彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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 何でこうなったのか自分でもわかりません。


憧れに憧れて

 昔やってた事を最近またやりだすってどういう感じ何だろうな?・・・いやね、昔住宅街で自転車レースをしていたんだ。その時は怖い物知らずでさ、坂とか関係なく飛ばしてたんだ。まあ、親にすっごく起こられたんだけどね。それをふと、思いだしたんだ。あん時は楽しかったな、坂をブレーキかけずに降ったりして相手より早く行こうとやった物だ。良く転けて血出してたけど止められなかったな。やりすぎて、住宅街で一時期自転車走行禁止になったけど。いい思い出ではあるんだ。

「ーー観!ー賀観!おいっ、加賀観!」

「…ん?」

 神が呼ぶ声に気づいて顔を上げた瞬間、目の間には真っ黒の影が迫ってたんだ。

 

「…はっ!………なんだ、夢か。」

 目が覚めると真っ白な天井が目に入った。…知っている天井だ。どういう事だ、あれは夢だったんだろうか。…うん、そうだ、そうに違い無い!じゃなかったらバインダーが目の前に飛んで来る事は無いはずだ!

 

「何を言っている、そんな訳無いだろう。」

「だね。」

「大丈夫?」

 

 おかしいな、夢でベッドなら自宅にいるはずなのに、何で神達がいるんだ?もしかして、これも夢?

 

「君はどれだけ、現実逃避したいんだい?」

「加賀観だしな。」

「起きてる~?」

 

 なんだか、夢じゃ無い気もしてきた。委員長がスッゴい跳ねてるもん。かわいい。それによく思い出したらあの天井は家の天井じゃないや、家の天井は茶色だった。

 

「かわいいには同感だけど、早く起きなよ。」

「よくわからんが委員長、落ち着け。」

「?」

 

 仕方ない、委員長に免じて起きてやろう。ヨイショ、…あれ?体あがんない起きれないや。そうか、なら寝よう。

 

「……」

「加賀観、何また寝ようとしている、起きろ。」

「色無君、起きて。」

 

 起きれないんだから仕方ないじゃないか。これでも、今日一番の力を使ったんだぜ?これで無理なら諦めるぜ。

 

「絶句…いや、呆れるね。」

「そろそろ、昼が終わるな。」

「えっ、ご飯食べてないよ?」

 

 えっ、今昼休みなの?さっき1時間目だったんだけど?えっ?俺、そんなに寝てたの?マジで?

 

「そうだね、ほら。」

「なんだ、委員長飯食ってなかったのか?」

「えっ、田島君は、食べたの?」

 

 …12時半。げっ、マジじゃねえか、2、3、4、寝てたのかよ。…いや、気絶か。マジかー、何かテンション下がるー。

 

「まあ、君もともと出席率だけは良いからね。」

「ああ、布枯と俺は食ったぞ。」

「えっ、礼ちゃんも!?」

 

 まあ、出席率は、単位落とさなければ良いんだけど、…そういや、バインダーってどこから飛んで来たんだ?

 

「紅先生からだね。」

「経験則的に加賀観が簡単に起きるとも思わなかったからな。」

「えー、私にも言ってよ…。」

 

 やっぱり?今度は何に影響されたの?あの人、すげー影響されやすいからな!

 

「……織斑千冬?」

「悪かった、悪かった、まさか食って無いとは思わなくてな。」

「む~。」

 

 何?誰?織斑千冬?……ああ…。なんか納得した気がするよ。

 

「噂じゃあ、そうみたいだからね?」

「まあ、落ち着け、委員長。」

「ぬ~。」

 

 あの人のキャラって、織斑千冬に似せてるって、噂だもんな。なあ、バインダーのどこに当たった?痛みとかは無かったと思うけど。

 

「角」

「じゃあ、後で食いに行こう、な?」

「ぶ~。」

 

 角って、そりゃあ気絶、…気絶で済んで良かった?額から血とか出てない?

 

「音が凄かったね。鈍いのに、響いたよ。」

「じゃ、じゃあ、何か奢る、どうだ!?」

「う゛~。」

 

 で、本人は?

