彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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 時間が開きましたがかけたので投稿します。


放課後フレンズ

 

 今日の外は暖かい風がせせらぎ合う穏やかな一日だった。今日は午後から先生達と藍越学園の方との会議という事で短縮授業になり午前中には授業が終わってしまった。いつもより早いとはいえ授業が終わった事で、生徒たちは少なくない解放感に浸っていた。授業中の静けさが嘘の様にガヤガヤと騒がしい教室は、さっさと家に帰る者と部活がある者以外の人で賑わっていた。その中の一名、田島神も教科書をしまいながら今からの時間をどうしようかと考えていた。そんな神に近づく者がいた。

 

「神、今日って部活はあるか?」

 

 鞄を肩に掛けた加賀観だった。そんな加賀観だが、彼の髪には寝癖が堂々と居座っていた。本人は気がついていないのか、ニコニコとこちらを見ているが。

 

「いや、今日は休みで無いぞ。それがどうかしたか?」

「おっ!じゃあさ、一緒に遊びに行こうぜ」

「遊びか、わかった行こう。俺もこの後どうしようか悩んでいたからな」

 にやりと笑う加賀観に俺は頷き、鞄の準備を進めた。

 

 

 

 

 運動会の組別けが終わって、いよいよ迫って来た運動会。それの準備で学校を走り回ったり、記録を確認したりと忙しい日々が続いている。そのせいか、最近神達と遊べていなかったりする。今日は、その準備が休みなのだ。さらに学校も午前中に終わるので、遊ぶには好都合の日だった。神の他に最近疎遠だった奴らにも声をかけて、この休み日を満喫してやる。

 

「よし、ならさっそく行こうぜ。あいつ等にも連絡したからな」

「そうなのか、なら早く行かないとな」

 

 呼んだ奴らとは、1年の時に集会で知り合った奴らだ。奴らとは、学校は違うが良く集まって騒ぎあう仲だ。最近はお互い忙しくて集まっていなかった。だから今日はお互いに午前で授業が終わると知っていたので、声をかけたのだ。奴らとは近くの公園を待ち合わせ場所にしている。

 

「そういえば、何人呼んだんだ?」

「…5人かな。自信ないけど」

 

 そんな神の質問に加賀観はどう答えようかと考えたが、不確定な要素が有ったので断言する事は出来なかった。前回、加賀観が招集をかけた時は予定していた人数の倍の人数が集まっていた。まあ、今回は直前に連絡したのでほぼ確定だろうと加賀観は思っている。

 

「変に曖昧な返事だな?」

「前回同様に奴が、増やす可能性も有るからな。断言できん」

 

 そうして神と話しているうちに、待ち合わせの公園にたどり着いた。学校からそんなに離れていないので、それほど話していないが。

 

「さてと、奴らは来ているかな?」

「……あれじゃないか?」

 

 神が指した方向には、四人ほどの集団がいた。いや、近くにいるが半々に分かれていた。片方は、どうもトランプをしているようだ。もう片方は、二人で向かい合って腕をしきりに動かしている。ゲームにしても距離が近くて、判断できなかった。とりあえず、集団に近づいた。

 

「おーい!」

 

 

 

 「ん?…なんだ加賀観か、遅かったな」

 

 加賀観の呼びかけに最初に反応したのは、トランプをしていたボサボサ頭の間庭だった。間庭は手元のトランプに向けていた視線をこちらに向けた。

 

「いや、連絡してからすぐに来たんだが。それに時間もそんなにかかってないぞ」

 

 連絡してからこっちに来るまでは15分ほどだ。それでほとんど集合していて、あまつさえ遅いと言われるとは思わなかった。こいつらの集合が早すぎなだけだ。暇人多すぎだろ。

 

「そう言う間庭たちはどれくらいに来たんだ?」

「俺は、10分前だな。連絡貰ってすぐに来た。暇だったからな」

「俺は、5分前」

 

 間庭と一緒にトランプをしていた村河がそれぞれ答えてくれるが、間庭は近くにでもいたのかと思うレベルだな。村河位が普通だと思う。村河や間庭の学校は此処から十分程バスで移動した先にある。だから、村河は分かるのだが、間庭に関しては全然わからない。どうやったらそんな早く来れるんだ?そんなこんなと話していると、不思議な事をしていた奴らがこちらに気づいたのかやって来た。

