クラロワ   作:青空 優成

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前置き情報①

・主人公の容姿について

赤髪癖毛 パーマを若干ほぐしたような感じ
黒目
身長 168cm


第1話 始まりは突然に

 

 

「んじゃ次、岩犬 耀(いわいぬ よう)

──七月の後半、炎天下の中、通う高校の校庭に胡座をかいて座り駄弁るオレに、体育の教師である中村が声をかける。

ほんと、ふざけてんじゃないかと思う。

多分今は30度超えの暑さ、そんな中オレ達は体育の授業で、ハードルをやらされている…汗が止まらなくて気持ち悪い。

(早く終わんねぇかな…)

呼ばれたので、仕方なく重くだるい身体を動かして100m走等に使うレーンの前に立った。

「位置について、よーい、ドンッ!」

オレは中村の掛け声と共に駆け出す、ただ…だるいのでジョギング程度の速さでノロノロとハードルを飛んでいく。

ゆっくりと空を仰ぎながら走っていると、鳥が空を飛んでいるのが見えた。

(鳥って、自由だよなぁ…羨ましい、生まれ変わるなら自由に羽ばたいてみたいなぁ…自由って、まじで羨ましいな)

人間は生き物の中でトップクラスに自由だ──

なんて書かれた本をいつしか読んだ気がする。

だけど、16年生きてきて、自由とはなんだろうかと思い始めている。

オレは自由だ、自由なんだと思い聞かせてきたが、そろそろ結論に至ってしまった。

 

 

「オレは自由なんかではない」と。

 

 

それがオレの結論だった。

別に人生苦労しかないとかそんなことは無い。

クラスでは人気者位置に居るし、彼女は居ないが友達は多い。

部活は帰宅部だけど運動音痴ではないし、そこそこ出来る方だと思う。

家庭も裕福で金に困ったことは無い──端的に言って結構良い人生の過ごし方をしていると思う。

じゃあ何故その結論に至ったのかって?

人生にそこそこ呆れ始めているからだ。

6歳から学校という名の檻に入れられ、

勉強という名の刑務を課される。

言っておくが頭が悪いからこの結論に至ったのではない、

頭は良くはないけれど悪くもない、中間。

きっと、大人になってもこの延長でしかないのだと、そう考えている。

学校から会社という檻になるだけ

勉強から仕事という刑務になるだけ──

実に──実に…退屈だし、

そこに自由は無いと思う。

それが16年、そこそこ良い人生を歩んできたオレの結論に至る所以だ。

だが、そんな事考えても全く意味はなくて。

今はただただ

(あー…早く家帰ってスマホゲームの『クラロワ』やりてぇ…)

最近人生の中で中々楽しいと思える時間を過ごしたくて堪らなかった。

 

 

──『クラッシュ・ロワイヤル』通称『クラロワ』

全世界で人気のスマホゲームで、

〔対戦型戦略タワーディフェンスカードゲーム〕だ

76種類あるカード(今後もどんどん追加されていくらしい)から8枚選んでデッキを作り、そのデッキで、相手と戦い先にキングタワーを壊す。

もしくは2つあるサイドタワーを壊して制限時間の3分経過すれば勝ち。

お互いにサイドタワー1つずつ(もしくは2つずつ)壊していて3分経過した場合は延長戦1分へと縺れ込む。

延長戦はサドンデスで先にタワーを壊した方が勝ちで、勝った方が相手のトロフィーを奪えるというシンプルだが奥が深いゲーム。

俺はこのゲームにどハマりしてしまっている。

タワーディフェンスゲームは経験豊富だったのだが、

今までとは異なる相手がNPCではなく対人という点。

クランと呼ばれるグループで人とコミュニケーションをとる点。

3分という気軽に遊べる時間ながらも白熱したゲームが出来る点。

これは、ゲームであって、遊びではない。

──と、某SA〇のセリフが似合うゲームである。

 

 

