テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~ 作:カイナ
「アルヴィン様、お手紙が届いております」
「お、サンキューロックス君」
バンエルティア号のホール。ロックスと彼を手伝っているのだろうフレンは大きな袋にたくさんの手紙を入れてやってきており、ロックスが丁度ホールにいたアルヴィンに手紙を手渡す。
「ああ、ゼロス様。あなたにもお手紙です」
「お、なになに~? んーと、見覚えのない名前だな……また新しいハニーからのラブレターかな~?」
続いてゼロスにも手紙を手渡し、ゼロスはにやけながら手紙を受け取ると鼻歌交じりに去っていく。
「……ロックス」
と、彼と入れ替わるようにフォックスが合流した。
「以前提出したウリズン帝国への報告書の返答がそろそろ届いている頃合なのだが……」
「ああ、ウリズン帝国様からのお手紙も届いております」
「すまない。私が代表して預かろう」
「ええ、ではお任せいたします」
フォックスはロックスから手紙を受け取るとぺこりと一礼して去っていく。
「真面目なお方ですね」
「そうだね。剣術も魔術も申し分ないし、彼がウリズン帝国軍所属なのは分かってるけど、ぜひ僕の部隊にスカウトしたいくらいだ」
ロックスの言葉にフレンも同意してフォックスを評価する。
「なー、ロックス」
「あ、ロイド様。どうなされましたか?」
「いや、俺達宛ての手紙って来てないか? 多分俺かコレット宛てだと思うんだけどさ」
と、話していた二人にロイドが声をかけ、気づいたロックスが用件を尋ねロイドがそう言うと、ロックスは「ロイド様宛て……」と呟きながら郵便袋を探る。
「……いえ、来てませんね」
「そっかー……悪いな。んじゃ」
郵便袋を隅々まで探すがロイド宛てもコレット宛ても手紙は来ておらず、首を横に振って言うロックスにロイドは困ったように頭をかきながらそう答え、去っていく。快活な普段のロイドからすれば想像できない様子にロックスとフレンは首を傾げていた。と、ロックスはホールに戻ってきた相手を見て「あっ」と声を出す。
「アンジュ様、お手紙が届いてますよ」
ロックスはそう言って戻ってきた相手――アンジュに手紙を渡し、アンジュも「ありがとう、ロックス」とお礼を言って手紙を確認する。
「このハンコは、オルタ・ビレッジからね」
「ヘーゼル村の皆さんや、ここにいる皆さんの故郷の方々も集まって、もうそろそろ一つの村らしくなっているんじゃないですか?」
オルタ・ビレッジからの手紙と聞いてロックスが嬉しそうに言い、アンジュも一つ微笑みながら手紙に手を通す。
「まぁ……」
「どうかしました? 何か、良くない事でも……」
「色んな所から人々が集まっているせいか、文化や価値観の違いで衝突が起きているみたい……」
アンジュの呟きにロックスが不安気に聞くとアンジュは手紙の内容を説明。それぞれのやり方を、みんな譲ろうとしないらしく、多様な文化と価値観をまとめる事の難しさに彼女は悲しげな顔を見せた。
「けれども……皆さん一人ひとりはいい人なんですから。それぞれ、よかれと思って自分達のやり方を提案してくれてるんですよ」
「でも、どうすればいいの。みんなが一つにまとまる様にするには……」
ロックスのフォローに対してアンジュが言うと、ロックスは「そうですね……」と考える様子を見せた後「そうだ」と一つ案を思いつく。
「種族や文化の違いは押し付けるのではなく、分かち合うべきだと思うんです。そうする事で、“お互いが自らの価値観を変える事が出来ると認識”出来るんじゃないでしょうか」
そう言い、ロックスは互いの文化の違いを分かち合う事を提案してみてはどうだろうかと言う。時間がかかるかもしれないが、ただ否定するだけではなく、選択肢を増やして肯定の力で導いていこう。と彼は提案した。
