テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~ 作:カイナ
カダイフ砂漠。帰らずの荒野と呼ばれる地。ヒトからそう呼ばれる程に過酷な環境であるこの場に住む魔物――砂漠を照り付ける日光から皮膚を守る為だろうか体毛で全身を覆い、発達した角を前方に伸ばしている――エレノッサスが二匹獲物を探して歩き回っていた。すると、その足元の砂が突如盛り上がり、何かが飛び出してくる。
「「ブモッ!?」」
二匹のエレノッサスは太陽を背にするそれらを見るがもう遅く、それらは手に持っている刀を振るい、一瞬でエレノッサスの急所を絶ち、一撃でエレノッサスを仕留めた。
「ヒュ~♪ やるじゃねえか」
と、物陰から一人の青年――ユーリ・ローウェルが現れ、口笛を吹いてパチパチと拍手をする。が、エレノッサスを一撃で仕留めた内の一人――藤林すずは武器である忍刀を背負い、首を横に振る。
「いえ、この程度で褒められることもありません」
「そうかい? 暑い砂の中に潜って、魔物の一瞬の隙をついて飛び出し、さらに一撃で急所を討つ。よほどのもんだと思うけどな。なあカイ?」
「ああ。俺もタイミングはすずに教えてもらったからな」
すずの言葉にユーリはそう言い、もう一人の不意打ち係――カイに話を振るとカイも頷いた後、ひゅんひゅんと刀――エタムを振るってそれに目をやる。
「それにしても、このクエストに行く前にポッポが刀を強化してくれたが……本当に軽いな。振りやすいし、動きを阻害しない。さっきの暗殺もこれだから上手くいったように思えるな」
「へぇ、俺も帰ったら頼んでみっかな……ところで、レイも剣を強化してもらったんだろ? どうだ?」
「……先ほど、近づいてきていたドライアドを斬り倒したが……切れ味や威力が上がっている。悪くはない」
カイの刀に対する評価をユーリは受け止め、今回のクエストメンバー――レイに尋ねる。それにレイも剣――エタムを振るい、そう評価した。
「それにしても、レイは同じ金属である銅を使ったからまだ分かるんだが……俺の刀は綿で強化されたんだが……どう思う?」
「「……」」
カイの素朴な疑問にユーリとすずは黙り、最近モフモフ族と妙に仲の良いレイだけが「それがモフモフ族の技術らしいぞ?」と言っていた。
それからカイ達は砂漠を進んでいく。その道中、周りに魔物がいない事を確認するとユーリはふぅと息をついて懐から冷水を入れた水筒を取り出し、水で喉を潤しながら砂漠の熱気によって身体から噴き出てくる汗を服で拭う。
「確かにこの環境じゃあ、年齢とか男も女も関係なしに厳しい砂漠越えになるだろうな」
そう言い、「加えて魔物もわんさか出やがる。命懸けもいいとこだ」とククッと笑う。と、すずが「ここまでの事態を引き起こしたのは、帝国です」と言う。それに対しユーリも「俺がガルパンゾのギルドにいた時は、俺が知るセカイは住んでた場所だけだったな」と呟いた。
「帝国の事は知ってたが、よその国や、世界の動きなんざまるで見えていなかった」
ユーリは「本当、何でも見渡せる自由のギルドだな。アドリビトムってのは」と笑う。それにすずも首肯で同意を見せた。
「私も里を出て、様々な事を知りました。貧富の格差、星晶の大量消費、紛争……大国が小国に強いた、単一栽培が引き起こす自然破壊、そして飢餓」
「このまま進んでいけば、世界の危機って奴はすぐ訪れる。ラザリスがいようといまいと関係ねえ。国のお偉いさんは、全てを食い潰すまで気が付かねえんだな」
「その危機を回避できるかどうか。今が帰路の時でしょうね」
「ああ」
すずの言葉にユーリは皮肉っぽく笑いながら返し、それにすずがそう返答するとカイは静かに頷いた。その真剣な表情にユーリもふっと微笑を見せる。
「ま、当然だな。国のお偉いさんにゃ頼れねえとなると、俺達でやんなきゃな」
