なんだろう。オリジナリティの欠如ががが。
昨日の夜、強引に泊まろうとする疫病神のアリアから逃げるため、
レキは無口・無感情・無表情といった特徴から一部では『ロボット・レキ』と呼ばれており、オレとキンジがまだSランク武偵だった頃によくパーティーを組んだ戦友でもある。
その実力はSランク武偵に相応しく、
そんなレキの元へ訪れたのは、彼女がオレにとって無害であるという点。『ロボット・レキ』と呼ばれていることからも分かるように、レキはほとんどの事柄に無関心だ。依頼されれば応えるが、それ以外のことは自ら進んですることもない。要は依頼でもされない限りは面倒な事に巻き込まれなくて済む。
午前中の授業が終わり、昼休み。
人で混雑する学食を避け、今日は屋上で昼飯をとることに。
白雪のような通い妻系幼馴染もいなければ、日本のお坊ちゃんですらないオレの昼飯はコンビニの弁当。
それも少し離れたところにあるセイコマのド定番なカツ丼弁当(大盛り)を持参している。
適当なところに腰を下ろし、袋から取り出した弁当を開け、いざ食べようとしたところで――貯水タンクの裏に誰かの人影が見えた。
(……なにしてるんだ?)
そこで何をしているのかが気になったオレは、弁当の蓋を閉じ、給水タンクの裏へと足を運ぶ。
実は不審人物かもしれないし、諜報科で学んだ不完全な
すると、そこには――
「――レキか」
そこにいたのは、昨日の夜にオレを泊めてくれたレキ。
彼女は物騒にもドラグノフ狙撃銃を構えながら、片手でカロリーメイトをもそもそとリスのように食べている。
レキが狙撃銃を構えているからといって、必ずしも
「何してるんだ?」
「…………鷹の目です」
「……ん。鷹の目ってことは依頼だろ? それをオレに言っても問題ないのか?」
「…………」
……こくん。
レキはほんの僅かに小さく頷いた。
どうやら、部外者のオレに言っても問題はないらしい。
鷹の目とは、
報酬額は高くないので、本来は狙撃科の一年や金欠の生徒が小さい金稼ぎに受けるような仕事だ。オレも小遣い欲しさに依頼を斡旋してもらったことがある。
(…………さて、レキは誰を監視してるのかな、っと)
カツ丼を片手で口に運びながら、常に持ち歩いている望遠鏡を覗く。
レキが覗いてる方角に合わせ、レキの
「……キンジ」
キンジがちょうど学校から出てくるところ。そこへアリアが待ち伏せでもしてたかのようなタイミングで現れる。
これは完全に依頼主はアリアだな。逃げようとするキンジを監視するようレキに依頼したってとこか。
その依頼をオレに黙秘しなかったのは、依頼が既に完遂されていたからだろう。
……それにしても、相手が悪すぎるな。
キンジは普段から尾行や監視といったもの対する危機感が足りない武偵だが、レキが相手では対策をしたところで裸も同然だ。
もしも、オレがレキに監視されてたらと思うとぞっとしない。絶対に撒ける自信ないからな。
「アリアはオレについて何か言ってなかったか?」
「……言っていました。キンジさんとカイトさんを必ずパーティーに入れると」
「やっぱり、オレも対象なのね……いや、わかってたけど」
「今回はキンジさんの監視でしたが、同時にカイトさんの監視も頼まれていました」
…………オレも監視対象だったのかよ!
全く気付かなかったぞ!
