テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~   作:カイナ

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第二十話 風の青年と創造の勇者

「ここが、ヒトの祖が今の人類になるその最後まで過ごした場所か……」

 

キールが呟く。バンエルティア号からヴェラトローパへと降り立ち、少し歩みを進めたところだ。周りをきょろきょろと見回す彼の頬は興奮からか僅かに紅潮しており、平常そうに見せているようだが声も若干はずんでいる。

 

「私達の次元からは隠されていても、この宮殿はずっと生き続けていたのね」

 

ジュディスもどこか感慨深げに呟く。と、さらに歩みを進めたところに石板が看板のように立っているのを発見する。

 

「ん、文字があるぞ?」

 

キールは石板に文字が書かれているのに気づき、手持ちの資料を取り出しながら「読めるだろうか」と呟く。が、ジュディスが石板の前に立った。

 

「情報を読んだ方が早いわ。私に任せて」

 

「情報を……読む?……」

 

ジュディスの言葉にレイが首を傾げる。と、キールが「ジュディスは物から情報を読み取る“ナギーグ”という能力を持つクリティア族なんだ」と説明。カイとレイは異口同音に「「へー」」と言い、ジュディスは石板に向かい合って目を閉じる。

 

「……“創世伝えし者の為にこの空間を遺す”……って書いてあるようよ」

 

ジュディスは石板に書かれた情報を口に出し、「もしかして、創世を見た者がここにいるって事かしら?」と彼らに言う。が、キールは「ありえないな」と否定。生物がそんなに長い間生きていられるはずもない、せいぜいそいつの塵が残ってるという程度だ。と反論した。

 

「あら、セルシウスは、創世の時を見ていた者はヒトとも精霊とも違った。そう言っていたけれど?」

 

「いたとしても、まともにコンタクトを取れる存在か分からないだろう」

 

キールの反論にジュディスもさらに反論。しかしキールはさらに反論し、安易な接触は危険だと主張するが、その直後何かに勘付く。

 

「おい……何か気配がしないか?」

 

「あら、もう魔物が入り込んだのかしら。もしくは、この宮殿に置かれた自動警備の類かもしれないわ」

 

キールの呟きにジュディスが言い、その後半の言葉にキールは自動警備という余計なものまで物質化させたことで今ここにいない――今頃部屋でぐーすか惰眠を貪っている事だろう――ハロルドに文句を言う。

 

「だが、ワクワクするな。先に行こう」

 

「ええ、賛成♪」

 

しかしカイは笑みを浮かべており、ジュディスもふふっと微笑んでカイの言葉に賛成。二人は足を進める。

 

「はぁ~……ファラに続いて無鉄砲な奴の世話をしなければならないのか……」

 

その光景にキールがため息をつき、レイはそれを無言で眺めていた。

 

 

 

 

 

「……それにしても、とても綺麗な場所ね。幻想的」

 

ジュディスがふふっと笑う。進んだ先にあったのは石造りの通路で、中央に泉がある十字路、さらに等間隔で樹が植えられており、泉を中心に左右対称の作りになっている。キールも「長い間誰もいないはずなのに、随分手入れが行き届いてるな……」と呟き、「これなら案外、自動警備とやらもお粗末なものなのかもしれないな」と安堵したように続ける。

 

 

 

 

 

「……なんて思ってた僕が甘かったよ!!」

 

その直後、ヴェラトローパの宮殿のような建物の中に入った後キールが叫ぶ。宮殿に入った途端、いつの間にか入り込んでいたのかあるいは長い間繁殖していたのか魔物が襲い掛かってきたのだ。クラブス種に分類され、黒い甲殻が特徴的なネガティブシザーに刺々しい触手をくねくねさせているローパー種、スティンローパーだ。

既に戦闘体勢に入っているレイが銃を左手に構えて射撃、カイも地を蹴ってモンスター目掛けて突進し、ジュディスも空中を舞うように跳んで槍を構えスティンローパーに斬りかかる。

 

「鬼炎斬!」

 

炎を纏った刀を振るい、ネガティブシザーの甲殻を斬る。刀自体は甲殻を傷つける程度で終わったがその斬撃の軌跡を炎が走り、その熱による痛みにネガティブシザーが怯むとカイはその場をどくようにジャンプする。

 

「タイドバレット!」

 

そこにレイが水のマナを込めた銃弾で射撃、着弾と同時に大量の水が爆発するように溢れ出てネガティブシザーを襲い、熱された甲殻が水で急激に冷やされる。そこにカイが闇のマナを集中した右手を振り下ろした。

 

「滅掌破!」

 