 

「なんだ、加賀観達もあいつに呼ばれたの?」

「いや、初めに招集を掛けたのは俺だ。甲たちを呼んだのは間庭で間違いないけどな」

 

 始めに声をかけてきたのは不思議な事をしていた長身の甲だった。手に持った棒で何をしていたのかを聞くのは止めておいた。どうせ碌なことでは無いと思うからだ。…やはり、甲も間庭が発案し皆を呼んだと思っていたようだ。口にはしていなかったが、村河もそう思っていた様だし。まあ、いつもこういうのを発案するのは間庭だったからだけど。逆に俺はこう言う遊びに関しては、そこまで決めたりしなかったからな。

 

「神君、久しぶり」

「ああ、岸もな。今年の二月以来か」

「うん」

 

 甲と共にいた岸が神に挨拶する。今いるメンバーの中で、唯一の女性の岸。彼女もこいつらとつるんでいるからにかなりの変わり者だ。甲と同じく何をしようとしていたかは聞かない方が良いと思った。そんな岸は神に少し寄りながら話していた。彼女が神に対して思う事が有るのは周知の事だった。まあ、神が気が付いて無いっぽいから先に進むのかは謎なんだが。それでも微笑ましいので、俺と甲は暖かく見守っていた。間庭と村河は再びトランプをしていたが。

 

「…?……!なあ、加賀観」

「なんだ?何か有ったのか神」

「間庭が呼んだのだろうが、彼女が来たみたいだ」

 

 急に何かを感じ取ったのか頻りに辺りを見渡した神はある方向を向いて指をさして言った。神の指した方を向くと見覚えの有る人影が見えた。その影はこちらにまっすぐ歩いてきた。大方間庭が面白半分で呼んだのだろう。そいつは、手を振ってはいるがその顔はとてもにこやかでとても恐ろしかった。

 

「間庭」

「…ん?おお、やっと来たのか。遅かったな速川」

 

 にこやかに歩いてきた速川は、此方に来るなり間庭に詰め寄った。心なしか、その姿を視て寒気がした。詰め寄られた方は、そんなのお構いなしって感じだったが。その返事に速川は眉間にしわを寄せた。しかし、間庭は気づいていないのかこちらに話を振って来た。

 

「なあ加賀観、そろったしこっからする事決めようぜ!」

「お、おう。速川、お前も、な?」

「…ええ」

 

 何だかんだであったが、予定は決まった。…尊い生贄と貧乏くじがいたが。…なんで俺まで怒られなきゃいけなかったんだ。

 

 話し合いの結果、俺らは近くのゲーセンに行く事になった。他の候補としては、ファミレスとかが有ったが村河があんまり腹が減ってないという意見を聞いて、後に回す事になった。

 

「それじゃあ、行こうか」

「ああ」

「ええ」

 

 公園からゲーセンは歩いてすぐの所に有る。何故か仕切りだした村河を先頭に、俺らは皆マイペースに歩き出した。因みに返事をしたのは、神と速川の二人だ。この中じゃ、真面目な二人だから村河の何か頼りない号令に律義に返事をしたのだろう。間庭とかはきいてもいないだろう。同じく聞いてないだろう岸は、神の後ろを付いて歩いていた。甲と俺は、駄弁りながら少し離れてついていく。…間庭は、速川に首元を掴まれ、引きずられている。あいつの後頭部が剥げない事を頭の中で祈って置いた。

 

 公園を出て、すぐの歩道橋を渡る。先頭を歩く村河は、後ろから聞こえる呻き声にちらちらと目を向けながら進む。神と速川は、何やら溜息交じりに話している。岸は、その2人の話に混ざろうと頑張っていた。甲と俺は、たまに足元を見つつ最近の出来事を話していた。間庭は、相変わらず引きずられていた。階段に当たる度に、うぎゃっとか呻き声をあげている。

 

 道沿いを歩いて、ゲーセンに辿り着いた。入口では引きずられて砂や落ち葉の付いた間庭を速川が素早く叩き落としていた。村河は、そんな間庭を横目に財布を覗いていた。神と岸は、どのゲームを遊ぶかを話していた。甲は、速川に叩かれている間庭を面白そうに写メっていた。俺はそれを横で見ていた。