「ええ。ですから、カイさんは一人で抱え込まないでください。私達がいますから」
「俺達が選んだ道だ。一つの選択は小さいかもしれねえが、その選択が世界を正しい方向に変えていくだろうよ。やるんだよ、それを。お前だけじゃなくて、アドリビトムの皆でな」
「ああ……ありがとな」
ユーリの言葉にすずも頷いてカイに言い、ユーリもまたそう言う。カイも一つ頷き、彼らにお礼の言葉を示した。
「うっし。んじゃ行くか」
ユーリはそう言って水をもう一飲みし、それから一行は歩き出す。
「…………」
その最後尾で、レイは無言のまま歩いていた。
「シャイニングレイザー!!」
それから彼らは帰らずの荒野を進んでいたが、その先に現れたのは以前モラード村の村長トマスから魔物――実は生物変化現象を起こしていたミゲルとジョアンだった――を捨ててくれという依頼を受けていた時に襲ってきた魔物――サンドワーム。しかしそれが襲ってくる前にこの中で唯一飛び道具を持つ(カイとすずの手裏剣や苦無などを除く)レイが光のマナを込めた弾丸で先制攻撃を撃ち込み、同時にカイ、ユーリ、すずが地面を蹴り突進。サンドワームの周囲に円形状に開いている流砂に足を取られる前に大きくジャンプ、
「曼珠沙華!!」
「忍法、雷電!」
サンドワームに光弾が直撃し怯んでいる隙にカイは炎の、すずは雷のマナを苦無に込めて投擲、その苦無はサンドワームの身体に突き刺さると共にカイのものは爆発したかのように燃え盛り、すずのものからは雷が流れる。
「断空牙!!!」
そこにユーリが両手で握った剣で兜割りの如く上段からの一撃を叩き込む。それがサンドワームの頭部に直撃、岩のように硬い皮膚を砕くことこそ叶わなかったもののその衝撃がサンドワームの脳を揺らす。
「チッ……叩き込め! レイ!!」
思ったよりもダメージが通らなかった事にユーリは舌打ちを叩くが、直後視界の端にレイの姿を認めると咄嗟に叫ぶ。レイは弾丸を撃ち込んだ後、流砂にはまらないよう注意しつつ素早くサンドワームの背後に回り込んでいた。そしてユーリの叫びと同時にレイも宙を舞う。そしてまるで獲物を見つけた鷹のように空中からサンドワームの背中目掛けて勢いよく急降下した。
「飛天翔駆!!!」
空中からサンドワームに強襲、すれ違いざまにその突進の勢いを込めた斬撃を叩き込む。が、急降下の勢いは止まらずレイの足が流砂にはまり込んでしまう。
「ちっ」
レイは流砂から脱出しようともがき始めるがその目の前でカイが刀を地面に突き刺す。
「土竜閃!」
刀を通じて地面に地のマナを送り込み、大地から岩の槍を突き出してサンドワーム目掛け突き刺して動きを封じ、ついでにレイも先端が平らになっている所謂石柱を地面から出させて助けておく。
「らあああぁぁぁぁっ!!」
ユーリがサンドワームに突き刺さった岩槍の上を走り、ジャンプ、そのままの勢いを込めて大きく剣を振りかぶる。
「爆砕陣!」
勢いそのままに地面――というか岩槍――を叩き、生み出した衝撃波がサンドワームに直撃。
「戦迅――」
しかしそれだけでは終わらず、ユーリは右手をサンドワームに叩き付ける。
「――狼破ぁっ!!!」
ユーリの雄叫びと共に狼の形をした闘気が放たれサンドワームに直撃した。同時に足場である岩槍がみしみしと悲鳴を上げ、それを一瞥したユーリが岩槍を飛び降り砂地の上に着地すると同時に岩槍は砕け散り、いくつもの石の塊となって落ちていくと流砂に呑み込まれていく。
「グ、オォォ……」
「いきます」
二回の連続攻撃が効いたのか動きが鈍ったサンドワームにすずが上空から飛びかかる。
「忍法、飯綱落とし!」
空中から高速で回転しながらその遠心力と勢いを利用して強烈な斬撃を叩き込む技――飯綱落とし、普段は回転の勢いを利用しまるで丸ノコのように連続して斬るのだが今回は刀を逆に握り、回転の勢いをつけてサンドワームの脳天に刀を突き刺した。
