「えへへぇ、ケンター♪」
スリスリ。
「えへー♪」
ギュウ。
「んーおちつくー♪」
むぎゅうー。
「あーもう暑苦しいからスリスリすんな抱きつくなぁ!!」
どうも俺です。健太です。
なんか知らないけど昨日助けた捨て猫が擬人化してウチに来ました。どういうことなの。
「えーケチー。いいじゃんちょっとぐらいー」
「ケチも何も夏だから暑苦しいんだよ察しろ!!」
で、今どうなってるかって、タマヨ…もとい珠代は俺に落ち着くからって言ってスリスリぎゅう、とスリスリからの抱きつきコンボを決めてくる。
そら暑苦しいったらありゃしないが、それ以上に…その…あれだ、コイツ、見た目はもうそれは誰もが認める美少女なもんだから…その…健全な高校2年生男子としてはよろしくないのだ。いろいろと。
「とにかく!ここにいてもいいからとりあえずスリスリも抱きつきも禁止!いいな!」
「えー…わかったよぉ…ケンタのケチ」
「まだ言うかコイツ…」
はあ…これでは書けるものも書けないではないか。
とりあえずコイツは見なかったことにして、パソコンに向き直し作業に集中することにした。
***
「ねーねーケンタ、ケンタは何をしてるの?」
「ん?あー…今か、これは…うん、小説を書いてるんだよ」
「しょうせつ?」
「あれだ。物語を書いてるのさ」
「へぇ、凄いねケンタ!」
「はぁ…いいか、凄くなんてないさ、俺は」
今俺がパソコンで書いてるのはいわゆる異世界転生もの…まあ、凄くテンプレなやつだ。正直言ってつまらないだろう。
実際、俺も趣味で他に幾つか作品をネットに公開しているが、大した評価は貰えてない。他の大作に埋もれるだけの駄作だ。
「でも、そういうのができるって凄い事じゃないかな?できない人だって、いっぱいいるんだし…」
確かに、珠代の言う通り本当にできない人から見たら俺は凄いのかもしれない。けど…
「…あのな、俺の場合はその『できない人』が無理してやってるようなもんなんだよ。できる人からしてみれば、下手くそが無理して背伸びしてるようなもんなのさ」
「そう…なんだ。でも、そんなこと、ないかもよ?」
「…うっさい、静かにしてろ。俺は作業に戻る」
「…はぁーい」
珠代を無理くり黙らせ、執筆に戻る。
そうだ。俺は、ただ『できない』事の中から『できそう』な物を選んで無理して背伸びしてるだけなのさ…。
***
それから、珠代は夕方になったので帰っていった。というか、俺が帰らせた。
これ以上居させたら俺的に困る。一応、あいつは(見た目だけだが)年頃の女の子なのだし。
母さんは茶化してまだ居てもいいのよ、と言っていたがそんな事できる訳もないだろいい加減にしろと言って無視させた。
…何故かその後母さんからチキン童〇呼ばわりされたけど。理不尽。
***
翌日。
「ケンター♪遊びに来たよー!」
ま た お 前 か 。
玄関先で軽く絶望しかけた。
「はぁ…どうぞ」
とりあえず抵抗しても母さんが上げるだろうし諦めることにした。
その日もとりとめのない話をして、夕方になったら帰らせた。
そんな日々が大体1週間くらい続いた。
たまーに見せる仕草にちょっとドキッとしたり…人の姿でも猫なんだな、と思わせるような動きをしたり。
何だかんだ俺は、この猫娘のいる非日常に慣れてきていたのかもしれない。
それに…なんだ。珠代と一緒にいるのも…その、あれだ、悪くないし。
むしろ楽しいとさえ…いやいや、それはない…ない?
よくわからん。
そんな時の事だった。
***
「あ、健太ー?ちょっとおつかい行ってきてくれないー?」
唐突な母からのおつかいの依頼。珠代という友人(笑)が来てるのに何を言うのか。
「ハァ?何でさ、母さんが行けよ。それに珠代も来てんのに」
「口ごたえしない。ほれ、行ってきな。あ、珠代ちゃんも一緒にね」
………え?
「ハァァァァ!?何言ってんだクソババア!?何であいつと行かねぇといけねぇんだよ!?」
「うっさいねクソガキ!早く行ってこいや!!ほれメモ!行った行った!」
その後俺は珠代共々メモと金を渡されて家から追い出された。どないせーっちゅーねん。
「はぁ…どうしてこんなことに…」
「でも一緒にお買い物だよ!楽しみー♪」
まあ、珠代が暴走しないように見張りながら行けばいいか…ってか。
「…待てよ、俺と珠代2人っきりじゃね…?」
「ん?そうだねー」
珠代が無邪気に答えてくる。
つまりこれって……!?
「で、ででっで…」
「…?ケンタ、どうかした?」
…これは…!!
「………デートじゃねぇかーー!!??」
嵌められたこんちくしょう!!??
何故か顔が赤くなるのを感じた。