 

「加賀観は何からする?」

「俺は何でも良いかな、甲の好きなのからで良いぞ?」

「そうか?…じゃあ、あれにしようぜ!」

「音ゲーか、良いぜ」

 

 ゲーセン内では各自自由行動にしている。皆やりたいゲームが違うし、神と岸を2人にしたいっていう狙いも有るからだ。自由行動とは言え、なんだかんだグル‐プ行動で動くのが殆どだった。グループは村河と速川と間庭、神と岸、俺と甲に分かれた。村河達は、格ゲーをしに行くと言っていた。神と岸は、クレーンゲームをしに行くようだ。俺達は、まず音ゲーをする事に決めた。

 

「よし、どの曲ににする?今度は加賀観が決めてよ」

「そーだな、まあ、てきとうにこの曲にするか。」

「この曲かあ、本当に好きだねぇ、加賀観は」

「ははっ、別に良いだろう?小学校位の時とかは、学校でも人気だったろ?」

 

 ニヤニヤしてる甲を横目に俺は金を入れる。あのアニメの新曲もあったが、甲が知らないだろうと選ばなかった。難易度を選び、演奏を開始した。ああ、懐かしいな。結果は甲の方が良かったが。

 

「神君、これにしよう」

「…これは、犬?…小さくて難しそうだが、行けるのか?」

「頑張る」

「なあ岸、そろそろ諦めないか?だいぶ金を使っているが」

「でも、まだ取れてない」

「…一回、俺がやろう」

 

「速川、店内では流石に放そうよ」

「私だって放したいのよ?でもね村河君、こいつが逃げるから駄目よ」

「逃げねぇから!」

「だ、そうだぞ?」

「前もそう言って、逃げたわよね?」

「放せぇー」

 

 

 自由行動を始めてから1時間位が経った。そろそろ時間だなぁと、入り口に向かうと1時間前から更にボロボロになった間庭が寝転がっていた。その光景は、余りにも惨めな感じで周りからは憐れに思われている事だろう。だが、それを見た俺達の感想は、こいつも懲りないなぁという物だった。地面に寝転がる間庭なんて俺らの間では日常茶飯事だ。そして、原因がこいつ自信だって事も判りきっている。そんな光景を今更憐れむ事も無かった。そんな俺達を見つけた村河は、苦笑いで手を振っている。それを見て、俺達はやはりなと自分の想像が当たった事を確認したので合流しても特に言わなかった。その後にやって来た神達も間庭を見て悟っていた。ちなみにその時、岸は小さなぬいぐるみを抱いていた。

 

 次はどこに行くかの話になり、ショッピングモールや水族館などが出てきた。そんな中、寝転がっている間庭の腹がぐーーと鳴った。本人も出したかった訳じゃ無いだろうが、それを速川に注意されて「それは、あんまりだろ」と嘆いていた。甲や村河はそんな一幕は知らんと、2人で話し合っていた。岸は神にショッピングに行くならば、行きたい場所があると話していた。俺はそれらを見ながらどこに行こうかと考えていた。話し合いの結果はファミレスになった。決め手は間庭の腹の音がうるさかったからだそうだ。

 

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「7名です」

「7名様ですね、…では、ご案内します」

 

 店員さんに連れられ8人位が机を囲んで座れる席に案内された。席はそれぞれが思い思いの場所に座った。俺と甲が机の右側に座り、神は岸と壁側に座った。村河と速川、それと間庭が俺らの正面に座った。机に3つあるメニューをそれぞれで見て、あーだこーだ言いながら決めて行った。

 

「では、注文をお伺いします」

「私は、Aランチで」

「俺も、Aランチで」

 

 神と岸は、Aランチ。ハンバーグが主菜のランチだ。

 

「俺は、唐揚げと海鮮丼」

「俺も、唐揚げかな。それから牛丼で」

「僕も、唐揚げ。それとドリア」

 

 俺は、唐揚げと海鮮丼。甲も唐揚げと牛丼。村河が唐揚げとドリア。

 