「ギャアアアアァァァァァッ!!!」
脳天に走る痛みにサンドワームの悲鳴が響き渡り、痛みの元を取り除こうと滅茶苦茶に暴れ回る。
「っ、くっ!?」
一撃で急所を貫き絶命させるつもりだったすずは予定外の抵抗に僅かに焦りを覚え、サンドワームに突き刺さっている刀の柄をしかと握る。
「きゃっ!?」
しかしサンドワームの暴れっぷりは予想以上、ついに手を滑らせてしまい、すずの身体が空中に放り出される。そしてその直後、ほぼ反射的にだろう。痛みに呻いているサンドワームは空中にいる
「っ、忍法――」
すずは両手を合わせて指を動かす。その直後、すずの身体にサンドワームの牙が突き刺さる。
「すず!」
カイが慌てたように叫ぶ。が、その直後サンドワームに噛みつかれたすずの身体が霧散した。
「なっ!?」
「忍法、写身。そして忍法葉隠れ……間に合いました」
唖然とするカイの目の前に木の葉が舞い、そこからすずが姿を現す。すずは分身を作ってサンドワームの目をそちらに向け、その隙に木の葉に紛れて逃げる特技――葉隠れを使って逃げおおせたのだ。
「ガアアアァァァァッ!!!」
未だに頭に突き刺さっている刀による痛み、そして獲物を逃がした悔しさから滅茶苦茶に暴れているサンドワームを見てユーリは「はぁ」とため息を漏らす。
「しょうがねえ……」
ユーリはため息の後、そう漏らし、すぅ、っと息を吸う。
「飛ばしていきますか!」
ユーリが咆哮すると共に、彼の身体を凄まじいオーラが包み込む。己のマナを解放、己の中のリミッターを解除し身体能力や精神力を一時的に高める技法――オーバーリミッツだ。そのままユーリはサンドワーム目掛けて突進、サンドワームも目の前の
「守護方陣!!!」
それと共に先ほど剣が描いた円から光の力が展開。守護の陣となってユーリの身体をサンドワームから護る。その間にユーリはサンドワームの隙を見つけ、斬り込む。
「お終いにしようぜ!」
その次の瞬間、斬り込んだ先にいたはずのユーリの姿が消えた。
「閃け、鮮烈なる刃!」
そう思うと別の場所からユーリがサンドワームを斬り、しかし斬撃の直後またも彼の姿が消えそう思ったら別の場所から斬りかかる。
「無辺の闇を鋭く切り裂き、仇名す者を微塵に砕く!!」
サンドワームの周囲を縦横無尽に高速で移動し、敵に狙いを定めさせず、一方的に斬り刻む。
「漸毅狼影陣!!!」
そして最後に斬り抜けた直後力の爆発がサンドワームを呑み込み、その爆発が消えた後サンドワームは息絶えていた。
「ま、ざっとこんなもんか」
ユーリは肩をこきこきと鳴らし、戦闘開始と同時にその場に投げ捨てていた鞘を拾い上げる。すずもサンドワームの脳天に突き刺さっていた刀を抜き、刀にべっとりと血が付着しているのを見ると少し表情を歪める。
「少し休憩をして、武器の手入れをした方がいいのではないか?」
「そうだな。少し疲れたし、ちょっと休憩するか」
レイが武器の手入れを兼ねた休憩を提案、ユーリはその意見を聞き入れると休憩を宣言。ユーリは適当な石に椅子代わりにどっかと座り込んで刀の手入れを始め、すずは高い岩の影に入り込むと刀に付着している血を布巾で拭き取り、血糊を丁寧に落としていく。カイも刀を研ぎ苦無の補充、レイも剣を研ぎ銃の手入れを行い始めた。
「それにしても、あんなに暴れ回るサンドワームから振り落とされた直後襲い掛かられたってのに見事な回避だよな。忍びならあの程度は朝飯前ってわけか?」
「当然です。これくらいで動揺しているようではとても皆を束ねる忍びにはなれません」
と、ユーリはさっきのすずの回避手段に興味が湧いたのかすずに話を振る。それにすずはごく当たり前、というように返した。と、カイがそっちに顔を向ける。
「すずは将来、忍びのリーダーになるのか?」
「正確には頭領と言うのですが……まだ、そうと決まったわけではありません」
