前回は、俺がカギを何処かで落としてしまった事で、神と共に校内を歩き回っていたんだ。そしたら、途中に出会った槇原さんから英語の課題が出てないから早く提出しろって言う伝言をいただいてしまったんだ。もちろんそんな課題はやっていないので今から先生に頭を下げに行かなければならないが、その前に課題プリントを教室で発掘しているのが今だ。
「見つかったか?なら、早く職員室に行くぞ。午後4時まであと数十分しかないからな」
「ああ、よっと、良し見つかった。気は乗らないが行こうか」
今の時間は午後3時半頃になろうとしている。おそらく説教されるので、それを考えると鍵を探す時間が足りなくなってしまうので早く行った方が良いのだが、説教されに行くなんて喜ぶ事でも無いので、なかなか行く気にならないから何からかの理由を考えながら時間を引き延ばしているのが現状だった
「お前が忘れたからだろ。甘んじてお叱りを受けておけ。多少は待って置いてやるから」
「そこは一緒に受けてくれる所じゃないのかよ?」
「いいかげんお前の忘れ癖が治ったら良いなと思っている。沢山叱られたらいやでも治るだろう」
「荒治療は身体に悪そうだぞ、考えなおすんだ!」
「お前の日頃の行いだ。お前も明日からは真面目に生きる事だ」
「そんなのつまらないだろ」
「説教に時間を潰すよりかは面白いと思うぞ。…ここで、時間を潰しても何もならんと思うがどうなんだ?」
「もう少し付き合って、お願いします」
「断る、俺もそんなに暇じゃないからな。ほら、いくぞ」
神は引き延ばしに協力してくれないみたいだ。それどころか、喜んで受けに行ってこいと言ってくる。こいつは親友の事が大事では無いのか?親友ならばそこは分かち合うとかする所だろ?ああ、俺の襟を引っ張るなぁぁぁ……。
「あ、委員長、ごめんちょっと用事を思い出したから一回離れるね」
「え、あ、うん。行ってらっしゃい」
「ちょっと時間かかるかもしれないから何処か集合場所を決めようか」
「そうなの?だったら下駄箱近くのベンチにいるから終わったら来てね」
「ああ、了解した」
「ん?あれって布枯じゃないか?あいつ図書館に何の用なんだろうな」
「ああ、そうだな、布枯だな。だが、お前が今行くべきは職員室だな。止まってないで行くぞ」
「ああっ、だから、引張るなって!」
2階の図書館に入ろうとする布枯をみつけた。何やら周りを気にするように入っていったので、少し気になったが俺にはやるべき大儀が有るので泣く泣く諦めた。…そういえば、あいつってリボンとかするんだな、初めて知ったなぁ。
「まだかなぁ、礼ちゃん。…もう少し時間が掛かりそうなら私一人で探そうかな?」
「あれ、委員長じゃん、何してんだ?」
「うん?…ああ、高山君だね。どうかしたの?」
「……委員長、俺の名前忘れてたの?」
「えっ、そうじゃないよ⁉…ただ、いきなりでびっくりしただけで…」
「うん、別に良いよ、俺って影が薄いって良く言われるし。それよりも、委員長此処で何してんの?」
「礼ちゃんを待ってるの」
「ああ、布枯を待ってるのか、てっきり男を待ってるのかと思ったよ」
「えっ、男?ないない、そんなのいないよ!私に彼氏なんかにできないよ!」
「あ、ご、ごめん。委員長がそんな反応を見せるとは思わなくてな。えーと、何か奢るから許してくれ!」
「え、本当に!」
「あ、ああ、あんまり高いのは無理だが出来る物なら…」
「じゃあ、明日の昼ご飯を奢って!」
「…うん、委員長はそのままでいてくれ」
「あー、終わったよ……。俺の明日の昼休み…」
「むしろそれで終わって良かったじゃないか。今までの事を考えると、昼休みの清掃だけなんて軽い方だぞ」
「課題も再提出…」
「それは妥当だろ」
あの後、重い腰を引きずられながら職員室に向かったが、そこで俺を待っていたのは椅子でコーヒーを嗜む多々野先生と此方を睨んでいる紅先生だった。そこからは、多々野先生の溜息と紅先生の叱咤が俺の耳にガンガンとダメージを与えて来た。全てが終わったのはそれから30分後だった。
「あー、今でも耳が痛い」
「紅先生のは殆ど耳元だったものな。まあ何であれ、終わったしお前の鍵探しを再開しようか」
「そうだった、それが一番だった、今まで忘れてたぞ」