「なら私は、Bランチで。それと、彼に肉焼きそばで」

「なんで速川がおれのも頼むんだよ」

「あら、違った?」

「…あってます」

 

 速川は、Bランチ。野菜と魚が中心のランチだ。間庭は、肉焼きそば。本人も選ぶ気だったようなので、別に良いのだろう。

 

 しばらく皆で次の場所を決めていると、店員さんが誰かの物を運んできた。

 

「こちら、Bランチになります」

 

 速川の分が一番だった。速川は皆に断りを入れてから食べだした。Bランチは、ポテトサラダにキャベツと人参の千切りサラダなどが乗っていた。ポテトサラダが好きな間庭が横から手を出して、速川に叩かれるというのを何回かやっていると、また誰かの物が運ばれてきた。

 

「こちら、Aランチになります」

 

 神と岸の頼んだ物が来たようだ。二人そろって、いただきますと言って食べ始めた。Aランチにも、ハンバーグの付け合わせでポテトサラダが付いていた。それを間庭が懲りずに狙っているようだが、速川が自分のポテトサラダを与えて黙らせた。すると、店員さんが片手ずつお盆を持って来た。

 

「こちら、唐揚げ3つに牛丼になります」

 

 次は、俺らの唐揚げと甲の牛丼だった。一皿に3つ乗っている唐揚げと紅生姜がまぶしてある牛丼を、甲はゆっくり食べだした。

 

「こちら、ドリアと海鮮丼になります」

 

 俺と村河の物も運ばれてきた。ドリアのチーズの幕がぷくぷくとおいしそうにアピールしている。海鮮丼は、タレの掛けられた刺身とその上のイクラがとてもおいしそうだった。俺らもいただきますを言って食べ始めた。間庭のはまだのようだ。

 

「ごちそうさまでした」

 

 間庭のが来る前に、速川が食べ終わってしまった。客も増え始めて大変なんだろう。結局、間庭のが運ばれて来たのは神達が食べ終わった後だった。

 

 

 間庭も食べ終わったので、次の場所を決める事にした。とりあえず、先に出ていたショッピングモールと水族館を候補にして、他に無いか意見を募った。

 

「何か他の案は無いかしら?」

「うーん、…無いかなぁ」

「そうだな、無いな」

 

 と、言う事でショッピングモールと水族館で多数決を取った。

 

 

 俺たちは、今ショッピングモールに向かっている。多数決は、5:2で、ショッピングモールとなった。少なかった水族館には、俺と村河が投票した。俺の理由は、素直に魚が見たかったからだ。

 

 ショッピングモールはレストランから10分の所にある。今度も村河を先頭に皆で歩いて行った。

 

「村河、お前はショッピングモールで何する?」

「適当にぶらぶらする気だけど」

「なら、何か映画見に行かないか?」

「…ああ、良いよ」

 

 ショッピングモール内は、映画館やゲームコーナーなども有り様々な事が出来るようになっている。店内は各階にそれぞれテーマを持たせ、それに見合った店を設置している。一階は食品やお土産、エントランス。二階は服やアクセサリーなどのファッション関係。三階は映画館やゲーセンなどの娯楽施設や玩具、家庭用ゲーム機の販売所も三階にある。四階は、催し物などを行う場所になっている。ゲーセンに引き続き、それぞれのグループで行動することになった。神達の為でもあるが、速川が間庭を見張る為でもあるらしい。

グループは神と岸、間庭と速川、村川と甲、俺のグル‐プに別れた。神達は、アクセサリー等のコーナーに行くと言っていた。速川たちは、よく分からない。おそらく買い物だと思うが。俺たちが向かう映画館はショッピングモールの三階に有る。今回は村河の要望で、アクション物を見る予定だ。甲は恋愛物が見たかったらしいが、近くでいつでも見られるからと止められていた。

 俺達は映画館のある三階を目指しているが、そこに着くためにエスカレーターを何個か乗り継いでいかなければならないのは少しめんどくさかった。此処のショッピングモールはここら周辺の建物の中で一番大きい為、モール内もとても広いのだ。だから、移動するだけでも大変なのだ。その分、商品の品揃え等はとても良いのだが。

 

「よし、着いたな。じゃあ、どれ見る?」

「これで良いんじゃないか?」

「ん?『フェーティング・トポロジック』?」

 