闇のマナを込めた掌底が甲殻に当たった瞬間闇のマナを解放、その爆発が急激に熱せられた直後冷やされたせいでもろくなった甲殻を粉砕。カイは続けて左手に握っていた短刀を甲殻の砕けた部分に刺突。またも炎が燃え上がり、ネガティブシザーを内部から焼いていく。ネガティブシザーも痛みに暴れるがカイはそれを押さえつけて炎での攻撃を続けた。ちなみにレイはもう援護はいらないと判断したのかジュディスが相手しているスティンローパーの方に向かっている。

 

「天月旋!」

 

ジュディスはスティンローパー目掛けて長い脚でのサマーソルトキックを蹴り込み、その蹴りの威力でスティンローパーを空中まで蹴り上げる。

 

「ツインバレット!」

 

そこにレイが連続射撃でスティンローパーを撃ち抜いた。

 

「あらレイ、お見事」

 

「……そうか?」

 

ジュディスがふふっと笑いながら言うが、レイは静かにそう返すのみ。それに対しジュディスは「あら」と一つ笑う。スティンローパーに直撃したはずの銃弾は、スティンローパーの弾力性のある身体により、貫通だけは免れていた。

 

「あらあら」

 

「なら、直接斬る」

 

ジュディスが驚いたように呟くとレイは銃をしまって剣を抜く。それにジュディスもまた一つ笑みを浮かべて槍をくるくると回すようにして構え直し、数歩バックステップを踏むと力を込めるような前傾姿勢になり、直後一気にダッシュ。

 

「月影刃!」

 

ジュディスの槍が加速の勢いを込められて突き出され、スティンローパーに突き刺さる。その直後、空中に跳んだレイが宙を蹴る。

 

「飛天翔駆!!」

 

空中からの急降下斬撃がスティンローパーを斬る。レイはその手応えにふっと微笑を見せ、剣をひゅんと振るうと腰の鞘に収めようとする。

 

「きゃっ!?」

 

が、突然お尻を何かがぬるんと触り、思わず声を上げてしまう。

 

「そんな、レイ! まだ生きてる!? ひゃっ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

ローパーは槍に串刺しにされ、斬撃をくらったにも関わらずまだ息があり、ジュディスが血相を変えて叫ぶが彼女やレイは触手に絡め取られてしまう。

 

「このっ、離しなさいっ!」

 

「き、貴様っ!」

 

ジュディスとレイが暴れるが、触手に絡め取られた時に武器を取り落としてしまったため素手でどうにかするしかなく、触手も二人も暴れまくっているため二人の豊かな胸が揺れる。

 

「……」

 

その光景にキールが目のやり場に困ったように目を背けて左手で顔を隠しながら、スティンローパーの方に杖を向ける。

 

「白き御手よ、清冽なる柩に封じよ!! アブソリュート!!!」

 

キールの叫びと共にスティンローパーの周辺に氷のマナが集中。絶対零度の力がスティンローパーを凝固させ、動きが止まった隙にレイが銃を抜いてスティンローパーを射撃、凝固していたスティンローパーを粉砕する。

 

「ふぅ……」

 

スティンローパーが粉砕され、床に降り立ったレイはふぅと息を吐いて剣を拾い上げ、ジュディスは槍を拾うとキールの方に歩いてにこりと微笑んだ。

 

「ありがとう、助かったわ」

 

「べ、別に。フォローするのは仲間として当然だ」

 

ジュディスの言葉にキールはぷいっと顔を背け、目を瞑りながらそう言う。

 

「この辺の敵は全滅した。先を急ごう」

 

そしてカイがそう言い、彼らは再び歩き出す。

 

「……」

 

「?」

 

が、その途中でジュディスはキールの異変に気づいた。

 

「キール? ずっと足元ばかり見ているけれど、どうかしたのかしら?」

 

ジュディスはキールにそう問いかけ、レイも「気分でも悪いのか?」と問いかけるがキールは「なんでもない!」と叫んで彼女らから目を逸らす。

 

「僕はただ、意味もなく女性の肌を視界に入れるべきではないという常識的かつ当然の判断に基づいて……」

 

「あら。照れているの?」

 

「違う! そうじゃなくて……」

 

キールの言葉にジュディスが察したように尋ねるとキールはそれを否定するが、顔が赤く、目を瞑って顔を逸らしている状態では説得力がない。

 

「ふふ。隠さなくてもいいのに。こういう時は自分に素直になってもいいのよ」

 

「だ……だから……そんなんじゃないって、言ってるだろう……」

 

ジュディスの言葉にキールはさらに否定を続けるがそれは尻すぼみになっていく。顔は湯気が出そうな程に真っ赤になっていた。

 

「あらあら。かわいいわね。うふふ」

 

その初心な反応に、ジュディスはうふふと笑った。

 

