テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~   作:カイナ

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第二十一話 封印次元を作るために

ヴェラトローパから帰還した後、カイはヴェラトローパで起きた事の報告――ヒトの祖が遺した世界創造の真実について、ラザリスの正体、そしてレイの正体と彼女の裏切り――を同行していたキールとジュディスに任せ、医務室にやってきていた。別に任務の中で怪我をしたわけではない。ヴェラトローパに行くために必要だったヴェラトローパのドクメントを何故か自身のドクメントの中に持っていたカノンノはそのドクメントを摘出する過程で気を失って医務室送りになってしまい、カイはそのお見舞いにやってきていた。

 

「あれっ、カイ。どうしたの?」

 

「カノンノ……もう起きて大丈夫なのか?」

 

医務室に入ってきたカイを出迎えたのはベッドに腰掛ける形で座っているカノンノ。その姿にカイが尋ねると彼女は照れたようにはにかむ。

 

「もしかして、心配してくれたの? ありがと……」

 

はにかんでお礼を言った後、「もう仕事できるから、大丈夫」と言ってむんと力を入れるようなしぐさを見せる。

 

「……アニーとナナリーは?」

 

カイが問う。医務室には常駐している一応船医であるアニーと、その手伝い――及びアニーをナンパしてくるロニ達や仮病で休もうとする者を追い返す役――をしているナナリーの姿はなく、カノンノは、ナナリーは夕食の当番でアニーはルカから借りていた医学書を返しに行っているのだと説明。別に自分も元気だし、つきっきりになってなくても大丈夫だと彼女は笑った。

 

「そういえば、ヴェラトローパに行ってきたんだよね。どうだった?」

 

「ああ……」

 

カノンノのわくわくとした様子での質問にカイは起きた事をありのままに話す。最初こそ自分達の知らなかった真実にカノンノは「わぁ!」と歓声を上げるが、話が終わるにつれ、表情が曇っていく。

 

「レイが……ジルディアのディセンダー……」

 

表情が曇るカノンノにカイは何も返せず、しゅんとなったようにうつむいている彼女の頭にぽん、と手を置くと彼女の頭を撫でる。

 

「ん……ありがと」

 

なでなでされたカノンノは頬を緩ませてお礼を言う。

 

「うん……レイだってディセンダーだもん。自分の世界であるラザリスを守るのは当然だよね……でも、残念だなぁ」

 

カノンノは友達であったレイが裏切ったことにはぁとため息をつく。

 

「……それにしても、今の話の中でもヒトの祖の話……すごいよね。世界と共に、創造するために地上に降りたなんて」

 

カノンノは重くなった空気を変えようと話を変える。

 

「私達、その“ヒトの祖”の子孫なんだなって思ったら、すごく不思議な気分。不思議で、素敵な事だと思うけど……でも……今の世界はどうなのかな?……」

 

また、彼女の声がしぼむ。今、ルミナシアに住んでいるヒトは皆、戦争で星晶を奪い合い、欲しがり、皆違う方向を見ている。

 

「世界樹は……寂しがってないかな」

 

「……さあな?……でも、大丈夫だと思う」

 

カノンノの暗い表情での呟きに、カイはそう言ってふっと笑みを見せてカノンノの隣に座ってカノンノの方を見る。

 

「今ここに、世界樹や世界の心配をしている奴らがいる。きっと大丈夫だ」

 

「……カイは、皆の事を信じているんだね」

 

その言葉にカノンノも儚げな笑みを見せた。

 

「うん。今、悲観的になったらだめだよね」

 

世界をよくするために、アドリビトムはあるんだもん。とカノンノは再び笑う。が、直後彼女は気づいたように、どこか寂しげな顔を見せた。

 

「でも、世界が良くなったら……あなたは、予言の通りに世界樹へ還らないといけないの?」

 

「……さあな」

 

カノンノの問いかけにカイは天井を見上げながら返す。実際分からないのだからしようがない。と、カノンノはカイの服をきゅっと掴んだ。

 