 三階に着いた俺たちは、劇場前に張り出されているポスターを見て、見たい映画を決めようとしていた。どれを見ようかと甲が一つのポスターを指さした。『フェーティング・トポロジック』最近公開された映画で、賛否両論の映画だとネットでは言われている。あらすじは、機械の町「フェルト」で生まれた男の子、アイルの生涯を描いた物語。ポスターには最後の瞬間を君はどう思う?と書かれていた。俺はまだ見ていないのだが全体を通して賛否が分かれている様だ。

 

「でもこれって、そんなに評価良くないよな?」

「うん、でもそういうのって逆に見たくならない?」

「まあ、そんな長い物じゃないし良いんじゃないか?」

 

 『フェーティング・トポロジック』は、上映時間が一時間と短いので丁度良いだろうという事でこれに決まった。この時間はそれほど混んでおらず、スムーズに場内に入れた。

 

「あんまり人がいないな」

「やっぱり、人気無いのか?」

「…まあ、見たらわかるだろ」

 

 それから映画開始まで場内に入ってくる人は微々たるものだった。席はガラガラだったがそんなの関係無いと映画は始まった。村河と甲はどんなものかを見定めるように映画を見ていた。そして、映画は最後のシーンを迎えていた。主人公が、敵に捕まった旅の仲間を解放するために自らのエネルギーを解き放つ。そのエネルギーは光となって敵諸共仲間に降り注いだ。光を浴びた敵の体は段々と崩れていった。そして、光を受けた仲間の体も段々と白くなっていった。そして、光を放った主人公も笑みを浮かべながら白くなって行き、そのまま画面もホワイトアウトしていった。そして、エンドロールが流れ始めた。エンドロールが終わると、他の映画の告知が流れ画面はブラックアウトした。

 

 映画が終わり、俺たちは5分ほどその場で留まり劇場を後にした。その間映画のラストの唐突の終わりに驚いて、言葉が出なかった。甲も村河も何も言わなかった。賛否の別れる映画、その意味が分かり俺はどっちだろうと考える。ラストの主人公の行動は、劇中でも最後の手段だと説明がなされていた。しかし、あのまま問題が解決したのかわからない終わり方に何とも言えない感じになる。おそらく二人も同じ感じなのだろう。

 

「…前評価をあんまり裏切らなかったな」

「…そうだね。少し俺としてはがっかりな感じだな」

 

 とりあえず、俺たちは近くのフードコートに向かった。予定している時間までは少しあるから何か食べて過ごそうと意見が一致したからだ。各々が軽食を買ってきて席に着いた。

 

「面白かったとかの話以前に釈然としない終わり方だった」

「…そうだね。あの映画のあらすじに書いてあったのを見ると意図してああいう終わりにしたのだろうけどね」

「その後は想像でって事か」

 

 その後も、買った物を摘まみながら映画について話し続けた。買った物もなくなり、良い時間になったので神達との待ち合わせ場所に向かった。待ち合わせ場所は、一階の噴水広場だ。

 

 

 一階の噴水広場は、ショッピングモールの中央にある休憩場で上は吹き抜けになっていて各階から覗く事が出来る設計になっている。なので、休憩場であると同時に集合場所としても良く使われる。迷子センターもこの近くにあるので、迷子センターに向かう場合にこの噴水広場を目印にすれば迷う事は少なくなるので、アナウンスの時に場所の説明に噴水広場近くと流れる。

 

 さっきの映画の話や学校の事を話しながら歩いていると、噴水広場近くのベンチに神達の姿を発見した。何やら楽しそうに話しているが遠くてよく聞こえなかった。

 

「じーん!」

「ん?…おお、やっと来たか」

 

 神の名を呼ぶと、何故か地面に寝ていた間庭が反応した。当の本人は、間庭が気づいた後にこちらに気が付いた。岸と話していて、俺の声が届かなかったようだ。速川は、こちらを向いて早く来いと手を縦に振っていた。

 

「遅かったか?一応、時間通りだが」

「こっちが早かったのよ。こいつがどっかに行くからあんまり買い物出来なかったし」

 

