……此処は、どこだ?暗いな。…いや、何も無いのか?
「れいちゃん、こっちだよ!」
「待ってよ、かーくん!」
頭を周囲に向けていると、どこからか声が聞こえた。その声は甲高く、子供のような声だった。声の聞こえた方を向くと、光る物が見えた。何だろうか?そう思い、光る物の方に向かった。
「これは…。」
光る物は、少し汚れた猫の人形だった。デパートで1000円ほどで買える物だ。猫の種類はわからないけど、全身が白い毛で覆われた猫だ。首に赤い首輪が付けていた。そして、尻尾には濁った赤い何かが染み付いていた。
「これは、れいちゃんの猫だ。…何で此処に。」
れいちゃんの猫を見ていると、辺りが明るくなりだした。そして、声が聞こえた。
「れいちゃん、こっちだね?」
「うん、こっちだよ!」
小さい男の子と小さい女の子が地図を片手に歩いていた。……あれは、小さい時のれいちゃんと俺だ。それに此処は、小学校の修学旅行で行った神社近くの森だ。レクリエーションで決められたコースを探検する事になって、れいちゃんと一緒に行動したんだったな。
「かーくん、そっちは違うよ。こっちだよ!」
「えっ、そっち?…わかった!」
たくさんある分かれ道で良く迷ったな。しかし、何でこんなの見てるんだろうか。確か、この後は……。
「待ってよ~!」
「れいちゃん、遅いよー!はやくー!」
「かーくん、早いよ~!わっ!」
走っていた、れいちゃんは生えていた木の根に足を取られ転んだ。
「あっ!れいちゃん、大丈夫か!」
「…いたい、いたいよ。ひっく、ひっく!」
「わわっ!れいちゃん!泣いちゃだめだよ!えーと、あっ!れいちゃん、ちょっと待ってて!」
俺は何かを見つけたのか、れいちゃんから離れた。
そう、楽しくて早く歩いた俺に追いつこうとしたれいちゃんが、生えてた木の根に転んだんだ。あの時は凄く慌てたな、れいちゃんが泣きそうだったし。
「れいちゃん、背中に捕まって!」
戻って来た俺は、れいちゃんをおぶって歩き出した。
「ひっく、どこに、行くの?」
「この先に、川があったんだ!そこで足を洗おう。」
「…わかった。」
その川は、森の風景にふさわしい川だった。透明で、小魚が泳ぐのが見られるような川だった。
「うわー!凄いよかーくん!凄くきれいだよ!」
れいちゃんは川を見て、目を凄く輝かせた。足の痛みは気にもしていない。俺はれいちゃんを川の近くで下ろした。その時でもれいちゃんは、凄いと目を輝かせていた。
「れいちゃん、ごめんね。」
「うんん、川がきれいだから良いよ。」
「うん、きれいだよね。」
れいちゃんの足は、石や砂が付いて痛そうだった。幸いにも血は軽く垂れる位だった。川の水で流して、持っていたハンカチを巻いた。それしか出来なかったけど、れいちゃんは楽になったと言ってくれた。
「ありがとう、かーくん!」
「どういたしまして?でも、原因は僕何だけど。」
「良いのよ!」
れいちゃんは、まだ痛いだろうに笑顔を浮かべる。そんなれいちゃんにつられて俺も笑顔になった。昔かられいちゃんにはかなわないと、今でも思う。
「れいちゃん、大丈夫?」
「かーくんのおかげで大丈夫だよ。」
「何かあったら言ってね。」
「うん。」
再び、俺がれいちゃんをおぶって歩いた。れいちゃんの足に無理させないためだけど、れいちゃんの痛みは俺が原因だからその懺悔の気持ちからかもしれない。ゴールを目指して歩いていた。
「おーい、かがみさーん!れいさーん!」
「鏡くーん!零ちゃーん!どこにいるのー!」
遠くから俺らを呼ぶ声が聞こえる。声からして弾と清香ちゃんだと思ったが、二人は別のグループだから違うかと思っていたな。2人だったが。
「あっ!かがみさんとれいさん!」
「見つけました!」
俺らに気づいた弾と清香ちゃんは俺らの方に来た。俺らを見つけて嬉しそうだが、弾と清香ちゃんは俺らと別のグループで学年も違う訳で、出発は2人の方が先だから会うのは少しおかしいのだ。
「2人共何でいるの?」
「弾達は先に出たよね?」
「待ってました!」
「同じく~!」
2人はなんという事も無く言い放つが、俺は開いた口が塞がらない。一方、れいちゃんは嬉しそうだった。仲が良い子たちで歩くのは楽しい、れいちゃんが思っているのはそんな所だろう。
「あれ?れいさん、怪我したんですか?」
「あっ!ほんとだ!大丈夫ですか?」
「うん。かーくんがハンカチくれたから。」
「……」
れいちゃんの足に気づいて、清香ちゃんと弾は心配するが、れいちゃんは大丈夫と言う。俺は、羞恥心と罪悪感で黙っていた。
「かがみさん。」
「何?弾。」
「れいさんおぶって良く歩けますね。」
「かーくんは凄いからね!」
「そうですよ!普通に歩くのも大変なのに!」
「何でれいちゃんが威張ってるのさ?」
何でもない話をしながら俺らは歩いていた。ゴールはもうすぐだ。
「」
「ー」
「ーー」
「おーーー」
どこからか、俺を呼ぶような声が聞こえる。だんだん大きくなっている。
「起きなよーー」
そして、周りが明るくなり体が重たく感じて来た。
「やっとか、授業中だよ。」
「…………布枯か。」
「ああ、布枯だよ。」
目が覚めると、目の前には布枯がいた。…今は、体育の授業で自由時間だった。目が覚めた時に、一瞬れいちゃんに見えたが気のせいだろう。死人がいる訳が無いからな。生きてるなら、会いに来るだろうし。
「加賀観、起きたか。向こうでバスケするらしいが来るか?」
「おお!行くぜ!」
神に呼ばれ、バスケをしに行く。この時には、もう薄れかけていた。