世界に痛みを(嘘) ー修正中ー   作:シンラテンセイ

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七武海 サー・クロコダイル

 人が次第に朽ちるように、国もまた滅び行く。

 世界に悠久な物など存在せず、そこに唯一の例外も存在し得ない。

 

 だが今やアラバスタ王国は強大な権力と力を有するとある組織により逃れようのない破滅のレールを歩いていた。

 

 否、全てはある一人の男の掌の上で人為的な破滅のレールを強制的に歩かされていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「…つまりこれまでの俺達の任務の全てはその壮大な計画のためだったというわけか。」

 

 此処は人々が一攫千金を夢見る人々が集う"夢の町"『レインベース』。

 『レインベース』の真ん中にそびえ立つこの町最大のカジノである"レインディナーズ"、その一室だ。

 

 そして今日、この日、この場所でB・W(バロックワークス)の幹部達が集合していた。

 

「その通りだ。作戦名『ユートピア』。遂に、このアラバスタ王国には滅んでもらう時が来たのだ。」

 

 座するは七武海の一角であるサー・クロコダイル。

 Mr.0にしてこのB・W(バロックワークス)のボスである。

 

「無論、失敗は許されん。これが我がB・W(バロックワークス)社の最後にして最大の『ユートピア作戦』。決行は明朝7時。」

 

 

 

『了解』

 

 

 

「武運を祈る。」

 

 今、此処でアラバスタ王国にて暗躍するB・W(バロックワークス)社が最後にして最大の狂気の作戦を始動させた。

 

 

 

 

 

 

 

「その""ユートピア作戦"、ちょっと待って欲しいのだがね。」

 

 だがその場に水を差す者が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃ルフィ達は……

 

『いたぞー、麦わらの一味だー!!』

 

 絶賛、海軍からその身を追われていた。

 ユバから旅立ち、漸く此処へと辿り着いたというにも関わらずだ。

 

「お前らはトラブルしか持ってこねェーのか!?」

「トニー君がいないわ!」

「大丈夫だ。自分で何とかするだろ。」

「もうヤダぁ…。何でこんなにも海軍から追われなきゃいけないのよ…。」

 

 後方から迫る海軍から逃れるべくゾロ達は必死に足を動かす。

 ナミはグズグズと泣いてしまっている。

 

 本当にルフィはトラブルしか持ってこない。

 一瞬でも目を離せば即座にトラブルと友達となって帰ってくる。

 

「仕方ない、このまま突っ切るぞ!」

 

 ゾロは周囲で確認するように此方の顏と手に持つ紙とを見比べる男達を発見する。

 恐らくB・W(バロックワークス)の連中に自分達の顏が既に行き渡っているのだろう。

 

「目的地は勿論、クロコダイルがいる場所だ!」

「皆、見て!目の前のあの建物がクロコダイルが経営するカジノである"レインディナーズ"よ!」

「あそこにクロコダイルがいるのか!?」

「ええ!」

 

 ルフィの問いかけに肯定の意を示すビビ。

 

「…だがそれよりも俺達は散った方が良いな。」

「確かに…。」

「よし!それじゃあ、後で…!!」

 

 

 

『"ワニの家"で会おうっ!』

 

 ルフィの言葉と共にゾロ達はその場から周囲へと散開する。

 

 

 

「アキトはビビと一緒に!」

「ビビと…?」

B・W(バロックワークス)の連中に顔が割れていない人の中で実力と機動力を備えているのはアキトだけよ!アキトはビビの傍にいてあげて!」

 

 確かにナミの言う通りだ。

 ナミの言葉に肯定の意を示したアキトは即座にビビの傍に駆け寄る。

 

「…アキトさん?」

「ビビは俺と一緒に行動だ。」

「…!よろしくお願いします、アキトさん!」

 

 アキトが自分と共に行動してくれることを理解したビビは嬉しさと安心を内包した笑顔を見せる。

 実に頼もしい相棒だ。

 

 こうしてアキトとビビは共に行動することになった。

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、舞台は再び夢の町『レインベース』へ。

 

 この町最大のカジノである"レインディナーズ"、その一室には今、招かれざる珍客が訪れていた。

 