「そうね。自分自身の事をダメだと思ってても、人って色々やってるうちに“自分にこんな力があったんだ”と気付けるものね」
「その……アンジュ様。一人で抱え込まないで下さい。僕に出来る事なんて、たかが知れてますけど……」
ロックスの不安気な言葉に対しアンジュはふふっと笑った。
「あなたも、もっと自信を持ちなさい。あなたがわたしの教会に来てくれなかったら、きっとアドリビトムは無かったよ。あなたが提案してくれて、色々奔走してくれたから、アドリビトムが誕生したんだし」
「あ、いや、それは……提案した以上は、僕がやらなくてはダメかなと思って……」
「もう、あなたに全部任せて わたしは隠居してもいいかなー」
「そ、それは困りますってば!!」
アンジュの言葉にロックスは照れるが、その次の言葉に対し必死に叫ぶ。とアンジュはちゃっかりとした悪戯っぽい笑みを見せた。
「おだてには乗らないかぁ。残念だなあ……」
(うう、また丸め込まれる所だった……家事だけって約束のはずが、ほとんど任されてきたもんなぁ。トホホ……)
危うくまた何か押し付けられそうになったロックスは過去を思い出し、トホホと呟いたのであった。
「お話中申し訳ありませんが、よろしいでしょうか?」
「あ、ジェイドさん。どうぞ?」
と、そこにジェイドが口を挟んだ。その横にはウィルが立っている。
「採取したドクメントの解析が終わりました。以前ジュディスの報告にあった様に、あのキバは、ラザリスの世界の情報をルミナシアに送り込むパイプになっている様です」
「ニアタ、という方からの情報は正しかった。そういう事ね」
ジェイドから聞いた報告にアンジュが確認するように問うと、ジェイドは「そう判断してもいいでしょう」と肯定する。
「あのキバの周辺から、徐々に世界の侵食が進んでいる。キバを含め、あれらのものは、この世界を構成している何ものにも該当しない……カイが侵食を戻す能力を持っていたとしても、限界があるでしょう。侵食はキバがある限り続きますから」
「そうね。実際前に一度、侵食を戻そうと無理しすぎて倒れちゃったし……根本から解決するには、封印次元を早急に作り上げる事ね……でも、その為には星晶の代わりを作らないと……」
アンジュはジェイドからの報告を聞きながら、前にカイがキバ自体を浄化しようとして倒れてしまった事を思い出す。解決策である封印次元を作るため、星晶の代わりを作る事が現在の目的だ。しかし、その残る二つの材料は既に絶滅しており、この世界には存在しない。
「ウズマキフスベは20年前に絶滅した、と言われている……だが、発見出来る可能性はあるだろう。絶滅したのはたった20年前。さらに言えば、生態や分布もわかっているからな」
が、ウィルは世間的に絶滅したと言われていても、まだ生き残りが存在するかもしれない。という希望を見出す。
「じゃあ、そのウズマキフスベはまだ見つかるかもしれないのね」
「ああ。しかし、ウズマキフスベが生息する季節は限られていて、今はその季節ではない……ツリガネトンボ草の方は、もっと古くに絶滅していて……化石なら入手出来るのだが……」
ウズマキフスベが入手できる可能性にアンジュは希望を取り戻すが、ツリガネトンボ草はもっと古くに絶滅していて生き残りを探すのは困難であり、入手できるのは化石くらいだ、とウィルは言う。と、ジェイドがそれに反応した。
「化石にでも、わずかにドクメントがあるなら採取する価値はありますね」
「それならば、オレが場所を知っている。採取を依頼として届けさせてくれ」
「ええ、もちろんよ」