カイの言葉の間違いを訂正しつつ、すずはまだそうと決まったわけではないと言う。と、ユーリが「胸張って“はい、そうです”って言っとけよ」とすずに言った。
「知ってるか? 人間の脳ってのは発した言葉が一種の自己暗示になって、言葉通りの未来を実現しようと、影に日向に動いてるらしいぜ? 本人の意思に関係なく、な」
「それは……言霊ですか?」
ユーリの説明を受けたすずがそう、彼の言葉を自分なりの言葉に解釈。「つまり、口にした言葉が現実になる、という……」と続けるとユーリは「そういうもんかもな」と返す。
「言うだけならタダなんだ、だったら夢だのなんだの、前向きな言葉は積極的に口にしたっていいんじゃねえか?」
「そういう考え方もあるんですね……言葉の力……勉強になります」
「ま、あくまで一つの例だよ。病は気からとも言うし、何事も気の持ちようって事かもな」
ユーリの言葉に対しすずはこくりと一礼、ユーリはそう話しを締めた。
「……コトダマとは、なんだ?」
と、今度はレイがすずの言葉に興味を持つ。それに対しすずは「えっと」と言いよどむ。
「その……簡単に申し上げるならば、先ほどユーリさんに確認したように、“口にした言葉が現実になる”、という事です……昔、ミブナの里である者が死の間際にまた別の者に対し呪いの言葉を吐いて絶命、その後言葉を受けた相手も凶事に見舞われた……という話を聞きます。先ほどユーリさんが言ったように、言葉には力が宿るという考え方です」
すずは言霊について簡潔に説明、ユーリは「ま、俺のはそこまで大層な事でもないけどな」と肩をすくめて微笑を見せる。レイも「そうか」と返す。
「なあ、二人が質問したついでに俺も一ついいか?」
「え? あ、はい……私に答えられる事なら」
最後にカイもすずに質問。すずも自分に答えられる事なら、と頷く。
「すずがあいつの攻撃をかわす時に両手を合わせて何か指を動かしてたが、あれはなんだ?」
カイの言葉にすずの肩がびくっとなる。びくっというか、ドキッという感じだ。
「あ、あれはその、お、おまじないと言いますか……」
まるで核心を突かれたかのように、外見からは見えないものの声に僅かに焦りが交えた様子ですずは説明をしていく。
「さ、先ほどの言霊と少し関係があるんです」
「言霊と?」
すずはさっきレイに説明した言霊を引き合いに出し、カイも興味を持つ。
「はい。言霊の中には呪力を持つとされる九字が存在するとされています。それを指を使って結ぶ、もしくは指を剣に見立て空中に線を書くことで呪いから身を守ると言われているのです」
すずはそう言い、言霊について説明していくが、冷静な口調の中どこか慌て気味に見える。というよりも核心に触れないよう誤魔化そうとしている感じが強い。
「ま、そういうのは流派による秘密ってもんがあるんじゃねえか?」
「そうか……そうだな。悪い、すず」
「あ、いえ。このくらいなら……」
と、空気を読んだユーリが助け舟を出し、カイも納得するとすずに謝罪、すずもぺこりと頭を下げる。そして彼らは手入れ休憩のついでに少し水分を補給、軽食を食べる等僅かながらの休憩を取ってから彼らは再び先を進んでいった。
「しっかし、狙いの魔物が見つかんねえな……」
「ティランピオン、でしたか?」
見晴らしの良い場所にやってきた時ユーリがふと呟き、それに対してすずがそう、今回のターゲットとして定めた魔物の名を出す。それにユーリはこくんと頷く。
「この砂漠の中でも、厄介な相手だ。普通の奴が束になってかかっても、なかなか倒せるもんじゃねえ。他の魔物はそうでもないんだがな」
「それを倒せば、ヘーゼル村の皆さんも無事に砂漠を渡れるのですね」
「ああ。だから、早いとこそいつを見つけ出さなきゃな」
ユーリの説明を聞いたすずがそう言い、それにユーリは頷き、彼らは再び歩き出そうとする。
「……」
