運命に抗う鎮守府   作:Corekan Saikoo

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小さな基地

九州・鹿児島にある基地「鹿屋」。かつて太平洋戦争において航空隊の基地があったこの場所には、現在「深海棲艦」から本土を守るための「艦娘」を擁する基地が置かれていた。

20年前、突如として海の底から現れた黒の異形。当時の最新兵器が全く通用せず、一方的に人類を駆逐していくその存在を「深海棲艦」と読んで人々は恐れた。

しかし、人類が絶望しかけたその時、希望の光が現れる。

「自分たちはかつての大戦で沈んだイクサブネだ」というその「少女達」は、今まで人類がかなうはずのなかった深海棲艦を倒して見せた。

人々は、その新たな希望を「艦娘」とよんだ。

 

深海棲艦の襲撃を受けた日本では、新たに「日本海軍」を設立。この組織は「艦娘」を中心にしているため兵器を所有している訳では無い。

大湊、横須賀、舞鶴、呉、佐世保にはこの日本海軍直属でありある程度の政財界への発言が許されている「鎮守府」がおかれ、旧軍基地があった場所には鎮守府よりやや規模の小さい「基地」が置かれている。

 

「鹿屋基地」はそんな「基地」のうちの一つだ。そこに今日、一人の「提督」と「艦娘」が着任した。

 

「ここが俺の新しい職場かー」

 

そう気だるげにいう「提督」吉田利也。

 

「しょーがねぇだろ、アタシ達は『左遷』させられたんだからよー」

 

そういうのは金剛型戦艦三番艦・榛名である。

彼女のこの口調から察せられるように、この艦娘は通常の「戦艦榛名」とは大きく異なっている。

 

「榛名…お前、その口調は治らんのか…」

 

「諦めな、アタシは『はぐれ』なんでね。」

 

彼女が今口にした「はぐれ」という言葉。これは

「建造できたものの通常のスペックとは大きく異なる」艦娘を指す。しかし、「異なる」といってもしばらく経つとほとんどの場合通常の状態に戻る。

だが、希だがこの榛名のようにいつまで経っても元に戻らない艦娘がいるのだ。

 

「出来損ないは、必要ねぇってよ…」

 

「榛名…」

 

しかも彼女はよりによって数ある鎮守府、基地の中でもその練度の高さと実績から「日ノ本最強」と言われる横須賀鎮守府の生まれであった。ここの提督は、この榛名が着任した当時は焦りはしたものの、温かくむかえ、訓練を施していた。

訓練では特に問題のなかった彼女。しかし、実戦となった瞬間に周りが見えなくなり、単艦突撃しては隊の仲間に迷惑をかけ、そしてそれを悪びれもしない、ということが数ヶ月続き、我慢の限界を迎えた鎮守府の艦娘達は、提督に対し「榛名の転任」という名の追い出しを進言。当然提督は宥めようとしたものの当の本人たちからの「命懸けで戦っているのにチームワークが無ければ話にならない」という言葉に彼は観念し、後日提督は榛名に「鹿屋基地行き」を命じた。

 

「さて、まずは何する?提督。」

 

「うん、ひとつ聞いていいかな?」

 

「?なに?」

 

「なんで艤装ココで展開してんの?」

そう、榛名は「なぜか」提督の執務室で己の艤装、兵装を出現させていたのである。

 

「いやー手始めにここ近辺の深海棲艦とか片付けてこようと思って」

 

「いやー、じゃねぇから!この基地たった今始まったばっかだから!出撃するほどの資源の余裕うちにねぇから!」

 

「じゃあ提督がとってきてよ、資材。」

 

「なぁぁんでそうなる!!人が海の上立てるかァァ!」

 

「……ちっ…」

 

「あ!今舌打ちしたろ!お前俺のこと舐めてるだろ!」

 

「あのー、いつになったら終わるのでしょうか…」

 

提督&榛名「!!!」

2人が振り向くと、そこには黒の長髪に眼鏡をかけた艦娘が立っていた。

 

「本日よりこの鹿屋基地の事務方を担当させていただきます、大淀型軽巡洋艦一番艦、大淀です。宜しくお願いします、と言いたい所なのですが……」

 

そう区切ったかと思うと大淀はまず榛名に詰め寄り、

 

「できたばかりのこの小さな基地で、戦艦のあなたが、出撃するほどの資材が、あると、思ってるんですかぁぁ!!」

 

その大淀の迫力に、思わずたじろぐ榛名。

 

「す、スミマセン」

 

「そうだそうだー」

そうして大淀に同調した提督を「ギロッ」と大淀は睨むと、

 

「提督も提督です!なんで艦娘に舐められてるんですか!司令官たるもの、そのようなことでは…」

 

この後2時間、提督に対する説教が続いた。(このことを機に提督と榛名は『大淀を怒らせてはならない』ことで一致した。)

 

