数々の仕事の面接で落ちた俺が何故かお嬢様方の執事をやっている件について 作:アインスト
どうか生暖かい目で見守ってやってください。
では、どうぞ。
さて、と。
必要な荷物は持ってきたから大丈夫だな。
毎日の着替えと嗜好品と‥‥‥あとは、これ。
剣道部時代に買ったmy竹刀。
これだけは手放せない。
まー、これだけ準備すりゃ十分だろ。
恐らく仕事服は渡してくれるだろうし。
そうして俺はそっと扉のノブに手を伸ばし、慎重に開く。
ギギギッ、と重い音がして扉が開く。
扉を開けるとそこに明らかに俺の先輩にあたるであろう老人が立っていた。
しかも杖とか無しで。
まさに「まだまだ現役」というやつだ。
で、その老人の名前が御劔 信三郎っていうらしい。
「ふむ‥‥‥そのやる気に満ちた眼差し‥‥‥君はこれまで辛い事があったのだな」
「辛い事って‥‥‥まぁ今までこの目付きで就職出来ませんでしたし」
「だがその眼はまさに良い眼をしている。これから戦場に行く武人そのものだ」
「いやいや‥‥‥俺そんな大それた人じゃないですよ」
「いや、少なくとも儂にはそう見える。これからよろしく頼むぞ、氷室殿」
「じゃあ、こちらもよろしくお願いします。御劔先輩」
「そら、とりあえず着替えてくると良い。お前さんの服はそこのロッカーに入っとる」
「わかりました。急いで行ってきます」
たどり着いたロッカールームには既に俺のロッカーが用意されていた。
おぉ、もうメンバーとして認められてるのか。
さて、さっさと着替えるか。
「サイズは‥‥‥ピッタリ。とりあえず俺の荷物も入れとくか」
そして、リビング?なのかわからんが大広間に到着する。
そこには昨日の面接官だった華憐さんとさっき花壇で見かけた茶髪の女の子、それから背が小さい子と華憐さんの姉らしき女性がそれぞれの席に座っていた。
そして、その姉にあたる女性の横で御劔先輩が立っていた。
「あらあら、似合ってるじゃない」
「わー、あのお兄ちゃんが新しい人?」
「昨日ぶりですね、剣士さん」
「‥‥‥」
まずは自己紹介から始まる。
あの姉らしき女性の名は真奈(マナ)さん。
おっとりした雰囲気を漂わせた人だ。
‥‥‥あぁちなみに何処がとは言わないが大きい。
言わねぇからな。
んで、茶髪の女の子の名は哀花(アイカ)さん。
常に無口っつーか俺に対しては一切話をしてくれない。
何か理由があるのか‥‥‥?
さて、次に背が小さい子の名は栞菜(カンナ)ちゃん。
無邪気な女の子っぽく、人懐っこい印象を持つ。
あ、一応言っとくが俺はロリコンとかじゃねぇからな。
「じゃあこれからよろしくね。剣士くん」
「あ、はいわかりました」
「御劔さん、剣士くんに基本的な仕事内容を教えてあげてください」
「かしこまりました、お嬢様。では氷室、此方だ」
案内された先は‥‥‥なんだここ。
厨房?
あー、ちょうど昼時だから何か飯作れってやつか。
うーむ、俺の得意な料理‥‥‥あれだな、親子丼。
鶏肉と玉ねぎと卵があれば作れるし。
「ここで何か飯を?」
「そうだ。とりあえず今回はお前さんが作ってみろ」
「え、俺が?」
「そうだと言っとるだろ。お前さんの得意料理を儂は見てみたいのだ」
「は、はぁ。まぁやるだけやってみますよ」
御劔先輩から期待されている。
ヤバい‥‥‥これ試されてないか?
うわぁ緊張してきたぁ‥‥‥。
よし、とりあえずいつも通り作ってみるか。
やってやんぞ。
‥‥‥で、それから小一時間経った後。
ぱぱっと作って終わり。
器に盛って完成。
「ふむ‥‥‥手際が良いな」
「いやぁ、何せ家族とは暮らしていましたが料理は俺が作っていたんで‥‥‥」
「そうか。まぁ及第点と言ったところかの」
「これで及第点かよ‥‥‥」
「いちいち
「わ、わかりましたよ御劔先輩‥‥‥」
「さ、早くお嬢様方にお持ちするぞ。用意だ」
「り、了解っす」
御劔先輩に指示され、トレーに乗せて運ぶ。
美味いって言ってくれっかな‥‥‥?
「お食事をお持ちしました、お嬢様方」
「わかりました。入ってください」
「失礼致します」
「ど、どうも」
「あら、今日の昼食は剣士さんが?」
「は、はいそうっす」
「へぇー、ならきっと美味しいわね。ね、栞菜」
「うん!!楽しみだなぁー、お兄ちゃんの作ったお昼ごはん!!」
「そんな期待されてもいいもんじゃないっすよ‥‥‥」
そうして四人の前に作った親子丼を置く。
栞菜ちゃんは目を輝かせて見ており、恐らく食べた事が無いんだろう。
哀花さんは‥‥‥なんだろう、凄い無関心な目で見ている気がする。
華憐さんはじっと料理を見つめ、できばえを見ているようだ。
真奈さんは興味深そうに見ている。
きっと見定めているんだろうな。
俺が本当にここで働けるか否かが決まる。
「‥‥‥それじゃ、いただきましょうか」
真奈さんの一言で四人は食べ始める。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「もぐもぐ‥‥‥」
「(く、空気が重てぇ‥‥‥!!や、ヤバいプレッシャーに潰されそうになる‥‥‥!!)」
ふとそんな事を考えていると哀花さんが口を開いた。
「‥‥‥何これ」
「‥‥‥え」
「‥‥‥普通に美味しいんだけど」
普通に美味しい、という一言で俺は派手にずっこけた。
そりゃあもうドリフみたいに。
「‥‥‥というか男が料理上手とか腹立つ」
「いだっ、痛いっすよ哀花さん!?なんで叩くんすか!?」
「後ろにいた貴方が悪い」
「そんな理不尽な!?」
早速哀花さんから叩かれた。
解せぬ。
「それだけ哀花は貴方を嫉妬してるってことね。そうでしょ?」
「別に。真奈姉さんは勝手に人の思考をすげ替えないで」
「あらら‥‥‥辛辣ねぇ」
「お姉ちゃん素直じゃないねー」
「‥‥‥ふん」
「えぇーっと?これ誉められてんの?それとも貶されてんの?」
「恐らく誉めているんだと思いますよ?哀花姉様は素直じゃありませんから」
「へ、へぇ‥‥‥」
ツンデレってやつ?
それにしたって口下手過ぎやしませんかねぇ‥‥‥。
まぁそんなこんなで料理の及第点を獲得した俺であった。
「‥‥‥悪くなかったから、また作って」
「あ、了解っす」
あれ、なんか好評だったんだが。
どゆこと?
次回をお楽しみに。
では次回の更新でお会いしましょう。
感想、質問等お待ちしてます。
ではでは(´・ω・`)ノシ