別にしていましたがする意味が無かったと思い此方に移しました。
宇宙を夢見る僕
春の夜風が木々を揺らす。周りの明かりは、道に連なる街頭のみ。僕は家の近くの公園を歩いていた。周りに人の気配は無く、この公園には僕だけがいた。僕が溜息を吐こうが反応する人はいない。まだ肌寒い夜の公園。そこはとても静かな時間が流れていた。この静かな公園の中、僕はただ上を見ていた。上、上空に広がる星空を僕は見ていた。煌く星々に目を輝かせる。僕は毎日この星空を眺めている。人知れずに消えていく星々を眺め、自分の終末はと思いに浸るのだ。僕はこの星空を眺めるのが大好きなのだ。僕にはちょっとした夢が有る。誰にも言っていない夢。この星空を飛んでみたい。自分の体で飛んでみたい。そんな夢だ。10年前、篠ノ之束博士が世界に発表した『インフィニット・ストラトス』それはまさに僕の夢、星空飛行を叶えられる代物だった。僕はその事を理解する頃には『インフィニット・ストラトス』の欠陥が発見されていた。女性しか乗れない夢の兵器。それが僕の周りの評価だった。僕は理解した時、夢の群像は僕の上空で儚く弾けて僕の身体に降り注いだ。震える身体を僕はどうする事も出来なかった。やがて、それは僕の身体に染み渡った。そして、理解した。僕はあの星を下からしか見られないと言う事を。はぁ、と口から零れた溜息は行く当ても無く漂う。一時的に此処の空気は僕の吐いた二酸化炭素が覆った。この漂う僕の溜息がやがて雲になりあの星々を隠してしまう、そう考えると僕は虚しい気持ちになる。自分の行動が周りに何の影響を与えないという事は、楽であるがとても悲しい事だ。はぁ、とまた一つ溜息が夜風に煽られて行く。今日も輝くその星を、今日も煌く星々を僕は見上げる事しか出来ない。
「なあ、何でISって女性しか乗れないんだろうな?」
「さあな、製作者が女だからじゃないか?」
「そんな理由だったら、笑えるな。」
此処は、普通科2年Aクラスの教室。第3校舎の3階の端にある教室だ。このクラスの生徒は、弁当持ちが多く食堂では無く教室で食べる人が多い。僕もその一人だ、この教室から食堂までが遠いのが主な理由だ。
「橘、お前なんて顔で食べていんだよ。」
「…結城、お前はISに乗れたら何がしたい?」
「なんだよ急に。…そうだなぁ、戦闘してみたいな!かっこいいし!」
結城は楽しそうに、ISに装備できる武器で何がかっこいいかを話し始めた。刀や槍なんかもかっこいいと話したり、ミサイル打ったりもしてみたいと話したり。結城がISに向ける思いが思っていたよりも強くてびっくりした。確かに、結城はロボットや機械は大好きだ。けれど、こんなに楽しそうに話す事が無かった為にとても驚いた。
「そういう、橘はどうなんだ?」
「……宇宙を飛びたいかな。」
「…空ね。…確かに、鳥のように飛べたら気持ちいいよな。」
「…ああ。」
結城の考える「空(そら)」と僕の「宇宙(そら)」。同じそらなのに何処かずれを感じた。結城の「空」は青く広がるこの「空」だ。僕の「宇宙」は星々が煌く遥か先の「宇宙」だ。この違いに何処か寂しい物を感じた。
「まあ、こんな話をしても乗れないけどな。」
何処まで思っても届かない。いくら憧れても届かない。それがISだ。女性にしか乗れない兵器。性別という括りから抜けない限り、ISはただの機械だ。浪漫(夢)が目の前にあるのに届かない。これが現実だった。
「しかし、例外も有るんだな。」
「織斑一夏…か。」
織斑一夏、今年の春受験シーズンに突如として現れた男だ。彼はIS学園の入学試験会場でISに触れて体に纏ったという。その事実は、IS学園の職員と会場で試験を行っていた学生によって瞬く間に広がった。その日の夕方には、ニュースでやっていた。『世界で唯一ISを使える男』とニュースで報じられて、織斑一夏の情報拡散はさらに加速していった。このニュースは、男に希望を与え。女には、嫌悪感を与えた。その後、国は全国で新たな男性適合者を探した。この学校でも検査が行われた。しかし、発見される事は無かった。その結果に男性は更なるショックを受けた。織斑一夏のニュースは男性に希望を与え、更なる絶望を与える結果となった。それもあり、織斑一夏は世間ではあまりいい顔をされてない。
「羨ましいよな?」
「…ああ。」
織斑一夏は自由に空を飛ぶ権利を手に入れたんだ。全世界中唯一の権利だ、羨ましいに決まっている。
「あーあ、俺も動かせたら良かったのにな。」
結城の呟きに僕も同意した。学園で行われた検査では、一人ずつ触れていくのだが。反応しないばっかりで、全員を測り終えるのに時間はかからなかった。僕が触れた時は、ただ冷たいだけだった。他の皆もそうだったようだ。
「まあ、乗れない物の話は止めて飯を食おう。次は桂木の授業だ。」
「ああ、そうだな。」
ISという翼は無くとも宇宙(そら)を飛ぶ物はある。俺は、宇宙飛行士を目指す。あの宇宙(そら)を飛ぶために。