運命に抗う鎮守府   作:Corekan Saikoo

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もう少し短めにしたかったのですが何分ヘタッピなもんでして……(笑)

今回は榛名さんの過去が中心となっています。ちょっと早い気もしたのですが今後のことも考えて投稿しました。

拙い文章ですが、ご了承ください(笑)


「せんかん」と「くちくかん」

「はぁ~~、やっぱここは気持ちいいな~」

 

鹿屋基地所属艦娘第一号であり秘書艦(?)でもある金剛型戦艦三番艦・榛名である。

 

「それで、私に一体何の用なんでしょうか?榛名『さん』。」

 

「おっ、どうしたの不知火~アタシのこと『さん』付けで呼ぶなんて~」

 

「…特に理由などありません」

 

「あ、そ。まぁそれはいいんだけどさ。」

 

この二人が今現在いるのは、鹿屋基地から少し離れた海の見える高台である。

 

「ここはアタシがこの基地に着任したときからのお気に入りの場所でさ。暇だったらだいたいここに来るんだよねー」

 

「暇って…あなたは一応この基地の『秘書官』なんですよ?もう少し執務ぐらい手伝ったっていいと思うのですが。」

 

「かーっ!アンタってほんとクソ真面目だよね?別にアンタがやってくれていいよ?秘書艦」

 

「私は普通です。榛名さんが大雑把なだけです。」

 

「うわっ、辛辣~」

 

「はぁ~。それで、ホントはこんな話をするためだけに私を呼んだのではないのでしょう?早く話していただけますか?」

 

「うーん……」

 

不知火が榛名にそう尋ねると、彼女は急に静かに海を見つめながら考え事をするかのように黙り込んだ。

 

「……」

 

「……」

 

二人の間を潮の風が吹き抜けていく。

 

「……アンタはさぁ、自分が『はぐれ』であることにどう考えてる?」

 

「…ここに来るまでは自分が『はぐれ』であることを受け止めかねていました。周りの仲間はそんな私を励まし支えてくれていました。でも、…その仲間の『優しさ』が逆に私自身を苦しめていました…」

 

「……つまり?」

 

「…私の身勝手な行動のせいで、仲間の誰かが沈んでしまうのではないか、そして、もしそんなことが起きても仲間は決して私を責めたりはしない。それが、ひたすらに怖かった…」

 

「…………」

 

「だから、風の噂で『新設基地』の存在をら聞いた時、この基地に行くしかないと思ったんです。」

 

「なんで?」

 

「このまま仲間と一緒にい続けたら、いつか必ず誰かが沈む。そうなってからでは遅い、だから一刻も早く呉鎮守府(ここ)から離れよう、もう、みんなに迷惑をかけられないから。……そう『はぐれ』である自分に暗示をかけ、あの演習後に気づくまで『はぐれ』であることを嫌い、『はぐれ』という存在を完全に否定している自分がいました。それが、私自身を、そして出ていく私を案じてくれた仲間達の思いを否定するということに気づかずに…」

 

「じゃあ、あの演習した後に気づいたってことはさ、なにか心境の変化とかあったの?」

 

「….まだ完全ではありませんが、少しずつ『はぐれ』である自分も『それも私なんだ』と受け止めることができるようになりました。それに…ここなら、自分のすべきこと、『答え』を見つけることが出来るかもしれない。今はそう思ってます。」

 

「『答え』…『それも自分』、か………」

 

「…榛名さんは、どう考えてるのですか?」

 

「んーっ、アタシは嫌だねっ!自分が『はぐれ』だってこと。」

 

「?!」

 

「『えっ?!なんで?!』って顔してんな、そんなに意外だった?」

 

「そんなこと気にしてるようには見えませんでしたので…」

 

「ほんと容赦ねぇな…」

 

はぁー、とため息をもらして榛名は再び水平線へと視線を移す。

 

「…アタシね、こう見えて元横須賀鎮守府所属なんだぜ?」

 

「えっ?横須賀鎮守府といえば…『あの』横須賀鎮守府ですか?!」

 

「そうさ、まぁもうだいぶ昔の話だけどね。えーっと確か五年前だったかな?アタシは横須賀鎮守府の工廠で建造されたんだ。」

 

「五年前…確か当時は深海棲艦に対しての反攻作戦が開始されて、人類・艦娘サイドと深海棲艦が一進一退の攻防をしていたさなかだったはず…」

 