「レイだけじゃなくって、あなたまでいなくなったら……私、寂しいよ……」

 

寂しげな目で、カノンノはカイを見上げる。それに対しカイは優しげに微笑むとまたカノンノの頭にぽんっと右手を置いた。

 

「大丈夫だ。もしそうなっても、俺は絶対に戻ってくる」

 

「カイ……ありがと」

 

その言葉にカノンノは嬉しそうに笑う。その時、ぷしゅっと音を立てて医務室の扉が開いた。

 

「あの、カイさん。こちらに来ているとアンジュさんから伺っているんですが。一応怪我などしてないか確認だけでも……」

 

アニーはカイが怪我をしていないか確認をしようかと言うが、直後ベッドの上でカノンノが甘えるようにカイの服の裾をきゅっと掴み、カイが穏やかに微笑んでカノンノの頭を撫でている光景を見ると硬直。その顔がどんどん赤く染まっていく。

 

「あ、ごめんなさい! いえっ、その……カ、カノンノさんは、も、もう大丈夫ですけど、本当はもう少し休んでいた方がいいというか……その、あまりムリは……」

 

「ふみゃああああぁぁぁぁぁっ!!??」

 

真っ赤な顔であたふたアニーがそう言った直後、こちらも顔を真っ赤に染めたカノンノの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

「セルシウス。ラザリスは世界樹……その中でも生命の場を狙っているようだが、生命の場というものを詳しく教えてくれないか?」

 

カイがホールへと戻ってくると、キールとセルシウス、リタが何か話し合っていた。ちなみにカノンノはさっきの変な勘違いの結果熱暴走を起こし、ベッドに突っ伏して布団を被り「う~う~」と唸り始めてどうにもならず、申し訳なさそうに頭を下げているアニーに任せて置いてきている。

 

「世界樹の中にある、マナを生み出す部分。全ての源、世界樹の心臓とも言えるし、この世界そのもののドクメントでもあるわ」

 

「と、なると、そのドクメントが侵食されてしまえば、ラザリスの世界へ作り変えられる……か」

 

セルシウスから説明を受け、キールはそう分析。しかしセルシウスは生命の場は世界樹自身か、もしくは世界樹の分身であるディセンダーにしかそれは扱えないと言う。それにリタがなるほどね、と頷くと戻ってきていたカイに気づき、彼に声をかける。

 

「カイ、お前が生命の場を守りに行く事は出来ないの?」

 

「いや、分からん……生命の場というものの記憶が俺にはないからどうしようもない」

 

「駄目か……」

 

彼の質問にカイは首を横に振って返し、それを聞いたキールはそう呟いて頭をかく。

 

「ラザリスが手にしたところで、簡単に扱えるものではないはずよ……恐らく、だけれどね……」

 

「つまり、共に滅びる可能性もある訳だな」

 

セルシウスの言葉にキールは最悪の可能性を想定する。

 

「まだ、完全に手詰まり、というわけではないわ」

 

と、そこにジュディスが口を挟んだ。

 

「だって、彼は力を貸すと言ったもの」

 

そう言って彼女が取り出すのは不思議な光を宿すプレート。ニアタから託されたものだ。

 

「読んだのか?」

 

「ええ。あのキバは、ラザリスが封印されていた次元から、物理法則を超えて、このルミナシアへ現れている。パイプのようなものよ」

 

「パイプ?」

 

キールが尋ね、ジュディスがジルディアのキバについて説明、リタがそんな声を漏らす。それにジュディスはええ、と頷いて、ラザリスの世界の情報を通すパイプ、だと言う。

 

「で、他に読み取れたことは?」

 

「ラザリス、及び彼女の世界ジルディアはが封印されていた次元は、星晶によって作られたらしいわ」

 

「だが、星晶はこの世界の人間が採掘し、採り尽くしたと……」

 

キールの問いかけにジュディスはそう続け、星晶という単語にカイが反応しそう言うとジュディスはまた、ええ、と頷く。

 

