テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~   作:カイナ

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第十一話 光気丹術

ブラウニー坑道。カイはクラトスに誘われハロルド、カノンノと共に精霊がいる地――ミブナの里に行くためここを訪れていた。

 

「ねえ、クラトス。その“ミブナの里”って、ここを通らないと行けないわけ?」

 

「ミブナの里は、忍びの者が住む里だ。一般の者には見つかりづらい場所にある。この坑道が、そこへ繋がる唯一の道だ」

 

「なるほど、忍びねぇ。隠密行動しないといけないなら外部に知られてはまずいわね」

 

ハロルドの質問にクラトスは淡々と説明、ハロルドがふんふんと頷いてそう言うとクラトスは「それもある」と返し、「だが」と続ける。

 

「ウリズン帝国がミブナの星晶を狙っているという話もあるのでな」

 

「ああ……ヴェイグの故郷の星晶を採り尽くしたサレって奴がいる国……」

 

「だから、外部の者には並々ならぬ警戒を抱いているはずだ」

 

「でも、何であんたは道を知ってるの?」

 

クラトスの説明の後、ハロルドは一般の者は知らない里を何故クラトスが知っているかと尋ねる。

 

「ミブナの里の近くに、唯一忍びと交流のある村がある。私はそこから来た」

 

「ふ~ん、そりゃまた珍しいわね」

 

その言葉にハロルドは両手を頭の後ろで組みながらそう返した。そしてクラトスが「行くぞ」と号令をかけ、彼らは坑道を進んでいく。

 

「クラトスは、その忍びの里ってとこに行った事があるのよね? ねえねえ、どんなトコだったの?」

 

「その質問には答えられん。忍びの里とは文字通り、世間と一線を引き忍びながら生きる者の地。本来であれば、その存在すら他言無用にすべき隠れ里なのだ」

 

坑道を歩きながら自らの知識欲を満足させるべくハロルドがクラトスに尋ねる。が、クラトスは取り合うことなく淡々と返した。

 

「でも、私達は今その里へ向かってるわけでしょ? 遅かれ早かれ知ることになるなら、別に今だって……」

 

「遅かれ早かれ知ることになるのだ。焦る事はなかろう」

 

ハロルドをあっさりとあしらい、彼は先に進んでいく。

 

「……何よそれ。そんな我慢が出来るなら初めから聞いたりなんかしてないわよ。ま、いいわ……絶対、諦めないから」

 

その光景を見ながら、ハロルドは気味悪く微笑んでいた。

 

「空蓮華!」

「刹月華!」

 

カノンノの三連蹴りからの大剣振り下ろしとカイの刀左右薙ぎ払いからの後ろ回し蹴りがロックルを粉砕する。

 

「よし」

「カノンノ!」

「きゃっ」

 

カノンノが嬉しそうに微笑むが、その背後からお化けのような姿をした魔物――ラップオンが襲い掛かり、カイが咄嗟にカノンノを引っ張ってラップオンの攻撃から守る。が、咄嗟だったためカイもバランスを崩してカノンノと一緒に地面に倒れ、その隙を狙わんとラップオンが襲い掛かろうとする。

 

「魔神剣!」

 

その瞬間ラップオンを襲う衝撃波。その一撃にラップオンは怯み、

 

「空破衝!!」

 

続けての鋭い突きの一撃がラップオンにトドメを刺した。そしてクラトスは剣を腰の鞘にしまいながらカイと共に倒れているカノンノを見下ろす。

 

「油断と慢心は隙を生む。気をつける事だ」

 

「は、はい!」

 

クラトスからの厳しい言葉にカノンノは頷く。

 

「でさ、もう離れた方がいいんじゃないの?」

 

「?……!?」

 

その次にハロルドが言い、カノンノは首を傾げてから今自分が置かれている状況を確認する。現在自分は誰かに抱きかかえられており、下の方は地面とは思えない感触……そして目を下ろした瞬間、カノンノは顔を真っ赤にした。現在自分はカイに後ろから抱きかかえられ彼を下に地面に倒れていた。

 

「ご、ごごごごごめんカイ!!!」

 

「……いや、別に」

 

ばっと飛び退いてぺこぺこ頭を下げるカノンノに対しカイは平然とそう返す。一切意識していないようなその姿にカノンノは僅かに頬を膨らませ、しかし今はそれどころでもないためまあいいかと結論を出す。