社長(ボス)、…私は再び貴方から任務遂行のチャンスを貰うべくこの場に赴いたのですガネ。」

 

 包帯をその顏に巻き付け、物申すはMr.3。

 スパイダーズ・カフェから幹部達に気付かれないように後を付けていたのだ。

 

「…チャンスだと?それに任務遂行し切れなかったとはどういうことだ、Mr.3?」

 

「いや、ですから麦わらの一味と王女ビビを取り逃がしてしまったことを…」

 

「は?」

 

 社長(ボス)の凄まじい眼力に怯え、後退してしまいそうになるもMr.3は何とか立ち止まる。

 

「てめぇ、リトルガーデンで王女ビビを含む麦わらの一味全員を始末したと電伝虫で報告したじゃねぇか?」

 

「で…電伝虫?何の話ですカネ?私は"リトルガーデン"で電伝虫は使っていませんガネ…?」

 

「…何…!?」

 

 生じる食い違い。

 両者は互いに押し黙る。

 

 これは一体どういこうことだろうか。 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程、そういうことか。アンラッキーズが執拗に口を割らなかったのも、リトルガーデンから帰ってこないのもそういうことだったのか。」

 

 クロコダイルは嘆息しながらもその場に座り込む。

 全てを理解したとばかりに。

 

 Mr.3の自白で確信した。

 頭の切れる何者かが、裏で暗躍している。

 麦わらの一味の何者かが此方に自分達の情報をリークされないように動いているのだと。

 

 それも天へと羽ばたく翼を有し、それなりの戦闘能力も有したアンラッキーズを即座に無力化できる何者かが。

 

「麦わら…。…ねぇ、ちょっと待って、ゼロちゃん。もしかしたらだけど、あちしそいつらに遭ったかもしれないわよ…?」

 

「…何だと?」

 

 煙草の煙を口から吐きながら、クロコダイルはMr.2へと向き直る。

 

「こいつにっ!」

 

 現れるはルフィの顏。

 

「こいつにっ!」

 

 次はゾロ。

 

「こいつにっ!」

 

 そしてウソップ。

 

「こいつでしょ!?」

 

 最後にチョッパーの顏をマネし、Mr.2はルフィ達の顏をリークしていく。

 

「はぁ、まいったぜ…。顔が割れているのは3人とペット一匹。それに王女ビビを含めれば4人と一匹か…。」

 

 だが当然、それで全員ではないだろう。

 

「Mr.2、今見せた顏以外でマネ損ねた奴はいるか?」

 

「えっと確か…、オレンジの髪の女に、黒髪に紅玉の瞳の男がいたわよ!」

 

 成程、Mr.2がマネ損ねた奴を含めれば、麦わらの一味は6人にペット一匹ということになる。

 だがクロコダイルはあらゆる事態に対処すべく、それ以上の仲間がいる可能性を想定する。

 

「だが妙だな…。Mr.2、何故、その2人の顏はマネ損ねた?」

 

 顔の特徴を知っているにも関わらず何故その2人をマネ損ねたのか。

 クロコダイルは純粋な疑問をMr.2へと投げ掛ける。

 

「それが私の能力をお披露目した途端、私の手を避けちゃったのよね。」

 

 今思えばそれは妙な事であった。

 自身の能力の恐ろしさを直ぐに理解したと言わんばかりにあの男は即座に対処してきたのだ。

 

「最後の質問だ、Mr.2。お前の手を先に避けたのはどっちだ?」

 

「えっと、確か黒髪の紅めの瞳の男が私の手を避けて、その後にオレンジ髪の女を引っ張っていたわ。」

 

 成程、どうやらその黒髪に紅玉の瞳の男が今回のMr.3との意見の食い違いを生み出す原因を担ったということか。

 アンラッキーズの口止めを行ったのもその男であるのかは依然として謎だ。

 クロコダイルはその男の警戒レベルを引き上げた。

 

「全くやってくれるぜ。」

 

 これでは自身の計画に綻びが生じてしまう可能性が出て来る。

 クロコダイルは人知れず嘆息し、椅子に深く座り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、クロコダイルは必要とする時に遣えない無能な部下をカラッカラのミイラ人間と変化させ、眼下のワニの巣窟へと落とし、ワニの餌の肥やしとした。

