緋弾のアリア - 交わりし銀の銃弾   作:白崎くろね

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「1回だけだからお願い……!」
 って話が1回だけで終わったことがあるだろうか?

 逆もまた然り、1回だけの協力が1回で終わる保証があるだろうか?




第6弾 1回限りの協力

 理子からアリアの情報をもらった――翌日

 

 第三男子寮のマンションに帰ってきたら、なぜかキンジではなくアリアが仁王立ちで待ち構えていた。

 その手にはカードキーが握られている.まさかとは思いますが……カードキーをアリアに渡してしまったのですかキンジさん!?

 ……終わった。オレの安寧の地はアリアという侵略者に侵されてしまった。

 

「キンジとは一緒じゃないの?」

「今日は別々に行動してたし、そもそもオレは常にキンジと行動してるわけじゃないけどな」

「ふーん」

 

 キンジと共にしているのは、この学生寮の4人部屋くらいのものだ。

 アリアが勝手に侵入してきたことを考えれば、4人部屋でよかったと思う。これが2人部屋とかだったら狭くてかなわんからな。

  

「詳しくはキンジが帰ってきてから話すわ。あとコーヒーを淹れなさい!」

 

 と、アリア様がおっしゃるので……適当にインスタントコーヒーを入れて上げると「うーん、やっぱりヘンな味ねぇ……」と文句を言いながらも飲んでいる。

 アリアと話すことも特にないので、オレはテレビを付ける。

 こういう時はBGMが必要だ。

 

『太平洋上で発生した台風一号は、強い勢力を保ったまま沖縄上空を北上しています』

『東京都足立区にて銀行強盗が発生し、近隣で活動していた東京武偵高の生徒の協力の下、負傷もなく確保されました』

『――本日紹介するのは、M1911(ガバメント)用の30連ダブルカラムマガジンです』

 

 などとテレビから流れる音声を右から左へ、左から右へと流しているうちにキンジが帰ってきた。

 帰ってきたキンジはアリアを見るなり顔を歪め、軽く絶望したかのような表情をつくる。

 

「遅い!」

 

 鏡で頭の枝毛を解していたらしいアリアが、さも当たり前のように言う。

 

「お前なあ……どうやって入ったんだよ」

 

 カードキーがテーブルに置かれている時点で侵入手段は明白だが……それでも確認のために聞いたようだ。

 てかカードキーを渡したわけではないのね。キンジが渡したわけではないことにオレは一安心。

 

「あたしは武偵よ」

 

 ……あ、うん。わかってたよ。

 鍵開けスキルは武偵の必須スキルだからね。電子錠だろうと武偵には関係ないのだ。

 そこに鍵があれば。

 

「それともあんたはレディーを玄関先で待ち惚けさせるつもりなの? 許せないわ」

「不法侵入や逆ギレに即発砲の女を世間はレディーとは呼ばないぞ、でぼちん」

「でぼちん?」

「額のでかい女のことだ」

「――あたしのおでこの魅力が分かんないなんて! あんたいよいよ本格的に人類失格ね」

 

 人類失格とは大きく出たな……

 アリア的にはおでこはチャームポイントだったのね。だからいつも髪留めでおでこを出してるわけか。

 でも、たぶんだが……キンジにはアリアがおでこをチャームポイントにしてるってことはわかってると思うぞ。

 キンジは女嫌いのクセに女の容姿を褒めたりするからな。女たらしめ。

 

「この額はあたしのチャームポイントなの。イタリアでは女の子向けのヘアカタログ雑誌に載ったことだってあるんだから」

 

 そう言ったアリアは、楽しそうに鏡でおでこを見た。

 ふんふん♪

 と、鼻歌を弾ませながら。

 そんなアリアにイラっとしたのか、キンジはアリアの真横に鞄を乱暴に投げた。

 が、もう既に慣れていたのか、特に気にせずに鏡を眺め続けている。

 

「流石は貴族様だ。身だしなみにも気を遣ってらっしゃる」

 

 キンジは嫌味たっぷりにそう言った。

 またキレたりしないか心配になったオレは、アリアの方を見るが――

 

「……あたしのことを調べたわね」

 

 どういう理由か笑顔を浮かべている。

 実は怒っているということもなく、単純に嬉しそうな笑顔だ。

 ……普通、自分のことを他人に調べられて喜ぶか?