 

 

それから彼らは坑道を進み、アンジュから貸し出されたソーサラーリングを使い、三層採掘区というところまでやってくる。そこまで来ると襲ってくる魔物もグールという人間の死体のようなゾンビのようなものに変わっていく。

 

 

 

 

 

「道、ないじゃない。こっちであってんの?」

 

ハロルドがそう言う。クラトスの先導でやってきた道の先は何か不思議な文様が刻まれている壁で塞がれている。と、クラトスはその壁の横にある岩壁を注意深く観察し、やがて何かを見つけると剣を抜き、その観察していた部分に突き刺す。その時、ゴゴゴと音がして壁が下がり、道が作り上げられた。

 

「ふうん。忍びが作った隠し通路ってワケね」

 

「……行くぞ」

 

ハロルドが呟き、クラトスがそう言って歩き出す。

 

「それにしても、忍びの作った隠し通路にお目にかかる機会があるなんて光栄ね」

 

突然ハロルドがそう言い、彼女は興奮したように頬を紅潮させた。

 

「一瞬の油断……トラップを起動させた瞬間シュッ、ビュッ、バババッと次々発動する罠、罠、罠! その隙間をかいくぐり、ちぎっては投げちぎっては投げ……」

 

「……何の話をしている」

 

「ん? 昔見た忍者劇」

 

いきなりの話にクラトスが尋ねると彼女はあっさりとそう言い、クラトスは呆れたように嘆息した。

 

「そんな作り話を信じているのか」

 

「あら。確かにフィクションでしょうけど、全部が全部虚構の産物とは限らないでしょ。信じる事から広がる創造や浮き彫りになる真実だってあるんじゃないかしら。考古学なんかは、恐らくその典型例ね。憶測や推測をまず信じる事から彼らの研究は始まるんだもの」

 

クラトスの呆れたような言葉にハロルドはすらすらと反論し、それを聞いたクラトスはフッと笑う。

 

「……お前は本当に弁が立つな」

 

「そういう性分なのよ、昔っからね。今のは、褒め言葉として受け取っておくわ♪」

 

彼の言葉を聞いたハロルドは嬉しそうに微笑みながらそう返したのであった。

 

「ハロルドさん、ほんとに無邪気だね」

 

「ああ……カノンノ!」

 

「わっ!?」

 

その姿を見ながらカノンノがそう呟き、歩いているとカイが突然カノンノを呼び止め、彼女を引っ張る。

 

「な、なに!? 魔物!?」

 

「足元を見ろ」

 

「足元? ただの石でしょ?……わっ!?」

 

驚いているカノンノに冷静にカイが言い、それにカノンノは首を傾げながら足元を見下ろす。と、わっと声を上げた。パッと見はただの石だがそれは石ではなく一枚の岩を磨き上げたのだろう、上部が無数の鋭い棘のようになっている岩。もし知らずに踏んづけていたら足に負傷を負う事は想像するにたやすい。

 

「あ、危なかった……」

 

「このようなトラップが、この坑道にまだあるかもしれん」

 

カノンノが安堵の息を吐くとクラトスが前に出て説明を始める。

 

「私が知らぬ間に新たな仕掛けが施されている可能性もある。くれぐれも勝手な行動は……」

 

クラトスの警告をカイとカノンノは真剣に聞く。

 

「おお~! 何かしらこれ。ふんふん……硬質な植物の外皮を削り出して槍状にしたのね! ということは、近くにこれを使ったカラクリとやらが……」

 

しかしハロルドはそんな警告どこ吹く風とばかりにここの仕掛けを探っていた。

 

「ハロルド。聞いているのか」

 

「あら、聞いてるわよ。勝手な行動はつつしめって言うんでしょ?」

 

クラトスの言葉にハロルドはそう言い、にまっと微笑む。

 

「坑道なだけに」

 

「……」

 

「あらやだ、本気にしちゃった? 冗談よ冗談」

 

いきなりのダジャレにクラトスは黙り込み、ハロルドは冗談よ冗談と言いながらにょほほほと笑い始めた。

 

そしてクラトスの先導で罠を回避、たまにかいくぐりながら彼らは奥地へと進んでいく。

 

「何を読んでいる? それはなんだ?」

 