「封印されていた次元はほころんでいる。元に戻すのは星晶が必要なの」

 

「でも、どうすんのよ。星晶はほとんど採掘されて、もう無いじゃない」

 

ジュディスの言葉にリタがそう繰り返す。それに対しジュディスは「星晶の代用となるものを作る事が出来るみたいなの」とプレートの情報を話す。しかしそれは自分達が生活するためのエネルギーとして使う事は無理なようだ、と続けた。星晶の代用品は、ラザリスに再び封印を施すためのものであり、その代用品で“封印次元”を構築したら、この世界を包むように封印を施す。

 

「……そうすれば、ラザリス、そしてレイを封じられる。ということか?」

 

「そうみたい」

 

「星晶の代用はどうやって?」

 

結論を問うカイに対しジュディスは肯定、リタが足をトントンとしながら話題を急ぐ。ジュディスは三つの素材のドクメントをソウルアルケミーで構築するのだと述べる。と、彼女はトン、と細長い指を自分の頬に当てながら目を閉じた。

 

「一つ目は、舐めると塩辛い空色の石。二つ目は、羽があって飛び回る実、釣鐘に羽が付いたような感じかしら?……」

 

「はあ?」

 

「三つめは、どう伝えればいいかしら。全身から汗を流すパン?……ロールパンみたいな」

 

「ちょっとあんた、ふざけてんの?」

 

ジュディスが突然言い出した摩訶不思議な単語にリタが悪態をつく。が、ジュディスは真面目な様子で「名称までは分からないわ」と返した。プレートにあった情報は言葉ではなく映像、ジュディスの主観でそう答えるしかないということだ。実際、ニアタだってこの世界のものの名称までは分からないのだろう。

 

「はぁ……正直ワケ分かんないんだけど……でも、塩辛い空色の石ってのは“塩水晶”ね」

 

「それ以外のものは、これから資料を引っ張り出して調べるしかないな」

 

リタは塩辛い空色の石について瞬時に正体を予測。キールは大きなため息をついてそう呟く。

 

「じゃあ、塩水晶の採取について依頼を出しておくわね」

 

「よろしく~」

 

ジュディスがそう言い、リタはひらひらと手を振ってそう言うとキールと共に科学室に入っていった。

 

 

 

 

 

「えっと……ラザリスを封印するのに、何が必要なんだっけ?」

 

ブラウニー坑道、ここの入り口で金髪ツンツン頭の少年――カイルが言う。

 

「今から取りに行く、塩水晶。それから、羽があって飛び回る実と、全身から汗を流すパン、だとさ」

 

カイルの問いかけに返すのはしいな。

 

「全身から汗を流すパン……そんなパン、お城で読んだ本でも見たことがありません……」

 

その説明を受けたエステルがむむむ、と考え込む様子で呟いた。この三人にカイを加えた四人が今回、ブラウニー坑道にある塩水晶の採取にやってきたのだ。

 

「だが、本当にパンかどうかは分からない。ジュディスがそういうイメージで教えてくれただけだ。その残り二つが実際はなんなのかは、今頃船でリタ達が調べてくれているはずだ……俺達は塩水晶を探すのに全力を尽くそう」

 

カイがリタ達を信頼している様子でそう言うと、カイルがうんうんと頷いた。

 

「そうだよね! でも良かった~。さすがにそんなパンは、食べる気にならないもんな」

 

「そこは心配するトコじゃないだろ」

 

若干ずれたカイルの返答にしいなが呆れ顔でツッコミを入れたのであった。

 

 

 

 

 

「うおおぉぉぉ~ん」

 

真っ白い骨のような岩のような身体に、剣か鈍器のように発達した両腕を持つ魔物――スケルトンウォリアが亡者のような声を上げながら腕を振り上げ、それと同時にカイルの真下の岩が隆起、槍のように尖って突き上がる。

 

「くっ、くそっ! 負けるかぁっ!!」

 