と、ジュディスがキールをからかいながら歩いていると宮殿から一旦出るようになってしまい、しかしその場所――庭園に壁画があるのをカイ達は発見する。

 

「壁に絵が……」

 

「壁画だな……これは世界樹か?」

 

カイが呟き、キールが言う。その言葉通り壁画の中心には世界樹が目立つように描かれており、その周囲に様々な生き物が描かれているようだ。それからキールはジュディスに「絵から情報を読み取れるか?」と尋ね、ジュディスも「やってみるわ」と返すと絵の前に立って目を閉じ、絵から情報を読み取り始める。

 

「……“世界樹とは、世界を生みしもの……大地、自然の摂理、そして生命体を作り出す”」

 

「なんだ、僕達の認識と変わらないじゃないか」

 

ジュディスが読み取った情報を口にするとキールははぁとため息交じりに漏らす。が、ジュディスは「続きがあるわ」と言った。

 

「……“世界樹の始まりは一つの種子。宙空のただ中を漂いながら芽吹き、創造を始める”……これは、大地や生命を生み出す行為ね……“そして世界樹は、作られた世界と調和を成しながら、さらに成長していく……それから調和によりマナ満ちた時、世界樹は新たな世界となる種子を付ける”」

 

「なんだって?」

 

ジュディスの読み取った情報、その最後の一文のキールが驚きの声を上げる。すなわち、今彼らがいる世界ルミナシアは、かつてどこか存在していた世界樹から生まれた種子が芽吹いたものである。ということだ。

 

「……この壁画にある情報は、ここまでよ。他にもある様だから、見に行ってみましょう」

 

その言葉に皆が頷き、一行はその場を後にした。再び宮殿に入って魔物と戦いつつ、彼らは新たな壁画の飾られている庭園へと到着した。まるで雨のように水が降り注いでいる光景が描かれており、その水の中にはヒトを含めた生物の絵が一つの滴につき一体ずつ描かれている。

 

「今度の絵はなんだ?」

 

キールが、早速情報を読み取り始めたジュディスに尋ねた。

 

「この絵は……世界の大地が生まれた後の事ね。“大地が生まれた後、ヒトの祖と精霊が生まれた”。非物質だけども、知的生命の誕生という事になるのかしら……」

 

「セルシウスもこの頃に生まれたのか?」

 

「そういう事だろうな。ジュディス、続けてくれ」

 

ジュディスの話にカイが仲間の精霊を思い出しながら尋ね、それをキールは肯定した後ジュディスに「続けてくれ」と促す。

 

「……ヒトの祖は、ここヴェラトローパを創り、ヒトとなるために肉体や潜在能力を設計した。そして、設計通りの身体をまとい、地上に降りたようよ」

 

「まさに、ソウルアルケミー……神の成せる業だな」

 

ジュディスの読み取った情報を聞いたキールが呟き、ジュディスは、ソウルアルケミーはヴェラトローパの民が普通に持っていた能力であり、自分達には魔術の曙で失われた技術とされていたが、ここでは当たり前に使われていた。と話す。

 

「私達クリティアという種族、そしてこのナギーグという力は、ここで決められたのね」

 

「人間も、ユージーンのようなガジュマも、カイウスのようなリカンツも……」

 

「コレットのように羽のある者も……全てのヒト、人類はここから始まったのか」

 

ジュディスが己の能力を思いながら呟き、次にカイとレイがそういう。が、キールは腕を組んで首を傾げた。

 

「だが、“ヒトの祖”はなぜ地上へ? ここに残れば、神のように生きられただろうに」

 

「世界と共に、創造するため、ね」

 

キールの疑問にジュディスが答え、世界樹の被造物であるヒトの祖もまた、世界と共に創造の担い手として生きる事を決めたのだと語る。それは実際に生きて、世界と調和し、経験をする事。世界にある生命全てが学び合い、向上していく事である。そうしなければ新しい発見もなかったはずだ。

 

「世界をより成長させていくために、一からの学びの道を選んだのね」

 

ジュディスは壁画を見上げ、キール達に背を向けながらそう話す。

 

「それが、今の世の中の有様か? 成長どころか後退してるじゃないか!」

 

その言葉にキールが叫ぶ。が、ジュディスは「そう?」と言って振り向き、妖しげな笑みを見せた。

 

「今が、学びの時かもしれないわよ?」

 

その妖しげな笑みと言葉にキールは硬直。ジュディスは「次に行きましょう」と言って歩きだし、カイとレイもその後を追って歩いていくと、キールも大慌てで後を追い走り出した。そのままさらに奥に進んでいき、三度彼らは壁画の飾られている庭園へと辿り着く。

 

