彼が彼女の弟さん    作:kanaumi

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久しぶりに投稿しました。予定や書く意欲が足りなくて遅くなりました。本編がなかなかできないのでこちらを投稿しました。

今回の話はオリジナル設定がほとんどです。


甘い玉子焼

 4月20日

 

 4月の中旬になると新年度や新学年などの新鮮な気持ちは薄れていく物だ。僕たちは二年生なので余計にそう感じるのかも知れない。去年の気持ちはあまり思い出せないけど、もう少し新入生気分でいた気がする。クラスの方も新しいクラスメイトとの交流も盛んになって行き、派閥やらグループはもう出来ていた。社交性の高い奴らは4月の初旬の頃に作り始めていたが。結城も社交性が高いので様々なグループに渡り歩いていた。それでも昼は僕と一緒に食べている。理由を聞くと、僕が一人で食べているのを見たくないからだとか。意味が分からないが、こっちは助かるからそう言う事にしている。でも、友人からボッチ認定で心配されている状況に悲しくもある。クラスの中でボッチなのは僕だけではない。席が隣の塩崎野々花もボッチである。まあ彼女は孤高な存在に慣れている様だけども。彼女は英語などの授業で行う二人組の活動の時にお世話になる。お互いに声をかける友達が近くにいないので結果的に余って組むことになる。彼女のお陰で恥ずかしい思いをする必要が無いのだ。とても助かっている。そんなこんなで、僕の学校生活は充実しているのだ。

 

 

 

「ふぅ、こんなものかな?」

 

 さっきまで書いていた日記を閉じ、ハァと一息ついた。今年から続けているこの日記ももうすぐ3冊目に突入しようとしていた。最初は新年だから新しい事を始めようとして、悩んで決めたのが日記を書くことだけど、なかなか続いていると嬉しく思う。偶に姉が見ようとするのが困りごとだけども。それで感想を言ってくるのが本当に困るのだが。人の日記に感想を言うって何だよと少し思うが、姉だから仕方ないと思う自分がいる事に溜息が出る。しかし、姉はこの日記をどうやって見つけているのだろうか?毎回隠し場所を変えているのに必ず見つけて報告して来るのだ。ほんとに姉は不思議な人である。偶に忍者みたいな動きをしてくるし、読唇術やら読心術やらを活用して僕の秘密を看破して来るし。ちょっと目を離したら日記帳が消えていたりするのだ、ほんとに姉には困ったものだ。…………日記帳は何処だ?

 

「へー実鈴ちゃんって、クラスでボッチなんだ~♪ほー、ふーん。おっ、塩崎ちゃんに会ったんだ。ああ、やっぱりボッチになってたかぁ。」

 

「……」 

 

 …………ハッ!…いけない、いけない。放心状態になっていた。いきなり現れた?姉に驚いてしまった。とっ、それに今見られているのは僕の日記じゃないか!

 

「姉さん僕の日記を返してくれ!」

 

「え~今面白い所なのに~。」

 

「僕の日記は小説じゃないんだから、面白がらないでくれ!」

 

「面白いから仕方ないよ。…うん、面白いよ。」

 

「同じことを二回言ったって許さないからな!」

 

 姉さんが持っている日記を無理やり奪って、きつく言うと姉さんは少ししょんぼりした。

 

「ちぇ、仕方ないなぁ。あっ、そうだ実鈴ちゃんは塩崎ちゃんと仲が良いんだよね?塩崎ちゃんはちょっと暗いけどいい子だから仲良くしてあげてね♪」

 

 かに見えたが、そんな事は無かった。しかし、姉さんは塩崎の事を知っている様だ。塩崎とは別に仲良くはしていない事は日記にも書いてあるのだが、姉さんからは仲良くしている風に見えたようだ。そりゃあ、お世話にはなってるけど。

 

「姉さんは塩崎の事を知ってたのか?」

 

「うん、彼女は代表候補生だものよく話していたから知っているわよ。」

 

 マジかよ、塩崎って代表候補生だったのかよ。そういやぁ、運動得意そうだったな。体育の時に男女混成サッカーで、ハットトリックかましてたの彼奴だったな。代表候補生なら納得できるな、候補生って厳しい審査で選ばれるエリートだって言うし。運動神経も凄く良いんだろう。

 

「でも、代表候補生ならIS学園に通うんじゃないの?何で三鷹にいるんだ?」

 