しかしカイルは岩の槍に突き刺される事は防ぎ、その岩の槍から飛び降りると剣を上段に構えて剣に炎を纏わせる。

 

「爆炎剣!」

 

炎を纏った剣でスケルトンウォリアを斬り、さらに爆発によって生じる爆風がスケルトンウォリアを吹き飛ばし、壁に叩きつけて粉砕する。

 

「ピアズクラスター!」

 

その横でエステルが毒を持つコウモリ――ポイズンバットに手に持っている杖で連続突きを見舞い、さらに盾で殴り飛ばす。

 

「せいっ!」

 

さらに蜂の巣のようなものが生えた亡者の魔物――グールをカイが蹴り飛ばす。が、首がぐちゃっという音を立てて飛んでもなおグールはカイに纏わりつこうとし、カイは鬱陶しそうに刀を抜くと炎を纏った刀でグールを斬り倒した。

 

「えぇっと、確かこれのはず……」

 

その近くでしいなはこの坑道を照らす松明の内一つを調べており、「あぁ、あってたあってた」と呟くとそれをいじる。

 

「よし、これで先に進む扉が開いたはずだよ! 急ぐよ!」

 

「あ、うん!」

「分かりました!」

「了解」

 

しいなが叫び、カイル、エステル、カイは頷くとしいなが走り出した方に走り出す。

 

「あーもうしつこいなぁ!」

 

カイルが後ろを振り返り、まだ追いかけてくるスケルトンウォリアやポイズンバット達を見てぼやく。

 

「しょうがない……」

 

と、しんがりを走っていたカイが懐から苦無を取り出し、大地のマナを込める。そして大地のマナが籠り茶色に光る苦無を魔物の進行先に投げ、地面に突き刺す。と、苦無が刺さった周囲の地面にピシピシとヒビが入った。

 

「土乱!!」

 

カイが叫ぶと共に大地のマナが解放、隆起した岩の槍が魔物の行く手を阻んだ。

 

「これで時間稼ぎが出来るだろ。急ぐぞ!」

 

カイが叫び、一行は魔物を撒くために大急ぎで走っていった。

 

 

 

 

 

「……ここまでくれば大丈夫だろうね」

 

坑道を走り抜け、一番奥まで来るとしいなが汗を拭いながら呟き、次にカイを見る。

 

「それにしてもカイ、さっきの技凄いじゃないか。イガグリ流忍術、じゃないよね?」

 

「ああ……いや、応用だよ。すずが使ってる雷電に、苦無に込める雷のマナの代わりに地のマナを込めたんだ……まあ、ぶっつけ本番だったけどな」

 

しいなの感嘆の声に対しカイはにっと笑ってそう言い、「やってみるもんだな」と締める。しいなも自分達の技の応用を見せただけでなく、それを的確な状況で一発で成功させて見せたことに感心したような笑みを見せていた。

 

「あの、しいな。ここ、行き止まりなんですけど……」

 

と、エステルが辺りを見回す。一応扉はあるが、カイルが押したり引いたりしてもびくともしない。

 

「この扉、開かないよ?」

 

そして振り返ってそう尋ね、「道、間違えたんじゃない?」と尋ねる。と、しいなはふっと笑った。

 

「こいつはちょっと、仕掛けがあるんだよ」

 

そう言ってしいなはカイルにどくように促して扉の前に立ち、扉に手をかけると横に力を入れる。と、抵抗なく扉は開いた。

 

「ほら、開いただろ?」

 

「うわぁ、セコい仕掛け……」

 

得意気に笑ってそう言うしいなにカイルは驚きと呆れがないまぜになった様子で声を漏らした。

 

 

 

 

 

「それにしても、今の仕掛けにはびっくりしました……まさか、鍵とかの特別な仕掛けではなく横に開けるなんて……」

 

扉を潜り、一応魔物達がまだ追いかけてきた時に目くらましにするために扉を閉めてから一行は先に進み、その道中でエステルがそう呟く。

 

「心理トラップってやつさ」

 

