(ん……)
朦朧とする意識で覚醒した俺は、
すぐさま疑問が浮上する。
───(ここってコンクリートの上だよな?)
寝そべり体勢なのは直ぐに分かった…だが解せない点がひとつ
──(コンクリートを枕にしているのなら頭は痛いはずだが…?)
まだ目を開けていないので状況を完全に理解している訳では無いのだが、置かれた状況は分かった。
───(この感触は…少し筋肉質なのが気になるが…膝枕?)
そう、膝枕をされているらしいのだ。これは、健全たる高校生である俺にとって、興奮してしまう、目を開けて真相を確認せねば──
■
「あ、起きた…、えと、大丈夫?」
「─」
目を開けて最初に声をかけてくれた彼女の声は、頭上からではなく
足元の方から聞こえてきた、ということは…
「おはよう大丈夫?」
「なんでお前っ!?」
筋肉質な時点で少し怪しかったが、そこで気が付くべきだった
どうやら俺に膝枕してくれていたのは
「よっと」
身体を起こして、軽くストレッチをしてみる。
「……大丈夫だ、刺さらたというのにな…」
「あ、うん、それはアリサのお陰だね」
身体は問題なく動き、腹部の痛みもない、完治のようだ。
「だな、ありが……アリサ?………え?」
銀髪ポニーテールの彼女をアリサと呼んだのは理央だ…んん?
「いや、お前…なんで名前知って?しかも呼び捨て…?」
「あ、うん。それは耀が寝てる間暇だからお話してたからだよ、ね、アリサ」
「無事みたいで良かった!そ!ヨウが寝てる間暇だったからリオと話してたの」
「そ、そうなのか」
俺が知らない間に名前を知られ呼び捨てにされてる辺り大分親しくなったのだろう…だが改めてアリサの方に振り向いて
「よし、んじゃ改めてお礼と自己紹介を、まず、ありがとう助かった、死ぬとこだったよ割とガチで。ほんとにありがとう。んでえっと、自己紹介か…そうだな。俺の名前は、岩犬 耀…ヨウでいい…ってもう既にヨウか。後は…異世界から転送されたからこの世界のことが分かってない無一文…よろしく」
とりあえず軽く自己紹介をして、反応を待つ。
すると首をちょこんと傾げてアリサ
「イセカイ?ってのはよく分からないけど、よろしくねヨウ!じゃあ私も軽く自己紹介しとこうかな、私の名前はアリサ、アリサと呼んでね、世界を旅する旅人で、目的は
今度は俺が首を傾げてリオに問う。
「宝玉ってなんだ?」
リオは、コンクリートに正座したままなのは辛かったのか、よいしょと
「ん〜…僕よりアリサに聞いた方が…いいと思うよ。説明も難しいし」
(それもそうだな)
反射的にまだ出会って自己紹介しかしてないアリサよりかは14年の付き合いになる幼なじみのリオに何かと喋りかけてしまう。
なんというか安心感というか信頼感というか、そんなもので。
「えっと…アリサ、
「宝玉はね、15歳を迎えた時に
「なるほどなるほど…ん?〔バトル〕?」
「〔バトル〕というのは、この世界独自のルールで、何か欲しいものがある時、トロフィーが欲しい時にバトルを申請することが出来るの…バトルではお互いに賭け金(無くても可)と、賭けトロ数を決めて(最低でも1は賭けなくてはならない)、両者その賭けに納得したらバトルスタート。バトルの内容は8対8のタワーディフェンス…3日間バトルを行って勝利条件は3日経過した時により多くの城を壊していた方が勝ち、もしくは先に3つ城を壊した方の勝ちってルールだよ。たまに独自のルールを作ってやってる人もいるけど…」
「──クラロワみたい…だな?」
アリサの話を聞いてみて、なんか面白そうな世界だということは認識できた。だが問題なのは────
「…その宝玉とやら、盗まれちゃったんだよね?」
リオが心配そうに言うと、アリサは立ち上がって、涙目になってしまった。
「そ、そうなの…!どうしよう〜……!!」
「いや、でも待てよ…宝玉って15歳になったら貰えるものなんだろ?じゃあ何故盗む必要があったんだ?」
「きっと、売るんだと思う」
「?う、売る?いやでも…貰えるなら買う必要も、売る必要もないって言うか需要がなくないか?」
売るのだとしても、買い手がいなければそれは商品ではなく展示物だ。
皆が貰えるもの、つまり既に持ってるものもしくは貰える予定のものをわざわざ買うだろうか…?
