英雄伝説 双の軌跡   作:イヌ魚

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犯人を追って

「どうやらこの先に実行犯達がいるみたいだな」

 

「ええ、慎重に行きましょう」

 

 西ケルディック街道の奥、ルナリア自然公園に続く門の前にⅦ組A班の五人は来ていた。大市で起きた店破壊と商品強奪事件の調査を進めるうちに、実行犯がここに逃げ込んだことが判明したのだ。

 

「でもまさか領邦軍がグルだったなんて……」

 

「民を守るべき立場であるべき者達がこのような真似をするとは」

 

 それもどうやら領邦軍は事件の真相を知っていながらそれを隠しているらしい。生憎物的証拠はないが、状況証拠は完全に黒である。

 

「まあとにかくこの先に行くしかないわけだけど、鍵がかけられてるな……どうする?」

 

「ふむ……私の剣ならあれくらい壊せるだろう。ここは私に――」

 

「いや、俺がやろう。ラウラの剣より静かにやれそうだ」

 

 ラウラを制し一歩踏み出すリィン。そのまま腰に差した太刀に手をかけ――

 

「四の型、紅葉切り――」

 

 閃光のように白刃が抜き放たられ、しばしの静寂の後鍵が壊れ扉が開く。

 

「やるな、リィン」

 

 その様子に満足気にラウラが呟いた。

 

 

 ルナリア自然公園は観光名所でもあるが、昔からの精霊信仰の残滓が残っている場所であり過度の管理はされていない。その関係もあってか魔獣も徘徊していたり結構危なげな場所である。やむなく魔獣と戦闘になってしまうことが何度かあったが例の実行犯達は奥にいるのか気付かれた様子はない。そのまま奥へと向かっていき、最奥目前までくるとその先に確かに人の気配を感じ取れた。

 

「いるな、この先に」

 

「ああ。気配からすると七、八人ってとこか」

 

「それと他に妙な気配もするが……」

 

「……ウィルバートとリィンはなんでそんなにハッキリとわかるの?」

 

「え? 気配がするから」

 

「気配って普通に分かるものなのかな……?」

 

「そんなことより、様子を伺うとしよう。慎重にな」

 

 相手に気づかれないよう物陰から奥に目を向けると、昨日扉の前にいた男と同じ格好をした男が四人。その後ろには大市から持ち出したであろう商品が箱ごと乱雑に置かれており、その周囲を守るように武装した四人の男が立っていた。

 

(あれって盗まれた商品よね)

 

(ああ、完全に黒だ)

 

(あの武装した四人は協力者なのかな?)

 

(ふむ、どうやらただの一般人ではなさそうだが……)

 

 隙なく周囲を警戒する武装した四人組は他の四人と明らかに練度が違うことが遠目からでも分かる。それゆえ警戒を強めているが――

 

(あの紋章は……ふぅん、なるほどね)

 

 何かに気づいたウィルバートは警戒を解き、立ち上がり武器を取り出し始める。

 

(お、おいウィルバート?)

 

(今から突入する。武装した猟兵の相手は俺がするから、リィン達は他の四人の拘束をお願い)

 

(猟兵だと……? って、待たぬかウィルバート!)

 

 ラウラの制止も聞かずウィルバートは単身武装した集団へと突撃していってしまった。

 

 

「はぁぁぁぁぁあああ!!」

 

 突撃鎗を構え一直線で敵へ突き進む一撃――シュトルムランツァ―による突撃は虚を突いたとはいえ回避されてしまった。それでも突然の奇襲に狼狽えてしまう。

 

「な、なんだコイツ!?」

 

「学生!? 確か士官学校の生徒が実習に来てるとか……」

 

「ええい! こういう時のためにお前らを雇ってるんだろ! ガキ一人くらいさっさと殺してしまえ!」

 

 偽管理人服の一人の叫びに応えるように武装した男達がウィルバートを囲み始め、ウィルバートは囲まれないようにゆっくり奥へ奥へと下がっていくが――石の壁に阻まれ、遂には完全に包囲されてしまった。

 

「悪いが俺達も仕事なんでな」

 

「ガキだろうと容赦しない。消えてもらうぞ!」

 