 

「校長室」

「………良し、ならば、裏メニューのフジヤマBックパフェ(4,000円)を奢る。…どうだ?」

「本当に!」

 

 まあ、そうだわな。お咎めなしって事にはならないわな。

 

「授業中だったけど、なかなかの騒ぎになったからね。隣のクラスにも広まっていたはずだよ。」

「……………ああ。」

「わ~、楽しみだなぁ♪」

 

 謹慎減給、じゃあすまないか?

 

「さあ、どうなるかは、わからないね。まあ、減給は決定だね。学校側もこればっかりは庇うとかは無いと思うよ。」

「………ハァ」

「♪」

 

 悪い先生じゃ無いんだがなぁ、……うん。こう、影響を受けやすいというかな。

 

「そこは、自信持とうよ。僕より付き合い長いだろ。」

「なあ、委員長、やっぱり………何でも無い。」

「♪」

 

「失礼します。…あら、思ったより元気そうね?」

 

 突然、ドアが開き入って来る影…母さんだ。呼ばれたのだろうか?

 

「ええ、電話が来て飛んで来たのよ。でも、おもってたよりも元気そうで良かったわ。加賀観頑丈だったのね。」

「ええ、起きた時から元気そうでしたよ。それで、霖さん、どうでしたか?」

「……そうね、校長先生の話では、謹慎、もしくは退職、で済ませて警察事は避けたいようね。」

 

 …なるほど。……母さんはどう思っているんだ?

 

「そうね、私としても警察はごめんね。面倒くさいというのもあるけど、何よりも誰も良い事にはならないでしょうしね。」

 …やっぱり?

「ええ、警察には知り合いもいるし悪いことにはならないでしょうけど、頼りたくもないのよね。本当に手続きが面倒くさいのよ。」

 …あ、そうなんだ。ぶっちゃけるね。

「ふふっ、私は人間よ?そう思ったりもするわよ。………でもね、母親でもあるのよ。」

 ……母親。

「そう、母親。あなたを産んで育てた片割れよ。……母親としては、正式に罰を与えたいのよ。息子を傷つけられたんだから。たとえ、あなたが元気でもね。」

 …罰。

「…そう、裁判とかをね、そうしないと気が収まらないのよ。………でも、その判断は加賀観に任せたいわね、私としては。」

 …何で?

「あの先生の事を私は良く知らないもの。」

 ……。

「私は、加賀観達のように先生の授業を受けた訳じゃないし、先生の趣味なんかを知っている訳じゃないわ。」

 …だから、先生を、母さんより知っている俺に任せたい、と。

「ええ、…知りもしないのに私の判断で先生をどうにかしてしまうのは、違うと思うのよ。…本音を言ってしまえば、警察事にしてしまいたいけど、それをしてしまうと加賀観が傷ついただけで、何にもならないのよ。…だから、加賀観に任せたい、加賀観が決めなきゃ、と思ったのよ。元気そうだし。……もう、子供じゃあないんでしょ?」

 ………ああ。

「…先生は校長室にいるわ。」

 

 

 

 

「ねえ、礼ちゃん。」

「はい、何ですか?」

「私って、親失格かしら?」

「それは、……彼が決める事です。」

「…そうね。」

 

 

 

 

 校長室は三鷹学園に第1から第3まで有り、初等部、中等部、高等部にそれぞれ割り振られ存在している。それぞれに権限があり、この第3校長室の校長は高等部を統括する権限を持っている。高等部の問題はこの校長室で全て処理される。今回の案件もここで処理される。母さんの話を聞くに先生の処遇は俺が決れる事になる。……。

 

「……失礼します。普通科、2-B、色無加賀観です。」

 扉の前で少し待つと、中から声が聞こえた。

「…入りなさい。」

「…失礼します。」

 扉を開けると、真ん中に校長先生、その手前にこちらに背を向けた、紅先生がいた。

 