「この絵は何だ? 一つは世界樹。横にあるのは……」

 

キールが壁画を見てジュディスに問う。キール達から見て左側に世界樹が描かれ、右の方には大きな目玉がまるで光でも放っているかのような絵が、その二つを無限大のマークの左右の円で囲まれた形で描かれていた。ジュディスはナギーグによってその情報を読み取る。

 

「これは、世界樹の種子……ルミナシアではない種子よ。それが、この世界の近くにあったと描かれている……」

 

ジュディスはそこまで言い、少し考えた様子を見せるとはっとしたように「分かったわ!」と言った。

 

「私達の世界ルミナシアが生まれる一方で、傍らにある芽吹かなかった世界が、この世界に取り込まれている。このことなのよ、ラザリスが言った“生まれるはずだった世界”」

 

ジュディスは自らの考えを話し、ラザリスの正体はもう一つの世界そのものなんだと結論を出す。

 

「ラザリスが、発芽しなかった世界の種子だったって? なぜ、そんなものが取り込まれてるんだ?」

 

「なぜ種子を取り込んだのかはわからないわ。でも、種子を取り込んだことによってこのルミナシアに大きな災厄が起こったと……どんな災厄があったかは伝えられていないわ。ただ、あまりにも理が違う為、としか読み取れないの」

 

ジュディスはキールの疑問に対し首を横に振ってそう答え、「確かなのは、ルミナシアの世界樹は、もう一つの世界を取り込んでいるという事よ」と話す。

 

「ラザリス……赤い煙……星晶によって封じられていたと言っていたな」

 

「そう、星晶はやはりそのために世界樹が生んだものみたい。人々のエネルギーにするためではなく、ね」

 

「……しかし、人間が星晶を消費したため、ラザリスの封印が解けた。というわけか」

 

キールの呟きにジュディスがそう言い、カイがそう続ける。

 

「急ごう」

 

カイはそう言って歩きだし、ジュディスもあら、と言って歩き出すとキールもふぅっと息を吐いて歩き始める。

 

「……」

 

ただ一人、レイはその場を微動だにせず壁画に描かれている目玉のようなもの――ジュディスがラザリスを示しているのだと話したもの――をじっと見つめていた。

 

「お、おい、レイ? 遅れるな……」

 

「……ああ」

 

杖をついて歩いているキールの呼びかけに、レイも頷いて壁画から視線を外してすたすたと歩き始めた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

レイにあっさりと追い抜かれ、キールはふらふらとしながら杖をついて歩いていく。が、そのペースはカイ達と比べてかなり遅れていた。

 

「……少し休憩しましょうか?」

 

キールが遅れているのに気づいたジュディスが彼の前まで走り、キールを覗き込むようにしながら尋ねる。が、彼はそれを「必要ない」と切り捨てた。

 

「この先に、僕達の……いや、この世界の全ての学者が渇望する真実があるかもしれないんだ。それを思えばこれくらい……なんともないさ」

 

「そう……」

 

キールは心の底から楽しみなように微笑んでおり、それにジュディスは目を細めて呟いた後、キールの異常に気付いて「キール」と彼の名を呼ぶ。

 

「なんだ……!?」

 

いきなり呼びかけられ、キールが返すと同時に彼の足がもつれ、すっ転んでしまう。

 

「転ばないように気をつけて。足が震えているわよ?」

 

「紛らわしいタイミングで声をかけるのはやめてくれ!」

 

一歩遅かったジュディスの忠告に、キールは両手で石畳をだんっと叩いて彼女に叫んだ。

 

「せいっ!」

 

「はっ」

 

ジュディスとキールがそんな漫才をしている間に、カイとレイは前衛でスティンローパーやネガティブシザーと戦っていた。

 

「曼珠沙華!」

 

「ブレイズバレット!」

 

炎を纏った苦無がスティンローパーに刺さると共にそれを燃やし、レイが左右に撃ち払った銃弾がネガティブシザーの甲殻を砕き、肉を貫く。敵を沈黙を確認し、カイは刀を鞘に収め、レイは銃に弾丸を補充する。

 

「レイ」

 

「……なんだ?」

 

カイがふとレイに話しかけ、レイは弾丸を補充した銃のセーフティをかけて腰に戻してからカイに問い返す。

 

「……いや、なんか様子が変だなと思ってな」

 

「そうか?」

 

「……いや、気のせいならいい」

 

ただただ静かに、そう言い合うのみ。そうこうしている内にキールがジュディスに手を引かれて合流し、彼らはまた奥に向かって進みだした。そして、また庭園に出て壁画を発見する。

 

「中心にいるのは……人間か? その周りにあるのは武具か何かのようだが」

 