「…………」
「まあ、教えてくれてサンキューな。できればオレのことは監視しないでくれると助かるけど」
「…………」
特に返事はない。
たぶん、依頼されれば監視するということだろう。
非常に面倒だが、仕方ないね。
「レキに監視される前にオレは戻るよ。じゃ、またな」
そう言って、オレはレキの返事を待たずに屋上を後にする。
◆ ◆ ◆
時刻は夕方。
あの後、オレは適当に簡単な浮気調査の
キンジにメールを送ってみたところ、まだ青海の猫探しをしているようなので一安心。
何が安心だって? そんなのアリアの動向に決まってる。
「来たぞ、理子」
メールを送ったみたところ、理子は待ち合わせ場所に温室を指定してきた。
大きいビニールハウスで覆われた温室は、一目が少なく、人気も少ない。密会するには絶好のポイントと言える。
「カーくぅーん!」
相変わらず理子の改造制服はとても派手で、ふわりと舞うフワフワのスカートは男子にとっては目の毒だ。
「今日も派手だな、理子は。それもロリータ・ファッションの一種なのか?」
「そうだよー! 今日のは武偵高女子制服・白ロリ風アレンジだよぉ!」
「お前は見ていて飽きないよな、ほんと」
そんな適当な感想を言いながら、オレは鞄の中から紙袋で包装されたゲームやアニメグッズを取り出した。
「これが報酬な。アリアへの口止め料も含めてるから多めに持ってきたけど」
「おー! カーくん太っ腹ぁ! でもギャルゲーが足りなくなーい!?」
「あ、すまん。忘れてた」
割りと素で忘れてた。
「ま、まあ……今度でもいいよな?」
「んーーーー! 許すよ!」
「それは助かる」
理子が言っているのは、R-15指定のギャルゲーのこと。
ゲーム自体は通学途中のビデオ屋兼ゲームショップで普通に購入できるのだが、理子は見た目的な問題で店員に売ってもらえなかったとか。
じゃあ武偵高の学生証を見せればいいんじゃないか? と思わなくもないが。問題はそこではなく、売ってくれなかったことが問題なのかもしれない。
「というわけで、早速教えてくれ。アリアについて調査した内容を」
「あいあいさー!」
理子は見た目こそバカっぽいが、武偵としての実力はなかなか高い。
諜報科のオレでさえ驚くほどの情報収集能力に加えて、ノゾキ・盗聴・尾行・ハッキングなどの武装探偵らしい才能を持っている。つまりは情報に強い武偵である。
それに加えて戦闘能力もそこそこ高いという。
オレが手近な柵に腰を下ろすと、理子にとっては少し高めの柵にぴょんっと小さくジャンプして座ってきた。
「ねーねー、アリアのことどう思う? カノジョにしてみたいとか思わないのー?」
「お前なあ……そういう得にもならないような恋愛話が好きだよな」
「で、で? どうなの?」
「どうって言われても……まだ会ってから二日しか経ってないぞ。それにそういう話はキンジに振った方が面白いだろ」
「あ! それもそうだねぇ! アリアとキンジって朝から腕を組みながら登校してたって噂だからねぇ」
それ、多分だけど強引にしがみつかれてただけだと思うけどな。
「で、本題に入ってもいいか?」
「はーい。えと、無難に最初は武偵ランクからね。ランクはSだったよ。二年でSって言えば片手で数えられるくらいなんだよー?」
「へえ……」
オレから聞いたにも関わらず、言われた情報は別段驚くほどの内容ではなかった。
チャリジャック時の身のこなし方といい、無敵モード時のキンジと相手をしていた時のアリアからは強者としてのオーラがあったからだ。
「んーと、後は理子よりもちびっこなのに、徒手格闘も巧くてね。その流派は、ボクシングから関節技までアリアリの……バーリ? バーツ……バーリツゥー?」
「バリツのことか。正式な名前はバーリ・トゥードだったか」
「そうそう! それがアリアは使えるんだって」
バーリ・トゥードはポルトガル語で「何でもあり」を意味する言葉で、多種多様な
キンジを投げた時のアレはバリツの技だったのか。通りで強烈な投げだと思った。
「んで、拳銃とナイフの腕は天才の領域。どっちも二刀流なの。両利きなんだよ!」
「ちなみにオレも両利きだ」
「おー、じゃあカーくんもアリアと同じ二つ名目指してみる?」
「二つ名……?」
有能な武偵には自然と二つ名が付く。
アリアは16歳という若さにして既に二つ名を持ってるのか。
それはすごいな……オレが二つ名を持つ頃には学校を卒業してるだろうな。
「
ちなみに武偵用語では、双剣あるいは双銃のどちらかの場合はダブラと呼ぶ。
要は武器を4つも持った武偵ってことだな。
「笑っちゃうよね、双剣双銃なんてさ」
「そうか? 特に笑うべき要素はないと思うケド。じゃあ次は武偵としての活動記録的なのはどうだ?」
「あ、そっちは超すごいのがあるよー。今は休職中みたいだけど、アリアは14歳からロンドン武偵局の武偵としてヨーロッパ中で活躍してるみたいでね……」
と、何やらシリアス顔になった理子が……。
「その間、一度も犯罪者を逃したことがないんだって」
「……それは、何というか。すごいな」
そんな言葉しか出てこない程度にはすごい。
というか、すごすぎて言葉出てこないレベルだ。
「逮捕率100%。それも一回の強襲のみで逮捕してるんだよ。まさに
冗談めかして言う理子だが、すごいと言う他ない。
しかも、一発逮捕ってのが信じられない。
と、思ったがレキも似たような感じなので驚くほどでもないのかも?
