テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~ 作:カイナ
「……」
バンエルティア号の甲板。カイはここで日向ぼっこをしながら昼寝をしていた。
「……ん?」
が、何かの気配に勘付き、彼は目を開けるとのっそりと起き上がる。
「……アルヴィン?」
「ん? おお悪い、起こしちまったか?」
彼が目を覚ました原因である気配の主――アルヴィンは小鳥の足に何か手紙を括り付けながら、カイが起きたのに気づき悪いと一言謝る。
「何やってんだ?」
「ああ、商人仲間への報告ってやつ? 良い商品が手に入りそうでな」
「へー。でも港に着いてからでもいいんじゃねえか?」
「情報は早さと鮮度が命なんだよ、覚えとけ……っと、よし」
カイの言葉に対しアルヴィンはそう言って鳥の足に手紙をくくり終える。
「んじゃ、頼んだぜ」
ちゅっ、と小鳥のくちばしに一つキザに口づけをして見せてからアルヴィンは小鳥を乗せている手を掲げ、小鳥も翼を羽ばたかせ大空へと飛び立つ。
「これでよし、っと……さて、と。カイ、いっちょ模擬戦でもするか?」
「……いや、中に戻る」
アルヴィンは一つ伸びをした後カイを模擬戦に誘うが、カイは珍しくそれを拒否。あららと笑うアルヴィンを置いて船内に歩いていく。
「「っと」」
その入り口でウリズン帝国からの派遣兵士であるフォックスと鉢合わせてしまい、二人はすれ違ってカイは船内に、フォックスは甲板に出て行った。
「ん?」
「じゃあ、セネル君も行けないのね。個人的には、ぴったりの仕事だと思ったんだけど……」
「ああ、悪い」
バンエルティア号のホール。ここにやってきたカイの耳にアンジュの沈んだ声とセネルの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
「どうかしたのか?」
「カイ。ちょうど良かった。あなた向きの仕事が来ているんだけど。受けてみる気はない?」
「仕事? どんな仕事ですか?」
「霊峰アブソールで最近盗賊が暴れ回ってるようなの。それを懲らしめて欲しいっていう依頼。向こうの手勢はあまり多くないみたいだし、どうかな?」
アンジュから説明が出た後、セネルが申し訳なさそうに頭をかく。
「本当なら、俺が行きたいところなんだが。これからちょっと人を迎えに行く用事が出来てしまってな」
「人?」
「ああ。ジェイっていう情報屋だ。不可視のジェイっていえば結構有名だぜ?」
セネルがそう言ってアンジュに目を向けると、彼女もこくんと頷く。
「ジルディアのキバが出てきて、今世界中が混乱してるでしょ? しいなやすずちゃんにも動いてもらってるけど、やっぱり情報屋が本業の人も呼んでおいた方がいいかと思って。セネル君にお願いしてみたの。人手不足だし、出来れば強い人がいいなぁって」
「で、ジェイに頼んでみたらオッケーを貰えてな。でもあいつ警戒心強いから、面識のある奴が迎えに行った方が早いんだが……ノーマだと逆にややこしくなりそうだし、ウィルも今ウズマキフスベやツリガネトンボ草を入手する方法を探してて手が離せなくてな。シャーリィを一人で行かせるわけにもいかないし、俺が行くのが一番早いんだ」
セネルからそう説明され、カイもなるほどと頷く。
「分かりました。じゃあその盗賊は俺がなんとかします」
「行ってくれるのね。ありがとう。多分、相手は単なるゴロツキの類だから追い払うのに苦労はしないと思うけど。もし危なくなったら、無理をしないで戻ってきてね」
「はい」
カイの言葉を受けたアンジュは嬉しそうに微笑んだ後きっちりと注意。カイも頷くと彼女は行ってらっしゃいと声をかけ、彼は船を出ていった。
それからカイはアブソール霊峰を登り、賊を探し回る。
「……いないな?」
だが、盗賊が潜伏しているにしては気配が無く、襲ってくるのは魔物ばかりだ。実際、彼の背後から突然アイスウルフが飛びかかってきている。
「まあ、調査だけでもしっかりしとくか」