必要なのはドクメント。化石になったと言えどドクメントが残っているのならば採取の価値はあるというジェイドの言葉を聞いたウィルはその化石のありかを知っていると答え、その採取を依頼として届けると申し出る。それにアンジュはこくり、と頷いた。
「と、いうわけで。カイ、毎回悪いけれど……今回あなた達にはアルマナック遺跡へ行って、ツリガネトンボ草の化石を取ってきてもらいたいの。同行するのは、ルカ君とルーティ、そしてカノンノよ」
「遺跡に化石なんてあるの?」
アンジュから説明を受けたルカが問うと、アンジュは「遺跡の中にある“生命讃歌の間”に化石が飾られている」と補足説明。と、ルカは「それって盗むって事じゃないか!?」と思わず叫んだ。
「あそこは、世界文化遺産なのに……僕、そんな事出来ないよ」
「あら、後で返せばいいんじゃない? 世界救済の為なら、神様も世界樹も罪をとがめたりしないわ」
うつむくルカに対しアンジュはあっさりとそう言い、「生命賛歌の間は特殊な仕掛けに隠された秘密の部屋にあり、その仕掛けの解除はルーティに任せればいい」と説明を続けた。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
「オッケー。任せといて♪」
「何だか気が重いなぁ……」
平然としているアンジュ及びむしろテンションを上げているルーティに対し、ルカはため息を漏らして呟いていた。
「あ、そうそう言い忘れてた」
と、出発しようとしていたカイ達をアンジュが呼び止める。
「あのね、キール君からの要請でこのギルドにも教師を迎える事になったの。流石にキール君だけじゃ皆の学習教育まで行き届かなくって」
「そ、そうだね……僕もたまにルビア達に色々聞かれるし……」
アンジュの言葉を聞いたルカはうんうんと頷く。と、そこにいたロイドが口を挟んだ。
「それでさ、俺達の村の先生にギルドに来てくれって手紙を送ってさ、来てくれることになったんだ……なんだけどさ、最後に手紙が来たのが丁度アルマナック遺跡辺りなんだよ……で、手紙が来たのは結構前で、それ以来音沙汰なし……」
ロイドは腕を組んではぁ~とため息をつく。コレットも何か考えるような「う~ん」という声を出す。
「もしかしたら、いつものアレになっちゃってるかもしれないね」
「いや、多分確実になってるな……そういうわけで、多分先生だけだと到着が遅くなると思うんだ。もののついでって言ったら悪いけどさ、迎えに行ってもらえると助かるよ」
「分かった」
コレットの言葉に対しロイドは妙に自信のある様子で頷いてみせ、両手を合わせてお願い。それをカイが了承するとロイドは「悪いな!」と返した。
「まあ、そういうわけで。ツリガネトンボ草の化石と一緒に、その先生さんも連れてきてね……キール君が胃痛で倒れちゃったらそれはそれで問題だし。じゃあ、改めて行ってらっしゃい」
「行ってきます」
改めてのアンジュの送り届けにカイも返し、彼らは改めて船を出て行った。
「ここは、予言にあったディセンダーを迎える為に、古い時代に作られた遺跡らしいわね。きっと、相当な数のお宝が眠ってるんでしょうね~!」
「あはは……ルーティさん、目的忘れないでね?」
んふふ、と笑いながら機嫌よくそう言うルーティにカノンノが苦笑交じりに釘を刺すとルーティは「分かってるって」と返す。
「今回の目的は、ツリガネトンボ草の化石の入手と、ロイド達の先生を連れてくるんだよね?」
「ああ……以前ここに潜入した時、特殊な魔物が多くて手こずったしな。なるべく急いで合流しよう」
ルカの確認を聞いたカイが、前に暁の従者がらみでこの遺跡に入った事を思い出す。と、ルカが「そういえばさ」と呟いた。
「ディセンダーを崇めていた 暁の従者って、どうしてるんだろうね」
