「ひまでごわす」
「はあ?」
ケーキ屋さんのカウンターに身体をグテーっと乗せながら同じアルバイトの女性と話す。
時間にして夜の8時ごろ、帰宅ラッシュも過ぎ、駅の近くも人通りが少なくなっていた。そのため、わざわざケーキ屋さんに足を運ぶ人も少なくなり、いわゆる暇というものが生まれていた。
「こーら、ショーケースにもたれないの」
「もたれてないですよ〜、ショーケースに胸を置いてるだけですよ〜」
ショーケースの上にはエプロンを着ている上からでもわかる大きな胸がある。目の前を男性が通ればジロリと見るような光景だろう。
柔らかそうな胸はショーケースの上で新しいケーキのように置かれている。
「…もいでやろうか」
「せんぱい、流石に目が怖いですよ」
「神はどうしてこんなにも差を与えたのか」
「いやいや、こんなにあっても邪魔なだけですよ?」
下から胸を持ち上げると、涙目になるせんぱい。
「どうせ、私の胸は小さいですよ!」
「いやいや、せんぱい。肩が凄くこるんですよこれ!こんなにあったって別にいい事ないですって!」
「はっ!一度は言ってみたいそのセリフ。『あー、胸が大きいから肩こるわ〜』どうせ貧乳にはそんなことわかりませんよっだ!」
言い争いをしている時にカランカランと扉の開く音がした。
「「いらっしゃいませー」」
即座に仕事モードに入る私達だったが、お店に入ってきた人物を見て、そんな仕事モードも解けた。
「お疲れ様、じゃあ私は裏に引っ込んで店長の手伝いしてくるから。混んできたら言ってね〜」
せんぱいはそう言いひらひらと手を振りながら、中へと入っていった。
私はきた人物を見て、髪型を少し整えた。
「お仕事お疲れ様でした」
「うん、今日も疲れたよ」
ネクタイを緩めながらイスに座る男性。そう、この人が私が密かに交際中の男性である。向こうは大人で私は高校二年生。少し年の差はあるが、れっきとした彼氏彼女の関係。
「うふ…うふふふふふふ…」
「お、おーい、香澄?大丈夫か〜?」
一人でニヤニヤしていると、心配されてしまった。いけない今はまだお客様だからしっかりと接待しないと!
「お客様、なにか御注文はありますか?」
「そうだな、じゃあいつものケーキとコーヒー1つ」
「かしこまりました」
ショーケースの中からチョコレートケーキを取り出し、用意してあるコーヒーを前に出した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
私は彼の前に座り、まじまじと彼の食べている姿を見つめる。
「いや、食べにくいから」
「そんな事ないよ、大丈夫!」
「いやいや」
そう言いながら彼は苦笑していたが、お腹が空いていたのか直ぐに食べ始める。
「うん、美味しいよ」
「えへへ、ありがと」
彼の頼むケーキはいつも同じなので店長が「彼に作るついでにあのケーキの作り方教えとくよ」と言ってきて、レジ打ちと商品入れが仕事の私の唯一作れるケーキだったりする。
彼がケーキを全部食べ終わり、コーヒーを少しずつ飲んでいる。
そんな彼をまた私はまじまじと見ている。
「どうした?」
「うん?やっぱりカッコいいなって」
満面の笑みでそう言うと、彼は顔をほのかに赤くしながら微笑む。
「ありがと、そう言ってくれるのはお前くらいだよ」
「えー、そんな事ないよ。かっこいいよ」
「香澄は俺には勿体無いくらい、可愛いよ」
「も、もう!そんなこと言ってもサービスはしないんだからね!」
照れながら机に突っ伏す。彼は笑顔でそんな私を見る。
そして彼の視線の先にはテーブルに乗っている私の胸へ…そして、彼は私の胸を鷲掴みにし、そのまま私を外へ!!