それに対ししいなが説明。扉というのは一般的には押し引きするもの、その先入観を利用して何の変哲のない扉を開かずの扉のように見せかけてしまうというわけだ。

 

「先入観か……ふむふむ」

 

カイルが感心したように頷く。そして名案を思いついたように笑顔を見せた。

 

「じゃあ、人に知られたくない内緒の扉は全部さっきみたいにしとけばいいって事なんだね!」

 

「いや、全部そうしちまったら、仕掛けが一般的になっちまうだろ……」

 

先入観と心理トラップの意味を微妙に理解していないカイルの発言にしいなは再び呆れ顔でツッコミを入れた。

 

「先入観……すなわち、トラップというのは物質的なものだけではなく、相手の精神、考えさえも利用して仕掛けるもの、ということです?」

 

「ああ、まあね。虚から実を生み、実を虚に見せかける。これこそが忍者の極意さ。あたしはまだまだだけど、凄腕の忍者にもなれば、武器がなくとも口先で相手をコントロールする事さえできるんだからね」

 

「へぇ~……凄いです!」

 

エステルから受ける疑問にしいなは答えていき、エステルは目をキラキラさせながら返し、足を進めていく。と、エステルが踏みしめた地面がメキメキと音を立て、突如陥没。バランスを崩したエステルは「きゃあっ!」と悲鳴を上げ、そのまま地面が陥没したことによって出来た穴に落ちそうになる。

 

「エステル!」

 

が、その直前カイがエステルの腕を掴んで彼女を引き寄せ、エステルはギリギリで穴から落ちずに済む。

 

「あ、ありがとうございます、カイさん……」

 

「いや、気にするな」

 

お礼を言うエステルに対しカイはただそう返すのみ。

 

「……で、さ。いつまでそうしてるのさ?」

 

「?……!?」

 

しいなの呆れ気味の呟きを聞いたエステルは首を傾げるが、目の前にあるカイの顔、そして現在の自分の状態に気づくと彼女は顔を真っ赤に染め上げた。カイは咄嗟にエステルを引っ張ったのだが、その途中でそのままだとエステルが後ろに転んでしまうという事に気づき、もう片方の手でエステルを抱き止める。その結果エステルはカイに抱きかかえられているかのような形になっていた。

 

「ご、ごごごごめんなさい!」

 

気づいたエステルはしゅばっとカイから距離を取る。

 

「おい、あまり暴れるな? また落ちるぞ?」

 

が、カイは平然としており、むしろ何故エステルはこんなに慌ててるんだと言いたげに首を傾げていた。

 

「ふう。この辺は地盤が脆くなってるっぽいね……カイル、悪いけどあんたの剣で突っついて足場の確認とかお願いできるかい?」

 

「あ、うん。分かった! 任せといてよ!」

 

しいなは身軽な自分やカイならともかく、カイルやエステルでは足元が崩れたら咄嗟に動けるか分からず、それなら多少ペースを落としても足場の確認をしながら動いた方がマシと冷静に判断。カイルにその役を頼むようにする。それにカイルも頷いて背負っている剣を引き抜いた。

それからカイルとカイが戦闘に立って剣や刀で地面を突っついて地盤を確認、万一の為にカイとしいなの身軽なコンビが先行して地盤が脆くなっていないか確認。エステルは地盤の安全が確認されてから移動という正に石橋を叩いて渡る方法で一行は移動していく。

 

「……」

 

しいながふと、目の前で足元の確認をしているカイルを見て口を開く。

 

「カイル。あんた、あたし達の世界には慣れたかい?」

 

「え? あ、うん! 見た事ない術とかあるし、面白いよ」

 

しいなの言葉にカイルはいったん作業の手を止めて頷き、笑顔になる。それにしいなも面白いよと頷き、ヴェラトローパの話は聞いたかと尋ねる。自分の故郷に伝わる光気丹術はソウルアルケミーの一環、魔術の曙と言われる奇跡の術は遥か昔からあり、ヴェラトローパの民はそれを当たり前の技術として使用していたのだ。その遥かな時を巡り、今までソウルアルケミーが伝わってきた事にしいなは「すごいと思わないかい?」と言った。