キールは目を凝らして壁画を観察し、そう言う。幾何学的でほぼシンメトリーな文様の中心に描かれているのは人間らしき者の姿と、その周りに人間らしき者を囲むように武具が描かれている。ジュディスがその壁画に込められた情報を読む。

 

「予言ね。私達にも伝わっている、ディセンダーの予言……“世界の危機が生まれし時、世界樹はディセンダーを生み出す。それは、世界の守り手”……」

 

ジュディスは壁画の情報――ディセンダー伝説を読み取り、生まれた時には記憶がないこと、世界を救った後はまた世界樹へ還る。など、現在まで伝わっている伝説とほぼ同様な事を伝えた。

 

「ディセンダーの予言のルーツはここからだったのか……」

 

キールが呟き、そのディセンダーであるカイを見る。が、キールは待てよと呟くと「何故“ヒトの祖”はディセンダーを知っていたんだ」と疑問を見せる。

 

「創世を伝えし者より、もたらされたみたいね。そして、地上へ降りたヒトの祖が、この予言を後世に伝えていた」

 

ジュディスは真剣な表情でそう言った後、「そんなところじゃないかしら?」と首を傾げてみせる。

 

「なあ、カイ。お前のディセンダーという存在は、世界樹のシステムの一つなのか?」

 

「さあ?」

 

キールの問いかけにカイは首を傾げ、キールは「本当にお前はディセンダーなのか?」とため息を漏らす。

 

「ところでジュディス。この武具みたいなのはなんなんだ?」

 

カイが興味を持ったのかジュディスに問う。それにジュディスは再び壁画に向き合い、情報を読む。

 

「光まとう者に送りし輝ける光器……“レディアント”とあるわ」

 

ジュディスは輝ける光器――レディアントをディセンダーが現れた時の為に作られた特殊な武具。ヒトの祖がソウルアルケミーによって創ったものと説明。ディセンダーはあらゆる姿に転じるため、様々な種類の武具を用意したそうだ。

 

「カ、カイの為だけに作られた武具だって?……」

 

「……俺は今のところ、忍者としてしか鍛えていないんだが……」

 

キールはたった一人の為にそれも様々な種類が作られたという贅沢な武具に絶句し、カイも流石に困惑を見せていた。

 

「でも、簡単には手に入らないみたい」

 

ジュディスは続ける。レディアントはディセンダー以外の手に渡らないよう、ヒトの祖が作った人工精霊が纏っているらしい。

 

「つまり、レディアントを手に入れるためには、その人工精霊と戦う必要がある訳か」

 

レイがそう言う。その口元には若干の笑みが浮かんでいた。が、ジュディスは「そうね」と返すのみ、カイとキールもレイの口元の笑みには気づいていなかった。

 

「壁画はこれで終わりか……」

 

キールは壁画に描かれていたのがディセンダーの伝説、つまり創世の話は終わったと考え、調査はここまでかと呟く。

 

「思い出したわ!」

 

そこにジュディスが気づく。ここの入り口には“創世伝えし者の為にこの空間を遺す”と書かれていた。それを聞いたキールは「もっと奥の調査が必要か?」と尋ね、ジュディスも「“創世伝えし者”に会ってみたい」と微笑む。

 

「僕は反対だ! こちらに敵意を向けられる可能性がある!」

 

ヴェラトローパに入った時と同じく、創世伝えし者とコンタクトを取るには消極的なキール。しかしもうちょっと調査が必要なのは認める、と続け、ジュディスの言う通りヴェラトローパのさらに奥への調査を行う事となった。

 

 

 

 

 

「これは……」

 

またも宮殿から出る形となり、ヴェラトローパの最奥と思える場所。そこに金色の身体で幾何学的な形をした小さな物体が浮遊していた。

 

「ここ、ヴェラトローパとはまた異質なものだな……」

 

キールもその物体を見てそう分析。物体の質感を鑑みてこの世界には存在しないものかもしれないと呟く。

 

「私、呼びかけてみるわ」

 

ジュディスがそう言って一歩前に出て目を閉じる。キールも「用心しろよ」と返した。カイも万一物体が脅威だった場合すぐ対処できるようさりげなく刀に手を添え、レイは僅かに後ろに下がる。

 

[我々に呼びかけるのは誰だ……]

 

と、物体の方からそんな声が聞こえてきた。

 

「しゃ、喋った!?」

 

キールが驚きのまま声を出す。物体は[そなたらは、ルミナシアの民か?]と尋ね、ジュディスは首肯の後、「あなたが創世を見届けし者?」と質問を返す。

 

[我々はニアタ・モナド。肉体を捨て、ディセンダーの介添え人として、一つの機器に宿った精神集合体だ]

 