「はい、岩犬、記録48秒な」

「どうも…」

中村が若干不機嫌そうに記録を伝えてきたので、やる気はねぇよ?とばかりに適当に返事をして、また男子グループの輪に混ざり駄弁り始める。

「ははは、48秒ってめっちゃ遅いじゃんw」

「いーのいーの、つか暑い」

パタパタと体操着を動かして空気を流し込む。

「だりぃよな」

「だな」

そんなどうでもいい会話を、疲れているから適当に相槌を打って

(学校早く終わんねぇかな)

はぁ…と内心ため息をついた。

 

 

 

「よう〜かーえろ!」

「あ、おう」

6時限目の授業も終わり、帰りの会を済ませた2ーGのクラスで、オレに声をかけてきた奴が居た。

──コイツの名前は〔亜南帆 理央(あなほ りお)〕俺よりほんの少しだけ小さく160cmくらい。

黒くサラサラで右側が長い(前髪は眉毛辺り)で左側が短い(前髪はおでこ辺り)髪型と、青い目が特徴。

幼なじみで、ずっと一緒に居る所謂イツメン。家族以外に真正面から自然体で居られる希少な存在…多分、親友なのだと思う。

帰ろうと言われたのでリュックの中に教科書を詰めて、背中に背負う。

「よし、帰るか」

「今日の授業眠かったよね〜、疲れたー」

いつもの様にオレはリオと共に帰り始める。

 

 

 

 

歩きスマホは良くないと分かっているけれど、こんな人通りの少ない路地でしかも田舎なんだし許して欲しい。

俺達しか歩いていない路地は薄暗く、ジメジメしていた。

「暑いしせめて日陰に…って思ったけど、暑いな」

「まぁ夏だもんね…じっとりした暑さだぁぐへぇ」

スマホを見ると時刻は17時を過ぎているというのに、まだ陽は高い。

太陽を見ていると余計暑く感じるので、手元のスマホに目を落とす。

「ラヴァハウンドやっぱ強いな」

やっているゲームは勿論クラロワ、流石に歩きながらバトルはやりたくないので、トレーナーと呼ばれるNPCと遊んでいる。

 

 

ラヴァハウンド

 

──飛行タンク型ユニット 7コスト 攻撃力は微々たるもの

死ぬとラヴァパピィ──アタック型ユニット──を6体排出する。

 

 

そんなラヴァハウンドをオレはすっかり大好きになってしまい、

今まで使っていたジャイアントを辞めて、ラヴァハウンドを使い続けている。

 

 

ジャイアント

 

──地上タンク兼アタック型ユニット 5コスト

 

 

またもラヴァハウンドを使って勝利しご満悦のオレの隣では──

「行っけぇ!穴掘り師!!」

──リオがスマホを弄ってクラロワをしていた。

そう、リオもクラロワに激ハマリしているのだ。

そしてリオが大好きなユニットは穴掘り師と呼ばれるカードだ。

 

 

穴掘り師

 

──地上ノーマル型ユニット 攻撃力体力ともに普通 相手フィールドに直接召喚できる (タワーに与えるダメージは少ない)

 

 

「やった!トロフィー3000超えた!!」

「まじかよ、俺まだ2200らへんだぞ…」

 

 

トロフィー──バトルで相手に勝利すると相手から奪える、奪いまくって集めたトロフィーは自分が持っているトロフィーとして換算されていく。そのトロフィーが3000を超えるとレジェンドアリーナ(今は1つランクダウンしてホグアリーナという名前)にフィールドが変わり、そのフィールドになると、ショップでウルトラレアが売られるようになる。

まず目指すは3000と言われるように1つの通過点である。

 

 

「穴掘り師のお陰だよ〜!!」

「オレだってラヴァで3000目指すぞ」

「頑張ろう!」

ガシッと腕を絡ませて、お互いの士気を高める。

そんな光景に内心すげぇ青春っぽい…ただゲームでこんな盛り上がってんの若干恥ずかしい。

と、顔をニヤつかせながらどこか微妙な表情になったその時───

 

 

クラロワの画面にズズズズズとノイズが走り始めた。

 

 

