彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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動き始める光

 

 ある休日の日。俺は、電車に揺られていた。母さんに言った通り、俺はれいちゃんの墓参りに行く。俺がれいちゃんの墓参りをしたのは、墓ができてみんなで参りに行った時だけだ。それ以外は行っていない。行ってしまうと、れいちゃんの事で先に進め無くなるんじゃ無いかと思ってしまったからだ。れいちゃんだって、自分のせいで俺が止まるのを許すとも思えない。それが、例え建て前でも、強がりでも俺はれいちゃんの墓に行きたくなかった。今回は、れいちゃんが死んで5回目の命日だ。休日の関係で、命日は明日だが今日行く。

 

「………」

 

 れいちゃんの墓参りに向かうのに、れいちゃんの墓が出来て皆で墓参りに行って以来になる。どうしても、行く気になれなかったからだ。それが罪悪感なのかどうかはわからない。けど、れいちゃんが死んだのは俺が原因だ。それに、れいちゃんの妹ちゃんに言った「お姉ちゃんはどこ?」が心に刺さったままなのかもしれない。だから、行かないと決めていた。しかし、今回行くと決めた理由は月日が経ったからかもしれない。自分でもはっきりと理由がわからない。自然に行かないとという気持ちになっていた。これは月日が経った事で知らない間に心の奥では、そうだったのかもしれない。あるいは……流石に無いか。

 

「ん?もうこんな時間か。」

 

 電車に乗って、1時間程経っていた。れいちゃんの墓は、実家の近くに作られた。しかし、実家が駅からだいぶ離れた所に有るために電車で行き途中でバスなどに乗っても2時間程かかる。最寄り駅は後40分位だ。降りてからもだいぶ有るため、母さんに迎えに来て欲しいと思うが今日は仕事だと断られた。今回の墓参りは、家族には母さんにしか伝えていない。なので、迎えは零だろう。

 

「もうすぐか、…大丈夫…だな。」

 

 電車が駅のフラットフォームに入るのを見て、荷物の準備をし始めた。日帰りだからリュックだけだが、墓参りに持って行く物は着いてから買おうと思っていた。花などは持ったままで来るのが大変だからと、街を少し歩こうと思っていたから買わなかった。

 

「この駅も久しぶりだな。前は正月か。」

 

 三鷹学園が在る街から実家が在る街に行くにはこの駅を通る事になる。正月に一度戻ってからなので半年位だが久しぶりと感じた。

 

「さて、この近くの花屋はっと。」

 

 記憶を頼りに歩き出した。なかなか大きい街だけど、12年間住んでいた上にちょくちょく帰っていたから行けるはずだ。歩いていると、街にマンションやアパートが増えたなと感じる。前からビルとかは沢山あったが、更に増えた気がするな。

 

「おっ、此処だ。」

 

 駅から徒歩15分程の所に在る、ちょっとした花屋にたどり着く。此処は昔に一度来て花を買った事がある。その時何を買ったかは、覚えていないけど母さんと来たのを覚えている。中はショーケースに入った花やカラフルな鉢が飾られている。奥にはカウンターが有り、受付の女性が此方を見ていた。

 

「いらっしゃいませ。」

「花を注文したいんですけど。」

「はい、どのような花ですか?」

「カンパニュラって有りますか?」

「カンパニュラですね、……。」

 

 女性はパソコンを叩き、在庫でも調べてるのか画面を見つめた。

 

「はい、ありますよ。」

「じゃあ、お願いします。」

「では、少々お待ちください。」

 

 女性は、奥に入って行った。カンパニュラを調べたら「感謝」とか「誠実」など良さげな花言葉が書いてあったからこのカンパニュラにした。時間がなかったからあまり調べなかったけど、写真だと良さそうだった。そういえば、種類は特に言わなかったな。まあ、大丈夫だろう。

 

「では、此方になります。」

「はい。」

 

 その後会計を済ませて店を出た。少し持つのが大変だったが、何とか抱えた。そのままの足で実家に向かった。店からは少し遠いが、その分街を見て回った。家は、街の外れの坂の上なので少し汗が出た。時間がかったが家に着いた。

