会議も無事に終わって、各クラブへの個別の話し合いも終わり、漸く肩の荷が下りた気持ちだった。ああただ、会議中は必死にペンを動かしていたので腱鞘炎にならないかが心配かな。そんな事を考えながら会議の片づけを終えて、俺と黛先輩は帰路に着こうとしていた。今日の事を軽く話ながら歩いていると、廊下の窓からす~と、夕日が沈んで行くのが見えた。その時だった、頭の片隅にあった記憶を呼び戻した。
「あ、そうだった。」
「ん、色無君どうしたんだい?」
「あ、えっと、先輩、今からって時間ありますか?」
「え、時間?…大丈夫だけど、何か用事かい?」
そこで、俺は布枯に頼まれてインタビューがしたいと言っていた旨を伝えた。先輩は最初こそ、インタビューの言葉に顔を顰めていたが、言葉を重ねて何とか了承を得た。そんな黛先輩と俺は布枯が待っているという広報新聞部に出向いた。
「やあ、やっと来たのかい。僕でもなかなか待ちくたびれたよ。」
「ああ、悪かったって、会議の中で忘れてたんだ。なんか思い出したから来たが、要件ってなんなんだ?黛先輩まで読んで聞く事ってなんだよ。」
「まあ、入りなよ、立ったままで話す者では無いだろう。黛先輩もどうぞ。」
「あ、うん、えっと、失礼します。」
則されるまま部屋の中に入った。新聞部の部室は、参考書が本棚にぎっしり詰まっていたり、メモ用紙の山が点在していたり、と沢山の資料があるようだ。だが、細かい所が雑なのか、一瞬ごみ屋敷の様に見えた。とはいえ、掃除はしている様で、ほこりなんかは少なかった。
「何か飲むかい?」
「いや、俺は良いよ。」
「うん、僕もお構いなく。」
「そうかい、じゃあ、さっそく本題に入ろうかな?君はさっきから呼んだ理由を聞きたそうにしていたから先に話そうか。別に待ったいぶる必要も無い事だし。呼び出した理由を話すと、今回の会議の内容がいち早く知りたかったんだ。校内のどこよりも早くね。」
席に着いた俺と先輩に向けて、布枯は流れるように話し出した。と言うか、勿体ぶる必要無いのかよ。俺が聞いた時は、悉くはぐらかしたくせに。……さてと、俺としては聞きたい事を聞けたしそろそろ良いかな。
「聞きたい事はそれだけか?」
「ああ、僕が聞きたい事はそれだよ。」
「よし、帰りましょう、先輩!何となくこいつの用事が大した事は無いのだろうなって、感じてたんですが、一応連れてきたらこれですよ。先輩、これ以上時間を無駄にしない為にもかえりましょう。」
うん、これは先輩の時間を取ってまで聞かせる事では無いな。俺も疲れているし、家に帰りたい。
「え、えっと色無君、そんな急に帰るって失礼だよ。」
「大丈夫です。こいつがそれ位で失礼とか思わない出すって。」
さっさと、部室から出よう。まったく、先輩にお願いしてまで来たのにこんな内容ならば、別に思い出さなくても問題無いと思うわ。先輩は優しいから渋ってるけど、俺としてはさっさと帰りたいんだ。
「まあまあ、落ち着きたまえ。」
「お前が理由は今日分かるみたいな事を言ってたからどんなのかなって、思ったけどこれならば帰るわ。」
「ああ、ここで話す理由はあるよ。ほら、そこの窓を覗いてみると良い。」
言う通りに覗いて見ると、タイミングが良かったのか此方を見つめる人物と目線があった。なるほど、学園の情報屋か。
「此処なら防音とかしっかりしているからね。」
「とは、言ってもこれらは明後日あたりには広まるし、新聞書くのはお前らだろ。」
「それでもさ、聞かれない方がこっちも助かるからね。ほら、独占インタビューってあるだろう?」
独占かぁ、まあ俺らも発表される事だから自分たちから発信する事は無いなあ。
「それに、資料だけを貰うよりも資料を作成した側の話を聞いた方が良い物出来るだろ?」
「まあ、そうだろうけどなぁ、…断り難いなぁ。……まあ、そう言う事ならば、俺は問題無い。けど、先輩が良いかは知らないぞ。」
「ん?僕は別に良いよ。僕が人前で話す訳では無いんだろう?それなら別に問題無いよ。」
先輩の許可が下りたという事で、布枯によるインタビューが始まった。
インタビューの内容自体は会議の事を話すだけだった為に早くに終わった。その後は、布枯が個人的に気になった所を聞いて来た位でインタビューは終了した。全部が終わった頃には辺りも大分暗くなっていた。終了後は校門前で解散になった。
「もう、こんな時間か結構話したな。」
布枯が黛先輩も呼んだのは、漏洩を防ぐためだろう。話を聞くだけなら俺だけでも良かったからな。というか、終始俺と布枯が話していて、黛先輩が話した事は原田実行委員長の事くらいだった。
「まあ、情報は大事だな、学園で警戒が必要かはともかくとして。」
まあ、あっちにはあっちの事情があったのだろう。俺は関わる気が無いので気にしなくてもいいだろう。さて、暗いし早く帰ろう。
「……あ、そういえば今日じゃなかったか?えっと携帯携帯と、…うわぁ、母さん来てるじゃん。やっば、急いで帰らないと。」
前々から今日来る事の連絡を貰っていたが、色々あって忘れていた。正直、布枯の事を思い出すついでにこの事も想い出して欲しかった。そんな事を思いながら、俺は暗い道を駆けって行った。
「あら、やっと帰って来たわね。事前に連絡を貰っていたから分かっていたけれど、母親としてはあんまり遅い帰りっていうのはして欲しく無いもねぇ。久しぶりにお灸でも据えてあげようかしら?」
家のドアを慌ただしく開けて入って来る物音を聞きながら、一人そう零した。