「な!?バグっ!?」

「いや、僕も同じくなってるよ!」

激しくなるノイズに目がチカチカして痛くなり、思わず瞑ってしまう。

「っ──!?」

すると、頭の中に何やら声が響いてくる。

「我は汝、我、汝の中に居場所を移したり。我、汝に空を飛べる能力と、身体を溶岩に変質出来る能力と、死んだら6体に小さく分裂する能力を与える。この力存分に使いたまえ、願わくば世界の調和を頼まんと──」

「───???!」

意味が分からず、そして何が起きているのかも分からないが、ゴゴゴゴゴゴとノイズ音も走り始め、耳を両手で塞ぐ。

「な、なにこれぇ?!」

「わ、わっかんねえ」

にしてもさっきの声、どっかで聞いた気が──……。

 

 

 

 

ノイズ音が収まったのを確認し、耳を解放する。

「め、目も開けてみるぞ」

「うん、僕も」

ギュッと瞑っていた目を、恐る恐るうっすらと開けてみる。

そして、目に飛び込んで来たのは──

「なぁ………」

「…………え」

呆けた声を二人同時に、そして──

 

 

「「何処だよここおおおおおおおおおお??!」」

 

 

飛び込んできたのは───オレ達が居た路地裏──ではなく

中世ヨーロッパ風の世界の路地裏だった。

まさか、まさか、まさかまさかまさか……

逸る気持ちと信じ難い気持ちでゴチャゴチャになりかけるが、それをなんとか制して…この現象の名前を思い出す。

「理央、これは、これはもしかすると」

「異世界転送って奴だぁぁぁぁああああああッッ」

そう、目を開けたらそこは、異世界なのでした。

異世界転送──本来居るべき世界とは違う別の世界に転送されること。

異世界は元の世界では成し得なかった魔法ありありのファンタジー溢れる世界──と聞いている。

実際転生されるなんて夢にも、ほんと夢にも思っていなかったしいざ転送されてみると…新境地に立たされた気分であまり嬉しくはない。

「にしても、流石に唐突すぎてよく分からん…」

「なんか、目を瞑った時に変な声が聞こえたんだけど、ヨウはどうだった?」

何やらリオにも聞こえたらしい謎の声。

「オレも聞こえたんだよなぁ…なんか能力を与えるとか行ってたけど、まじか?」

「僕も能力を与えるとか言ってたなぁ」

「まじ?どんな能力だ?」

「穴を掘る能力……しょぼい…」

(穴を掘る…能力?)

ここでふと、気付いた、もしかしてもしかすると。

ここでリピート「我は、汝に空を飛べる能力と、身体を溶岩に変質出来る能力と、死んだら6体に小さく分裂する能力を与える」……。

 

 

「まさか!!」

 

 

某メタル〇アでスネ〇クが敵に見つかった時のSEが流れそうな「!」の顔で、リオを見つめる。

オレは、ラヴァハウンドの様な能力を…

リオは、穴掘り師の様な能力を…。

まさか、あの声は──。

「とりあえず、路地裏抜けて、どんなもんか見てくるか」

「さっきの顔は1体なんなの?あと僕のしょぼい能力については無視!?」

オレは地蔵のような顔をして、ポンと理央の肩に手を置くと

「ま、オレは空飛べるし溶岩になれるし死んだら分裂するぞ?」

「はぁっ!?穴掘るだけの僕からしたらなにその豊富な能力!」

「なんか、うん…すまんすまん」

「なんかムカつく」

「んじゃ、行くか」

ラヴァハウンドの能力に酷似、穴掘り師の能力に酷似している件についてはまだ確証が持てないので理央には話さないでおくことにした。

 

 

 