物体――ニアタ・モナドは自らをそう紹介する。

 

「ディセンダーの介添え人?」

 

その中の一文にジュディスが反応した。

 

[そうだ。そなたらと異なる世界“パスカ”のディセンダーに使えしものだった]

 

「異なる世界のディセンダー? あんたの世界にも世界樹があったって事か?」

 

ニアタの言葉にキールが質問をするとニアタは[左様]と返答。しかし彼らの世界は遥か過去に寿命を迎え、もう存在していないそうだ。

 

[世界もなく、仕えるディセンダーもおらず、我々は朽ちぬ機械の身体のままあらゆる世界を旅している最中に……また種子の状態だったこの世界を見つけたのだ]

 

「そして、このルミナシアの創世を目にした。というわけか」

 

ニアタの言葉にカイがそう言い、ニアタは[そうだ]とその言葉を肯定。この世界が我らの世界の記憶を受け継ぐものかどうか、それを知るために留まったのだと話す。

 

「記憶?」

 

それにキールが首を傾げる。

 

[世界樹の種子は、その親となる世界の記憶を受け継ぐ。どのような者が存在したか、どのような生命が存在したか……全ての情報を受け継がせる]

 

ニアタの言葉にキールが「本当に生物と同じなんだな」と驚いたように呟く。

 

「では、伝えられる記憶を元に、新しい世界は構築されるのか?」

 

[そうだ。そうして、生まれ行く世界は進化し続ける]

 

「では、このルミナシアに、あなたの故郷の記憶が?」

 

キールの質問をニアタは肯定、続けてジュディスがそう問いかけるがニアタはそれを否定する。この世界はパスカの記憶を有してはいないらしい。

 

[だから、我々は6000年前にこの世界を去ったのだ]

 

「だが、お前は今ここに……」

 

[今、そなたらと対話しているのは、我々の端末の一つ。本来は遠く時空を隔てた別の世界にある]

 

「端末だって? 何のためにそんな事を?」

 

ニアタの話にキールは首を傾げる。それにニアタは[我々とて、世界樹の全てを知っているわけではない]と話す。この身体朽ちるまで、それを探求したかったのだとニアタは話した。

 

「ここで、観察していたってわけか」

 

[それに、我々には誓いがある]

 

ニアタは[世界に危機訪れしとき、そこに住む民に力を貸す]と誓いを口にし、ニアタはカイを見る。

 

[そして、ディセンダーよ。そなたが生まれたというなら、今がその時なのだな]

 

「ああ……この世界に封じられていたもう一つの世界……創世を見届けたというのなら、お前も見ていたんだろう?」

 

「それが、この世界に現れたの。一つの人格と、姿を得て……」

 

ニアタの言葉にカイが頷き、ジュディスが説明。ニアタは[なるほど]と呟く。

 

「“生命の場”を持たない情報だけの存在が、この世界の生命力を得て、姿を持ったのだな」

 

「“生命の場”? “情報だけの存在”とは?」

 

聞き慣れぬ専門用語のような言葉にキールが反応した。

 

[世界樹の種子に実体はなく、輝くエネルギーのみで構成されている。そこには、生命を生み出す力“生命の場”と、いかなる世界を構築するかの“情報”がある。この二つがなければ、種子は芽吹かない]

 

ニアタの言葉にジュディスが「情報」と呟き、察したように頷く。

 

「言い換えれば、ドクメントだけの存在だったラザリスに、私達の世界の人間が願い……それを叶える事で、ラザリスは力を得てしまった……そういう事かしら?」

 

ジュディスが己なりの考えをニアタに問いかける。

 

「!」

 

その次の瞬間、カイが背後からの敵意に反応。振り向く。そこに移るのは棒立ちし、全く背後の敵意――その脅威を気にも留めていないレイ。そしてその後ろから迫りくる赤い光線だった。その赤い光線はカイ達を狙ったものではない。

 

[!]

 

光線が狙っていたのはニアタだ。

 

「ニアタ!!!」

 

カイがニアタの方を向いて叫び、直後再び光線が飛んできた方を睨みつける。

 

「時空が騒いだと思ったら、こんなものがあったなんてね」

 

「ラザリス……」

 

ニアタを狙った脅威――ラザリスの存在に、キールが僅かに怯えが走った様子で、しかし毅然とした様子でラザリスを呼ぶ。レイは未だ微動だにしない。

 

「ボクが何者か、分かったようだね」

 

ラザリスは嘲笑するようにそう問いかける。

 

「あなたは、ルミナシアに取り込まれた世界樹の種子……」

 

「そう。ボクは生まれるはずだった世界ジルディアにして、その一部……だけど、僕の種子は芽吹かなかった」

 