 

「ああ。カイトにメールで聞いた。今まで一人も犯罪者を逃したことがないんだってな」

「へえ……そういうことも調べたんだ。やるわね、カイト。それにキンジもようやく武偵らしくなってきたじゃない」

 

 ……ああ、なるほど。

 アリアは自分が調べられたことに対して喜んだのではなく、

 キンジが自ら進んで武偵らしい行動をしたことに喜んでいるのだ。

 ちなみに調べたのは理子で、オレはただ聞いただけ。それをキンジにも回しただけ。

 

「ふうん。でも、こないだ――2人も逃したわ。生まれて初めての経験だわ」

「へえ。それはすごいヤツだな。で、誰なんだ?」

 

 昨日の今日で2人も逃したって……

 アリアもなかなかハードな生活を送ってんな。

 オレたちに嫌がらせしてないで犯人を追えばいいのに。

 

「あんたたちよ」

「――ぶっ!」

「オレも!?」

 

 水でうがいを始めていたキンジが水を勢いよく噴き出した。

 

「お、俺は犯罪者じゃねーぞ! なんでカウントされてんだよ!」

「オレもだぞ! 犯罪行為なんて一切してないが……!?」

「強猥したじゃない! あたしに! 無理矢理ケダモノのように服を脱がせておいて、言い訳するって言うの! それにカイトはあたしの名誉毀損よ! 小学生ってバカにした!」

 

 いやいやいや……!

 待ってくれよ。名誉毀損? 小学生ってバカにした?

 それだけでオレも犯罪者になっちゃうの? ありえないだろ!

 

「バカ言うんじゃねえ! 小学生って言っただけで犯罪者になっちまったら世の中は犯罪者しかいねぇだろ! それにあの件は後で謝ったろ!」

「謝って済むなら警察も武偵もいらないわよ!」

「そういう発言が小学生みたいだって言ってんだよ!」

「あー! また小学生って言ったわね! 風穴開けるわよ!」

 

 オレにしては珍しく声を荒げ、アリアに反論していく。

 が、この小学生理論を展開しまくりのアリアに何一つとして効かない。

 その場で地団駄を踏むアリアが、キンジの方にびしっと指を突き付けた。 

 

「――と・に・か・く! あんたらはあたしのドレイよ! キンジは強襲科に戻って、あたしから逃げた時の実力をもう一度見せなさい!」

「あれは……あの時、偶然、巧く逃げられただけだ。俺はEランク相応の能力しかない男なんだよ。はい残念でした。さあ、お帰りの時間だ」

 

 その言い訳は流石に苦しいだろ。

 

「ウソよ! あんたの入学試験時の成績、カイトと共にSランクだった!」

 

 ――そういう反論が待ってるからだ。

 オレとキンジは入学試験でSランクを取ってしまっている。

 Sランクは世界でも数百人しか存在しない上位存在であるらしく、偶然の産物でSランクになれるようなものではない。

 偶然で済まされるのはせめてがAランクといったところだ。

 

「あれは偶然なんかじゃありえないのよ! あたしの直感に外れはない!」

「と、とにかく……今はムリだ! 諦めてくれよ!」

「……今は? ってことは実力を発揮するのに条件のようなものがあるってことね? 言ってみなさい、協力してあげるから」

 

 言質を取りましたー。って感じでしたり顔のアリアが言う。

 ……条件。条件か。

 キンジが無敵モードになる条件は知らないな。

 

「オレもキンジが強くなる条件を知らないんだが、せっかくだし教えてくれよ」

「――なっ!」

 

 オレとアリアがそう言うと、キンジは――かああああっ、と顔を赤くさせる。

 なんで顔を赤くさせるんだよ? もしかして条件が恥ずかしいのか?