カイはそう呟きながら刀を手にやる。
「鬼炎斬!」
そして振り返りつつ抜刀、炎を纏った刀で今にも噛みつこうとしていたアイスウルフを両断。アイスウルフが毛皮を燃しながら雪の上に倒れるのをちらりと一瞥したのみでカイは刀を鞘にしまい、再び歩き出した。
「……!」
先に進み、以前リヒターと出会った山頂に近づいてきていた時。カイの目の前に魔物以外の存在が映る。バンダナを頭に巻き、右手には一般的な剣を持つ男。人相が悪く、見た目で判断するのはどうかと思うが明らかに怪しい。
「……」
が、その人物は何かに襲われたのか傷を負って座り込んでいる。と、その人物がカイに気づいた。
「テ、テメエ……なにもんだ?……」
「……お前こそ、ここにいるという賊か?」
「……チッ、あいつの仲間か……ぐ……」
人物――山賊は睨みを効かせてそう呟いた後、体力の限界なのか気を失う。
「あいつ?……まあいい」
カイは一瞬山賊の言葉に不審な点を考えるが、まあいいと思い直すと先に進んでいった。それから山頂に向けて歩いていくごとに増えていく足跡や血の跡、それが酷くなっている方向に進んでいくと、やがてカイは以前リヒターと戦った山頂にたどり着いた。以前の戦いから時間が経ったためか、その時は雪が消えて見えていた地表は再びすっかり雪に覆われていた。
「ん?」
と、そこには何者かが辺りを注意深く見回しているのを見つける。
「もしかして、賊か?」
そう呟いてカイはその何者かに近づく。
「おい、そこのあんた」
「!」
カイが声をかけると、何者かは驚いたように振り返る。何かの紋章が描かれているマントを羽織り、青色と白色の帽子を被り、黒い髪を短く切っている。青色の上着を着ているが、動きやすさを重視しているのだろうか黒色のピッチリとした服をその下に着ている。
「お前は?……まだ残っていたか!」
何者か――少女はカイを見て睨みを効かせるとすぐさま剣を引き抜く。
「お前の仲間は全て私が倒した! 残るはお前、ただ一人!」
「仲間?……何のことかは分からんが……どうやらお前が敵のようだな」
少女の言葉に一瞬首を傾げるが、相手から感じ取れる殺気にカイも刀に手をやる。
「往生際の悪い……」
少女はそう呟く。と、同時に彼女は地面を蹴り、素早く突進を仕掛けてきた。
「疾風閃!」
「!」
その名の如く疾風のように鋭い突き。余りの速さにカイも息を飲み、横に飛んでその突きをかわす。が、少女はカイが逃げた先を睨みつけると地面に剣先をかすらせるように剣を振るう。
「魔神剣!」
剣を振り上げると共に放たれるのは地面を駆ける衝撃波。
「はっ!」
しかしカイはそれをジャンプでかわし、空中で回転しながら刀を抜き、捻りを加えながらさらに回転。
「なっ!?」
あまりにも流麗な動きに少女も思わず見惚れてしまうが、カイが着地際に刀を振り下ろしてきたのを見て我に返ると慌てて後ろに下がる。回避は僅かに遅れたものの、かろうじて左肩に傷を受ける程度で済む。
「はぁっ!!」
カイが着地の反動で動けない一瞬の隙をつき、少女が一気に斬りかかる。
「っと!」
カイも刀を逆手に握り直して対抗。二人の剣がぶつかり合う。
「やるな、ならば!」
少女が力を込めて剣を振り下ろしてカイの刀を押した後、彼女は己の剣を支えにして回転。
「空裂斬!」
「ぐはっ!?」
剣を軸にした回転蹴りをくらわせ、カイが怯んだ隙に着地し素早く剣を構え直す。
「絢舞!!」
「がぁっ!!」
豪快に剣を振り上げ、一撃でカイを吹き飛ばした。
「どうだ!? 徒党を組まねば戦えぬような貴様らに私の剣は負けん!!」
「っててて……やってくれるな」
少女の凛とした声に対し、カイも呟きながら立ち上がる。そして握りしめていた刀を再び構えた。
「どうやら、一度痛め付けられたくらいでは懲りない様だな」
その姿を見た少女はふんと鼻を鳴らし、呟く。
「お望みとあらば、何度でも相手をしてやる!!」
