無欲が抱く欲望   作:水色絵具

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オリアス家

冥界のはずれ。旧魔王一派よりも酷い辺境にあり、辺り一体に瘴気が漂い、マグマが地表を覆う。

一歩間違えば上級悪魔でも無事ではすまない。

 

そんな場所に俺の故郷はあった。

 

周りの景色を見渡しても、ここが悪魔の領地であるなどとは考えづらいだろう。

だが、れっきとした貴族悪魔の領地である。それも72柱に連なる悪魔の領地だ。

 

酷い話ではあるが古い悪魔たちは、俺達の一族にこの地を押し付けた。

作物どころか、飲み水すら確保できないこの地をあてがい、転生悪魔や下級悪魔より酷い差別を繰り返してきた。

先の大戦、内輪の内戦。俺達の一族は多大な戦果を上げながら報酬を与えられる事もなく、使い潰され辺境へと追いやられた。

 

オリアス家。

 

 

地獄の30軍団を指揮する序列59番の大いなる侯爵である。

 

強壮な馬に跨り、右手に二匹の大蛇を携えた蛇の尾を持つライオンの姿で現れる。

惑星の在り処を知り、星の効能を教示するといわれる悪魔だ。

 

だたし、ほかの悪魔に差別される特異な性質がある。

 

 

オリアスに生贄や交渉は一切必要なく、欲のない悪魔とされている。

欲望こそを絶対の価値観とする悪魔の中では異端。ゆえに半端者の悪魔として差別される。

 

更に疎まれる理由があった。

前魔王、今魔王からも欲がないゆえに背信の疑惑もないため重用される傾向が強いのだ。

欲深いほかの悪魔とは違い見返りを求める事のない彼らは、信頼に足る部下であった。

 

更に能力も高い。悪魔として半端であると言われる俺達の一族がなぜ72柱に名を連ねる貴族悪魔であるのか。

唯々、能力が高いのだ。頭も回り、戦えば強い。唯己の実力だけでそこにある悪魔なのだ。

 

ゆえに殺された。

戦後、生き残った純血悪魔の中で彼らだけ、戦後に断絶させられた家なのだ。古き悪魔達によって…。

 

その中で俺は生き残った。

父さんと母さんの命と引き換えに…。

 

急に屋敷に押し入ってきた見知らぬ軍勢に襲われた。

両親は俺を隠して、応戦する。

 

勿論両親はそこらの悪魔なんかよりよっぽど強かった。

父はオリアス家でありながら純血悪魔。母も名家の出で純血だ。

 

オリアス家が存続している理由の一つはちちに嫁いだ母のように奇特なものがいる為でもある。

母も家の反対を押し切り父に嫁いだのだと、誇らしげに語っていたのを覚えている。

 

故に強い。襲ってきた悪魔なんかよりも。

 

押し込められた部屋の扉から見えたのは無数の死とおびただしい血。

それと敵を圧倒する両親の姿だった

 

だが…。

 

100を殺し、200を殺し、300を殺し。

両親の動きが鈍くなる。傷が増える。

 

そして、父さんの片腕が切り飛ばされる。母に魔力弾が命中する。

 

そこからは次第に一方的になっていく。それでも、両親は抗ったのに…。

 

 

俺が奴らに見つかった。

 

 

そして、両親は俺を庇って…。

 

 

その後、不自然な状況に気付いた魔王様達に助けられ保護された。

 

それでも、生きていればいつ殺されるか分からない。

だから死んだ事にして、人間界に飛ばされた。

そしてこの日を境にオリアス家は滅んだ事にされた。

 

あの時はまだ5つ。この身一つで人間界に飛ばされた時は魔王様を恨んだものだ。

 

泥水を啜り、ゴミを漁り。ただ、生きる事だけ考えた。

両親が残してくれた命。ここで負けて、死んでやるのだけは嫌だった。

オリアスの血が生き続けることこそが古き悪魔達に対する復讐だと思い、生きる事だけ考えた。

 

そして、その中で出会った。

ユウキに、べスパーに。のちに俺の眷属になる仲間に出会った。

 

「オイ、リオ。」

 

「ん、あぁ。」

 

いつの間にかベスターの隣にはユウキがいた。

 

「ゴメン、リオ。ボク、遅れた?」

 

「いいや。まだ時間には余裕があるよ。」

 

駒王学園の女子制服に身を包んだ、小柄な女の子。

見た目はまだ小学生にすら見える。

 

「兵藤一誠を通報してて遅くなった。」

 

「よし、殺そう。」

 

「止めとけ、リオ。相変わらずユウキに甘いんだよ、お前。」

 

変わらない。眷族になろうとあの頃と変わらない。

金もなく。明日の我が身すらどうなるか分からない。

魔王様に見つけ出され、裏から支援してもらってようやく人並みの生活を送れるようになった。

 

この関係は今後も変わる事はない。変えさせない。

 

こいつらを守るために力を振るう。

誰であろうと俺達に手を出すものは許さない。そのために力も手に入れた。

 

「さて、ゴミ掃除といきますか。」

 

「がんばってね~、リオル君。」

 

気の抜けた声が間に入る。

 

「うん、いつも通りに。」

 

「あぁ、さっさと殺して帰ろうぜ。」

 

さぁ、今日も夜だ。仕事の時間だ。

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