 

「はい。私もそう思います」

 

「うーん、そういえばソウルアルケミーってなんでも創り出せる力だったんでしょ? いつの頃から、ヒトはその力を失ったんだろう?」

 

しいなの言葉にエステルがロマンチックな事を思うような笑みを浮かべて賛成し、カイルはふと疑問を持ったようにそう尋ねる。それにしいなは「さあね?」と返した後、「だけど」と続ける。

 

「ほんの一部は残ってるじゃないか。あたしらが知ってる魔術って形でさ」

 

「え? 魔術もソウルアルケミー?」

 

「そう。ドクメントの創造なんて事は、普通の人にはおいそれと出来やしないけど……まあ、ちょっとだけ使えてるってのが今あたし達の間で知られてる魔術だね」

 

しいなの言葉にカイルが尋ねると彼女はそう説明、それに対しカイルは「魔術が使えるってだけでもすごいと思うけどなぁ」と呟いた。

 

「真のソウルアルケミーの使い手がいるとしたら……魔術を使うにしても詠唱も道具も要らないだろうって言われてるよ……願えば何でも現実になるんだから」

 

「ふぅん、やっぱ神様みたいだなぁ。オレ達ヒトには出来ない事だよね」

 

しいなの言葉にカイルが頭をかきながら呟く。が、それに対ししいなは両腕を組み、「何でもできちゃあ面白くないし、それで生きてるって実感が沸くもんかねえ?」と呟く。

 

「そうですね……ヴェラトローパの民、ヒトの祖は苦難に満ちたものであっても、その力を捨てて生きる事を学ぶと決めた、という話ですし……きっと、それで今私達は生きている事の喜びや辛さを知る事が出来ているのだと思います」

 

エステルが柔らかく微笑みながら、両手をきゅっと握り締めるように合わせて、しいなの言葉に同意する。

 

「あたしは、その力を捨てたヒトの祖の子孫であることを誇りに思うよ。辛かった日々も、楽しかった日々も、あたしには宝物だからね」

 

その言葉を受けたしいなもこくり、と頷いて返した。

 

「辛かった日も、楽しかった日も 自分には宝物……かぁ。いい言葉だね!」

 

と、カイルがしいなの言葉を褒め、不意打ちのそれにしいなは照れたように頬を赤らめながら「そうかい?」と尋ね返し、それにカイルは「うん」と元気よく頷いた。

 

「だって辛い事があったらつい否定したくなるのが普通でしょ? 忘れたりとか、誤魔化したりとか。でも、しいなは違うんだね」

 

「そういう事を全て宝物に出来る。それはとても素晴らしい事だと思います」

 

カイルに続いてエステルもしいなを褒め、その言葉を受けたしいなはうつむく。

 

「……それを教えてくれた友達がいたんだよ。逃げてばかりだったあたしを、体を張って叱ったり、励ましてくれたんだ……その子のおかげで、今のあたしがここにいるのさ」

 

「へぇ~、そうだったんだ……その友達って、すごい人だったんだね!」

 

「……ああ、そうだね……多分、一生頭が上がらないよ」

 

カイルの言葉に対し、しいなはうつむき、どこか寂しげな言葉でそう返していた。

 

「……話は終わったのか?」

 

突然聞こえてきたカイの声、それは妙に離れていた。

 

「「「……あ」」」

 

というか、物理的に三人の距離とカイの距離は大きく離されている。

 

「話が終わったならその苦無を辿ってこっちまで来てくれ、確認は終えてる」

 

その言葉通り、しいな達の足元から点々と苦無がまるで、森で迷わないようパンくずを撒いて目印にしている童話のように落とされている。その道中は所々若干地盤が崩れているのも確認できた。

 

「「「て、手間をおかけしました……」」」

 