「ああ、さっきの秘密通路近くに落ちてた紙。暇になってきたから読んでたのよ。ほら、新興宗教の勧誘チラシよ。こんな人のいないところにまで布教だなんて、ご苦労な事よね~」

 

ハロルドが何かを読んでいるのに気づいたクラトスがそう言うとハロルドはチラシをひらひらさせながら返す。

 

「暁の従者……ディセンダーの出現を待つ集団か」

 

「世界の危機が訪れた時に現れるディセンダー、ね~。まあ、危機の感じ方って人それぞれだろうけど、今が危機の最たる時なワケかしら?」

 

「さあな、世界の住人はヒトだけではない。ヒト以外のものが危機を感じているならば、そうかもしれぬが……」

 

ハロルドとクラトスがそう話し合う。

 

「わーっ!! 待てっ! こらーっ!!」

 

その時、そんな焦り切ったような声が聞こえてきた。

 

「なぁに、今の声?」

 

「あの声は……」

 

その声にハロルドが呟くと聞き覚えがあるのかクラトスが呟き、直後彼は何かを感じ取ったように眉間に皺を寄せた。

 

「何か、異様な気配が流れてくる。先を急ぐぞ!」

 

クラトスがそう叫んで走り出し、彼らは急ぎ、しかし罠に引っかからないよう慎重に先を進んでいった。

 

 

 

 

 

「先ほどの気配はこいつか」

 

クラトスが目の前に佇む二体の珍妙な魔物――ゴーレムのように石から出来ているがなんか猫っぽい顔つきに手の先には肉球のような模様。そして土台のようなものに乗っけられている――を見る。

 

「ねえ、こいつと戦うの?」

 

「恐らく、門番のつもりだろう。こいつを倒さねば、ミブナの里へは行けそうにないだろうからな」

 

「やっぱり~! これが忍びの技術なのね♪ 面白そうだから相手しちゃうわよ!」

 

クラトスの剣を抜きながらの言葉にハロルドも嬉しそうに歓声を上げて杖を構え、カイも刀を、カノンノも大剣を構える。それと共に珍妙な魔物もどすんどすんと動き出した。

 

「影走斬!!」

 

地面を蹴って素早く相手の懐に潜り込み、すれ違いざまに刀で渾身の一撃を叩き込む一撃離脱型の秘技――影走斬で珍妙な魔物を斬るカイ。しかしそれは石でも叩いたかのような音を鳴らしただけに終わり、珍妙な魔物は振り返ると石の腕を振り回してカイに叩きつけた。

 

「遅い」

 

しかしカイは素早くサイドステップを踏んでその叩きつけられた腕をかわし、振り返る様に左手で苦無を投擲、珍妙な魔物の意識をこちらに向けたままにする。

 

「唸れ大地よ、我が呼びかけに応え鋭き槍となれ! グレイブ!!」

 

珍妙な魔物を背後からカノンノの魔術が襲い、カイは振り返る回転の勢いを生かしたまま飛び上がり、勢いよく珍妙な魔物に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。それで珍妙な魔物の上半身が吹っ飛ぶ。

 

「よし」

 

カイは着地した後、土台がなくなっては動けないだろう珍妙な魔物にトドメを刺さんと刀を構える。

 

「ぐぅっ!?」

 

しかしその直後真横から突進をくらい、完全に不意打ちをくらったカイは吹っ飛ばされて地面をすべる。

 

「これは……」

 

何かが突進してきた先にはさっき上半身が吹っ飛ばされた珍妙な魔物の土台――シーサーチェスト――がぴょんぴょんと飛び跳ねている姿があった。

 

「ま、まさかこの魔物、二体一組なの!?」

 

ぶんぶん腕を振り回して襲ってくる珍妙な魔物の上半身――ストーンシーサー――の攻撃を防ぎながらカノンノが焦ったように声を上げた。

 

 

 

「あっちは苦戦しているようだな……」

 

ストーンシーサーの攻撃を盾で受け止めながらクラトスはカイ達ルーキー二人の方を見て呟く。既にシーサーチェストはハロルドの強力な魔術との連携により無へと還っていた。

 

「ハロルド。しばらくこいつの足止めを頼む」

 

「ほいほい、任せといてー」

 

クラトスの言葉にハロルドは頷いて詠唱を始める。

 