「最近聞かないわね。世間からフェードアウトしちゃったんじゃない?」
「もしもカイがディセンダーだと知ったら、どういう反応をするだろう? やっぱり崇めたりするのかな?」
「遠慮する」
ルカがカイの方を見ながらふっと疑問に思った事をそのまま出すように言うと、カイは即座に嫌そうな顔で返した。
「あら、上に立つのが苦手なの? でも、あんたなら人々を導けるかもね」
「冗談抜かせ。めんどくさいだけだ」
カイの遠慮を謙遜と取ったのか単に弄る道具にしたのかルーティのにやにや笑いながらの言葉にカイも皮肉染みた笑みを見せながら返す。
「そう、かな?……だって君は何でも、やってしまうもの。とりあえず、やろうとする。そして、前進して強くなってく……」
「あんたがディセンダーなんだなって思うところは、言い伝え通り不可能を知らないってところだわ。この世界のみんなが、あんたみたいになれればいいのに」
カイのめんどくさいから嫌だ、という言葉に対しルカがその言葉を否定するように言うとルーティも援護。するとカノンノもうん、と頷いた。
「カイって口では面倒とか言いながら結局なんでもかんでもやっちゃうんだもん……私達もそれに引っ張られてるし、何でも“やってみよう!”って行動する様になるよね? 世界のみんながそうなれば、世界は変わると思うな」
「……この話はここまでにしよう。とっとと仕事を進めるぞ」
形勢不利と判断したか話を無理矢理打ち切ってその場を逃げ出すように歩き出すカイに、カノンノ達はくすくすと僅かに笑い声を零した。
「これ程の遺跡が、これだけ完璧な状態で保存されているというのは珍しい……苔の付着の仕方や、材質の劣化の具合からも相当に古い建造物の様だな……」
遺跡に入った時、聞こえてきたのはそんな女性の声だった。
「ディセンダー伝説によるとこのアルマナック遺跡はディセンダー信仰のため建造されたものらしいです。遺跡の様式から考えても……」
女性の言葉に続いてそんな青年の分析するような声が聞こえてくる。
「何かしら?」
ルーティが首を傾げ、声の方を見る。そこには遺跡について熱く語る男性と女性、それを興味深く聞いている少女、そしてその後ろで頭を抱えている少年の姿があった。が、少年はカイ達の足音で彼らに気づいたのか振り返る。
「あれ? キミは?……」
「俺達はギルド・アドリビトムの者だ。ロイド達の頼みで先生を探しに来たんだが……」
「ああ、あなた達が!」
首を傾げる少年に対しカイが名乗ると少年は目を輝かせ、熱弁を振るっている女性の方を向く。
「姉さん! 迎えの人が来たよ!」
その言葉に姉さんと呼ばれた女性も我に返ったようにカイ達の方を向く。
「あなたが、アドリビトムの……?」
「ああ。俺はカイ」
「ボク達の到着が遅いから、わざわざ迎えに来てくれたんだよ! ほら、姉さんの仕事はギルドで生徒に学問の楽しさを教える事でしょう? いつまでも道草してるのは良くないよ」
「わかっていてよ、ジーニアス。お待たせしてしまったわね。私はリフィル・セイジ」
「ボクは、弟のジーニアスだよ」
女性――銀髪で、さっきまでは目を見開いて熱く語っていたのだが今は冷静で知的な印象を与える――はリフィルと名を名乗り、それに続いて彼女と同じ銀髪の少年がジーニアスと名乗る。
「えっと……ところで、リフィルさん。そちらのお二人もロイド達のお知り合いなんですか?」
「んーと、話には聞いてなかったんだけどなぁ?」
カノンノが残る二人を見て首を傾げ、ルカも頭を捻る。と、茶髪の青年が「ああ」と呟いた。
「いや、俺達は別にリフィルさんの知り合いってわけじゃないんだ」
青年はそう言って自分の胸に手をやる。
「俺はスレイ。世界を巡ってディセンダー伝説を調べててさ、このアルマナック遺跡の調査に来てたんだけどそこでリフィルさんに会って話してたんだ」