「にしても…まじで中世ヨーロッパ風だな」

路地裏から出たオレ達は、商店街らしい場所に居た。

ワイワイガヤガヤと活気溢れるその場では、明らかに挙動不審なオレ達は完全に浮いている。

「らっしゃぁせ!そこの兄ちゃん、フランコパンは如何?」

パン屋らしきオッサンにフランスパンに激似のパンを「これ買わね?」とばかりに接客される。

一応バッグから財布を取り出して、

「これ使える?」と確認。

だがまあ

「アアン?なんだよこの硬貨は、おもちゃか?さっさと200ペリス出しな!」

勿論、使えなかった。

「ペリスって、どんなの?」

きっとこの世界の通貨なのだろうペリスの形を見ておきたかったのだが…きっと冷やかしだと思われたのだろう。

「商売の邪ぁぁっ魔!とっとと失せろ!」

しっし!と追いやられてしまい、確認出来なかった。

仕方ないので、路地裏に戻り、現在の所持品の確認。

スマホ(さっきまでクラロワやってたから充電40%切ってる)と、財布(使えない硬貨と紙幣)と、教科書(意味無し)と、菓子パン(チョコチップスティックパン)と、スナック菓子(塩味)だけだった。

「うっわ、しょぼい…使えそうなのが菓子パンとスナック菓子くらいしかない…リオは?」

理央の方を見ると、殆どオレと同じ所持品に、飲みかけのコカ・コーラがあるだけだった。

「ごめん、僕もこんな感じの貧相だよ」

「いや、悪いのは唐突に異世界転生された理不尽さだ…予告しといてくれたら準備万端で来たんだけどな」

「にしても、どうしよっか?」

「この世界のこと、多少なりとも理解しておきたいし、聞き込みいくか?」

まだ何も分からないこの世界について、少しでも良いから理解しておきたい。

「そうだね、じゃあ行こうか?」

オレ達は立ちあがり、また路地裏から商店街に出ようとしたその時だった──

 

「お願い!その子捕まえてええええ」

 

 

ヒュンヒュン!と何やら結構なスピードで駆ける小柄な少女を、追いかける見た感じ背丈は同じくらいの女性。とりあえず目の前を通り過ぎようとしていた少女の肩をガシッと掴む。

「ちょ、離せッ!」

「ありがとう!はぁ、はぁ……はぁ」

「ゆっくりでいいぞ、押さえとく」

銀髪ポニーテールで可愛らしい顔立ちが特徴で羽衣みたいなのを纏った彼女は「はあはあ」と息を切らしながら

俺が押さえてる黄色髪ツインテールでやんちゃそうな印象の少女に歩み寄る。

「さぁ、私の宝玉を返しなさい?」

「や、やだね!これが絶対の絶対に必要なんだよ!!」

「「?」」

状況がよく分からないオレとリオだが、何やら少女が彼女から宝玉を盗ったらしいということは分かった。

「ん…盗みは良くないぞ?ほら、お姉ちゃんに返しな」

「うん、僕もそう思うな、困ってても人から盗るのは良くないと思うな」

「っーーー!!るっせぇんだよ!」

 

 

「ぇ?────」

 

 

何やら腹部辺りにズブリと何かが刺さるのが分かる。

「なっ!……───っぁ」

口からは唾液がポトポトと滴り落ち、異常な不快感に身体を侵される。

見ると、腹にナイフの様なモノが刺さっていた。

「───は?……?」

「え?」「え?」「は?」

刺されたオレは勿論だが、それにビックリしたのかリオと銀髪少女も驚く…しかし何故か刺した本人の金髪少女も驚いていた。

だがすぐに我に返ると

「退けよッ!」

バン!と跳ね飛ばされた。

急な衝撃にオレは尻餅をついて、少女を手放してしまう。

その隙に少女はダダダと駆けて壁をスタタンと跳ね、足早に去ってしまった。

「ぁ…ぐ。痛って」

「だ、大丈夫?じっとして!」

「大丈夫ヨウ!?」

「あ、ああ、平気だ、って君…あの子追いかけなくていいのか?」

「あ!……ううん、追いかけたいのは山々だけど、放ってはいけないし!」

「いや、オレのことはいいから、追いかけなっt………」

あ、駄目だ、意外と出血量多かったらしい。

なにやら彼女が身体に何かを塗ってくれている感覚はするが、何を塗られているのかは分からない。

だが不思議と痛みがスーッと引いていくのが分かった。

魔法かなにかなのだろうか──。

遠のく意識の中、必死になってくれてる彼女と、慌てふためくリオを眺めながら、意識は遂にそこで途切れた──

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