彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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特に実の無い話


不可思議な

 俺には最近、良く見る夢がある。遠い昔に起こった事故の夢。俺が救えなかった、救いたかった夢。そして、俺が忘れてしまいたいと思っている夢。

 あれは事故だったと、――の父親は俺の頭を撫でる。あなたが悪いんじゃないと、――の母親は口を押えていた。お姉ちゃんは?と、――の妹は首を傾げた。――の事は、私にも責任があるわと、――の姉は下を向いていた。そうかと、父は言った。母は何も口にしなかった。それはあなたが背負っていく物よと、姉は俺を見て言う。最近、――さん遊びに来ないねと、妹は不思議そうに言う。皆が俺を見ていた。……いや、――だけは見て無かったな。もう、見てくれないんだなって、俺はあの時初めて実感したんだ。

 

 

 

「…ん、……夢…か…。」

 気怠さとかすかな頭痛が俺を嫌でも夢から遠ざける。そんなどうしようも無くて仕方ない事を俺は身体を起こしながら考えていた。またあの夢を見たんだ、次に考えたのはそれだった。珍しい事の無いそんな結論はいつもの様に浮かんで来る。そして最後は、やるせなさが俺の頭を過るのだ。あの夢を見るといつもこうだ。この一連の思考を俺はあの時から繰り返している。負の連鎖、そう言えるのかも知れない。ナーバスになるのだからそうなのかも知れない。でも、俺はこの思考を大切にしていたかった。――の事を忘れていない証拠だから。

 

 

 

「なあ加賀観、お前は知っているか?」

 午前9時、学生の本分の勉学をする為に俺は学園にいた。今は科学の先生が遅刻している為、自習の時間だ。んで、する事の無い奴はだべっている訳だ。

「何をだ?」

「この学園に伝わる七不思議だよ。」

「七不思議だ?…まあ、知ってるぞ。」

「そうか、知ってたのか…。いや、先程布枯がこんなのがあると教えてくれてな。」

 七不思議、それはこの学園で目撃されたとされる怪現象の事だ。場所によっては七以上あるそうだが、概ね七つで伝わっている。三鷹学園にもちゃんと七つあって、内容は以下の通りだ。

 三鷹学園 七不思議

 1.第4校舎の開かずの間

 2.第2校舎の屋上で告白すると失敗する

 3.第3校舎の問題児には美人の姉妹がいる妬まし羨ましい

 4.保健室に続く渡り廊下では女性は必ずつまずく

 5.第1校舎の4階に消えない汚れがある。

 6.体育館には秘密の梯子がある

 7.夕暮れ時に図書室に行くと妖精が見える。以上の七つだ。

 

 まあ、七不思議何て物は大体は見間違いや勘違い、デマだ。三鷹のだって、1・5・6・7は勘違いや見間違いだ。

 まず、1の開かずの扉だが、あれは開けようとした教師が扉の引く方向を間違えただけだ。多分、その時大分急いでいたんだろうな。それで何で七不思議になったかは、その教師がその後にあそこは開かずの間だと言いまわったからだ。それを聞きつけた新聞部がだいだい的に取り上げたから噂される様になったの物だ。

 で、5については簡単だ。あれは打ちっぱなしで処理し忘れたコンクリートだ。業者が忘れていたんだろうな、見事に残ってる。ああ、あと、そのコンクリートに乗った埃や塵が余計に汚れっぽく見せてたんだろうな。

 次は6だな、秘密の梯子っていかにもな感じで言ってるが、三鷹の生徒は皆あれの存在と用途を知っているから秘密何て外部の人位な物だ。ただ、秘密ってしている方が聞こえが良いからそうしているだけだな。

 最後の7だが、妖精ってのは嘘で、いるのは図書館の主だな。本出真央っていう図書委員長でいつも図書館にいて、一日で何十冊も本を読んでる奴だな。これの目撃者は夕方位に目撃したんだろうな。本出って、小柄で本を読んでる時に体を揺らす傾向があるみたいでさ、夕方で少し見えにくい時間に見るとそれっぽく見える事が有るみたいだな。目撃者はそれを見て妖精だって言っていたんだろうな。

 残りの奴もそんな感じで、実際に怪奇現象を示している物は一つも無いんだ。しかも、それを学園の奴なら全員が知ってる物だと思っていたから、神が七不思議について聞いて来る事に地味に驚いてるんだ。そうか、お前知らなかったのか。

