「あぁ、終わった~。」
誰かがそう言った。
帰りのホームルームが終わり、皆が部活に帰宅と思い思いに移動し始める。
「さて、今日も働きますか。」
「あら、折田君は今日もアルバイトなのかしら?」
帰ろうとする俺に学園のアイドルでもあるリアス・グレモリーが声をかけてくる。
「そうだね。」
「毎日大変ねぇ。」
そうなのだ。最近は殊更忙しくなってきて大変なのだ。
「はは。グレモリーさんだって部活夜遅くまでかんばってるんでしょ。同じ事だよ。」
「あら、そう言われたら頑張らないといけないわね。」
そう互いに当たり障りのない会話をする。
俺はグレモリーさんと親しいわけではない。ただのクラスメイトAである。
これ以上込み入った話をする事もない。
「理央。バイトの時間。」
バイト先が同じで友人のベスターが催促の声をかけて来る。
ベスパー・キール。ウチの学園は外国人を多く受け入れているため外国籍の友人もいくらかいる。
グレモリーさんだってそうだ。
このベスター。幼少期の事故で右腕を失うと言う悲劇に遭いながらもこうやって留学までする凄い奴だ。
学業、運動とも、片腕と言うハンデをものともしない成績を誇る優秀な奴でもある。
俺とは中学生のころからの友人でもあり、この学園で一番仲のいい奴だ。
「じゃぁ、グレモリーさん。また明日。部活頑張ってね。」
「えぇ、折田君もアルバイト頑張って。」
そう別れを交わし、ベスパーと連れ添って歩く。
「グレモリーと仲良かったか。」
「いや、ただの挨拶さ。あっちだってさほど興味もないだろうよ。」
俺はただの一般人。グレモリーさんとは違う。
「学園のイケメン四天王の一人がなにを言ってるのか。」
「まぁ、3大お姉様と同じものだよ。」
そう、くだらない話をしながら歩いていくと、とあるビルに行き当たる。
なんとも代わり映えのしない普通のビルだ。
ここが俺達のバイト先といってもいいところである。
そして、俺達はこのビルの中に入っていった。
ここまでが表側の設定の話。
「やぁやぁ、久しぶりだね。リオル君。」
ビルを入った俺達の前に一人の青年が声をかける。
ただし、入り口に布団を敷いて、ねっころなりなががらラノベを呼んでいるのだが…。
「リオ、俺は先に準備をしておく。」
「あぁ。」
そう、ベスパーを先に行かせ、目の前の青年に声をかける。
「ここに顔を出されるとは…。厄介ごとですか、それとも…。」
「うん。暇なだけ~。」
ファルビム・アスモデウス。4人いる魔王の一人で、軍事を担当している方である。
いつも、部下や眷属に仕事を押し付け怠けている残念な魔王様だ。
といってもそれは表の姿。部下や眷属に任せられる仕事しか回してはいない。
表では怠け者の仮面を被って、この人は影でずっと動いてる。
それでこそ、内政担当のルシファー様や外交担当のレヴィアタン様より多くの情報を持っているだろう。
「それに君の報告書。堕天使勢力がここに拠点を敷いてると聞いてね。」
「下級のね。リアス・グレモリーの方で対処させれば問題はない。」
さすがにあの程度何とかなるだろう。
それに、いざと言う時のためにそれなりの経験は必要だろう。
「禍の団との関わりは?」
ファルビム様の顔つきが変わる。
なんだかんだ言ってもやはり魔王様だ。
「今の所は…。ただ、接触してくるようなら好都合かと。」
堕天使が死のうと悪魔側には問題はない。ヤツらを利用して少しでも情報が得られるなら…。
「他には何かあったりする?」
「ない。とは言いがたいですね。はぐれの数がここ最近増えた。」
「旧魔王派かな~。」
おそらくそうだ。旧魔王派が裏で情報を流し、ここに誘導しているのだろう。
まぁ、殺せれば儲けものくらいの感覚だろうけど。
「リオ、準備できたぞ。」
魔力探知妨害用の道具や闇に紛れやすい黒ずくめのコート。武器の類。
俺達の存在はバレてはいけない。使う武器や戦い方も本来のものとは異なった物にしておく必要がある。
「相変わらず徹底してるね~。」
「魔力の質や武器の種類。攻撃の性質、残った残骸。それだけあればある程度は誰がやったか絞り込める。」
リアス・グレモリーはともかく、旧魔王派や堕天使、天使陣営は気付く可能性がある。
「オリアスが生きている事はまだ知られるわけにはいかない。」
「リオル君…。」
リオル・オリアスはまだ死んだ存在でなくてはいけないのだ。
「まぁ、それはそれ。べスパー。」
「後はユウキが、来ればいつでも出れる。」
そっか。さっさと終わらそうか。
「じゃぁ、これ渡しておくね~。」
そう言って、ファルビム様から20を越えるはぐれ悪魔の名が書いてあるリストが渡される。
駒王町周辺にいる危険分子のリストだ。
「Sが10、SSが5体。この残るAは集団か。」
「さすがに最上級悪魔クラスのはぐれを魔王の妹に処理させるわけに行かないからね~。」
「そのために俺達が潜入している。アジュカ様から渡された悪魔の気配を隠す道具まで使って人間のフリをしてまでね。」
駒王学園にいる俺の眷属はそうやって、悪魔である事を隠して活動している。
2人の妹が何らかの影響で死んだだけで内政、外交共に悪影響しかない訳で…。
「まぁ、危険分子の誘蛾灯的な役割もあるからね。あの妹達は。」
それを承知であのシスコン2名は妹をこの町に置いている訳だ。
そして、それを俺達が処理する。
「悪魔の業は深いね~。」
「だね~。」
ホントに悪魔ってのは業が深くて嫌になる。
俺も悪魔なんだが…。
「どうしたもんかなぁ…。」