことしたから……」

 「ルビィ……」

 

 セイバーとランサーの叱責にしゅんとなる黒澤姉妹。

 だが、セイバーとランサーには一つ引っかかることがあった。

 ただの一般人が巻き込まれる場合は必ず魔術師が絡んでいるが、この姉妹だけではない、今回召喚したすべてのマスターが魔術とはなんの関係もない一般人ということである。

 

 「ランサー……」

 「あぁ、今回の聖杯戦争、何かがおかしい。こんな一般人に俺達、サーヴァントの召喚方法が漏れるはずない」

 「黒幕がいる……と見て間違いないでしょう。ランサー、今回は聖杯を諦めてその事態の解決に当たりましょう。このような一般人に聖杯戦争の真似事をさせる卑劣な黒幕を許すことはできません!」

 「確かにな、そこは同感だ。今回は癪だがセイバー、アンタと同盟といこうじゃねぇか。まったく、今回の召喚はつくづく運が悪い……」

 

 こうして、セイバーとランサーによる黒澤同盟が締結された。 

 

 




今回の英霊はもはや言うまでもなくよく死ぬあの人とTYPE-MOONのドル箱の二人組です。
なんと、今回はその二人が聖杯戦争を中断、黒幕を打ち倒す為に同盟を組んでしまいました!
ってか、書いてて思ったのですが、聞き分けが良すぎる気がします……(汗) 
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