「あーまぁ難しいことは分かんねぇからいいけどさ、みんなピリピリしてたんだよ、当時は。でさ、そん時はまだ『はぐれ』の艦娘なんて今ほどいなかったからさ、まぁ今でも稀なケースなんだけど、差別がひどいったらありゃしない。横須賀の皆は『まだ』マシだったね。噂で聞くほかの基地で建造された『はぐれ』は、相当ひどい目にあってたらしいから。」

 

「『まだ』ということは、榛名さんも」

 

「いやー?そんなことは無かったけど。ちゃんと訓練にも付き合ってくれたし、ダメなことがあったら教えてくれたし。駆逐艦の子達は結構なついてくれてたし。」

 

「じゃあ、一体何が」

 

「アタシね、そのなついてくれてた駆逐艦の一人を『駆逐艦』として存在するために必要不可欠なものを奪い取ってしまったんだよね…」

 

「それって……」

 

「『魚雷』と『速力』さ。」

 

「?!」

 

戦艦の頑強な船体や大火力の砲もなければ、空母のように索敵機を飛ばせるわけでもなく、軽巡・重巡に比べてもスペック的におとっている。そんな彼女たちが唯一といっても誇れるものこそ「足の速さ」と「魚雷」だったのだ。

魚雷は軽巡や重巡も撃つことが出来るが、駆逐艦の機動力から放たれる「それ」に比べると劣る。だからこそ、駆逐艦娘である彼女たちのほとんどが自分たちの長所である「速力」と「魚雷」に誇りを持っていた。

 

「駆逐艦の命ともいえるそれら二つを奪ったって…一体何があったんです?」

 

不知火がそう聞いたとき、榛名は果てのない水平線を睨み付けるようにして見つめていた。

 

「……アタシが横須賀に着任してからまず最初の三ヶ月は訓練期間だったんだ。その期間に色々教えて貰ってある程度の艦隊行動、航行の仕方、砲術、照準の合わせ方とかその他もろもろ古参の人や教練部隊所属の艦娘たちにビシバシ鍛えられたよ」

 

「じ、じゃあ、先の演習で榛名さんが展開していたあの戦闘術は」

 

「まぁまぁ落ち着けって。まだアタシがこの世に出てきて三ヶ月までしかはなしてないんだからさぁ。」

 

「す、すいません。」

 

「その3ヶ月の教練期間が終わったら今度は座学だったなー。いやーあれは退屈だったね。全然頭に入らんかったよ。まぁ座学は一週間ぐらいで終わったかな。んで、いよいよ初出撃になったんだけどね、柄にもなくガチガチに緊張してたんだよ、アタシ。」

 

「意外すぎる」

 

「うっせ。でもそんなアタシに同じ艦隊のみんなは声をかけてくれたりしてあたしの緊張を解そうとしてくれたんだ。まぁそれで一旦は落ち着いたんだよね。」

 

榛名は一旦口を閉ざすと、

 

「でもね、敵と会敵したときに、なんか急に頭が痛くなって胸も締め付けられるような苦しさを感じたんだ。」

 

「苦しさ…?」

 

「気のせいだろうと思ってたんだ。でもそれはどんどん大きくなって言ってね、気づいたら頭の中で『戦え、戦え、敵を殺せ』って永遠と言ってるんだよ。そして急に頭が真っ白になってさ、目の前の敵を殺すことしか考えられなくなったんだ。そして、アタシは単艦で敵へ突撃。僚艦の制止も、旗艦の命令も完全無視して、アタシは『素手』で敵を『全滅』させてたんだ…」

 

「…」

 

「この時の出撃はアタシ自身の練度をあげるためだけのものだったから、報告を受けた提督がすぐに帰投命令をだして、アタシは提督の執務室への出頭を命じられ、部屋に入るとその時の艦隊を預かっていた旗艦と副艦、横須賀鎮守府の提督、その秘書艦の正規空母・加賀の4人がいた。でも、特に怒られることもなく『初めてだから』と今後は気をつけるようにと言われただけで特にお咎めがなかったんだ。たぶん、これが全ての始まりだったんだと思う。」

 

「全ての始まり……?」

 

「そのあと、艦隊の皆のところに旗艦の人に連れていかれたんだ。で、その人に何か言うことあるでしょみたいな空気を感じたんだけど、フッ、『お疲れさまー』だよ、アタシが言ったの。」

 

「え…?」

 

「笑っちゃうよね、自分のための出撃で勝手に突撃して敵を倒せたはいいもの艦隊の皆には大いに迷惑をかけたのに開口一番アタシが言ったのが『お疲れ様ー』だよ。普通なら『すいません』の一言でもいうだろって今でも自分の馬鹿さに呆れちまうよ。で、この一件があってから微妙に周りとの壁ができ始めた。いくら初出撃でも艦隊行動を行うための最低限必要な『仲間とのチームワーク』を破るなんてことはまずありえなかったからね。それまで話しかけてくれてた子達もだんだん離れていった。」