「歪められし扉、今開かれん! ネガティブゲイト!!」

 

空間が闇の力によって歪められ闇の球体がストーンシーサーを襲う直前、クラトスはその闇の球体が出現する場所から脱出。ストーンシーサーが闇の球体に呑み込まれるのを視界の端に見ながらストーンシーサーの方に走っていく。

 

「くっ!」

 

ストーンシーサーの重い左右のジャブについにカノンノの防御が崩れ、ストーンシーサーはぶんぶんと力を込めるように腕を振り回す。

 

「雷神剣!!」

 

しかしそこにクラトスが乱入し、ストーンシーサー目掛けて雷を纏った突きを叩き込む。

 

「こいつは私に任せて、お前はカイの援護に向かえ」

 

「は、はい!」

 

クラトスのアドバイスにカノンノは頷いてカイの方を見る。彼もなかなか善戦はしているのだがシーサーチェストは岩で出来ているとは思えないほどに身軽に飛び回っておりしかも岩の硬さは持ったまま。同じスピード型のカイも苦戦を強いられていた。

 

「来たれ爆炎、焼き尽くせ! バーンストライク!!」

 

炎のマナが結集し、炎の球をシーサーチェスト目掛けて叩き落とす。その爆風がシーサーチェストの動きを止め、カイはふっと微笑むと刀に辺りに散った炎のマナを集中させる。

 

「魔王炎撃破!!」

 

刀を振るい炎の衝撃波を放つ。その一撃がシーサーチェストを呑み込み、焼き尽くした。

 

「やったっ!」

 

「喜んでいる場合ではないぞ。ハロルドが足止めしている一体が残っている」

 

カノンノが嬉しそうにガッツポーズを取るのに対しクラトスがそう言う。既に彼はカノンノから引き受けたストーンシーサーを斬り倒しており、カイとカノンノは再び気を引き締めて現在ハロルドが足止めしているストーンシーサーの方向けて走っていった。

 

「鬼炎斬!」

「虎牙破斬!」

 

カイが炎を纏った刀での十字斬りをくらわし、カノンノが斬り上げから斬り下げへの連続攻撃をくらわせる。

 

「世話をかけたな、ハロルド」

 

「構わないけど……また非効率なことするわねー。あんたが戦った方が早いでしょ?」

 

「それでは経験にならんからな。さあ、私達も援護するぞ」

 

ハロルドの言葉にクラトスはそう言って詠唱を開始、ハロルドもはいはーいと返して詠唱を開始する。

 

「深き地に眠れる灼熱の魔手よ、真紅の暇を待たずして全てを焼き尽くせ! イラプション!!」

「光の洗礼を受けし聖なる剣よ、穢れしものに裁きを与えよ! プリズムフラッシャ!!」

 

「わわわっ!」

「曼珠沙華!」

 

カイとカノンノが戦っているストーンシーサーの直下から溶岩が吹き出し、直上から光の剣が降り注ぐ。カノンノはその魔術に巻き込まれないように数歩下がり、カイは後ろに跳びながら炎を纏った苦無を投げつける。が、ハロルドの方からさらにマナが高まっているのを感じ取ったクラトスは咄嗟に二人の方を向いた。

 

「二人とも、逃げろ!!!」

「さらに――」

 

クラトスが叫ぶと同時にハロルドがマナを解放。

 

「――シャイニングスピア!!!」

 

ストーンシーサーを聖なる槍が貫き、カイとカノンノは巻き込まれないように素早くその場を離れた。そしてストーンシーサーは他のものと同じく跡形もなく消える。

 

「倒したら、跡形もなく消えちゃった。という事は呪術的な存在ね。これは興味深いわ、グフフッ!」

 

「そいつは人工精霊だ」

 

「人工精霊~?」

 

ハロルドが上機嫌に笑い、クラトスが説明する。

 

「誰だ?」

 

と、カイは後ろの方からくる気配に気づき、左手に苦無を隠し持ちながら後ろを振り向く。

 

「へぇ。勘がいい奴がいるじゃないか」

 

その直後、紫色の服に身を包み、ピンク色の帯をした女性がそこに姿を現した。

 

「しいな。お前だったのか……」

 

「って、クラトスもいたのかい! 久しぶりだねぇ。あいつを始末してくれて助かったよ」

 