「さて、早速だが色無君、お母さんから話は聞いたかい?」

「はい、聞きました。」

「決めたかい?」

 ……。

「そうか…なら、先に紅先生の話を聞いてやってくれないか?」

「?…はい。」

「では、紅先生。」

「………」

 ようやく、此方を向いた先生はいつものオーラなんかは無く、青ざめた表情はまるで刑を待つ囚人のようだった。

「………加賀観…。」

「……。」

 先生は、顔を歪ませながら、言葉を探しながら、途切れ途切れに喋りだした。

「…こ、…この度は、本当に、すまな、…すみません、でした…。」

 先生が最初に行ったのは、謝罪だった。その謝罪はいつもの対等な感じでする謝罪では無く、子供、そう悪いことをしたと感じた子供が行う物だった。

「…あの時、…私…は、お前、…色無が、いつものように、授業を、聞いてない…なって、思って、…思った、んだ。……それで、声を、かけた…んだけど、や、やっぱり、聞いて、なくて、…き、昨日、ネットで、千冬様の、その、……注意の、仕方…が、……帳簿を投げるって、書いて…あった、から…。」

 先生は、途切れ途切れになりながらも話すのを止めなかった。言葉の間に手や体を揺らすその姿は俺には痛ましく見えた。

 ……にしても、やっぱりか、影響されやすすぎだよ、先生ぇ。

「軽く、投げたんだ、……軽く。」

 ……そこは自信持って言ってくれ。

「そしたら、…ス、スナップが…聞い…てて…回転が、か、掛かってて、」

 えっ、回転かかってたの!?

「えっと…鈍い音が、して……色無が、起き…なくて、…ほ、保健室に、急いで運んだんだ。」

 …………。

「本当、に、すみません、でした。」

 膝をついて、腰を曲げた先生は地面に頭を打ちつけた。

「すみません、すみません、ごめんなさい、ごめんなさい、すみません、ーー」

 壊れた機械のように、先生は謝りだした。

 …観てられなかった。ああ、見たくなかった。

「ごめんなさい、すみません、ごめーー」

「先生、ああもう、良いって、先生!やめてくれ‼」

「ごめんなさい、みすてないで、ごめんなさいーー」

 止めようとしても止まらない。先生は謝り続けた。

「ちょっと、校長先生、止めて、くださいよ。」

 たまらず、この場のもう一人の人物に助けを求めた。

「……。」

「校長!」

「………。」

 しかし、校長は動かなかった。厳しい目で先生を見ていた。

「ごめんなさい、すみません、すみませんーー」

 変わらず、先生は謝り続けた。これしか出来ない、そんな感じだった。

「先生!先生!もういいから、俺、元気だから!もう誤んなくていいから。」

「すいません、すみま、ゴホッゴホッ、ご、ゴホッ、めんなさい、すみませんーー」

 呼んでも、咳き込んでも、先生は止まらない。

「すいません、すみません、ごめんなさい、すい……」

「先生?…気を失ったのか?」

 ようやく、止まった先生は頭を地面につけたまま動かなくなった。

「…やっとか。」

 今更、喋りだした校長は、目を細めた。

「……なあ?何で、先生を止め無かったんだ?」

「なに、……必要だったからだ。」

「気絶する事がか?」

「そうだ。」

 何かが切れる音がした。

「あんたは!あれを見て、何を思った!」

「何を、か、漸くか、っと思ったかな。」

「漸く?どういうことだよ。」

「漸く目が覚める。自分が憧れに憧れて何をして来たかに気づき、目覚める。そう、思った。」

 憧れに憧れて…?

「君には、すまない事をしたが、丁度良かったので利用した。その事に謝罪しよう。」

「なら、先生に話をさせたのは、わざとなのか。ああなるとわかっていて。」

「恐らくは、が付くがな。」

 瞬間だった。俺の拳が校長の右頬に入ったのは。

「殴った。」

「…事後報告か、だが、君にはその資格が有る。」

「…そういえば、此処に来たのは、先生の処遇についてだったな。」

「ああ、君の好きにするが良い。」

 校長は、一息付いてそうに言う。

「…ちっ、……謹慎処分だ!期間は1週間、5月の頭までだ!」

「…それで、良いのか?」

「もともとこれにする気だった。あんたの話で余計に思った。」

「ふむ、ならそうしよう。」

「なら、もう良いよな?」

「君の自由にするが良い。」

「ちっ、…失礼します。」

 俺は、先生を抱えて部屋を出た。

 