 そう言って速川は、間庭の頭を小突く。よく見ると、速川の隣に小さいビニール袋が何個か置いてあった。どれほど買う気だったかは、知らないけど速川の言っていた事を聞くに早い段階で間庭が逃げ出したのがなんとなく分かった。間庭の腕にゲーセンの袋が架かっているので、どこに逃げたのかが想像しやすかった。岸と神の方は、神が大きい紙袋を持っていて岸が小さい紙袋を抱えていた。こちらは楽しそうに買い物出来たようだ。神がこちらに気づかない程話に集中していたのだから。何かしらの進展があったのだろう。

 

「それで、この後どうする?」

「時間的に夕飯の時間か」

「そうね、ここで解散でも良いけどみんなで食たべるのもいいわね。大丈夫の人は手を挙げて」

 

 手を挙げたのは、速川、間庭、甲、俺の四人だった。

 

「家族に夕食はいらないと言ってなかったからな」

「私も」

「俺も」

 

 手を挙げなかった神と岸、村河だった。今日の遊びも急に決まったので、家族に連絡なんて出来てなくても仕方ない所であった。手を挙げた組は、加賀観と甲が一人暮らしで、速川と間庭は親が帰るのが遅い為に急の事にも対応出来たのだ。

 

「あー、突然だったもんな」

「そういう事なら仕方無いわね。…解散にする?」

「まあ、それならあんまり遅くなったらいけないだろうしな」

 

 神達が参加できないのなら別に夕食を外で食べる必要も無く、食べないのならここでやる事も無い。解散の方向に話が行くのも仕方ない。

 

「それじゃあ、解散にしましょうか」

「ああ、そうしようか」

 

 結果、解散する事に決まった。急だった事による神達が参加できない事が一番の決めてだろうな。

 

「…ごめんね」

「ん?別に大丈夫だぞ。今日の集まりは、加賀観が急に言い出した事だしな」

「まあ、俺が唐突に言った事だしな。俺のせいと言えるか」

 

 申し訳なさそうな岸に、間庭が俺を使って許した。その通りなのだが、何とも言えない感じだった。

 

「それじゃあ、私たちはこっちね。また、遊びましょう」

「またなー」

 

 ショッピングモールを出ると。家が反対方向の間庭と速川は此処で別れた。

 

「それじゃあ、私はこっちだから」

「俺もついて行くから此処でお別れだな。甲また、遊ぼう」

「そうだね、神もまたね」

「岸もまたな」

 

 公園近くで、岸とも別れる。流石にこの時間に岸を一人で帰らせる訳に行かないので、神が一緒に帰る事になったようだ。

 

 

「じゃあ、此処でだね」

「ああ、またな」

 

 公園の二つ先の交差点で甲と別れた。

 

 

「今日は、楽しかったな。流石に急すぎたから次は事前にメールしないとな」

 

 マンションの前に着いた頃には、日は沈んで辺りは暗くなっていた。マンションのロックを解除して、エレベーターに乗る。そして、部屋の前に着くと部屋の電気がついていることに気が付いた。

 

「ん?消し忘れたか?」

 

 とりあえずカギを開けて部屋の中に入った。入ると、キッチンの方から水が流れる音がした。疑問に思いながらも、キッチンに向かった。

 

「あら、加賀観お帰りなさい」

 

 エプロンを付けた母親が料理していた。作っているのは、ミネストローネだろうか。しかし、今日は来ないと聞いていたのだが。

 

「ああ、仕事が思ったより早く終わったのよ。家に帰っても良かったんだけど、荷物が多かったのよ」

「なるほど、ならメールでもしてくれれば良かったのに。電気ついててびっくりしたよ」

「あら、メールならしたわよ?」

「え?」

 

 慌てて確かめると、スマホの電源が落ちていた。映画を見てから電源を入れていなかったのだ。電源を入れると、メールが送られて来たと通知が来た。メールの内容は、今から家に来るという内容だった。

 

「電源切ってた」

「何してるのよ」

 

 映画を見る時は電源を切る様にしていたが、今日は映画の内容のせいで忘れていた様だ。映画を見終わった後は、スマホを使う機会が無かったから気が付かなかったのだ。

 

「まあ、良いわ。風呂に入って来なさい」

「はーい」

 

 

 

 

 

 




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