 

視線を落とし、フッと榛名は自嘲を含めた笑みを浮かべる。

 

「その後もアタシは海に出続けた。でもそのたびに単独行動を起こすんだ。自分の中ではそれがいつしか『当たり前』になってた。そしてそのアタシの行動の常態化とともに周りの艦娘との溝はどんどん深くなっていった。」

 

「…」

 

「でも、そんな身勝手なアタシにまだ話しかけてくる艦娘がたった一人いたんだ。」

 

「その娘が、」

 

「『特型駆逐艦一番艦・吹雪』。あの子だけ、唯一アタシに接触してきた娘だった。…そして、アタシなんかと関わってしまったがために、彼女は……」

 

「ここまでの話の流れを聞いて大体察しました。おそらく榛名さんが出撃した時のメンバーに吹雪さんがいて、あなたが『いつもの』行動を起こしたとき敵の攻撃があなたに集中しかけたその瞬間、吹雪さんがあなたをかばった。」

 

「まぁ大筋はあってるよ。あの子はアタシに向かって放たれた魚雷4本、砲弾十数発を一身に受けてアタシをかばったんだ。」

 

「……っ!」

 

不知火がふと彼女の手元を見ると、その手は彼女自身の「血」で真っ赤に染まっていた。

 

「吹雪は轟沈する寸前のとこまで傷を負った。艦隊は即座に反転撤退。さすがのアタシも事態を察した。周りの艦娘からアタシに向けて発せられてた『殺気』は今でもはっきり覚えてるよ…」

 

 

しばらく二人の間を沈黙が支配する。

 

 

「……………さっきも言ったけど、吹雪は海上での行動が著しく制限された体になり、二度と艦娘として海に出ることは出来なくなった…。そして、この事態をうけ、鎮守府内の艦娘たちの怒りが爆発。提督や加賀にアタシを解体するよう直訴までした艦娘もいたって後になって聞いた。当時はそんなこと考える余裕もなくてさ、ただひたすら周りが敵に見えた。『アタシは敵を殺そうとしただけだ。それの何が悪い。吹雪(アイツ)は勝手にアタシをかばって勝手に動けなくなっただけだ。』あの時のアタシは、ほんとにクズだったと思うよ…」

 

「……その後はどうしたんです?」

 

「どうもこうも。あそこの提督は絶対に自分の艦娘を傷つけることはしない人だったからね。一言『ここから出ていってくれるか』の一言だったよ。命令口調じゃなかったのがあの人らしいな。そしてアタシは横須賀鎮守府を出て、各地の鎮守府や基地を転々とした。でも、『はぐれ』の上に自分勝手なアタシを受け入れてくれるとこなんてなかった。」

 

「榛名さん…」

 

「そんなアタシを拾ってくれたのが、今の『吉田提督』ってわけ。あの人、あたしと初めてあった時まずはじめになんて言ったと思う?」

 

「さぁ…?」

 

「『君は俺と同じ目をしている』だってよ。そん時は『は?何いってんの?アンタ頭おかしいんじゃないの?』って口走っちゃったよ。でも、提督はアタシの言ったことに怒りもせずに、こう言ったんだ。」

 

『運命に、抗ってみないか?』

 

「?!」

 

「その一言で、アタシの中の色々のものがガラリと変わった。自分の今までしてきた行動に虫唾が走ったよ。それと同時に、もう二度と『落ちこぼれ』なんて言わせない。その為にも自分の中に足りないあらゆる物をこの人の元で培っていこう、そう決めたんだ。」

 

「『運命に、抗う』…」

 

「そう、だからアタシは自分が『はぐれ』であることをうけいれることは絶対にしない。『はぐれ』という呪われた運命を、変えてやる。絶対。」

 

「榛名さん…」

 

「いや、別に不知火みたいな考えがあってもいいと思うよ?テメェの『運命』受け入れて自分の更なる飛躍のための力に変える…。それも『運命に抗ってる』ってことでいいだろ。」

 

榛名はそう言って立ち上がり、

 

「ま、『抗っていきましょ、相棒。」

 

不知火の方を軽くポンと叩くと、榛名は丘をさっさと降りていった。

 

「ええ、……って『相棒』?!」

 

 

 

 

 

ここに、戦艦と駆逐艦という異色のコンビが誕生したのである。

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