緋弾のアリア - 交わりし銀の銃弾   作:白崎くろね

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強襲科と書いてアサルトと読みます。

その心は……いずれも脳筋ですね。


第7弾 強襲科

 ――通称、『明日無き学科(アサルト)』へようこそ。

 

 卒業時生存率97.1%の世界。

 100人に3人弱が死亡する。

 無傷で卒業することは難しく、たとえ生きていたとしても身体に重大な欠陥を残しているということがままある。

 

 それが強襲科(アサルト)であり、武偵としての道でもある。

 

 武偵を本気で目指すならば、まずは強襲科(アサルト)の壁を越えなければならない。

 

 常に銃声や剣戟の音が響く専用施設の中を、オレたちは歩いていた。

 去年までは頻繁に通っていた場所なだけあって、歩く先々で懐かしい記憶が刺激される。

 爆撃か、銃撃か、事故か、理由は様々だろうが……物の配置や設備が色々と変わっているのは新鮮だ。

 

 キンジが念のために射撃訓練をしようと言うので、そっちの向かっていると……。

 何やら懐かしいヤツらと遭遇してしまった。

 

「おーうカイトォ! お前らは絶対に帰ってくると信じてたぞ! さあここで1秒でも早く死んでくれ!」

「まだくたばってなかったのかよ夏海(なつみ)。女みたいな名前してないで早く死んでもいいんだぞ」

「キンジーぃ! ようやく死にに帰ってきたかぁ! お前みたいな間抜けにはお似合いな場所だぜ。死ぬのはいつだって間抜けだからなあ!」

「じゃあなんでお前が生きてるんだよ三上(みかみ)

 

 ……とまあ、強襲科流の挨拶――『死ね死ね』挨拶を返していると、これまた微妙に時間を取られた。

 この『死ね死ね』には意味があるらしく、このように日常的な挨拶に組み込むことによって『死のフラグ』を折る効果があるとか。

 どうでもいいが、青海の名前をディスったら軽く脛を蹴られた。……痛ぇよ。

 

 挨拶も終え、自由履修の申請も終え、時間が差し迫っているオレたちは強襲科の施設を出る。

 夕焼けの中、門のところで待っている小学生――ではなく、アリアがいた。

 オレたちの姿を認めると、とてて、と小走りで寄ってくる。

 

「……あんたち、人気者なんだね。ビックリしたよ」

「あんなヤツらに好かれてる時点で終わりだと思うけどな……」

「それには同意だ」

 

 キンジが同意してくれる。

 

「あんたたちって人付き合いとか悪そうだし、ネクラ? って感じもするけど……ここのみんなは、あんたたちに……その、一目置いてる気がするんだよね」

 

 ……そりゃあ、なあ?

 その原因は間違いなく、入試のことをみんなが覚えているからだ。

 オレたち、特に武偵を辞めたいキンジにとって黒歴史の記憶が。

 

 当時はキンジもやる気がまだあって、武偵には強襲科(アサルト)しか未来がないと思っていたオレは……

 強襲科志願生徒に科された試験……14階建ての廃屋(はいおく)に散らばって、武装の上で自分以外の受験生を捕縛し合うという実戦形式の試験を受けた。

 

 ――そこで、オレはキンジと1対1で戦ったのだ。

 

 その時のキンジは無敵モードに突入していたようで、不本意ながら本気を出さざるを得なかった。

 出したくもない本気を、オレが出すハメに……

 結果は引き分けだったけれども、流れ作業的にで乱入してくるヤツらをひねっていたら、スコアがお互いにおかしいことに。

 そして、気が付けばSランク武偵……

 まあ、その後の試験やその他諸々でBランクまで不自然にならない程度に下げたケド。

 

「あのさキンジ」

「なんだよ」

「ありがとね」

「何をいまさら」

 

 ……!

 アリアが、あのアリアが、キンジにお礼の言葉を口にした……ッ!?

 まさか、キンジの野郎は既にアリアさえも口説き落としているってことか……?