が、カイが突如足を止めた。
「ん? どうかしたか、カイ?」
「……下だ!!!」
先頭を歩いていたユーリが首を傾げると、突然カイが地面を見ながら叫ぶ。その瞬間突如ゴゴゴと地響きが起き、そう思うとカイ達が立っている場所の地面が僅かに盛り上がる。敵襲と判断したユーリ達が素早くその場から飛び退いた直後、砂の中から巨大なサソリのようなモンスターが飛び出してきた。
「おおっと、こいつぁでかいな」
「これが、ティランピオンですね?」
ユーリはサソリのようなモンスター――ティランピオンの側面から回り込み正面に立っていたカイ達と合流、彼の軽口に対しすずは静かにモンスターの正体を確認する。体色は砂漠に紛れるためか茶色く、足は構造こそ昆虫に似ているが三対六本である昆虫とは違って二対四本、長い尻尾は反り返ってティランピオンの頭上でゆらゆら揺れながらハサミのような先端をガチガチ鳴らしている。そして普通の小さな牙と共に口を中心に×の形をするようにさらに四本の牙が生えていた。
「では、行きます」
すずは背負っている刀に手をやりながら前傾姿勢になり、ユーリも剣を抜く。レイも右手に盾を左手に銃を握って構えを取り、最後にカイも前傾姿勢になって腰に差している刀に手を添える。
「セッシブバレット!!」
レイが正面から銃弾を連射して相手の気を引き、その隙にカイとユーリが左右から回り込み、すずが正面から走り出す。
「忍法写身!」
すずが両手を合わせ指を動かし、そう言うと同時に彼女の隣にもう一人すずが姿を現し、ティランピオンを一瞬驚かせる。その隙に二人のすずは背中の忍刀に手をやり、ティランピオンに斬りかかった。
「飛燕連脚! からのっ、火車落とし!!」
「竜神翔! さらに、断空牙!!!」
さらにティランピオンの右脇からカイが、左脇からユーリが、それぞれ空中を舞うような連続蹴りから続けて炎を纏った刀による回転斬り落としを決め、ユーリは渾身の斬り上げから続けて渾身の力を込めた斬り落ろしを決める。
「キシャアアアアァァァァァッ!!!」
と、ティランピオンは奇声を上げて長い尻尾を振り回し、カイ達を自分から離させた。
「ちっ、苦無閃!」
「忍法雷電!」
「蒼破っ!」
「ツインバレット!」
カイ達前衛は離れつつ追撃を防ぐために、レイは前衛の後退を援護するためにそれぞれ飛び道具で攻撃を行うがそれはティランピオンの硬い身体に阻まれ効いている様子を見せていない。
「シャアアアァァァァ!!!」
続けてティランピオンはハサミのような先端の尻尾を開くと炎に包まれた岩を飛ばしてくる。それをカイとすず、ユーリは走ってかわし、レイは右手に持っている盾で防ぎつつ左手で銃の空になった弾倉を外すと相手の攻撃が止んだ隙をついて盾を手放し、素早く新たな弾倉を銃に入れリロード。伏せて盾を右手で拾い上げつつ口でスライド部分を銜え強引にスライドを引いて射撃準備を整える。
「忍法、曼珠沙華!」
すずがティランピオンの顔面目掛けて爆発する苦無を投げ、爆発でティランピオンの目くらましを行う。そこにカイとユーリが斬りかかった。
「影走斬!!」
「幻狼斬!」
双方高速で突進、重い斬撃を叩き込む。その後ろでレイが宙に舞い、高速でドリルのように回転する。
「ガトリングバレット!!」
その状態から連続射撃、微妙に着弾点の違う銃撃が連続してティランピオンに突き刺さる。
「忍法五月雨!!!」
銃撃にティランピオンが再び怯んだ隙にすずが連続斬りで切り込む。
「せいっ、はっ!」
さらに体術を混ぜ込み、宙を舞うように斬り続ける。
「シャアアアァァァァッ!!!」
「っ!? がはっ!!」
が、ティランピオンは痛みに耐えつつ尻尾を振り回し、その尻尾がすずに直撃、ティランピオンはその手応えから敵の居場所を探知したのかすずの方に向けて尻尾の先端を向ける。そしてすず目掛けて燃え盛る岩弾が放たれる。
「っ、忍法――」