知り合いらしいクラトスの声に女性――しいなは驚いたように声を上げた後苦笑する。

 

「あんた達が倒したのは、あたしが“光気丹術”で作ったものなんだ」

 

「ふんふん、光気丹術っていうのね! ワクワクしちゃう~」

 

しいなの説明にハロルドが目を輝かせる。

 

「扱いきれなくて暴走しちまってさ……もしあれが外に出たら大変だったよ。ありがとう」

 

お礼を言った後、しいなはクラトスを見る。

 

「ところで、何の用だったんだい?」

 

「精霊と話がしたい。会わせてはくれないか?」

 

クラトスの単刀直入な要求にしいなは「ミブナの里の精霊にかい?」と言った後頭をかく。

 

「今はいないよ。ミブナの里周辺の星晶が採取され始めてから、いなくなったんだ」

 

「ウリズン帝国か……」

 

しいなの言葉にクラトスがそう呟く。

 

「それ以外の国もだね……奴ら、星晶ばかりじゃなく、土地にあるものをなんでも取っていこうとする。ミブナの里が奴らに見つかるのも時間の問題だよ。だから、奴らが入ってこれない様にって、人工精霊を作ろうとしたんだ。でも、難しくてダメだったね。あたしなりの解釈だったんだけど、結局あの程度さ」

 

「んー、とりあえず、精霊への接触はムリって事ね」

 

しいなの話をまとめ、ハロルドが結論を出す。

 

「どうする? 引き返す?」

 

「そうだな」

 

ハロルドの言葉にクラトスは頷いて歩き出そうとする。

 

「待ちなよ!」

 

と、しいながクラトスを呼び止めた。

 

「あんたが精霊を頼るって事は、余程の事なんだね。ミブナの里に精霊はいないけど、他の地域にいる精霊についてだったら、何か分かるかもしれないよ」

 

「あら、いいわね~!」

 

「里に文献があるんだ。後であんた達のギルドに届けに行くよ」

 

「分かった。では、それを待つとしよう」

 

「ああ。待ってておくれよ」

 

しいなからの情報提供を約束し、カイ達は坑道を後にした。

 

 

 

 

 

「精霊に会えなかったのは残念だけど、まだ望みが絶たれたわけじゃないでしょ? しいなさんの来船を待ちましょ」

 

カイから報告を受け、アンジュはふふっと微笑みながらそう言う。

 

「それにしても、人工精霊や光気丹術の存在を知る事が出来たのは私にとって大収穫だわ~」

 

「そう、その光気丹術! あたしが研究しているものと同じかもしれないのよ」

 

ハロルドがふふんと鼻を鳴らすとリタが少しテンションを上げて叫ぶ。

 

「あらそう。んで、何を研究してたんだっけ?」

 

「ソウルアルケミーよ! 魔術の曙とでも言える太古の技術!」

 

「あら、あんたそれ研究してんの? でも、資料あんまないっしょ? 私もいずれは研究したいと思ってたのよねぇ♪ うーん、でも光気丹術とソウルアルケミーの関連性はまだ分かんないわね。詳しく聞くためにも、しいなが来るのを待ちましょ」

 

「それじゃ、今回もお疲れ様。また仕事を受けに来てね」

 

リタの研究内容――ソウルアルケミーとしいなが使ったという術――光気丹術の関連性はまだ分からないとハロルドは言い、アンジュがそう言ってその場は解散となった。

 

 

それから数日ほど日は進み。カイはアンジュが食堂に食事を取りに行くほんの数分でいいからもし客が来た時のためにとカウンター番を頼まれ、しかし嫌な顔一つせずに引き受けてカウンターに座っていた。と、いきなり船の外へと続くドアが開く。

 

「ええっと……」

 

船の中に入って辺りを見回しているのは先日坑道で出会った女性。

 

「……しいなって言ったっけ?」

 

「え? ああ、あんたこないだクラトスといた……」

 

「カイ」

 

「へえ、カイか。いい名だね。よろしく。そういえば、ちゃんと挨拶してなかったね」

 

女性――しいなが声をかけるとカイは名前を名乗り、しいなもよろしくと返した後気づいたようにちゃんと挨拶してなかったねと続けた。

 

「あたしはしいな。藤林しいなだよ。今日は、精霊についての文献を持ってきたんだ……けど、あんたが受付してるのかい?」

 