そして声を上げてカイ目掛けて突進、それに対しカイは刀を鞘に収めると右手に闇のマナを集中した。
「滅掌破!」
地面に掌底をぶつけると同時に闇のマナを解放。それは降り積もっていた雪を弾け飛ばせ、前方に雪の壁を一瞬だが作り上げる。
「なっ!?――」
「どうやら、剣だけじゃ勝てそうにないな」
「――後ろ!?」
相手の姿が雪に隠れ、少女は足を止める。その時にはカイは後ろに回り込んでいた。
「ぜりゃっ!!」
「づぅっ!!??」
懐に入っての痛烈な回し蹴り。咄嗟に狙われていた腹を腕で庇ったものの凄まじい威力に少女は吹き飛ばされてしまう。
「くっ……やるな」
「お前もな。簡単な相手だと思って悪かったよ」
少女が呟き、カイも改めて目の前の少女が強い相手だと認識し直す。
「参る!」
先手を打つのは少女。地面を蹴り、雪を踏み散らしながらカイ目掛けて突進する。それに対し、カイも刀を鞘に収めつつ中腰の体勢になって少女を待ち、彼女が射程範囲に入った瞬間刀を抜き、刀に纏わせていた炎のマナを解放する。
「鬼炎斬!」
居合いによるスピードで一閃、咄嗟に防御した少女の剣に一の太刀は阻まれるが続けて刀を返し上段からの振り下ろしが続く。
「甘いっ!」
しかし少女は鋭く剣を振り上げて二の太刀も防ぐ。
「終わりにするぞ! これぞ我がヴァレンス家奥義が一つ、鱗人閃邀撃!!!」
「なにっ!? くそ!」
そして素早く剣を返すとカイ目掛けて連続で突きを入れ、しかしカイも刀を手放すと左手に握ったナイフで突きを防ぐ。だが全てを防ぎきるには至らず、少女はトドメとばかりに至近距離からのダッシュ突きでカイを吹き飛ばさんと迫る。
「そうは――」
しかしカイもダッシュ突きを紙一重でかわすと空いている右手で少女の突き出していた右腕を取り、膝蹴りで少女の腹を蹴り上げてダメージを与えつつ彼女を無理矢理宙に浮かせ、
「――いくかっ!!!」
突進を受け流した勢いで少女を投げた。
「「へぶっ!?」」
しかしカイも妙な体勢になってしまってこらえきれずにすっ転び、両者痛み分けとなる。
「ぐっ……まだだ!」
「こっちもな!」
戦いはまだ終わらず、少女は蹴られた腹を押さえながらも素早く立ち上がり、カイも僅かに遅れて立ち上がりながら印を組む。
「影分身の術!」
印を組んでマナを解放、カイの横に三人の分身が姿を現す。
「分身か……だが、ジェイのおかげで見慣れている!」
「……ジェイ?」
少女はいきなり相手が増えたにも関わらず不敵に笑って叫ぶ。その中の一つの名詞にカイが反応した。
「……ジェイって、不可視のジェイか?」
「……そうだが、それがどうした?」
カイの言葉に少女は怪訝な目を向けて首を僅かに傾ける。
「ちょっと待ってくれ! お前、もしかしてセネルを知ってるか!?」
「ク、クーリッジを知っているのか!?」
その言葉に今度こそ少女はしっかりとした反応を見せる。
「……一つ確認を取りたい」
カイは分身を消して少女に呼びかける。
「あんた、盗賊団の用心棒とかそういうんじゃないのか?」
「ば、馬鹿を言うな! 罪のない民間人を襲い、金品を奪う下劣な行為。そんな腐った根性の輩に手を貸すはずがない!!」
カイの確認の言葉を受けた少女は顔を赤くして叫ぶが、直後顔を青く染めて震える手でカイを指差す。
「ま、まさかお前も……悪党の仲間ではなかったのか?」
「……俺はギルド・アドリビトム所属。カイ。セネルとは同僚で……ここには最近ここら辺を騒がせている盗賊を懲らしめてくれという依頼を受けてやってきたんだ」
少女の言葉を受けたカイはお互い誤解していたことを察し、名乗る。そしてお互いに武器を収めて状況を把握する。
「すると、何だ……私は、人助けに来た貴公を悪党と間違えて襲ってしまったと……」
「そういう事になるな……」
「すまない。私はてっきり……」
「いや、俺も相手の確認をせず斬りかかったのは悪かった。お互い様だ」
少女とカイはお互い確認不足で戦った事になり、互いの非礼を詫びる。