仕事サボって駄弁っていた事に気づいた三人はカイに向けて唱和、カイの苦無を辿り、それだけでは通じないような部分はカイが逐一指示を出しながら、しいな達はカイに合流。先に進んでいった。

そして先に進んでいき、坑道の開けた部分に出かかった時、しいなが何かの気配に勘付いたのか足を止める。

 

「この先、誰かいるよ?」

 

そう言ってカイル達の足を止めさせ、そっと通路の先を覗き込む。道の先にいるのは大きな身体の人物。後ろを向いているため顔は見えないが、長いウェーブがかった青い髪と、遠くからでも分かる筋骨隆々な身体が特徴的だ。と、カイルがひょこっと顔を出してその人物を確認、その瞬間カイルの顔色が変わった。

 

「あいつは、バルバトス!!」

 

「ええ!? まさか、あいつが“強い者がいると聞けば、戦いを挑むというめちゃくちゃな奴”かい!?」

 

カイルの言葉を聞いたしいなが、以前カイル達から話に聞いていた人物の話を思い出す。

 

「あいつも、一緒にこの世界へ飛ばされて来てたのか!」

 

カイルはそう言うや否や背負っていた剣を抜き、

 

「バルバトオオオォォォォッス!!!」

 

声を荒げて人物――バルバトスへと突進。剣を振りかぶり、袈裟懸けに振り下ろさんとするが、

 

「む?」

 

敵襲に気づいたバルバトスは振り返りざまにその剣を斧で防ぎ、受け流す。しかしカイルは手首を返して横に剣を薙ぎ払おうとし、しかしバルバトスはそれを再び斧で受けて押し返すと回転、その遠心力を込めた斧を横に薙ぎ払う。

 

「おっと!」

 

しかしカイルはジャンプでそれをかわし、さらになんと空中で宙返りをして剣を振り下ろす。が、それをもバルバトスは受け止め、鍔迫り合いになる。

 

「ほう……死に損ないがぁ。まだ生きていたのか」

 

「ぐあぁっ!!」

 

バルバトスはそう言い、斧に力を込めて体格に劣るカイルを吹き飛ばし、

 

「妙な所へ飛ばされたせいでぇ、我ぁが餓えを満たす相手がいなくてなぁ……」

 

クックック、と笑みを浮かべて左手一本で斧をぶぅんと一振るいする。本来は両手で振るうのだろう巨大な刃の斧をバルバトスはその怪力を用い片手で軽々と振り回していた。

 

「望むところだ、バルバトス! お前なんかに父さんを殺させやしない!」

 

それに対しカイルは怯むことなく剣を構え、目を研ぎ澄ませて叫ぶ。

 

「カイル、待ちなって! 勝てる相手なのかい?」

 

しいなとカイがカイルの隣に立ち、しいなが問いかける。

 

「心配するなぁ。その答えは一つしかなぁい」

 

その問いに答えたのはカイルではなく、バルバトスだった。

 

「貴様達はここで骸になるだぁけだぁ。逃げられるとは思うなよ。さあ、来い!!!」

 

バルバトスが威嚇するように声を荒げ、それに対しカイ達はくっと唸って構えを取る。今ここに、最凶最悪の鬼神との戦いの幕が開くのであった。




《後書き》
テイルズオブアスタリアを自分のペースで進めていますが……まさかクレス編でクレスの旅立ちの理由になった、超キーパーソンになりそうだった彼がまさかあんな役回りだったとは……。
とまあそんな感じでお久しぶりです。ネタが思いつかず色々ぐだぐだしてたら遅くなりました。今回は普通にクエストを進め、バルバトスとの戦闘開始で幕引きです……まあ、戦闘自体はもう書き終えてるんですけどその後色々オリジナル展開で滞ってまして。あともう大分長くなっちゃった感じがするからいっそここで切っちゃおう! というノリですね。
次回は大部分書き終えてるからオリジナル展開をしっかり書き終えられたら早目に投稿できると思います。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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