 

 

「あいつも、良い生徒を持ったな。」

「失礼します。」

「…ん?…なんだね?息子の仕返しかい?」

「いえ?…相変わらずね、あなたも。」

「お互い様だろう。」

「あっ、殴られたんだ。」

「ふっ、なかなかのパンチだったよ。しかし、甘いな。」

「そこがかわいいんじゃない。…まあ、まだ、子供なのよ、少し、成長したみたいだけど。」

「まあ、今回の事は君にも謝罪と感謝を言おう。」

「いらないわよ、感謝はあの子に言いなさい。」

「それは、いずれな。」

 

 

 

 先生を抱えて、来た道を控えして保健室に向かう。時間が立ったのか空も赤く、校舎に残ってるのは活動が終わるのが遅い部活位になっていた。保健室に着くと、鍵はして無かったが、中には誰もいなかった。神達も帰った後だった。

「よいしょっと、……。結構乱暴に来たのに全然起きないな。」

 静かな保健室に寂しく零した声を返す者はいなかった。

「なあ、先生、あんたにとって織斑千冬って何なんだ?ただの憧れか?…校長に、…あんたを見てると、確かに、憧れに憧れて…なろうとしてたんじゃないかって、思えるんだよな。別に憧れは良いと思うが、俺にも憧れはいるし。」

 聞いてないかもしれない、そう思っても止めなかった。

「けど、なろうとしたってなれる訳じゃない。現に先生は失敗してる。先生、憧れは憧れだと思うだ。自分もこういう風になりたい、そんなのが憧れだと思う。」

 自分でも何言ってるんだと思う。俺が言うのも違うんじゃないかとも思う。でも、先生にはそれを言いたいと思った。

「一年の頃から先生失敗しまくってたけど、誰も先生を見捨てたりしてなかっただろ?前に言ってたよな、皆に頼られる人になりたいって。先生、もう一度思い出せよ。憧れにただ憧れて、頼られる人になりたいって頑張っていた頃を。あの頃の先生は輝いていたぜ。先生は焦りすぎたんだ。それで失敗しまくったって誰も見捨てたりしないぜ?だから、憧れになりきろうとするなよ…先生は先生なんだから。」

 

 言い終えて、しばらくすると、葵先生と母さんが来た。葵先生は事情を知っているらしく、先生を葵先生に預けて、母さんと帰路に就いた。

「なあ、母さんは憧れっていた?」

 先生の事もあったからか、無性に聞きたくなった。

「憧れ?…ええ、1人いたわね。」

「その憧れになろうと思った?」

「うーん、思わなかったかな。」

「何で?」

「異性だし。」

 そうゆう理由!?

「まあ、母さんの場合は、憧れと並んじゃったからね、良くは、わからないね。でも、憧れは憧れてるうちが一番輝いてるからね。なっても、虚しいだけじゃないかな?」

 ……虚しいだけ、か。

「まあ、加賀観が何に憧れてるかは知らないけど、良い付き合い方をしなさいね。」

「うん。」

 帰路はどんどん暗くなり、街灯の灯りが明るくなっていく。街灯の灯りに虫が集る。憧れに寄る人々のように、憧れは憧れてるうちが一番輝いている。母さんの言う通りだ、虫の集る街灯は、輝いていない。これを知っているのは、憧れから覚めた人だけかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、委員長、もう止めにしないか?」

「うーん♪美味しい~」

「君が言ったのだろう?諦めなよ。」

「おばちゃん、これで何円だ?」

「そうだね、3杯目だから、12000円だね。」

「1、12000円!委員長、ストップだ!」

「う~ん♪お・か・わ・り♪」

「委員長~。」

「やれやれだね。」

 

 

 




 これは、自分が思った考えです。なんかずれてそうですが、そういう事です。
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