「しかし、アドリビトムか。クーリッジ、またギルドに所属したのだな……」
少女は何か考える様子を見せた後、「そうだ」と呟いて再びカイを見る。
「どうだろう。私も貴公と共にそのギルドで働かせてはもらえないだろうか?」
「は!?」
「驚く事はないだろう? 困っている人を助けるのは、騎士として当然の務めなのだからな」
少女はそう言って優しげに微笑んで見せる。それに対しカイは困ったように頭をかいた。
「……まあ、入団とかそういうのはアンジュさん……うちのリーダーと交渉してくれ。俺じゃ決められん……まあ、人手不足で困ってるから多分大丈夫だとは思うがな。お前の強さは分かったし」
「決まりだな」
カイの言葉から少なくともギルドまで連れて行ってくれるという事だけは言質が取れ、少女は握手を求めるように右手を差し出す。
「私はクロエ。クロエ・ヴァレンスだ。改めて、よろしく頼む。カイ」
「ああ」
少女――クロエの自己紹介にカイも握手をしながら返した後、二人は下山。バンエルティア号へと向かうのであった。
「ここがバンエルティア号……噂には聞いていたが……」
船内に入り、クロエがきょろきょろと辺りを見回しながら呟く。
「お前……クロエじゃないか!」
突然聞こえてきたびっくりしたような声、その声の主――セネルはクロエとカイの元に駆け寄ると目を丸くしてクロエを見る。
「何をしているんだ、こんな所で」
「アブソール霊峰で戦った」
「カ、カイ! 余計な事を言わないでくれ!?」
セネルが驚いたようにクロエに問いかけ、それに対するカイのあっさりした説明にクロエがびくっとなってカイを小突くが、セネルは納得したように「成程」と呟くと腕を組んでカイを見る。
「大丈夫だったか? こいつ、いきなり襲いかかったりしてくる事があるからな。“不埒な誘拐犯め、根性を叩き直してやる!”……だったか?」
「うう、うるさい!」
セネルはカイの安否を問いながらも悪戯っぽく笑いながらクロエに告げ、クロエは顔を真っ赤にして彼を怒鳴る。
「それにしても偶然というか運が良かったよ。ジェイに頼んでお前の居場所を調べて、お前もギルドに勧誘しようかと思ってたところだったんだ」
そう言い、セネルは再び冗談っぽく笑いながら「無鉄砲だが、クロエは腕が立つからな」と彼女をからかう。それにクロエも「無鉄砲は余計だ!」と再び噛みついた。
「セネル、クロエもこのギルドに入りたいそうなんだが」
「ああ、じゃあここから先は俺が引き継ぐよ」
カイから説明を受け、セネルは了解と頷くとクロエを引き取ると言い、彼女を見る。
「まぁ、無事で良かった。故郷が戦争に負けてから何の音沙汰もないから、心配したぞ」
「……す、すまない……迷惑を、掛けた」
「そう思うんだったら、その分、ここで頑張って働けばいいさ」
「ああ……そうだな。ぜひ、そうさせてもらおう」
セネルから安堵の声を聞かされたクロエはうつむいて謝罪の言葉を出すが、それに対しセネルはそう言い、クロエもふっと笑ってそう返す。
「では、カイ。もし何かあったらいつでも頼ってくれ」
「ああ。しっかり手綱を握らせてもらうよ」
「お、それは助かるな。だが気をつけろよ? こいつは相当なじゃじゃ馬だからな」
「お前達は!!!」
クロエの言葉に対しカイが悪戯っぽく笑いながらそう告げるとセネルも悪ノリ、クロエの怒鳴り声が再び響き渡った。
それからふんっと分かりやすいほどに拗ねた様子のクロエと笑いながらまあまあと彼女の機嫌を直そうとしているセネルを見送ってから、カイはちらりと背後を見る。
「で、いつまで隠れてるんだ?」
「気づいていましたか」
カイがそう問うた直後、バンエルティア号の影から一人の少年――紫色のだぼっとした服を身にまとう小柄な少年――が現れた。
「お前がセネルの言っていた、不可視のジェイか?」
「ご名答。セネルさんに頼まれたので、これからこのギルドでお世話になります」
ジェイは目を細めてにこっと微笑み、自己紹介をした後、まるで相手を見透かそうとするようにうっすらと目を開く。