あんなの説教より拷問って言われた方が楽だぞ。最後の方なんか多々野先生が引いていたほどだぞ。30分で終わったのも多々野先生が止めたからだしな。てか、それらのせいで大事な鍵探しを忘れてたしな。
「じゃあ、次は何処を探そうか?」
「とりあえず、委員長探しで良いんじゃないか?結局まだ見つかって無いし」
「そうだったな、なら移動しよう」
「おや、高山じゃないか、どうしたんだい?」
「お、やっと戻って来たか、遅かったな布枯」
「ああ、それで委員長はどうしたんだい?うずくまったりして、もしかして君が何かしたのかい?」
「ああ、俺が軽い気持ちで言った事で委員長に嫌な思いをさせてしまった。だから、許して貰おうと何かを奢るって言ったら、元気になって今、明日の昼食を考えてる」
「なるほど、委員長が今は気にしていないなら僕が蒸し返す事も無いか。君も何を言ったのかは聞かないけど、女性に対しての発言には気を付けると良い、今回はいい経験になっただろう」
「ああ、そうだな。…所で、俺これから用事があるんだが、委員長を任せても良いか?」
「…致し方ない、明日はちゃんと委員長に奢る様に、僕からはそれでいいさ」
「悪い」
「あれ、高山君は?」
「彼なら用事があるそうだ。ちゃんと言っておいたから委員長は安心して明日の昼食を考えると良いよ」
「うん、何にしようかなぁ」
「さて、僕も明日の部活の事でも考えようかな?…何か忘れているような…あっ、思い出した。委員長が拾った鍵だ、そうだ、あれの持ち主を探していたんだ。僕とした事が、最初の目的を忘れるとはね、委員長」
「…礼ちゃん?」
「鍵だ」
「鍵?……ああ、思い出した!これの持ち主を探してたんだった!」
「やはり忘れていたか。まあ、僕もなんだけど」
「えっと、じゃあ、何処を探す?」
「そうだね、この調子ではだいぶ遅い時間になりそうだから、ある程度山を貼って行きたい所だね。」
「そうだね~、日が暮れちゃうもんね。」
「そういえば、彼にも用があったね」
「彼って、色無君?ああ、槇原さんの伝言だね」
「ああ、行く当ても無いしそれを伝えるついでに彼から何か情報が無いか聞いてみよう」
「そうだね、じゃあ色無君を探しに行こう」
「あれ?布枯の奴いないなぁ」
「移動したんじゃないか?あれから時間も経っている事だし」
あの後、とりあえず目撃した布枯に会う為に奴が入って行った図書館に来たのだが、そこには布枯の姿は無かった。
「どうしようか、目撃情報とか他に有ったか?」
「……俺は聴いていないな」
「だよな、どうすっかなぁ」
「そうだな、とりあえず下駄箱に行こうか」
「何でだ?」
「誰かいるかもしれないだろ?」
「うーん、何処にいるんだろうね?」
「こればかりは僕でもわからないなあ」
「ここの校舎内ってそんなに大きかったっけ?」
「全体よりは小さいね」
「うーん、そこの角に色無君がいてくれないかなあ」
「はは、そうだったら嬉しいね」
「そうだよねぇ」
「あ、委員長だ!」
「え」
「…もう、だいぶ日が傾いてるな」
「そうだな、出来ればその日が沈む前に見つけたいが」
「望み薄だな」
「まあ、その時はその時だな」
俺達は下駄箱を目指して歩いていた。外は夕日が沈みそうで、外の部活もちらほら終わろうとしているのが目に映る様になって来ていた。
「あー、そこの角に委員長でもいたらなぁ」
「まあ、そうだったら俺は早く帰れるからそうであったら良いな」
「はは、俺も家に帰れるからそうであってほしいぜ」
普通は無いだろう事だが、こんな時は少しでもそう望んでしまう。でも、そんな事ないだろうと角を曲がる。
「あ、委員長だ!」
「え」
「は」
「おや」
やっと見つけた委員長に喜ぶ俺とそれぞれ唖然としてる神達、そこに産まれた微妙な温度差を感じる余裕がある者はいなかった。
あの後、とりあえず俺達はお互いの状況を話し合った。その後、俺は委員長が鍵を拾ってくれていた事に感謝した。
「委員長、ありがとう助かったよ。」
「どういたしまして、私も持ち主が見つかってスッキリしたよ。」
「だが、半日授業だったにしては遅い時間になったな」
「なかなか会えなかったもんね」
「大本の原因は君だけどね」
「うっ」
「まあまあ、布枯もそういじめてやるなって」
「うん、とりあえず帰ろうよ」
「おっ、おう!」
原因だとしても素直にいじられてやるものか。
「はいはい」
「?」
「わかったわかった」