素早く指を動かすが間に合いそうにない。しかし、その次の瞬間風が走り、すずの姿が消え去った。
「大丈夫か、すず?」
カイがすずの危機を察知し、彼女を助け出したのだ。ちなみに体勢的にはお姫様抱っこ状態になっており、カイはすずに衝撃が来ないよう柔らかく砂の上に着地した。
「カイさん……ありがとうございます」
すずは簡単にお礼を述べながらカイに下ろしてもらう。
「怪我が無くてよかった……しかし、厄介だな。接近戦を挑もうとしても尻尾を振り回されたら距離を取らざるを得ない。俺達の飛び道具じゃまともにダメージを与えられそうにもないしな……」
カイは現在はユーリとレイが翻弄、ユーリは回避を、レイは盾での防御をしつつ剣術で攻撃を仕掛け、ティランピオンが尻尾を振り回して応戦している光景を見ながら呟く。
「…………」
と、すずが何かを考えている様子を見せる。
「……カイさん」
「ん?」
「……助けてくれたお礼に、イガグリ流の技、その一つを伝授します。私一人では足りませんが、カイさんが同時にそれを使えばこの状況を脱する事が出来るかもしれません」
「本当か!?」
すずの真剣な表情での提案にカイが声を上げるとすずはその表情のままこくんと頷く。
「それともう一つ……」
さらにすずはカイに何かを伝え始める。
「噛烈襲!!!」
「エアロバレット! 飛天翔駆!!!」
ユーリが剣で尻尾の攻撃を弾きつつ敵を砕く牙のような拳で噛みつくが如く連続して拳撃を叩き込み、レイは宙を舞って銃撃を叩き込んだ後、空気を蹴ったかのように猛スピードで急降下、強力な突きを叩き込む。
「「ぐっ!!」」
だがティランピオンが尻尾を滅茶苦茶に振り回し、さらに暴れ回ると共に辺りの岩場を崩し、岩を落としてくると二人ともその場を離れざるを得ない。攻撃のリズムが掴めなくなっていた。
「ユーリ、レイ」
「カイ! すず!」
「ここは私達にお任せを」
カイの呼び声にユーリが答え、すずが静かにそう言うと二人が一歩前に出る。
「いきますよ、カイさん」
「おう」
すずの合図にカイが頷き、二人は同時に指を動かし、いや、印を組み始める。
「「忍法」」
ちなみにここで説明をしておこう。すずが先ほど使っていた技――忍法写身。それは自らのマナを体外に放出、それを練り直すことによって自らと同じ姿の実体を作り出す技である。そして技の性質上、体内に秘めるマナが多ければ多いほど、分身は数多く作り出すことが出来る。
「写身!」
「影分身の術!」
すずの隣にもう一人のすずが、カイの隣には三人のカイが姿を現し、彼らは刀を構えるとティランピオンの周りを縦横無尽に走り出した。
「ギ、ギ」
突然三倍の数に増えた相手にティランピオンは混乱、尻尾を振り回すがただでさえ素早い上に六人もの相手を全て振り払う事は叶わない。
「隙あり!!! 蒼破、牙王撃っ!!!」
「ギグッ!?」
カイとすず及びその分身に気を向けていたティランピオンは懐に入ってきていたユーリに気づくのが遅れ、ユーリは風の衝撃波とボディブローを隙を突いてティランピオンにぶち込む。
「散沙雨!」
さらにレイが鋭い連続突きを叩き込み、一歩下がる。
「空破衝!!」
「グギァッ!!??」
そして突進の勢いを込め、強烈な一突きを叩き込んだ。
「忍法鎌鼬!!」
「風刃縛封!!」
「グギャアアァァァッ!!!」
さらにすずとカイが上空から印を組み、風の刃でティランピオンを斬り刻む。その攻撃に対しティランピオンは痛みに吼えながら尻尾から岩弾を放つ。すずはそれをかわすが、カイの姿は霧散し岩弾は外れてしまう。影分身だ。
「幻魔烈斬影!!!」
ティランピオンの注意が上空に向いていた隙を突いて凄まじいオーラを放つカイ――オーバーリミッツを解放している――が高速で懐に入りつつ斬撃を叩き込み、さらに地面目掛けて闇のマナを込めた掌底を打ち込む。その瞬間、ティランピオンを中心とした陣が敷かれ、ティランピオンの身体が無数の糸で縛られたかのように動けなくなる。