「よろしくお願いしますね、ディセンダーさん」
「……アンジュさん達から聞いたのか?」
彼の口から出された単語にカイがそう尋ねると、ジェイは再び笑う。
「このギルドにディセンダーを名乗る者がいる。とは聞いていたのですが、あなたのようですね」
「!?」
カマをかけられた。それに気づいたカイはしまったとばかりに口を押さえるがもう遅い。
「ご心配には及びません。別に他言するつもりはありませんから」
しかしジェイはそう言いながら、カイの横をすれ違うように歩き出す。
「何かあれば、いつでも声をかけて下さい。これでも腕は立つつもりですので」
そこまで言って、ジェイは階下に姿を消していく。
「……面白い奴らが仲間になったな」
その光景を見て、カイは微笑を浮かべながらそう呟いた。
一方、その頃。カダイフ砂漠。ここにはそこを通ろうとする商隊や旅人をカモにする盗賊団が存在していた。
「「……」」
それに、彼らが狙っていたわけでもないのに二人の少女が不幸にも鉢合わせてしまう。一人は左目に星のような飾りをつけ、綺麗な鉱石の装飾を身につけた不思議な雰囲気を漂わせる少女。もう一人は右目に眼帯をつけ、背中に盾を背負い腰の左側に剣を、後ろに銃を携えたまるで騎士のような少女だ。
「きへへっ、上玉の女が二人か」
盗賊の一人がペロッと舌なめずりを見せ、二人の少女をジロジロと舐めまわすように見るとナイフを取り出して少女達に突き付けた。
「大人しくしな。そうすれば命だけは助けてやるぜ?」
そう言い、「命だけはな」と続けると盗賊団の男達はひゃはははと下品に笑い始める。
「……哀れな奴らだ」
と、右目に眼帯をつけた少女が隠れていない左目に憐れみの感情を込めて男達を見据え、呟いた。と、左目に星飾りをつけた少女が首を横に振る。
「そう言ってやるな。ボクには分かるよ……彼らもこの世界のヒトに捨てられてしまった存在だ」
「何を言ってやがる!?……まあいい、お前らはなかなかの上玉だ。捕まえて売れば良い金になる……まあ、その前に楽しむのも悪くはない」
少女の言葉に盗賊団の頭領らしき男性がそう言い、剣を引き抜く。
「お前ら、こいつらを捕まえろ! その後は存分に楽しんでいいぜぇ!!!」
頭領の叫びに呼応するように盗賊団が吼え、次々に剣やナイフ、斧など武器を構えていく。
「お下がりください」
「任せるよ」
「はっ!」
眼帯の少女が星飾りの少女を守るように前に出ると、星飾りの少女は任せるよと一言だけ言うに留まり、その言葉に眼帯の少女は頷くと左手で素早く銃を引き抜き、銃弾を連射。男達を一気に戦闘不能に陥れていく。
「く、くそっ!!」
銃弾をかわした男の一人が剣を振り上げ、眼帯の少女へと斬りかかる。しかし彼女はそれを右手の剣で軽く受け流すと左手に握っていた銃を手放し、男に膝蹴りを入れて怯ませた隙に銃を持っていた手で相手から剣を奪い取る。
「借りる」
そう呟きつつ右手の剣で相手を斬った後、彼女は両手に剣を持って男達に斬りかかった。
「ぬんっ!!」
右手の剣を振り下ろし、剣ごと相手を斬り倒し、そこに背後からかかってきた別の敵を左手の剣で受け止め、素早くもう片方の剣で斬り倒す。
「な、馬鹿な……」
頭領が呆然とした様子で呟く。眼帯の少女はたった一人で大勢の男達を、星飾りの少女を守りながらあっという間に全滅へと追い込む。
「チッ、使えねえ手下どもが!」
頭領は舌打ちを叩いて立ち上がり、剣を構える。紫色に光る刃の両刃片手剣。しかし普通の武器とは違うオーラがその剣から放たれていた。
「……ほう、なかなかの武器らしいな」
「ククク、この前砂漠に迷い込んだ旅人から奪い取ったんだ。腕のある剣士だったようだが疲労困憊の中襲えば簡単なものさ」
眼帯の少女がその剣のオーラを見抜き、頭領に声をかけると彼も得意気に笑いながらそう言い、剣を両手で握って斬りかかる。
「はぁっ!!」
眼帯の少女も左手に握る盗賊の剣でそれに対抗する。だが二人の剣が直撃した直後盗賊の剣がへし折れ、眼帯の少女の身体が僅かに斬られる。