「.はぁ、こんなことで大丈夫なんでしょうか…」

 

そうため息をつく大淀の前では2時間の説教でもはや抜け殻とした提督とその横で何食わぬ顔でお茶をすする榛名、という光景。提督は自業自得にしろあまりにもお先真っ暗である。

 

「でも大淀さん、アタシが出れないなら誰が出るんだ?まだこの基地にゃあ、駆逐艦なんていねーぞ?」

 

「あ、それなら心配ありません。駆逐艦娘を一人随伴させていますので。」

 

「へぇー、どんなやつなんだ?」

 

「外で待機してもらっているので入ってきてもらいましょうか。どうぞ、入ってきて!」

 

ガチャ、と部屋の扉の開く音がした後に入ってきたのは、

 

「本日よりこの鹿屋基地に着任しました、陽炎型駆逐艦二番艦、不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです。」

 

目つきが鋭い、白い手袋をつけた淡いピンクの髪をした駆逐艦だった。

 

「自分がこの鹿屋基地の提督、吉田利也だ。よろしく。」

 

先ほどまでの抜け殻状態から復活した提督が不知火に挨拶する。不知火はそれに海軍式の敬礼でしっかり答える。

 

「アタシは戦艦榛名。よろしくー」

 

榛名がそうして不知火に握手を求めた次の瞬間、

 

パァン

 

提督&大淀&榛名「………エッ?」

 

不知火が榛名の手をはたき、握手を拒否したのだ。

 

「あなたのような『出来損ない』なんかと、一緒にしないで」

 

「!!!!!」

 

「…今なんつった?」

 

不知火がその声のしたほう向くと、

 

「おぅ、今なんてった?榛名(コイツ)のこと、なんて言った……?」

 

「司令が何故そこまでお怒りになっているのかは存じませんが、この戦艦は紛れもなく『出来損な」

 

不知火がそう言い終わるうちに、提督は不知火の胸ぐらをつかみ壁に押し付けた。

 

「………………それ以上、口を開くな。」

 

「ッッッ!!!!!!」

 

先ほどのおふざけ要素など皆無な、ただただ強烈な「殺気」を放つ一人の男がそこに居た。そのあまりにもの強い殺気に部屋にいた誰もが「恐怖」を感じた。

 

「……いくら貴様が新人とはいえ、俺の部下を侮辱することは俺が許さん。お前は、」

 

「提督、もうイイよ……」

 

提督は振り向くと榛名が肩に手を乗せ、

 

「アタシは大丈夫だから。」

 

榛名はそうして提督に不知火を解放するよう求めると、大淀に

 

「大淀さん、悪いんだけどどーしてもな野暮用が目の前でできちまったんで」

 

「ええ、構いませんよ。」

 

榛名が言い終わる前に大淀は彼女が言わんとしていることを察していた。

 

「あなた達をサポートするのが事務方である私の役目ですから。」

 

「そっか……ありがとう。」

 

「ほう、『出来損ない』でもちゃんとお礼は言えるようですね。」

 

この不知火の言葉に提督はまたとびかかりそうになるが榛名が手を挙げてそれを制し、不知火と向き合う。

 

「あんたがなぜあたしをそこまで敵視するのかは分かんないけど、そんなにあたしが嫌なら『演習』で倒してみれば?大淀さんの許可も降りたし」

 

「そんな!駆逐艦が戦艦のあなたに勝てるはずが……」

 

いくら榛名を侮辱したとはいえ、戦艦VS駆逐艦の演習など結果は火を見るより明らかだ。しかし、

 

「いいでしょう。受けて立ちましょう」

 

「不知火さん?!」

 

不知火は即答でそう答えると、

 

「あなたのような『出来損ない』には負ける気がしませんね……」

 

そう言い、フッと不敵な笑みを浮かべながら不知火は演習場に向かった。

 

「…じゃ、アタシも行ってくる!」

 

榛名も少し間を置いて演習場へと向かう。

執務室には提督と大淀だけになった。

 

「………なぁ、大淀さん。」

 

「何でしょう、提督」

 

「榛名は、……今までずっとあんな事言われ続けてきんだろうか…」

 

「……………恐らく。」

 

「なぜ、そういうふうにいう奴がいる?」

 

「では、提督は自分が仲の良い友人達でつくったグループに急に割り込んできて和を乱すだけ乱してさっていく人に、好意を持てますか?」

 

「………」

 

「自分で言うのも何ですが、艦娘というの基本真面目で心優しい基質を持っていると自分では考えています。それでも、やはり限度というものがありますね…」

 

「…そうか……」

 

室内を、沈黙が支配する。

 

「…なぁ、大淀、どうして不知火は榛名にああしてあたるんだろな…」

 

「さぁ………」

 

2人の危惧と思慮を知ってか知らずか、戦艦と駆逐艦の演習という前代未聞の出来事がこの小さな基地で巻き起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

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