「……実鈴ちゃん、この事は誰にも言わないでね。言ったら彼女がとても傷つく事だから。実鈴ちゃんは口が堅いし、彼女と仲いいみたいだからね。」

 

「…わかった。」

 

 

「塩崎ちゃんが代表候補生になったのは中学1年の春だった。その時期は、織斑千冬がいたから国家代表の席は埋まっていのだけど、日本政府がどんどん候補生を選抜していった時期だったのよね。ほんとに何を考えていたのかねぇ。それで、彼女も代表候補生に選ばれたのよ。けれど、同期の子が大量にいた為かISの訓練はあまり出来ていなかったのよね。一日の訓練は座学と身体強化がメインだった。ISも一週間に一度触られるかどうかだったみたい。まあ、あの時期は彼女以外にも沢山いたけどね。彼女の場合は、適性が同期の中じゃ一番低かったのよ。…代表候補生の選抜基準ぎりぎりだったわね。訓練機の貸し出しが高い適性の子から順に貸していくシステムだったから彼女は特に出来なかった。それで、どんどん他の子との差が開いちゃったの。彼女も必死だったし、私も教えたりしたのだけど、出来る事が少なすぎたの。」

 

 姉さんは、少し顔を歪ませながら話しを続けた。

 

「そして、代表候補生は皆IS学園に行くのだけれどその時も人数が多すぎた事により問題が発生した。代表候補生は入学試験をある程度パスできるのだけど、人数が人数だったから全員を入学させる事が出来なかった。そこで政府は候補生の中から行く子を選抜したの。…彼女はその選抜で落ちたのよ。まあ、仕方ない部分もあったのよね。選抜の内容がISによる実技だったし。…落ちた彼女は一般入学も考えたようだけど、一般だと政府からの資金援助が受けられない事と彼女の家族の収入では入学金と授業料を払う事が出来なかったそうなの。彼女が三鷹を選んだのは特待生制度が充実しているからだと思うわ。…ハァ。」

 

 姉さんは一度深呼吸をした。

 

 …塩崎の事をいろいろ聞いてしまうとどうも放って置けなくなってしまう。代表候補生は宙を飛べる羨ましい人たちとだけしか思っていなかったけれど、考えを改めなくてはいけないな。

 

「……彼女が一番ショックを受けたのはIS学園を逃した事もだけど、代表候補生の資格剥奪、それが彼女を一番気づ付けたの。増やし過ぎた候補生をIS学園入学を期に整理したのよ。対象は入学出来なかった子よ。この条件には、彼女の他にも沢山の子がこの対象に当てはまってしまった。こんな身勝手な事をしでかした政府にはすぐさま各所から抗議の声が届いた。しかし、政府は聞き入れなかった。対象者は12名。政府はその12名の候補生の資格をはく奪したわ。」

 

「……」

 

 

 その後、少し話して姉さんは部屋を出ていった。伝えたいことを全部伝えきったからなのか少し雰囲気は軽かった。姉さんが話した塩崎の事は誰にも話す気は無いけども、塩崎との距離感が狂いそうな情報ではあった。関係を変える気は無いが、細かい部分でボロが出そうな感じだった。明日、塩崎との活動は有っただろうか?誤魔化すように何か作業をしていた。あまり眠れなかったかもしてない。相変わらず姉さんは爆弾ばかり運んでくる人だと心の中で愚痴った。

 

 

 

 翌日、弟の八重に叩き起こされた。あの後、ベットに横になった後の記憶が無かった。寝落ちたのだろうと思うが、不思議と気分はスッキリとしていた。姉さんが作った朝食を食べていつもの通り学校に登校した。そこに変わった事は何も無かった。

 

 

「どうした、寝不足か?目の下に分かりやすい隈が見えるぞ。」

 

「…そんなにか?最近はそれでも早く寝ているんだけどな。」

 

「まあ、お前に隈が有ろうが無かろうがどうでも良いのだが、気にする奴もいるしなぁ。」

 

「ん、そんな奴がいるのか?物好きだな。」

 

「お前位だろう、あれで気づかないのは。」

 

 結城の言っている事は偶に良くわからなくなる。難解な事を口走るのが此奴の欠点だと思う。八重に話したら結城の連絡先を聞かれたが。あれは何だったのだろうか、偶に話しているのを見るし。話しながら歩いていると教室が見えて来た。結城は疲れたような顔をしていたが朝から何が有ったのだろうか?