 

 任務を遂行するべくこの場から立ち去る部下に激励の言葉を送り、クロコダイルは一人静かにほくそ笑む。

 

 そしてクロコダイルを打倒すべくこの場に突撃してきたルフィ達が檻に閉じ込められるのもそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 

 舞台はまたしても移り変わる。

 此処は夢の町『レインベース』の何処。

 

 周囲には先程から男達の悲鳴と肉がひしゃげる音が響いている。

 血と命乞いの叫びの交響曲を添えながら。

 

「げへへ、王女ビビ、お前を殺すように言わべ…っ!?」

「何だ、お前ば…っ!?」

「この数の差で本当に俺達に勝てると思っ…ぶべらっ!?」

「がはは、さあ死で…っ!?」

「ひいぃぃぃ!ちょっと待っ…!?」

 

 聞く耳持たず。

 一方的な蹂躙劇が終始その場で続く。

 その汚い声と顏を此方に近付けるな。

 

 ビビと共に行動するアキトはB・W(バロックワークス)の手先を即座に無効化する。

 

 時に顔面を踏み潰し、時に裏拳で遠方へと弾き飛ばし、時に踵落としで地面にめり込ませ、時に回し蹴りで顔を陥没させ、時に銃と刃物を握り潰し、時には掌底を叩き込むことで周囲の下手人を纏めて壁へと埋没させる。

 

 波紋状の衝撃波が周囲に波及し、刺客達が軒並み建物の壁にクレーターと共に皆仲良く沈み込む。

 口からは大きく吐血し、身体の骨は一つの例外も無くボロボロだ。

 

 正に敵には容赦なし。

 特にアキトはビビに対して下衆な視線を投げ掛ける男を集中的にズタボロのおんぼろにする。

 これではどちらが正義なのか分からない凄惨な状況がこの場に広がっていた。

 

「これで大方片付いたな。」

「え…ええ、ありがとう、アキトさん。」

 

 ビビはアキトの容赦なさに感服するのと同時に敵とはいえ彼らに少しだけ同情してしまっていた。

 

絶対にアキトさんだけは怒らせないようにしよう

 

 ビビは密かに決意した。

 

 

 

 

 

「ふふ、驚いた。貴方、想像以上に強いのね。」

 

 そんなアキトとビビの2人の頭上から女性の声が。

 以前も何処かで聞いたことのある声だ。

 

 頭上を見上げれば褐色の美女がいた。

 女性として理想のプロポーションを誇り、起伏に富んだ肢体を惜しげもなく晒している。

 その身には胸元と太股を大胆に見せつけるモコモコの服を着込んでいる。

 

 少し露出が多すぎではないかとアキトは漠然とそう思う。

 この世界の女性達は皆、貞操観念が低いのか、それとも露出癖があるのか分からないがどうにも胸や肌を恥じらうこともなくさらけ出す傾向がある。

 これでは水着と大差ない。

 どちらにせよ目に毒であるが。

 

「貴方は…っ!Ms.オールサンデー!」

 

 見れば祖国を蹂躙した憎きクロコダイルの右腕である彼女にビビは憎悪の視線を飛ばしていた。

 

「ふふ、王女様はナイトを引き連れていたようね。」

 

 これは意外だったわね、と妖艶な笑みを口元に浮かべながら彼女、Ms.オールサンデーは肩をすくめる。

 

 だがまたしても王女であるビビの命を狙った刺客達が現れた。

 

「王女ビビ、見ーっけ!」

「随分と暴れてくれたみたいだな。」

「けけっ!お前を殺すことが俺達に下された最上級命令。」

「悪いが死んでもらうぜ、王女様。」

「ヒャッハー、血祭りじゃー!」

 

 全くしつこい連中だ。

 飽きることなくゴキブリの様にワラワラと集まってくるとは。

 

「…!」

 

 刹那、アキトは頭上からこの場に勢い良く迫り来る気配を感じ取る。

 アキトは思考するよりも先にビビを抱き上げ、前方の建物の屋上へと跳躍する。

 

 途端、眼下の刺客達が空から降り注ぐ無数の銃弾に崩れ落ちた。

 血を流し、為す術無く、その身を地に伏していく。

 