 いつも怒っているのは、理子風に言えば……ツンデレってやつだろうか。

 

(どうでもいいけど、アニメやマンガあるいはラノベのキャラで赤髪がツンデレってパターン多いよな)

 

 などと、理子関連で仕入れた感想を心の中で呟く。

 

「勘違いするなよ。俺は『仕方なく』強襲科(ここ)に戻ってきたんだからな。解決したらすぐに探偵科に戻る」

「わかってるよ。でもさ」

「なんだ」

「強襲科を歩くキンジ、みんなに囲まれててカッコよかったよ」

 

 ……ほら、やっぱりキンジが既に口説き落としてたんだよ!

 たぶん、オレがいない間に『無敵モード』とかに突入してさ!

 素のキンジだと朴念仁+唐変木なキンジだから難しいと思うけど

 

「あんたもありがとね」

「………おう」

 

 オレにもお礼の言葉を言ってくれるアリア。

 まさかオレにも言われるとは思っていなくて、少し素っ気ない返事をしてしまった。

 

「あたしになんか、強襲科の連中は誰も寄ってこないからさ。実力差がありすぎて、誰も、あたしに合わせられないのよ……まあ、あたしは『アリア』だから」

「『アリア』」?

 

 どこか特別な意味を含んだ言葉。

 

「オペラの『独唱曲《アリア》』よ。 1人で歌うパートなの。1人ぼっち――あたしはどこの武偵高でもそう。ロンドンでも、ローマでもそうだった」

「で、俺たちと組んでデュエットないしカルテットでも目指そうってのか」

 

 キンジがぶっきらぼうにそう言うと、

 アリアはきょとんとした目を向け、小さくクスクスと笑った。

 

「あんたでも面白いこと言えるんじゃない」

「面白くないだろ」

「面白いよ?」

「はぁ……お前のツボはわからん」

「やっぱりキンジ、強襲科に戻った途端に活き活きし出した。昨日までのあんたは、自分にウソをついてるみたいで、どこかつまらなさそうだった。今の方がいいよキンジ」

「そんなこと……ないっ」

 

 といいつつも、若干ながら嬉しそうなキンジ。

 コイツもアレか。ツンデレ族なのか。

「男のツンデレはご褒美だよぉ~!」とか何とか言ってた理子が喜びそうな状況だな。

 

「俺はゲーセンに寄ってく。お前は一人で帰れ。ていうか今日から女子寮だろ一緒に帰る必要はない」

「バス停までは一緒ですよ~だ!」

 

 アリアはべーと舌を出して笑う。

 今日もアリアはご機嫌だな、ほんと。

 これもオレとキンジが強襲科(アサルト)に戻ってきたからかね。

 

 オレが若干ながら蚊帳の外になった状態でも、二人の仲睦まじい会話は続く。

 

「ねえ、げーせん? ってなに?」

「ゲームセンターの略だ。そんなことも知らないのか」

「帰国子女なんだからしょうがないじゃない。ふーん、あたしもついていくわ。今日はレベルを合わせて一緒に遊んであげるわ。ご褒美よ」

 

 それはご褒美じゃなくて罰ゲームだ。

 なんて言いたげな表情を作ったキンジが、足を早める。

 それにアリアがついて行き……更にキンジが足を早める。

 

 そして、二人はそのまま加速していき……

 すぐに見えなくなってしまった。

 

「…………オレを置いていくのかよ!」

 

 キンジが行くゲーセンは覚えているし、今から向かってもいいのだが……

 

「あー、帰るか」

 

 キンジに『先に帰ってるからな』とだけメールを送った。

 

「いつ事件が起きてもいいように軽く身体を動かしておくか……」

 

 とかなんとかいいながらも、オレは少し寂しさを感じていた。

 

 

 

 




 ……うーん、短い!

 プロローグよりも短いけど、次の話は長くなる予定なので……
 許してね?

 強襲科で登場した夏海くん(ちゃん?)はカイトがSランク時代に何度かお世話になってるという設定です。キンジが原作で普通に接してたことから、彼は男だとは思いますが……名前だけの設定だから女かもしれないって余地がある……いや、これを機会に女の子にしてしまうってのもありなのでは!? 
 
 名前しかないモブがヒロインに……! 新しすぎる……。
 
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