 

「……あっ、橘君。」

 

「お、おお。おはよう塩崎。」

 

「うん、おはよう。…夜ふかしでもしたの?」

 

急に声を掛けて来た塩崎につい、どもった返事をしたが塩崎は気にした様子は無かった。

 

「ああ、そんなところだ。」

 

「そう、夜ふかしはあんまりしない方が良いよ。体にも悪いし。」

 

「ああ、気を付けるよ。」 

 

 塩崎はとてもいい子だと思う。俺なんかの心配もしてくれるとても優しくていい子だ。代表候補生って最初聞いた時は少し塩崎に羨望の眼を向けようとしていたが、そんな優しさを見せられるとそんなのどうでも良くなるな。塩崎が俺以上に厳しい所にいたのは昨日の話からでも分かる。そんな子に俺がISが乗れるからって羨望の眼差しで見て良いはずがないよな。俺は詫びの気持ちを彼女に持とうと決めた。

 

 

「橘君、ごめんだけど一緒になってくれないかな?」

「ああ、良いぞ。俺も困っていた所だ。」

 今日の英語はグループ活動だった。2人から3人で組んで行うのだが、俺の周りは早々に組を決めてしまった。まるで何かを狙っているかのようだった。そんな感じで、俺と塩崎は今日も同じ組で活動する。幸い塩崎も俺も英語は得意だったので2人だろうが問題は無かった。塩崎も嫌な顔をする事は無かった。2人でいつもの通り活動して、英語の授業は終わった。

 

「いつもありがとうな、塩崎。」

「えっ?」

「英語とか体育とかの時に組んでもらって。」

「…良いよ、私も助かっているんだし。」

 

 お礼を言うと、塩崎は少し嬉しそうな顔をした。まあ、お礼を言われたら嬉しいだろう。僕も言われたら嬉しいからな。

 

「はぁ、お前は相も変わらずだな。」

「何だ、急にどうした?」

「お前の考えに呆れてたの。何でこいつはこう、わかんないかなぁ?」

「お前、心が読めるのか?」

「お前が分かりやすいだけだ。……ハァ、塩崎がいくら頑張ってもこいつが気ず付かなきゃ意味がないのになぁ。」

 

 結城が何かに嘆いているがいつもの事なので気にしない。しかし、結城は疲れているのだろうか、溜息が最近増えてきたが…。

 

「まあ、いいや。橘、偶には食堂で飯食おうぜ。塩崎さんも一緒にどう?」

「えっ、あ、その。」

「おい、塩崎を困らすなよ。…ごめんな?悪い奴じゃあ無いんだ。ただ、配慮が足りないだけなんだ。」

 

 こいつとの付き合いも大分長くなってきたが、女性を誘うのに配慮が足りていないと思う時が何度かあった。その時は、女性の方が困ったような顔をしながら許してくれていた。今度の事も、少し足りていないと思いフォローしたが、そう何度も出来る物じゃないから気を付けて欲しい。

 

「ちょっ、それは聞き捨てられないぞ!俺はだなぁ…。」

「結城君!あ、ありがとう、ご一緒させてもらうね。」

 

 塩崎は、結城の言葉を遮る様に割り込んできた。焦ったのかどもっていたが何に焦ったのだろうか?

 

「お、おお。とりあえず食堂に行こうか。橘は弁当持って来たか?」

「ああ、姉が朝食の片手間に作ってくれた。」

「そうか、朱莉さんの弁当はおいしいから羨ましいぜ。塩崎さんはどうだ?」

「大丈夫、私も持って来てる。」

「なら、行こうか。」

 

 三人並んで、一階の食堂に向かった。結城が食堂を提案したのは自分が弁当を忘れたからなのがのちに判明したが、偶にはこういうのも良いなと感じた。塩崎の弁当は自分で作った物だったそうだ。結城が訪ねたら恥ずかしそうにそう言っていた。塩崎が僕の弁当を物欲しそうに見ていたので、物々交換で塩崎の弁当から一品と弁当の品を交換した。塩崎は最初は驚いていたが、落ち着いたのか真剣な顔をしながら頷いた。姉さんが作った卵焼きを勢いよく頬張った。もぐもぐとおいしそうに食べる姿はとても可愛かった。その後塩崎の卵焼きを食べたが、砂糖を入れたのか甘い味がした。僕的には塩味が強いのが良いが、これもこれでおいしかった。塩崎が味を聞いて来たので素直に言うと、そっかと、少し落ち込んだ様に見えた。しかし、おいしいと言ったのが良かったのか嬉しそうにしていた。結城は、やれやれと言った感じで顔を横に振っていた。

 

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