「リーダーが戻ってくるまで少々お待ちください」

 

しいなは自己紹介の後用件を言うが、カイはアンジュに教えられた通り――まだ交渉や接客とかは早いと判断されたためのマニュアルだ――に返し、しいなは参ったように頭をかく。

 

「あら、いらっしゃい。ようこそ、アドリビトムへ」

 

「えーっと……カイ、この人がギルドのリーダーさん?」

 

「ああ」

 

そこに食事を終えて戻ってきたアンジュがようこそと言い、しいながカイに確認を取るとカイも頷く。

 

「あーっとリーダーさん。頼みがあるんだけど……あたしをここに置いて欲しいんだよ」

 

「働いてくれるのなら、構わないけど。でも、なぜ?」

 

「光気丹術を使った事がばれちまって、ほとぼりが冷めるまで里に居られなくなったんだよ。あの人工精霊は、侵入者専用の門番にしようと作ったものなんだ、でも、うちの里では禁呪に値するものだったからね。里の人達にはばれてないんだけど、棟梁だけがあたしが使ったって事を見抜いててさ……それで、一時的に里を出ることをすすめられたんだよ」

 

しいなのお願いにアンジュが首を傾げて問いかけると彼女はそう事情を説明する。

 

「それに、やっぱりここで働いてみたいんだ。連れもいるんだけど、いいかい?」

 

「ええ。にぎやかになるから歓迎よ。それじゃあ、部屋を用意しないとね。ねえ、カイ。一緒に部屋へきてちょうだい。部屋の準備の手伝い、お願いね」

 

「はい……でもカウンターは?」

 

「行く途中で会った暇そうな人に頼むから」

 

アンジュの言葉にカイは無言になり、しかしまあいいかというようにカウンターを立った。

 

 

 

それからカイとアンジュ、そしてしいなの連れで部屋の準備を行う。

 

「これでいいかな。部屋は、ここを使ってちょうだいね」

 

「ありがとう。そうそう、連れの紹介もしないとね」

 

アンジュがそう言うとしいなはありがとうと言い、連れの紹介をしないとと言うと一番に鳶色の髪をオールバックにし、真っ赤な服を着た青年が口を開いた。

 

「俺はロイド、ロイド・アーヴィング。よろしくな」

 

「私はコレット。コレット・ブルーネルです。これからお世話になります」

 

少年――ロイドに続いて金色の髪を長く伸ばした少女――コレットが自己紹介をする。

 

「藤林すずです。故郷を出るのは初めてです。ここで、外の世界について勉強させてください」

 

最後に忍者服を着た小さな女の子――すずが名前を名乗り、礼儀正しく頭を下げた。

 

「あたしとすずは姓が一緒だけど、繋がりはないんだ。これは“あざな”で、あたしらの本名はまた違うんだよ」

 

「本名は、本人や両親、名付け親、頭領の他、結婚相手のみしか知る事はありません。ご了承下さい」

 

同じ藤林姓だが繋がりはなく、自らの習慣についてしいなとすずが説明するとアンジュはへぇぇと息を吐き、「変わった習慣ね」と感心したように言う。

 

「精霊の居場所は、文献から特定しておくれ。暗号になっていて、あたしでは正確に分からないんだ」

 

「ありがとう。文献の解読はみんなで行うわ。それじゃ、部屋は自由に使ってね。ごゆっくり」

 

アンジュがそう言って部屋を出ていこうとした瞬間、その部屋のドアが開いた。

 

「リタ」

 

「……ミブナの里のしいなって、誰?」

 

カイが入ってきた少女、リタに声をかける。そのリタはカイに目もくれずにしいなは誰かと問いかける。

 

「……あたしだけど?」

 

「光気丹術について聞きたいんだけど」

 

「悪いね。あれは外部の者には教えられないんだ」

 

リタの要求をしいなは真剣な声で拒絶する。と、リタは首を横に振った。

 

「興味本位で言ってるんじゃないわ。今、ヒトや植物、ううん、それだけじゃない。あらゆるモノを変異させてしまう現象が各地で起こってるの」

 

「なんだって?」

 

リタの言葉にしいなはぴくり、と眉を動かす。

 