 

「いいから教えなさい! その方法を! ドレイの報酬として協力してあげるわ!」

「オレも気になるし、オレも何かあれば手伝ってやるよ」

 

 ……うーん、黙られたら余計に気になる。

 ここはアリアの勢いに乗じて聞いてみよう。

 

「「さあ、何でもしてあげ()るから。教えなさいよ(ろよ)、キンジ」」

 

 この瞬間だけ、オレたちは息を合わせる。

 キンジの謎に迫るために。

 

 ――さあ、オレにも教えてみろよ。

 

「うっ……」

 

 ……ずずっ、と後ろへ後退していくキンジ。

 それにオレたちはじわり、じわりとにじり寄っていく。

 何を恥ずかしがっている? 言ってしまえば楽になるかもしれないぞ?

 そして、その条件次第ではアリアの頼みを断ることもできるかもしれない。

 

「――ッ!」

 

 顔を真っ赤にしたキンジが、アリアを押し退ける。

 アリアは、きゃっ、と女の子らしい短い悲鳴を上げ、ソファーに尻餅をつく。

 その際にプリーツスカートがひらりと舞い上がり、視界に入る前にオレとキンジは視線を逸らす。

 

 ……あー、びっくりした。

 キンジがいきなりアリアを押し倒すのかと思ったよ。

 

「――1回だけだ」

「……1回だけ?」

 

 どうやら、キンジは覚悟を決めたらしい。

 

「戻ってやるよ、強襲科《アサルト》に。ただし、組んでやるのは1回限りだ。戻ってから最初に起きた事件を、1件だけ、お前と一緒に解決してやる。それが条件だ」

「…………」

「だから転科じゃない。自由履修として、強襲科の授業を取る。それでもいいだろ」

 

 キンジが言っているのは、武偵高の自分が在籍していない専門科目の授業を自発的に受けることができるというものだ。

 これを自由履修と呼び単位には反映されないが、武偵としてのスキルを身に着けるために行われる。

 オレも諜報科(レザド)でありながらも探偵科(インケスタ)の授業を自由履修し、抜き足(スニーキング)のスキルを学んだりした。

 

「……いいわ。約束もしたことだし、この部屋から出てってあげる」

 

 それは助かる。これ以上居座れても面倒だし……

 いつ教務科(マスターズ)の連中に目を付けられるかわからないしな。

 

「……カイト。頼みがあるんだが、いいか」

「……嫌な予感がするが、一応は聞いておこう。で、何だ?」

「お前も俺と一緒に付き合ってくれ。その方がアリアも納得するだろ」

 

 で、ですよねー。

 オレの予想はかなりの確率で当たると予想出来てましたよ。

 ええ……まあ、キンジも覚悟を決めたみたいだし。オレも付き合ってやるかな……?

 本当の実力はSランクじゃないってアリアが思い知れば、もう付きまとわれないだろうしな。

 

「……わかったよ、キンジ。オレも同じ条件で手伝ってやるよ」

「OKよ。その変わりどんな大きい事件でも文句は言わないこと」

「いいけどさ、あまり高難易度な事件はオレたちがついていけないから頼むな」

 

 本当に頼むぞ……?

 最初の事件は小さい事件って相場が決まってるんだからな?

 強襲科(アサルト)の事件だから心配だ。銀行強盗とか殺人犯の逮捕とかにならないことを祈る。

 

「だからって手抜きなんてするんじゃないわよ?」

「ああ、わかってるよ」

 

 オレが本気を出すには――

 

 

 




 カイトが本気を出すには――

 特定の状況下でのみ『強くなる』ことのできるカイトですが、既に作中で1回だけ強くなった状態になっています。不完全ですけど。
 ヒステリアモードで例えるなら(メザ)ヒス状態。

 早くその状態になったカイトとヒステリアモードになったキンジを共闘させたいのですが、なかなか難しい……。

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