青年――スレイが名乗った後、その隣に立っていた少女も持っていた槍を地面に立てて凛と背筋を伸ばした格好で口を開く。
「私はアリーシャ。スレイの従士だ」
「んーっと、堅苦しく言ってるけど……要するに俺の旅の連れだよ」
生真面目に名乗る少女――アリーシャにスレイは困ったように頬をかいてそう言った。
「まだこの遺跡を、十分に検証し尽くしてはいないのだけれど……仕方がないわね。ひとまず、ギルドに案内していただける?」
「ああ、それなんだが。もう少し待ってくれないか?」
「……どういうことかしら?」
リフィルのお願いに対しカイはそう返し、リフィルが首を傾げるとカイはこれから行うべき事を説明する。
「……つまり、そのラザリスとやら、ジルディアを封印する封印次元を作るためにこの遺跡の奥地にある生命賛歌の間に行く必要がある。というわけね」
「ああ。だからアドリビトムに連れて行くのはそれが終わってからにしてほしい……もちろん、一緒に来てくれれば魔物の脅威からは全力で守ろう」
リフィルは一発で話の要点を呑み込み、カイもそう言う。と、リフィルはこくりと頷いた。
「ええ。なら一緒に行かせてもらうわ。私もこの先の検分を行ないたいと思っていたところだし」
「なら、俺達も一緒に行くよ。俺、これでも剣には自信があるしさ」
リフィル達だけでなくスレイ達も同行を決め、カイはこくり、と頷くとルーティに目配せ。するとルーティも「オッケー」と言って左手の親指と人差し指の先を指で円を作るようにくっつけた。
それからカイ達は遺跡の入り口まで戻ると、すぐ近くにあった装置にルーティが近づく。
「んー、仕組みはわからないけど とりあえず触ってみましょっか」
「ちょっ、ちょっと!!……そんなわけのわかんないもの触っても大丈夫なの?」
とりあえずと装置を触り始めるルーティにルカが慌てる。が、装置はうんともすんとも言わず、ルーティが焦れたように装置に蹴りを入れると、装置が起動して扉が開いた。
「うそっ!?」
「ホホホホホ! トレジャーハンターの腕にかかれば、ざっとこんなものよ!」
驚愕の声を上げるルカにルーティは得意気に笑う。
「何をしとるかぁっ!!!」
「ひゃあっ!?」
が、直後リフィルの怒声が響き渡る。その隣に立っていたカノンノの悲鳴も聞こえた。
「貴重な遺跡に傷をつけるとは! 貴様、何を考えているっ!?」
「え、いや、そのっ……」
圧倒的なリフィルの剣幕にさっきまで得意気に笑っていたルーティも言葉を失ってしまう。
「姉さん! だから、今はアドリビトムの人達も急いでるんだって!!」
「むぅ……分かった。説教は後に回すとしよう」
ジーニアスが大慌てで説得を開始、リフィルも説教は保留とし彼らは先に進んでいく。
「彼の者らの刃に消え得ぬ炎を宿せ、アグリゲットシャープ!!」
「氷月翔閃!!」
「裂駆槍!!」
遺跡の奥に眠っていた魔物達が現れる。が、カイ達が戦いに出ようとするのをリフィルが制し、彼女は詠唱すると素早く魔術を発動。スレイ達の力を底上げし、続けてスレイの冷気を宿した剣による斬撃とアリーシャの自分の背丈ほどもあり長大な槍の渾身の突きが魔物に決まる。
「蒼溟たる波涛よ、戦禍となりて、厄を飲み込め! タイダルウェイブ!!」
そこにけん玉を使って集中力を高めていたジーニアスの詠唱が完了、水のマナが結集して大洪水を起こし魔物達を激流に呑み込んで葬り去る。
「すごい……」
ぽかーんと口を開いて声を漏らすカノンノ。スレイとアリーシャはともかくとして教師と聞いていたリフィルは魔物が現れたにも関わらず冷静に判断、魔術を発動。ジーニアスも年齢に似合わない上級術で魔物を一掃してみせていた。