疑問に思っていると
「基本的には需要はないし買い手も付かないけど…でもごく稀に闇ルートで売買される時があるんだよね…何に使ってるのかは分からないけど」
「何に使ってるか分からないってのがな…でも盗られた宝玉を売られるかもしれないのか…」
そこで遅くもその事実に気が付く…
「って話してる場合じゃなくないか?あの小娘を探さないと」
刺された報復を兼ねて絶対に探し出してやる!腕をブンブンと回して
「んじゃちょっと空飛んで探してみるか」
何者かから授かった空を飛べる能力を思い出したので、それを駆使して空から探してみることにする。
「ん──?」
中々に名案だと思ったのだが、何故かアリサは俯いてワナワナと肩を震わせている。もしかしたら何か勘違いをさせてしまったのかもしれない。
「勘違いするな?俺は鳥人間とかじゃない正真正銘ヒトだ。空飛べるのはこの世界に来る前に何者かに能力を授かってな…ってまぁまだ使ったことないから本当に飛べるかは分からないんだが」
「ヨウっ!あなたもしかして
近寄ってきて、やたら興奮気味に、俺の肩に手を置いてぴょんぴょんと跳ねるアリサ。ただ喜んでいる理由にピンと来なさすぎて困惑顔になってしまう。
「いや…あの…興奮のところ悪いんだが…ちょ、揺れる…!揺れる!!」
「だって!凄いんだよ!凄いんだよ!!」
「お、おう…何が凄いのかは分からないけど、とりあえず落ち着け」
窘めて、とりあえず落ち着くようにと促す。
空が飛べるだけでこんなに興奮するということはもしかすると…
「この世界って〔魔法〕……ないのか?」
魔法があるのなら何も空が飛べるというだけではこんなに興奮したりしないだろう。
気絶する前は青かったが今は薄暗くなってきている空を見上げても、空を飛ぶ亜人や獣人種も見かけない。飛んでいるのは地球でもよく見かける鳥のような生物─至って平和な空だ。
「この世界にも魔法はあるけど…人間で使える人はとても希少で、
なるほど、人間は。ということは他の種族は使えるのだろう、そこは流石異世界といったところ、一部の人達って言うのも気になるが、アリサが魔法が使えないということに驚きが隠せない。
何せ、先ほど気絶した時に魔法(?)のようなもので治療してくれたのはアリサだから
「え?アリサ…魔法使ってなかったのか?俺を治療してくれた時に」
服を捲って、刺された部位を確認してみても、傷跡がさっぱりと消えている。こんな芸当魔法で無ければ出来ないと思ったのだが
「魔法を?ううん、私がようの治療に使ったのはこのディアっていう回復薬だよ、首切断とかそういう致命傷以外なら何でも治る万能薬…結構高いんだよ?」
高いんだよ?の部分に少し後ろめたい気持ちになる
旅人と言っていたし、金銭に余裕は無いのだろう、
使ってくれて助けてくれたということにただただ感謝しかない
アリサに向けて手を合わせてペコリと一礼をすると
アリサは手をブンブンと振って苦笑いで応じると、
頬をポリポリと掻いてから
「あのさ、ヨウとリオにお願いがあるんだけど」
「ん?」「うん?」
暫し、「うーん」「でもなぁ」「そんな厚かましい…」
なんてブツブツと呟いてから、俺とヨウの方にハッキリと身体を向けて、
「お願い、私にその力を貸して!」
「……?」「…??」
唐突に力を貸してと頭を下げられた俺達は戸惑ってしまう。
力を貸してとは文字通りこの能力を使って旅の助けをして欲しいとの事なのだろうか
「えっと、それはつまり?」