「く……」
「ククク。そんじょそこらの剣じゃこいつにゃ勝てねえぜ? 売り物にあんまり傷をつけたくないんでねぇ。大人しくしてくれればこれ以上痛い目にあわせることはないけどよぉ?」
斬られた部分に手をやる眼帯の少女に対し、頭領は再び得意気に笑って降参を勧める。
「……面白い」
が、眼帯の少女はニヤリと笑い、折れた盗賊の剣を投げ捨てると背負っていた盾を左手に構えた。
「あのギルドと決別した時から持っているこの剣、もう我の力についてこれないようだ……その剣、貰うぞ」
そう言い、不敵に笑って眼帯の少女は己の握る剣――エタムの切っ先を頭領に向ける。
「取れるもんなら、取ってみやがれぇっ!!!」
それに対し、頭領は剣を振り上げると突進、勢いよく振り下ろす。が、眼帯の少女はそれを盾で受け、しかし受け止めるまではせずに受け流した。
「にゃろ、舐めんなぁっ!!」
頭領は怒鳴り声を上げて剣を振り回すが、その全てを眼帯の少女は今度は防ぐまでもなくかわしていく。
「遅いな」
「がぁっ!!??」
そして剣の一振りで頭領に傷を負わせ、刃を返して腹に柄で一撃を叩き込む。その痛みに思わず頭領は剣を手放して倒れてしまい、星飾りの少女も頭領の方へと歩みを進める。
「ひぃっ! す、すまない! 俺が悪かった!! ど、どうか命だけは!!」
剣を手放した丸腰状態になってしまった頭領は自分も殺されてしまうと思ったか土下座で命乞いを始める。
「別に殺すつもりはないよ。悪いのは君じゃない……君を捨てたヒトがはびこるこの世界だ」
「……え?」
星飾りの少女は微笑を浮かべてそう呟き、頭領は驚いたように顔を上げる。
「この世界では国が民を、親が子を、ヒトがヒトを捨てる。君もそうなんだろう?」
「……あ、ああ。俺の村は飢饉に襲われて、だが国は助けてくれなくて……こいつらも同じように……」
星飾りの少女が問いかけると頭領は頷き、今は全員息のない手下を見回す。
「やっぱり……どうだろう? ボクと一緒に来ないかい?」
「なに?」
星飾りの少女の言葉に頭領は再び驚いた声を出す。
「ボクが創る世界はこんな汚い世界じゃない。ボクは、ボクの世界の住人が快適に暮らせる世界を創る事を約束するよ……君も、君を見捨てたこの世界を捨てて、ボクと一緒に来ないかい?」
そう言う星飾りの少女は相手を惑わせるかのような微笑みを浮かべており、頭領は少女のその微笑みに呑み込まれてしまう。
「あ、ああ」
気づけば、彼は頷いてしまっていた。それに星飾りの少女は満足したように頷くと、彼に視線を合わせるように膝をつき、彼の肩に手を乗せる。
「お、お前は……いや、あなたは……」
「ボクの名はラザリス。この世界をボクの世界、ジルディアへと生まれ変わらせるため、君の力を貸してくれ」
「は、はい……ラザリス様」
星飾りの少女――ラザリスの微笑みに頭領は完全に呑み込まれており、彼の身体が赤い煙へと包まれていく。
「まずは、この場所をボクの世界の住人に快適な場所に変えないとね……」
ラザリスはそう呟いてカダイフ砂漠の一角を見回す。頭領を包み込んだ赤い煙が消えた後、そこにはまるで鉱石から出来たゴーレムのような魔物が存在しており、それはまるで主に忠誠を誓う騎士のごとく、ラザリスに向かって跪くように座っていた。
《後書き》
今回はクロエとジェイのレジェンディアメンバー仲間入りです。ちなみにクロエはカイでラッキースケベ起こしたら面白いかなぁと思ったけどそれ以上に色んな意味で怖かったのでやめました。(ちなみにセネクロ派)
でもってついでというかなんというか、砂漠の方にラザリスとレイのジルディアメンバー登場です。オリジナルイベントとして絡めてみました。ついでにさらっとレイの武器を強化。
さて次回はどうしようかなっと。ま、今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。