「その仕組みはわかってないけど、ひょっとしたらあんたの里に伝わるそれが、解決の糸口になるかもしれないのよ」

 

「カイ。本当の話かい」

 

「ああ」

 

リタから話を聞いたしいなはカイに問いかけ、カイは真面目な顔で頷く。それにしいなも頷きを返した。

 

「分かった。あんたを信じるよ」

 

そう言い、しいなは巻物を取り出す。

 

「これが“光気丹術経”。人工精霊の作り方やなにやら載ってるけど、あんたに分かるかい? あたしには、さっぱりだよ」

 

「分からないなら分かるまで、調べ尽くすまでよ。他に、あの怪現象を解明する手立てがないんだもの」

 

しいなの肩をすくめながらの言葉に、リタはにやりと笑ってそう返した。

 

 

 

それから数時間ほど時間が過ぎ、リタはホールで光気丹術経を開きながらホールにいるカイ、アンジュ、ハロルド、そしてティトレイとメルディに目を向ける。

 

「光気丹術経、ざっと目を通してみたけど。やっぱり、これはソウルアルケミーの技術の一端よ」

 

「こないだが聞いた、魔術の曙な技術だな!」

 

「でも、それは一体どういうものなの?」

 

「根底にある理論として、まず全ての物質は“ドクメント”を持ってる、って事よ」

 

「ドクメント?」

 

「見せた方が早いんじゃない?」

 

リタの言葉にメルディが言い、アンジュが首を傾げるとリタが説明をしようとするが、まずその根底の理論からピンと来ていない様子。それにハロルドが助け舟を出すとリタも頷いてメルディに協力をお願いし、メルディも快く頷く。

 

「見てて」

 

そう言い、リタがメルディに手をかざすと、メルディの周囲に光の輪っかのようなものが現れ、まるで脈動しているかのように動く。

 

「バイバ! メルディの周りに輪っかができたよぅ」

 

「これがドクメント。メルディの情報、あるいは設計書みたいなものと思って。物質はまず、このドクメントというエネルギー体ありきなの。自分の設計書を持って、みんな生まれてくる。これは生命の営みでもあるの。そして、さらに細かく見ると……」

 

そう言うと共にさらに巨大な輪っかが現れる。

 

「これは潜在能力とか、病気になりうる要素とか、設計書のさらに細かいところね。ドクメントと物質体は、互いにフィードバックしあってるの。治癒術ってのは、実はここに干渉して傷や疲労を治したりするの。みんな知らずに使ってるけど」

 

「所謂“呪い”って奴も、実はこのドクメントに干渉して相手にダメージを刷り込むわけ」

 

リタの言葉に続いてハロルドも注釈を入れる。

 

「このソウルアルケミーはドクメントをいじったり、作り出したりする技術。ミブナの里に伝わる人工精霊も、これの応用よ」

 

「ドクメントの中の、ヒトをヒトたらしめている設計をいじる事が出来るんだもの。ヒトの存在や形を変えてしまう事も出来るかもしれないわね」

 

「なるほど。生物変化は、この仕組みで起こっているのかもしれないのね」

 

「じゃあ、ドクメントを閉じるわね」

 

アンジュが納得するとリタがそう言い、メルディの周りから輪っかが消える。とメルディはくらくらとしたようにふらついた。

 

「メルディ、何か、クラクラするよ~」

 

「ごめん。無理をさせてしまったわね。本来、不可視のものを、今は無理矢理可視状態にしてるから、被験者には負担がかかってしまうのよ」

 

「細かいドクメントの展開も危険ね。本当は細かいトコまで解析させてもらいたいけど」

 

「人工精霊は、どうやって出来ているの?」

 

「人工精霊は、人工的にドクメントを作り出すところから始まるわ。ドクメントは、精妙な非物質エネルギー。術者の念、自然界の気なんかを掛け合わせてドクメントを作るの。。んで、その人工ドクメントエネルギーの振動数を、濃密な状態へ落とすと実体化するってワケ。あ、ほら。聖者が何もないところから、食べ物や衣類を出して人々に与えたって話とかあるでしょ? あれは、この技術の為と言われてるわ。マナ、自然界の気、術者の意識を持って非物質状態でドクメントを構成して、そのドクメントの振動数を落としてやると物質になっていくのよ」

 

「それは……神の力?……」

 