 

「……。」

「……。」

 

 何故か家の前にいた父さんとお互いを見合った。父さんは今日仕事がないとは聞いてはいたけど、何で家の前にいるんだ。

 

「……。」

「……いや、何で何もしゃべんないの!何か喋ってよ!?」

「…寡黙の方がかっこいいと思ってな。」

「寡黙って黙ってる事だっけ?」

「……恐らくは…。」

 

 確かに、寡黙な父さんはかっこいいと思う。黙っていればかっこいいと評判の父さんが、寡黙な感じになるのは良い事だろう。なれるなら。

 

「ま、まあ、お帰り。」

「うん、ただいま。」

 

 何とも言えない感じだが、いつもの父さんに少し安心した。この雰囲気が仕事ではキリッとした感じになるのでびっくりした物だ。

 

「鏡、すぐに墓に行くのか?」

「ああ、あんまり時間は無いからね。」

「そうか、場所は分かるか?」

「大丈夫。」

「そうか、ならしっかり話して来い。」

「ああ?行って来る。」

 

 父さんの言葉に少し違和感を感じたけど、墓に向け歩き出した。墓は、家の裏から続く道を行った所に在る。

 

「…」

 

 不思議と足取りが遅くなったと感じた。れいちゃんの墓は何もしていない。俺が勝ってに重く感じているだけだ。そう考えても、そう考えても、どうしても軽くはできなかった。あの事件、れいちゃんの事が俺の中の大部分を占めているのだろう。

 

「…此処か。」

 

 此処は、先祖達の家臣達が眠る所だ。れいちゃんも此処に入れて貰った。

 

「れいちゃん。」

 

 「れいちゃん、ここに眠る」俺が書いた字を、職人に頼んで彫って貰ったのだ。これは姉ちゃんが発案して、了承した物だ。れいちゃんの死を乗り越えようとしていた時に、姉ちゃんからこれを書くように言われた。最初は断ろうとしたが、姉ちゃんに書かせる位と書いた。これで、れいちゃんの墓が完成した。れいちゃんの死が確定したのだ。何を思うが涙は頬をつたう。姉ちゃんの案は結果的にれいちゃんの一連の事を一段落させた。

 

「ふう、……。」

 

れいちゃんの墓は定期的に綺麗にされているのか、周りの墓に比べて表面が光っていた。母さんかな?まあ、綺麗にしてくれる人がいるのなら安心かな。流石に寂れたりしていたら少し悲しく思う。綺麗な花が飾られている所に先程買った、花を飾る。この花は、感謝の花言葉が有るらしいのでこれに決めた。れいちゃんには、感謝してもしきれない程の物を貰っている。更に、墓参りも来ていないんだ。これで少し返せたとは思えないけど、喜んでくれると嬉しいと思ってこの花を選んだ。

 

「れいちゃん、俺さ。れいちゃんが亡くなってからいろいろ経験したぜ?成長もしたんだ。でも、君に会いに来る事が出来なかった。君が亡くなった事は認めていた。けど、君に合わせる顔が無かった。母さんや姉ちゃんはもう大丈夫と言っていたけど、俺自身が認めれなかった。成長したって、君の事は変わらないそんな事を考えていた。だから、5年も君に会わなかった。今回来たのは、君に聞いて欲しい思ったからなんだ。5年間考えてきた事。」

 

 これは、自己満足なのかもしれない。ただ、何も言わない墓に言って気持ちを軽くしたいだけかもしれない。でも、それでも、言いたかった。伝えたかった。そうすれば、先が見えるかも知れないと。そうしないと、先が見えないと。思って、自分は最低何だろうと思う。前に、いっちょ前に説教した自分が、と思う。もう、有るのは吐き出したい欲求だけだった。

 

「……最初、君の、れいちゃんの最後の事を思い出した。れいちゃんが見せた笑った表情が頭からしばらく抜け無かった。何で君は笑ったのか。想像だけならできる。けど、俺にはそれを認められなかった。何故と、解答がない問題を解こうと考えた。だけど。見つからないまま曖昧な解釈で納得使用としていた。俺にはもうわからない。君は、何を思ってたんだ?かんがえてもわからないんだ。」