……いや、そんなことはないか。
「他に聞きたいことはー?」
「……あー、アリアはどういう家系なんだ?」
あまりの驚きに一瞬だけ思考が飛んでた。
「アリアはねー、お父さんがイギリス人とのハーフなんだよ」
「クォータなのか、アリアは」
通りで日本人と英名が混じった名前だと思った。
「そうなの。で、イギリスの方の家がミドルネーム『H』家なんだよね。すっごく高名な一族なんだよ? おばあちゃんは
「デイム……? イギリスの称号か何かか?」
「うん。イギリス王家が授ける称号だよ。男性はSir、女性はDameなの」
「ってことはガチな貴族か」
貴族のクセに日本で拳銃をバカスカ撃ちまくってるのは国際的に大丈夫なんですかね。
あ、はい。武偵だから大丈夫ってね。
「そうだよ。リアル貴族。でも、アリアは『H』家の人たちとうまくいってないらしいんだよね。だから家の名前は言いたがらないんだよ。理子は知っちゃってるけどー。あの一族はねぇ……」
「あの一族って?」
「理子は親の七光りとか大っ嫌いなんだよぉ。まあ、イギリスのサイトでも調べたら出てくると思うよ?」
「オレもそれには同意する。親の七光りっては嫌いな方だな……わかった、気が向いたら調べてみるよ」
「およ? 意外とあっさり引くね」
「言う気がないヤツに聞いてもな……って感じだ。それにそこまで重要じゃなさそうだし」
ミドルネームの正式な名前がわかったとして、それが何に役立つんだ?
アリアに嫌がらせする以外の方法が思いつかないぞ。
「まー、頑張れー!」
と、オレの肩を叩こうとした理子の手が空振り――
ばしっ、とオレの手首を叩く。
「うわっ」
がちゃ。
指が金具に触れたのか、腕時計が外れて宙を舞う。
そのまま腕時計は落下していき、地面の上を転がる。
拾い上げてみると、強い衝撃を受けたのか色々と破損してしまっていた。
「ご、ごめんっ……!」
「い、いや……別に……気にしてないぞ?」
ああああ! 4万円ほどで買った腕時計がぁぁぁぁ!
一ヶ月と経たずに壊れ、壊れてしまった!!
昨日の電動ロードバイクといい、腕時計といい壊れすぎだろ!
厄月なのか!?
「修理するから!」
「修理? できるのか……ッ!」
「ひゃぅ!」
「それなら是非とも頼みたい! 昨日は電動ロードバイクを武偵殺しにぶっ壊され、今日は腕時計ときたもんだ……流石に辛い」
「ち、ちち、近いよかーくん!?」
「……悪い。少し、興奮しすぎた」
まさか理子に修理スキルがあるとはな……流石は理子だ。
今度お礼にマックのハンバーガーでも奢ってやろう。
って悪気はなかったとはいえ、壊したのは理子なんだけどな……。
「じゃあ、頼んだぞ。ついでに武偵殺しの件も調べておいてくれ」
「うん。わかったよー」
「んじゃ、オレはここら辺で……」
腕時計を理子に預け、オレは少しばかり暖かい温室を出た。
電動ロードバイクの次は4万円の腕時計を壊されてしまったカイトくん。
私も一ヶ月に何個も物が壊れたことがあるので気持ちは分かる。でも仕方ないんだ……これが主人公補正ってやつだ……。
今回はレキと理子が登場しましたね。レキとのやり取りは完全にオリジナルですが、理子とのシーンはキンジと理子がカイトと理子に置き換わったのと変わりません。
ですが、後日……キンジはカイトと同じようなことで理子にメールを送ります。カイトに教えたから詳しくはそっちに聞いてねー☆ みたいなことになるわけですが。
(毎日1話ペースで投稿しようと頑張ったので文章が崩れてるかもです)