 にじり寄ってくる武装した男達。退路は断たれ、絶体絶命――のはずなのだが、ウィルバートはどこか余裕そうに見える。

 

「な、何余裕ぶってるんだ!」

 

「ただの学生が俺達に敵うとでも――」

 

「思うよ。猟兵団、いや猟兵崩れの集まりのバグベアーだろ?」

 

「なっ!? なぜ俺達の事を――」

 

 数ある猟兵団からのドロップアウト組が集まり立ち上げた猟兵団《バグベアー》。そういった者達がいるのは聞いていたし、団のマークも聞いていたものと同じだったため容易に判断できた。

 

「と、とにかくコイツを黙らせるぞ! こっちは八人だ!」

 

「――いや、四人だな」

 

「なにっ!?」

 

ウィルバートが猟兵に囲まれたと同時に、リィン達も突入。残りの四人と対峙していた。ウィルバートを囲うために距離をとってしまっていた猟兵と偽管理人は完全に分断されている。

 

「リィン! そっちは任せた!」

 

「ああ! でもウィルバートは大丈夫なのか!?」

 

「この程度の相手に負けるわけないだろ――」

 

 猟兵達が一斉に銃を構える。そのまま引き金が引かれ打ち出される弾丸の雨を、ウィルバートはランスを構えるだけで全て弾ききった。

 

「なっ!?」

 

「適当な照準の適当な弾幕。そんなのじゃ俺の盾は抜けないぞ」

 

 瞬間、ウィルバートの姿がブレ――次の瞬間には猟兵達の懐に飛び込んでいた。猟兵達驚は驚きの表情をあげることしかできず、その僅かの間が彼らの命取りになってしまう。ランスを抜き放ち、全身全霊の力を溜め一気に薙ぎ払う――

 

「秘技――アルティウムセイバー!!」

 

放たれた一撃は猟兵全員を捕らえ――完全に無力化させていた。

 

「ふぅ……」

 

 一息吐き辺りを見回す――ちょうどリィンが炎の太刀をもって偽管理人達を制したところで、これで大市襲撃の実行犯の無力化に成功したのであった。

 

「お疲れリィン。最後の一撃、綺麗に決まってたな」

 

「ウィルバートこそ。その、猟兵を四人相手取ったってのに随分余裕そうだな」

 

「ああ、バグベアーは練度低い連中ばっかだから。本物の猟兵はこう簡単にはいかない……ってか四対一じゃ勝てないって」

 

 本物の猟兵。例えば西ゼムリア二強の赤い星座と西風の旅団は構成員一人一人が歴戦の猛者であるし、先の二つには劣るが北の猟兵やニーズヘッグなど有名な猟兵団はどこも練度が高い。このバグベアーと比べることがおこがましいほどである。

 

(それに名の知れていない猟兵団にも実力派は存在する。アルンガルムやジェスター……はちょっと違うか。そして団長――《狼王》と連隊長を務める《陽狼》スコールに《月狼》ハーディ――あいつらに比べたらバグベアーなんて赤子みたいなもんだしな)

 

「本物の猟兵……そなた、猟兵と戦ったことが?」

 

「え!? そうなの!?」

 

「あー、えーっと……」

 

 口を滑らしたことに気づいたのはラウラの言葉を聞いてからだった。しまったと思いなんとか誤魔化そうとするが――遠くから微かに何かの音が聞こえ――それと同時に巨大な足音と複数の小さな足音が幾つか響き渡る。

 

「な、なんだ!?」

 

「笛の音……?」

 

「この足音、金属音……まさか」

 

 そして激震と共に姿を現したのは大型のヒヒ型魔獣グルノージャ。その姿はどこか理性を失っているようにも見える。そしてその後ろから四匹の猫型の魔獣が現れ、猟兵達を咥えどこかへ去っていった。

 

「あれはサーベルクーガー……!? 逃がすかっ!」

 

「止まれウィルバート! 彼らは気になるが、今はこの大型魔獣の対処が先だ!」

 

「この人達も放っておくわけにはいかないし……」

 

「ああ.。Ⅶ組A班! 全力を持って大型魔獣へ対処する! 皆行くぞっ!」

 

 リィンの号令と共に、グルノージャとの闘いが始まる。

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