「それで、何で布枯から七不思議何て聞いたんだ?」

「ああ、布枯が面白い話を仕入れたって言っていてな。どんな物なのか気になって聞いたんだ。」

「あいつが、七不思議で面白い?……なあ、神。俺もその七不思議が気になったは、聞かせてくれないか?」

「ああっ、教えよう!」

 神は遠めから見ても分かる程の笑顔を浮かべて、うきうきで話し始めた。

 

「まず、俺が教わったのは七不思議の内の3つだ。」

「3つ?何で全部じゃ無かったんだ?」

「ああ、俺も気になって聞いたんだ。そしたら、布枯も又聞きだったみたいで、それしか情報が手に入らなかったみたいだ。」

「そうなのか、……(あいつがそんな中途半端な情報を嬉々として流すだろうか?)。それじゃあ、その3つを教えてくれ。」

 俺の知っている奴の姿を想像しても、どうも噛み合わない様なもどかしさを感じながら俺は続きを即した。

「ああ、1つ目は、第2校舎4階にある古い水道が有るんだ。それでその水道を朝早くに捻ると、なんと、ラム酒が出て来るそうだ。」

「…は?…ラム酒っ!?えっ、ジュースじゃなくてっ!?」

「ああ、ラム酒だ。俺も聴いた時は驚いた物だ。」

 驚きの余り神に詰め寄った俺を誰が咎めるだろうか、いや、無理だろう。途中までは良くある水道から変わった物が流れて来る奴だなとか、高を括っていたが、酒は予想外だぞ。あ、いや、ある意味予想道理だったのか…。なんか釈然としねえ。…それにしても、学校の七不思議に酒っていいのか?私立とはいえ国の教育機関だろ?そんなの流していいのかよ?

「次は2つ目だな。」

「え?あ、ああ、そうだな。」

 そうだった、あれでまだ1つ目だった。なに、これからもっと凄いの来ちゃうの?期待しちゃうよ?

「これは第3校舎の裏にある小さい畑での話だな。加賀観も知っていると思うが、第3校舎の裏には課外授業用の小さい畑がある。中学の時はあそこで田植えをしていたな。その畑で夜になったら、聞こえるようなんだ。……こう、説明するのが難しい音が。」

「ちょっとまて、神、そこは大事な所だろ!!いい感じに雰囲気出してたのに、何でそんなふわってする説明するんだよ!!」

「いや、布枯からもこう教えられたんだ。だから、少し思う所もあったがそのまま言ったんだ。」

 思わず吼えてしまった。折角いい感じの雰囲気だったのに、何か先を想像するの面白そうだったのに、全部持って行かれた。幽霊とかがいたのとか、いくらでも行けそうなのに何でふわっと言ったんだ。教えてくれ。

「ま、まあ、続きが有るからな。」

「…続き?ここからなんかあんの?」

「ああ、続きだ。…それで聞こえた音がどこから聞こえたのかを気になった奴が入てな、調べたらしいんだ。まずは下から聞こえたから地面に耳を付けただと、でも、下からなっている事しか会っていなかったようだ。だから、奴は植えてある稲を抜いたそうだ。そうすると、あの音の正体が判明したみたいだ。そう、正体は稲に化けていたマンドラゴラだったんだ。」

「…え、それが落ちなの?…いや、七不思議なのに解決しちゃってるよね?…いや、何でマンドラゴラが存在しているんだ?…ああっ、言いたい事が渋滞して来た。」

「だ、大丈夫か?すまん、そんな混乱させるとは思わなかった。」

 神が謝罪しているが、混乱している加賀観には残念ながら届かなかった。その様子を見て、神はどうすればいいかわからなくなってしまった。頭を押さえてムンムン言っている加賀観とそれを見てあたふたしている神、2人を救ってくれる救世主が現れたのは大分後の話しだった。

 

 

 

「ねえ、礼ちゃん。礼ちゃんが朝礼の時に言ってた七不思議って何だったの?」

「おや、委員長はそういうのにも興味があるのかい?」

「うん、礼ちゃんがとても面白いって思った話なんでしょう?なら、私も興味があるよ。」

「ふふ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。なら、委員長にも教えてあげよう。」

「ワクワク。」

「…あー、目が凄くキラキラしてるよ。……コホンッ、では、この学園に伝える新しい七不思議「それで良いのか」をご清聴願おうか。」

 

 

 

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