ジュディスの言葉にラザリスは頷き、説明する。

 

「ボクはね、あのまま朽ちるはずだったんだ。でも、君達の世界樹は僕を取り込み、星晶で封じたんだよ」

 

ラザリスはそう言い、一歩一歩歩き寄りながら、カイを睨みつける。

 

「何のために封じたんだい、ディセンダー……生まれる事も出来ず、価値のない僕をなぜわざわざ封印したんだ」

 

「……知るか」

 

「ふん、知った事ではないってんだね」

 

ラザリスは、怒りに表情を歪めながらさらに前に出る。カイ達より後ろに下がっていたレイを追い抜き、彼女に無防備に背中を晒す形になる。

 

「ともかく、どういうわけかボクはこの世界に解き放たれた」

 

ラザリスは「呆れたよ」と嘲笑する。ルミナシアは星晶の大量消費と星晶を取り合う戦争により、自滅の道を歩んでいる。それを嘲たのだ。

 

「だから」

 

ラザリスは妖しく笑う。

 

「この世界はボクがもらうよ!!!」

 

ラザリスが叫ぶと同時、ルミナシアの大地が揺れ、大地が割れると巨大な牙のような突起物が突き出す。その光景にカイ、ジュディス、キールは絶句した。

 

「なんだ、あれは!?」

 

フリーズ状態から脱出したキールが叫ぶ。

 

「アレは、僕の世界ジルディアのほんの一部。まだまだ世界樹が生命の場を譲ってくれそうにないから、一度にはムリだけど……でも、やがてすべてをボク色に塗り替えるよ。じわじわとね」

 

ラザリスが不敵に笑いながら、恍惚としたように「ボクならもっといい世界を生みだせる」と語ったその時、レイの立っている方からカチャッと、銃を準備する音が聞こえる。ラザリスの背後に立っていたレイは銃を構え、引き金を引いて銃弾を放つ、

 

「っっっ!!??」

 

カイの頭目掛けて。自分が狙われていたことにすんでで気づいたカイは咄嗟にその場を飛び退いて銃弾が目の前を通るのを見、その姿を見たキールがレイを睨みつけた。

 

「レイ! お前、何を考えている!?」

 

「黙れ。ルミナシアの人間」

 

「!?」

 

キールの怒号に、レイはキールを睨みつけ底冷えのするような声で返し彼を威圧する。そしてレイは銃を三人の方に向けたまま、ラザリスの前に出る。その姿はまるで主を守ろうとする騎士の如く。その姿にラザリスは満足そうに微笑んだ。

 

「ありがとう……ボクのディセンダー」

 

「「ディセンダー!?」」

 

ラザリスの言葉にキールとジュディスが驚愕の声を上げる。それにレイはいかにもというように頷いた。

 

「我はディセンダーだ。この世界ルミナシアではなく、ジルディアの……ついさっき、あの壁画を見た辺りで違和感を感じていたが、ラザリス様のお力、ジルディアの一部を見てようやく思い出せた……そして、今我は確信した」

 

レイは嬉しそうに微笑んで呟いた後、カイ達を睨む。

 

「この世界は人間の手によって蝕まれている。一度創り直されるべきだ」

 

「な、何を言ってるんだ!? そんな事をしたら!?」

 

「我は見てきた。人が人を捨てるところを、自分勝手な願いを叶えようとする人間を」

 

「そ、それはっ!?」

 

レイの言葉にキールが叫ぶが、続けての彼女の言葉にキールは反論できなくなる。レイが見てきたという人間の行動、それはモラード村の村長トマスが赤い煙――ラザリスによって生物変化現象を起こしたミゲルとジョアンを砂漠に捨てようとしたこと、そしてルバーブ連山に調査に行った時の俗っぽい二人組のことだ。そしてレイはカイを睨む。

 

「ルミナシアのディセンダー。今までは仲良くしていたが、ここまでだ」

 

「……」

 

レイはカイを睨み、カイも真剣な目でレイを見る。

 

「今まで世話になったな」

 

次にレイはキールやジュディス、さらにはその背後にいる大きな何かを見るように二人を見た。

 

「我は貴様ら……アドリビトムと決別する」

 

そしてレイは今まで自分が過ごしてきた場所との決別を宣言した。

 

「ルミナシアのディセンダー。君もいずれ、ボクのものになってもらうよ」

 

最後にラザリスがそう呟いた瞬間、二人の姿がヴェラトローパから消え去った。

 

「……ニアタ!」

 

ラザリスが去ったと確認した後、ジュディスは改めてニアタを呼び、駆け寄って膝をつく。

 

[あの……ラザリスが……出現させたものが、世界を……侵食し始めている……このルミナシアの……理を変えていく……媒体だ……最終的には……世界樹の生命の場を……乗っ取る……つもりだろう……]