「これで決める」
呟き、カイが刀を一閃。
「
一閃と共に彼の口から言葉が紡がれ、斬撃と同時にティランピオンの周囲に不思議な円が出現、同時にカイの姿がさっきの斬撃の場所から消える。
「
消えたかと思いきやまた別の場所から姿を現し、呟きと共にまた一閃するとまた消える。「
「
すなわち、今のカイの斬撃は斬撃そのものによる外面へのダメージだけでなく、言霊の力を込められた刀による斬撃がドクメントにまでもダメージを与えている。ということである。
「
言霊の力を込めた斬撃がティランピオンに叩き込まれる。その瞬間、カイの姿が消える。
「封魔――」
また次の瞬間、カイはティランピオンの目の前、それより上空に現れていた。ティランピオンは九つの呪いの円により、その動きを封じられている。
「――九印剣!!!」
そして回転しつつ力を込めた斬撃が呪いの円ごとティランピオンを斬り裂く。ティランピオンは内外からのダメージに耐えきる事が出来ず、声すら出すことなく絶命。カイはティランピオンに背を向けると静かに腰の鞘に刀を収める。ティランピオンの巨体も揺らぎ、地面に倒れ込んだ。
「なんとか仕留められたな。お疲れさん、カイ」
「ユーリもな」
ユーリがにっと笑いながらラストアタックを決めたカイを褒め、それにカイも返してユーリと軽いハイタッチを決める。
「これでヘーゼル村の皆さんも無事に砂漠を越えられます」
「では、戻るとするか」
すずも一安心したように言い、次にレイがそう言うとユーリも「そうだな」と言い、元来た道を歩き出した。
「!」
が、カイは足を止めると勢いよく振り返り、遠くにある高い岩山をまるで睨むように見据えた。
「……どうかしましたか、カイさん?」
「……いや、なんでもない」
それに気づいたすずが問いかけると、カイは少し黙った後静かに返し、岩山から目を離すと再び歩き出す。
「危ない危ない。危うく気づかれるところだったかな?」
カイ達がいなくなった数瞬の後、カイが見据えていた岩山の上から人の気配が現れる。
「アドリビトム、ねえ……」
カイ達が去っていった方を見ながらくくっと笑う紫髪の青年――サレ。さっきカイは彼の気配を感じ取っていたのだ。
「大事な働き手を奪ってくれた報い、必ず受けてもらうよ」
サレはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべながらそう呟く。が、「でも今日はヴェイグがいないみたいだし、僕と遊ぶのはまた今度にしようか」と呟くと踵を返す。
「楽しみにしているよ……フフフ……」
そして不気味な笑みを浮かべながらサレは歩き出す。その時サレの身体を覆い隠すほどの砂が舞うような強風が吹き、風が止んで砂が再び地面に落ちた時、サレの姿は跡形もなく消え去っていた。
《後書き》
皆さまこんにちは、カイナです。
今回は砂漠でのクエスト消化……ここで一気に色々フラグをぶちたててたら長くなってしまいました。もちろんそのフラグの大半はカイの新技のためですけども。
さてここで解禁、カイのというかマイソロ忍者の秘奥義、封魔九印剣。そしてMP文庫時代カイが得意としていたオリ技影分身……あぁ、そこの前で説明していた写身の理論とか、封魔九印剣が言霊の呪いでドクメントにもダメージを与えるとかの設定はオリジナル設定ですのでご了承ください。MP文庫時代から色々オリジナル設定ぶち立ててオリ技ぶっこむのは僕の得意分野というか常套手段でして……と言っても本作の写身(影分身の術)に関してはほとんどNARUTOの影分身の術を参考にしてますけど。
さーてあの話が近くなってきたな、頑張らねば……。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。