彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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選手決めのお時間

 運動会まであと二週間を切った頃の話だ。

 

 今日はクラスで運動会の選手決めだ。運動会までは時間があるが選手名簿を作成するために運動会一週間前までに提出と実行委員から言われていた。そんな訳で選手決めだが、クラスの運動部の連中を中心に何に出るかどうするかを相談している様子だった。この運動会は良くある応援合戦などは無いので事前準備は運営だけだ。しかし、のちに控えている体育祭に向けてクラスの実力を測る事ができる為、この運動会は体育祭を勝ちに行くクラスにとっては大事な行事だった。その為、運動部などの身体能力が高い者の確認や逆に低い者を見つける為に事前練習などで臨むクラスも去年はあった。俺らがそれをするかと言われるとどうとも言えないがな。

 

 

「さて、この時間は前から連絡していた運動会の選手決めを行う。…とは言っても、決めるのは貴方たちですが。委員長にこの競技説明書とメンバー表を渡すので、この時間と放課後を使って決めてください。私は端で見てますので。」

 そう言って紅先生は教卓から離れた。委員長は紅先生から物を受け取って、教卓に小走りで向かった。

「それじゃあ、選手決めを行いたいと思います。始めに、知っている人もいると思うけど行う競技名を書いてくね。」

 委員長は背後の黒板に向かい、説明書を見ながら箇条書きに競技名を書き連ねていった。が、委員長では書くのが遅かったので席が近かった井戸田が代わりに書いて行った。書き終えたのを確認して、委員長はこちらを向いて一つ一つの競技説明を行っていった。

「以上が、今回の競技だよ。それじゃあ、少し時間を置くからこれを踏まえて自分が出てみたい競技を第1候補から第3候補まで決めてね。この後、それを見て出る競技を決めて行くから。あ、あと、出来るだけなくしたいけど、候補外から選ばれる可能性も有るかも知れないって事も分かっていてね。」

 そう言って、委員長は教卓から離れた。それを合図に皆は各々集まって相談し始めた。俺も神達と相談するために皆の所に向かった。

 

 

「それで、神は気になる競技とかあるのか?」

「いや、これと言って決まって無いぞ。まあ出たくない物は決まっているが。」

 神は黒板を見ながらそう言った。神の目線の先にあったのはあの女装リレーだった。さっき、委員長が黒板に書いていて、一番反応が有ったのが女装リレーだった。誰かの悪乗りに大勢が乗っかって決まった色物競技。反応が多かったのは男子達だった。彼ら(俺も)が被害を受けるからだろうが。

「ああ、女装リレーは出たくないな。あれは会議の時に謎の人気が有ったからな。何だったんだろうなあれは。」

「あれは、女性が出る場合はどうなるんだ?」

「そりゃあ、女装だし女装するだろ。あの競技、別に男性だけが参加のリレーじゃないし。」

「女性が有利過ぎないか?女性に女装って普段着だろ。」

「まあ、男女比はちゃんとしているから。犠牲者も各々から排出されるから。」

 女装リレーの男女比は6対3だ。うちからは男子4人と女子1人が出場する。最初は男子だけにする話だったが、男子から反発が有り今の形になった。男子だけだと絵面が汚いとか出た時はさすがに女子も考えていた。一部はだからと食い下がっていたが。

「犠牲者って、そうかもしれないが…。」

「運営陣も当日にならんとどうなるかが分かんないのが難点だな。」

「…まあ、綱引きにでも出るかな。」

 神は改めて黒板を見つめ、どうでも良さげにつぶやいた。

「おお、神は体格も良いし持ってこいだろ。…俺は玉入れにしようかね。」

「ん、何故だ?お前ならリレーでも良いだろう。」

「…リレーは良いや。うん。」

 曖昧な回答に神は眉を歪めたが、それ以上聞いてこなかった。そんなこんなで、時間は経ち委員長が教卓に立ち集計すると呼びかけた。後ろの席の奴から回収した用紙を前に回す。一番前の席の奴から用紙を受け取った委員長は此方を向いた。

「……よし、全員分有るね。それじゃあこれを見て決めて行くからね。何か有ったら私の所に来てね。…それじゃあ、後の時間は…先生。」

「もう良いの?なら、この時間は自習にします。あまり騒がしくしないようにね。」

 そう言って紅先生は教室を後にした。他の先生からの情報によると、最近紅先生は他の先生の仕事を多く手伝っているそうだ。手伝う理由はあの時から大分優しくなった先生はそれまでの事で思う事が有ったからと、本人は言っていた。

 

 

「…おや、リレーには出ないのかい?」

 自習中に何をしていようかと考えていた時だ、突然頭上から声が聞こえたと思ったら布枯が俺を見下ろしていた。

「…ああ、出ないが?それがどうかしたか?」

「いや、君は本気を出したら速いだろう?だからリレーに出るのだろうと思っていただけさ。」

「……。」

「……?何だい、その沈黙は。」

 こいつには関係無い事だろうに、なんか今日は自棄に聞いてくるな。なにがこいつの感性に触れたんだ?

「…いや、何でもない。…ともかく、俺はリレーには出んぞ。」

「…僕は何も言ってないのだがね。…まあ、僕に確かにそこまで関係無いね。でも、疑問に思ったら気になる物だろう?だから聞いたのさ、おわかりかい?」

「…ああ、分かった。」

 こっちこそ何も言って無かったと思うのだが…。

「細かい事は良いから。」

 はい。

 

 

「あ、そうだわ。おーい、色無君!」

「ん?安達か、何かようか。」

 それは自習も終わって、今日はもう家に帰るだけだと鞄の準備をしていた時だった。いつもは余り話さない安達が俺に話掛けて来て、何事だと俺は身構えながら安達に要件を聞いた。

「ええ、今日の掃除当番の事なんだけどね、色無君は今日黒板ね。」

「あー、今日だったか。…ん、了解だ。」

「じゃあ、よろしくね。今日は愛田さんと今谷君が用事で掃除に参加できないみたいだから。あなたと井戸田くんに働いて貰わないとね。」

 ああ、今日は厄日か。

 

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