「うひゃー、最近の教師ってのはとんでもないわねー。こりゃ、あたしがトレジャーハンターだとか言って下手に怒らせない方がいいかも……」
ルーティも悲鳴を小さく留めたような様子で声を漏らす。
「……ねえ」
と、ルカが何か気になったのかルーティに話しかける。
「ルーティは、お宝だったら何でも持って行っちゃうの?」
「まぁ、基本的にはそうね。何たって、お宝なんだし♪」
ルカの質問をルーティは嬉しそうに笑いながら肯定。すると、それを聞いたルカが「そっか……」と何か思っているかの様子で呟き、ルーティが首を傾げながら「何よ?」と今度は彼女が問いかける。
「あ、えっと……ちょっともったいない気もするなぁと思って……昔、習った事があるんだ。遺跡から、歴史の解明の手がかりになる宝物がどんどん持ち出されて……結果的に何百年も、重要な歴史的研究が遅れてしまう事例があるんだって」
「ちょっと、あたしをそこらの盗掘家と一緒にしないでよね」
ルカの言葉を聞いたルーティが唇を尖らせると、ルカは慌てて謝りながら「そういうわけじゃ……」と弁解しようとする。が、ルーティは腕を組んで「でもまぁ」とそれを遮った。
「ルカの言う事も一理あるわ。だからって、あたしの生き方がどう変わるってわけでもないけどね」
どんな高尚な理屈をこねたって結局、世界は“今”を生きる者の為にある。もちろん過去をないがしろにするつもりはない。だけど過去の為に、ただ“今”を犠牲にするのは間違ってるんじゃないか。とルーティは話した。
「そっか。 ルーティがお金を稼いでいる理由って……」
それを聞いたルカはルーティがお金を稼いでいる理由を思い出す。彼女は孤児であり、同じ境遇の子供達が故郷にいる。みんな今を、今日を生き延びるのに必死。彼女はそんな子供達のためにお金を稼いでいるのだ。
「だからあたしは、あの子達の為にもあたしに出来る事をする。これから先も、ずっとね」
「うん……わかったよ。色んな立場の人がいるって事なんだよね……世の中って、難しいや……」
ルーティは決意を固めた瞳で力強くそう言い、それを聞いたルカもこくり、と頷いた後「世の中って難しいや」と締めたのであった。
それから遺跡のトラップをリフィルが、ルーティでは遺跡に余計な損害を出しかねないと言い出して解除していきながら、ついに遺跡の最奥地――生命賛歌の間までやってくる。
「すごい!ここが世界文化遺産の“生命讃歌の間”……色んな化石がある」
「これらの化石は自然の調和、絡み合いを表しているもの、と言われているわ」
ルカの言葉にリフィルが、教師が生徒に教えるように生命賛歌の間について説明する。
「様々な植物、生き物、ヒト……世界樹……いつから、ヒトは調和を見失ったんだろうね」
ルカがそう言うが、ルーティは資料を読みながら化石の一つに近づいていく。
「ええと、渡された資料によると……どうやら、これの様ね」
そしてひょいっと目的のツリガネトンボ草の化石を取る。
(……スルーされたっ……)
「でも、ま、不満ばっかり言ってもね……」
「えっ……」
自分の言葉をスルーされたルカはショックを受けるが、ルーティは化石を大事に保管しながらそう返し、振り返る。
「先へ進まなきゃ。昔は昔、今は今でしょ。さあ、化石も手に入れられたし、ここを出るわよ」
ルーティはそう言って歩き始め、ルカも慌てて後を追う。カイとカノンノもリフィルとジーニアス、そしてスレイとアリーシャを連れて遺跡を出て行った。
「ご苦労様。無事にお迎え出来たみたいね」
「ここが、アドリビトム……噂以上の設備ね」
バンエルティア号に戻り、アンジュが出迎えるとリフィルはバンエルティア号内部を見ながらその設備に驚く。と、彼らが帰ってきたのを聞きつけたのかロイドとコレットが駆け寄ってくる。