「あれは…、ペルー…!」

 

 ビビは信頼できる仲間の助太刀に喜色の色を見せる。

 前方では世界でも有数の能力である悪魔の実である飛行能力によって敵が蹂躙されている。

 

 アキト自身、空を駆け、跳躍することは能力の応用で可能だが、飛行することはできない。

 

 アキトが静かに思考している最中にビビがMs.オールサンデーによりその身を貫かれた。

 当然、自身の敬愛するビビが傷つき、激怒しない彼ではない。

 勢い良く飛翔し、Ms.オールサンデーへと突貫していく。 

 

 だが妙だ。

 今の彼女の攻撃には殺意も、上半身を貫く威力も、速度も無かった。

 なのに何故現状ビビは地に伏しているのだろうか。

 

 アキトは冷静にMs.オールサンデーの実力を推し量る。

 無論、ビビの身に怪我一つないことは分かっている。

 

 

 

「ケホッ!ケホッ!ペル?」

 

「ビビ様!?ご無事で!?」

 

 同じく宙からその身を落とされ、地に伏していたペルーが立ち上がる。

 今のは……

 

「そう、私が口にしたのは"ハナハナの実"」

 

 ハナハナの実、超人系(パラミシア)の能力者。

 能力は自身の周囲や相手に自身の手脚などの体の一部を咲かすことができる能力。

 

「体の各部を周囲に自由自在に咲かすことができる能力よ。」

 

 

 

 

 

「咲く場所を厭わない私の体は…、貴方を決して()がさない。」

 

「"六輪咲き(セイスフルール)"」

「ぐ…!?何だ、これは…!?」

 

 途端、再び突貫するペルーの身体に咲き乱れる六輪の腕。

 身動きが取れないようにあらゆる箇所を拘束している。

 

 そして静かに佇んでいたアキトの身にもその猛威は迫っていた。

 そう、アキトの身にも彼女の能力は及んでいたのだ。

 

 これはペルーとアキトの体の各部位に無数に咲かせた腕で両者を拘束し、上半身を強制的に反り返らせ、背骨を破壊する技。

 

 そして実に緩慢な動きでMs.オールサンデーは身動きの取れないペルーの顎に手を乗せ、止めの一撃を繰り出そうとした。

 

「"(パワー)"、"速さ(スピード)"、それは私の前では意味のないものよ。」

 

 ビビがペルーとアキトの危機に叫ぶ。

 ペルーも最早どうにもならないことを悟り、自身の無力さと力の至らなさに歯噛みする。

 

 この場の誰もがMs.オールサンデーの勝利を疑わない状況で……

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待った。」

 

 突如アキトが両者の間に割り込み、Ms.オールサンデーの右手の手首を掴み、強制的に自身の眼前へと振り返らせた。

 

「…あら、貴方どうやって私の拘束を?」

 

 彼女は実に面白げに、愉し気に、そして警戒と好奇心を隠せない魅惑の笑みをアキトへと向ける。

 

「Ms.オールサンデー、貴方はビビをB・W(バロックワークス)社長(ボス)の下へと連れていくことを目的にこの場に赴いたんですよね?」

 

 それならば話が早いというもの。

 彼女がこの場にわざわざ出向いてきたのもそれが目的だとアキトは予想する。

 

「あら、随分と話が分かる男ね、貴方?」

 

 くすりとほほ笑み、彼女はアキトから身を引く。

 

「ええ、その通りよ。…それでは行きましょうか?」

 

 そしてビビ達に背を向け、その場から彼女は歩き出した。

 そう、B・W(バロックワークス)社長(ボス)であるサー・クロコダイルの下へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてビビとアキトの2人はMs.オールサンデーの案内の下、クロコダイルの下へと出向いた。

 

 そして、クロコダイルと対面した瞬間、何故か牢に閉じ込められていたルフィ達も発見することになる。

 

 途端、アキトの脳内を疑問の声が鳴り響いた。




今作ではルフィ達は原作よりも少し早くクロコダイルがいるレインディナーズへと辿り着いた次第です

<牢に閉じ込められていたルフィ達を見た時のアキトの心象>
「……」

ええェ…
お前ら、捕まるの早過ぎィィ…
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