「まあ、術者の精神力や技量によってまちまちよ。そこまでの力を持つような精神力の持ち主は滅多にいないと思うわ。この技術は、そうそう簡単に使えるもんじゃないわね」

 

リタやハロルドのすらすらとした説明にアンジュが驚いたように呟く。ちなみにカイは口を挟んではいけないと考えたのか単にちんぷんかんぷんなのか全く話に入っていなかった。ティトレイに至っては白目を剥いて頭から湯気を出している錯覚すら見せている。

と、科学室の扉が開いてその中からキールが姿を現した。彼は疲れ切った様子で大きく息を吐いている。

 

「キール君、精霊の居場所の特定はまだかなあ?」

 

「まだかかりそうだ。ミブナの里の文献は、この上なくひねくれた暗号で書かれているからな」

 

アンジュの言葉にキールが首を横に振る。部屋を出てきたのも疲れ切っての気分転換というところらしい。

 

「容易に秘密を知られては困りますので、身内にも分からないように記しているはずです」

 

「しかしこれじゃあ、書いた本人も解読法を忘れるんじゃないのか?」

 

と、丁度外から戻ってきたすずがそう言い、それにキールが疲れ切った声を出しているとすずはアンジュに一枚の紙を渡す。

 

「アンジュさん。“例の存在に会いたい”と護衛の依頼が届きました」

 

その言葉を聞いた瞬間、この場にいる全員の目が変わった。そしてアンジュは一枚の紙――依頼用紙に目を通す。

 

「赤い煙……願いを叶えるという存在ね……依頼内容によれば、場所はルバーブ連山ね。依頼者には悪いけど、私達はその存在を追いましょう!」

 

「了解しました」

 

「ルバーブ連山……あそこに、いるというわけね……これでまた噂が広まれば、向かう人々が増えてしまう……これ以上、接触はさせないようにしないと……」

 

アンジュの言葉にすずが頷き、彼女が小さな声で呟く。

 

「アンジュさん、俺が行きます」

 

「俺も行くぜ!」

「メルディも行くよう!」

 

カイが言うと立て続けにティトレイとメルディが同行を希望。

 

「なら、私も――」

「待ってくれ」

 

最後にすずが同行を申し出ようとした瞬間、その声が遮られた。

 

「最後の一人、我に行かせてもらいたい」

 

「レイ!」

 

「すまないが……どうしても行かねばならぬ……そんな気がするんだ」

 

レイの左目からは何か決意が秘められており、すずはこくんと頷くと同行を辞退するように一歩下がり、レイは彼女に会釈を返す。これで今回のクエストに向かうメンバーは決定だ。

 

「じゃあ、改めて説明を始めるね。あの“願いを叶える”と噂される存在が、ルバーブ連山にいるらしいの。以前見た時は“赤い煙”だったけれど、スパーダ君から聞いた通り、今は他の姿をしている可能性があるかもしれない。出来うる限りその存在に接触して、調査をしてちょうだい、方法、手段は問わないから」

 

「おう!!」

 

アンジュの説明にティトレイが自らの拳と手の平をばしっとぶつけ合いながら頷く。

 

「もし道中、その存在を求める民間人に会ったら、接触させないように追い返すのよ」

 

「了解」

 

その言葉にカイが頷く。

 

「それじゃあ、お願いね!」

 

そしてアンジュの真剣な声での言葉に四人は頷いた。




なんかマイソロ4がVitaで発売って噂をネットで見かけたんですが……本当だと思いますか? いや、本当ならめがっさ嬉しいんですけどね、Vitaは僕まだここで連載してる[ペルソナ4~アルカナを示す道~]を書くためのP4Gしかないから新しいゲームが出来るとかの意味で。ストーリーとかだって3で完全に終わったと思っていたマイソロストーリーが今度はどんな広がりを見せてくれるのか、何より冬カノンノはどんな可愛い子なのか、歴代カノンノとの絡みはあるのかとか楽しみですし。まあそんな真偽不明の情報を得たために一気に今回の話を書き上げたわけなのですが。(馬鹿)
さて今回は光気丹術に関わるクエストと話だけでかなり字数埋まりました。で、本来やりたかった例の赤い煙との対面はもう流れがグダグダになりそうなので次回にします。多分次回一気にそのクエストから彼女登場までぶっこみますね。じゃ、今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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