「いや、見たのは認めるけど、そんな事しないし」
「はいはい、ぶーっ。結局男はみんな胸なんだもん」
唇を尖らせながら、チクチクと文句を言う。
彼は困りながらも、何か思いついたように表情を変え、私の顔に手を伸ばしてきた。
頰を撫でると、微笑して頭を撫でてきた。
「俺はお前が好きだぞ」
ただそれだけ言うと、彼は私の頭から手を離し、コーヒーをまた飲み始めた。
私の顔は赤くなって、彼を見れなくなった。彼はそんな私を見ながらニヤニヤしている。
「…ばか」
彼を赤い顔のまま睨みつけていた。絶対仕返ししてやる。私はそう思いながら彼を睨みつけていた。
「はいはい、バカップル。見つめ合うのは良いが、そろそろ閉店時間だ。香澄、掃除手伝ってくれ」
中から店長が出てきた。彼も「ごちそうさま」と言いお皿をカウンターに戻した。
「いつもありがとね。って言っても、香澄がいる時にしか来ないか」
ガハハと店長は笑う。店長も女性なんだからもう少し笑い方を考えた方がいい気がする。
「じゃあ俺はこれで」
「ちょい待ちちょい待ち」
店長は彼の肩に腕を置き、コソコソと何か言い始めた。
(むむっ)
店長でも、私の彼氏にあそこまで引っ付くのは無しだと思う。
すると彼は突然顔を赤くした。店長は彼の肩を笑いながらバシバシと叩いている。
「はなれてくださーいー!」
無理やり二人の間に割り込む。
「おっ、ちょっと嫉妬か」
「そんなんじゃないですから!」
「ふふふっ。ま、そう言う事だ。じゃあな小僧」
ガハハとまた笑いながら奥へと消えていく。
「もう、店長は!」
「じゃあ香澄、俺は裏に車回して待っとくな」
彼はそのままお店からそそくさと出ていった。
ぷくぅと頰を膨らまし、私はお店のシャッターを下に下ろした。
お店の電気も消え、皆がお店から出ていく。その中で車が一台裏口に停めてあった。よく知っている車で、コンコンと助手席の窓を叩いた。
窓が開き、彼の顔がよく見える。
「えへー、終わったよ」
「お疲れ様」
私は慣れたように助手席に乗った。目の前のケースには私の私物が少しだけ置かれている。
「じゃあ行くぞ」
「ほいさ!」
彼はゆっくりと発進した。
道を走りながら、今日学校であった事やバイトであった事やなんかを話していた。
「ふーん、そんな事があったのか」
「そうなの!」
「学校はやっぱり楽しそうだな」
「うん、楽しいよ!」
「仕事は楽しい事はすくないぞぉ〜」
「ふへ〜疲れそうだな〜」
「お前だけが俺の心のオアシスだ」
前を見ながらも笑顔を作る彼。そういうのはずるいと思う、やり返してやる!
「香澄も働き始めたらわかると思うぞ」
「そこは大丈夫」
「ん、なんで?」
一幕置いて、笑いながら言う。
「だって、あなたが養ってくれるんでしょ?」
ぐらぐらと車が揺れた。
「ちょちょちょ、危ない!」
「い、いや。香澄がそんな事言うから!」
「そんな事って〜?」
彼は顔を赤くしながら、チラチラと私の方を見てくる。
してやったりといった表情で彼をみている。
赤信号で止まると、彼はこちらを見て頰を引っ張ってきた。
「ふぎゃ!?」
「ちょうしにのるなよ〜」
「ごめんなひゃい!」
信号が青に変わると、彼は頰から手を離してハンドルを握った。
私の家の近くの駐車場につく。
「はい、到着」
「ありがとー」
私はシートベルトを外して荷物をまとめていると、ふと思い出した。
「そう言えば、店長になんて言われてたの?」
私がそう聞くと、彼は言いづらそうに顔を背ける。
「ま、まあ、いいじゃん」
「むー、隠し事は嫌だよ〜!」
「ううむ、ええっとね」
『ちょい待ちちょい待ち』
『うん?どうかされました?』
『いや〜最近随分と香澄と仲がいいからさ〜』
『ど、どうも』
『それでね、ちょっと君には忠告しておこう』
『な、なにを…』
『店の中でヤリはじめたら、即出禁だからね』
『ヤリって!?』
『ガハハハハ!!じゃあね小僧!』
「と言うことがありました」
「なるほど」
私は腕を組んで、頭の中に浮かんだことを彼に言った。
「一回お店でしてみる?」
「しない!!」
全力拒否された。
「ふふふ、私もさすがにあなたが出禁なったら困りますからね」
「…俺も困る」
「だから、これで今日は我慢してください」
私は彼の唇にキスをした。
「これで明日も頑張れるよね?」
「…そうだな」
彼はそう言い微笑んだ。
「次の休みは一緒にデートだからね」
「ああ、任せとけ。でも」
「うん?」
「今のだけじゃ明日は頑張らないかもな」
「…変態」
そう言いながら、私はもう一度彼にキスをした。
紹介と一話だけ。
こういう女の子とこういう男性との絡みが見たいという要望があれば、できる限り書いてみようと思います。ただし、NTRやリョナは作者が最も嫌悪している物なのでそれだけは勘弁してください。
基本的に紹介で書いた四人を中心に最初は書いていきます。ただ、女の子は追加していくと思うのでよろしくお願いします。