 

 返事はない。それでも、俺は問いかけ続けた。無駄かもしれない。そう思っても、問いかけ、問いかけ、問いかけ続けた。原因は俺なのに、君は笑った。自分が無事じゃあすまないとわかっていただろうに、君は笑った。その答えを君は教えてくれない。この終わらない問いを5年間考えて、今に至る。俺はれいちゃんに言葉を吐き出し続けた。いままでに思った事も感じた事も吐ける限り吐き出してた。もう、半分はうめき声に近かった。

 

「…ハア…ハア…。」

 

 息が上がっても、止めようと思わなかった。顔が酷かろうが、吐こうとした。

 

「……鏡、やめなさい。」

 

 声を聞くまで、そこに誰かいた事に気付かなかった。いや、気づいてもやめる気が無かった。

 

「鏡、こんな事をしても貴方も、れいちゃんも救われないわ。」

「姉ちゃんには、わかるのか?」

「ええ、貴方達の為にならない事がね。」

「……。」

「鏡、れいちゃんが何で貴方を助けたか、わかっているわね?」

「……。」

「鏡、認めなさい。鏡が大切だったからよ。家とか関係なくね。鏡、れいちゃんにとって、貴方は自分よりも大切な人だったのよ?…本当にね。」

 

 わかっていた。けど、認めたく無かった。俺が大切だから守ったと。そのために自分が犠牲になったとしても。れいちゃんは、そういう人だ。…だから、認めたくなかった。れいちゃんが思うように、俺もれいちゃんが大切だった。守ろうと思った。けど、守ろうと思った人が俺の為に自分を犠牲にした。それが悔しくて、虚しくて、やるせなくて、何よりも悲しくて。

 

「鏡、れいちゃんは貴方に足を止めて欲しく無いから貴方を守ったのよ。それなのに、貴方は止まるの?」

「…。」

「足を止めた先に、貴方は何を求めるの?」

「……っ!」

「貴方は、れいちゃんの思いを無駄にしたいの?」

「そんな事は…」

「なら、立ちなさい。地べたに座ったままでは始まらないわよ。」

 

 姉ちゃんの言葉は、俺の思考の渦を止めた。そして、停止していた俺の足を動かした。姉ちゃんの言葉、れいちゃんの思いを理解した。

 

「…姉ちゃん。」

「なぁに?」

「ありがとな。やっと行ける気がする。」

「そこはビシッと言いなさい。」

 

 姉ちゃんは、呆れたように言う。けど、5年間止まっていた俺が、歩き出したのだ。不安も恐怖も有る、何が起こるのか心配にもなるさ。

 

「もう、大丈夫ね。」

「ああ、ありがとう。」

「どういたしまして。」

 

 姉ちゃんには、頼ってばっかりな気がする。双子なのに、本当に頼もしいよ。

 

「さて、鏡の件も終わったし、私は帰るわね。」

「ああ、本当にありがとう。」

「どういたしまして。感謝は、何度でも受け取るわ。」

 

 そう言って、姉ちゃんは墓地を後にした。姉ちゃんが見えなくなるのを見て、れいちゃんの墓を見た。俺が書いた文字が、真っ直ぐこちらを見返す。今まで、此処までハッキリと見なかった。やっと、見れた。

 

「れいちゃん、俺は行くよ。止まらずに、行ける所まで。見ていてくれ。」

 

 此処で、俺は新たな誓いを建てた。これまでの屈折した誓いでは無く、真っ直ぐに建てた誓いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったの?鏡に会わなくて。」

「大丈夫です。言いたい事は言って貰いましたから。」

「…恨んでる?一応、この状態を作ったのは私だけど。」

「貴方様は良くやっています。感謝はあれど恨みはありません。彼もそう言うと思います。」

「そう言ってくれると助かるわ。」

 

 




 自己満足で書いているので意味がわからないかも知れません。
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