 

「そんな……どうすればいいんだ?……」

 

ニアタの言葉にキールが絶句し、牙のような突起物を睨みつける。

 

[星晶で……封じたと……言って……いたな……世界樹が……生んだ……あの物質の事か……]

 

「でも、星晶のほとんどが採掘されてしまって、残っていないわ」

 

その言葉にジュディスは首を横に振る。

 

[そなた……モノから情報を読む力を持つよう……自らを設計して地上へ降りた……クリティア族……だな……]

 

ニアタはジュディスを見て確認するよう問いかけ、ジュディスが無言で首肯をすると、ニアタの身体から光が走ってジュディスの前に凝縮。その光からプレートが生み出された。

 

[ならば……必要な事は……このプレートに記して……ある。力に……なれれば……いいが……]

 

言い終えた瞬間、ザーとノイズのような音がニアタから聞こえ始める。

 

「もう、反応がない……」

 

「みんな、一度戻るぞ」

 

キールの言葉にカイは静かにそう言い、振り返る。

 

「今回の事も、そして……レイの……ジルディアのディセンダーの事についても報告する」

 

そう言ってカイは歩き出し、ジュディスもプレートを抱えて立ち上がり、キールも慌てて後を追いかけた。

 

 

 

 

 

「お疲れ様。無事に戻れて何よりよ」

 

アンジュはカイ達が戻ってきて安心したように微笑んだ後、違和感に気づいて首を傾げる。

 

「レイは?」

 

その言葉にジュディスとキールが口ごもる。が、カイが構うことなく話し始める。ヴェラトローパにラザリスが出現したこと、ラザリスが変な牙のようなものを生み出したこと、そして、レイがジルディアのディセンダーであったこと。

 

「レイが……ジルディアのディセンダー?……そんな、まさか……」

 

アンジュはレイが敵であったことに呆然とし、信じられない様にうつむく。が、首を横に振って顔を上げた。

 

「カイが言っているのなら本当なんでしょうね……今はレイの事は置いておきましょう……皆、ラザリスが生み出したというあの牙のようなものの出現に動揺しているの……近隣の村とかに、被害がないか気になるよね……」

 

アンジュは今どうなったか分からないレイの事を気にしていてもしょうがないと開き直り、現在世界中に動揺を走らせるであろう牙のようなものに話を変える。

 

「あ、そうだ。今後あれはジルディアのキバって呼びましょう。ね、決まり!」

 

「はい、別に構いません」

 

アンジュの明るい声での提案にカイは頷く。

 

「さて、と。ヴェラトローパでの報告は詳しくはキール君から聞こうと思うんだけど、いいかな?」

 

「分かりました」

 

報告はキールに任せる事になった後、カイは少し頭をかく。

 

「アンジュさん、カノンノは……」

 

「まだ寝てるはずだけど……じゃあ、カイにはカノンノの様子を見てきてもらおうかな」

 

「分かりました」

 

アンジュからカノンノの様子を見てきてほしいという指示を受けたカイは気のせいかほっとした表情を見せ、キールとジュディスに後を任せて医務室へと向かっていくのであった。




《後書き》
こんにちは、カイナです。いよいよゼスティリア発売ですね、僕買いませんけど(PS3持ってないから)。ああ、一応アニメの導師の夜明けは見ました。万一のために少しでもキャラは掴んでおかないとと思って。
今回はヴェラトローパのクエスト。マイソロ3の根本を説明する事になるクエストですね。
そして今回のハイライト、レイの裏切り……これに関しては初期から彼女はジルディアディセンダーであり、このタイミングで裏切るってのは決めてたんですけど……もうちょっとしっかりした描写を前もってしておくべきだったかなと若干思ってます。一応本編中にあったラザリスの視点をレイに見せるとかで世界(ラザリス)とディセンダー(レイ)のシンクロを表現してましたけど……。
さて……レイが裏切ったところである意味ここからが本番です。今までは原作本編に沿って話を進めていましたが、ここからはオリジナルの展開も組み込んでいく予定です。本来マイソロ3に出てなかったキャラも色々出したいし。既にいくつか設定や流れ決めてるのもいたりします……ゼスティリアも面白そうなんですよね、PVで語られる設定とか聞く限り導師とかまんまディセンダーに設定が転用出来そうだし(というかPVの導師伝説を聞いた時、「これディセンダーじゃね?」と思ったし)、天族も精霊に近しい種族とかの設定で使えそうだし……まあ、詳しい設定が分からないのが問題ですけどね。ネタバレ気にせず攻略サイトとかで情報収集しようにも時間かかりそうだし。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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