とリオがアリサにどういう意味かを尋ねる。
「あ、えっと…私の夢は〔宝玉を10万集めて王に挑むこと〕って説明したじゃない?それで宝玉を集める方法はバトルで勝つことって言ったよね?そこでヨウとリオの力を貸して欲しいの。具体的には、バトルでは部兵人形ならではの強さがあって、しかも部兵人形は希少価値が高く、あんまり部兵人形に協力してもらってる者は少ない。だからヨウとリオが居れば心強いし、夢に一歩近づけるの、お願い!どうかその力を私に貸してほしい!」
「俺達が居れば、アリサの助けになるってのは分かったんだが…部兵人形が居ると、なんでアリサに利点があるんだ?そんなに強いのか俺達って…?」
首を傾げて質問する俺たちに、「あ!」と思い出したように慌て出すアリサ
「って宝玉が無きゃ始まらない!!探しに行かなきゃ!売られる前に!」
「っ!そうだな!話し込んでる場合じゃねぇ!んじゃちょっと空から───」
と空を飛んでみようと足をグッと曲げて、さながらスーパーマンの如く空に飛び立とうとした所をガッとアリサに掴まれる。
「そ、それは駄目!!」
「……?んん?」
「ここ人間の街【バルンブルク】では魔法の使用が禁止されてるの!使ってるのをバレたら即逮捕だよ?」
「っまじかよ…んじゃあ歩いて探すしかないわけ?」
「それは急がないとじゃない?尚更話してる場合じゃないね」
「だったね…とりあえず商店街を抜けて、通りに出てみましょ!」
空から一気に見つけるという策が、逮捕という言葉にビビってあっさり断念…、歩いて探すしかないということに一気に脱力感を覚えるが、これもアリサの為だと思い、路地裏から駆け出す。
「んで。何処に居るかだよな…検討は?」
走りながら横を走るアリサに聞いてみる。
「…そうだね…私もこの街に来て数週間経つけどあの子を見た記憶は───」
うーんと悩むアリサ、その横にはゼェゼェと息を切らしているリオの姿が。
リオは元サッカー部なのだが、今は帰宅部と俺と同じで最近運動を怠っていたので、商店街の人混みの中走るのは堪えるのだろう。
そこでうーんと悩んでいたアリサが急に立ち止まり、
ハッ!と声を上げた。
「────そういえば、病院にこの前来てたような気が…」
「病院?」
「うん!そこに行けばもしかしたらの可能性しかないけど居るかも!」
「もしかしたらの可能性でも有るだけマシだ…、よし行こうぜ、案内頼むぞアリサ」
アリサは頷いて早速また走り出したので俺も続いて走り出す、
後ろでは
「はぁ…はぁ…ちょ、まっ───」
リオが息を切らしていた。
商店街を抜けて、走ること数分した場所に、大きく読めない文字が書かれた看板の立てられた病院があった。
石造りで出来た建物は、少しばかり汚れてはいるが比較的綺麗で、中には人も結構居るようだ。
「はぁ…はぁ流石に疲れたな……」
「はぁ………ぁ…僕も…」
疲れて膝に手を当て、肩を揺らす俺達2人に対してアリサは「んん!」と手と手を合わせて伸びをする
「良い運動になったかな〜」
この20分走りっぱなしだった状況を「良い運動」なんて言ってのける辺り流石旅人と言わざるを得ない、同い年のアリサに運動量で劣っているのは凄く恥ずかしい話だが如何せん運動をサボってきた2人だ…仕方ないっちゃ仕方ない。
そして2人共に「運動しとくか」と小さく呟いて、身体を起こす。
「うっし…じゃあ、居るといいな、入ってみるか」
「だね…これで居なかったら…もう走れない。いや走るけどさ」
「居て!お願いっ!」