「先生! 良かった、無事に……あれ、ジーニアス!? お前も来てたのか!」
「聞いてよロイド! 姉さんたら、またいつもの悪い病気が始まって……」
「何ですって?」
「な、何でもないです……」
ロイドはジーニアスの存在に驚き、ジーニアスが相変わらずのリフィルの悪い病気について訴えようとするが、リフィルが笑顔で問いかけるとすぐさま首を横に振って沈黙する。
「とにかく、二人とも無事に着いて良かったです」
「そうね。ええと……カイといったかしら。これから、弟共々、よろしく頼むわね」
「ああ。こっちこそよろしく頼む」
コレットがにこりと微笑んで言うとリフィルも頷いて返し、改めてカイに挨拶する。
「ねえ、ロイド。船の中を案内してよ。僕、こんな大きな船初めて!」
「ああ、いいぜ。好きな所を案内してやるよ」
「わぁーい! それじゃあね、ええっと……」
「ロイド君、ついでにと言ってはなんだけど。リフィルさんの案内もお願いできないかな? 案内が終わったらコレット達の部屋で待ってもらえるようにお願い」
「ああ、任せといてくれよ!」
「分かりました」
ロイドがジーニアスに船を案内しようと申し出、アンジュがリフィルの案内もお願いする。それにロイドも大きく頷いてから、アンジュはリフィルを見る。
「申し訳ありません。これから少し緒連絡と緒作業がありますので……また後程改めてご挨拶させていただきます」
「ええ。よろしくお願いするわ」
アンジュとリフィルは後の約束を取り付け、リフィルとジーニアスはロイド、コレットと一緒に去っていく。と入れ替わるように化石を研究室に届けに行っていたカノンノが戻ってくる。
「化石は研究室へ届けておいたよ」
「これで何か進展があればいいね。それじゃあ、今回もご苦労様」
「なーんか、高価なお宝があると思ってたんだけど、今回は縁がなかったわねぇ。でも、あの部屋の仕掛け。まだ何かありそうだわ」
「ええ……盗む気満々じゃないか」
リフィルがいなくなった事で隠す必要がなくなったルーティはトレジャーハンターの本性を見せ、ルカが呆れた様子を見せるとルーティは「ふふん」と得意気に鼻を鳴らす。
「じゃ、ルカ。あんたに問題ね? もんだーい、その1! アルマナック遺跡が作られた目的は?」
「ええと……ディセンダーを迎える為に作られた……」
「もんだーい、その2! ディセンダーは誰?」
「ええと、その……目の前にいる……カイ……」
二つの問題にルカが答えた後、ルーティは続けてカイに「質問」と呼びかける。
「あの遺跡、要る? あそこで暮らしたい?」
「いや、いらん」
「ほら、カイがこう言ってるんだからいいじゃない!」
「む、無茶苦茶だ!!……」
ルーティからの質問にいらないとカイが正直に答えると、ルーティは満面の笑顔で屁理屈を言ってみせる。そのとんでもない屁理屈にルカも悲鳴を上げ、カノンノとアンジュは苦笑を漏らした。
「「……ディセンダー?」」
と、スレイとアリーシャがぽかんとした声を出した。それを聞いたルーティが二人の方を見てうん、と頷き、カイを親指で指し示す。
「こいつ、ディセンダーよ。一応」
「一応言うな」
ルーティの言葉にカイが目を細めてツッコミを入れる。
「ディセンダー様……降臨なさっていたのですね!」
と、いきなりアリーシャがカイの手を取り、すごくキラキラした目でカイを見る。
「え? は?」
カイもフリーズしていた。
「……ルカ君。スレイ君とアリーシャさんって実力はどうだった?」
「え? えーと、二人とも結構強かったと思うけど……」
「なるほど……」
アンジュはルカからの言葉を聞いて何かを考えだし、ルカが嫌な予感とでもいいそうな顔で「アンジュさん?」と問いかける。
「スレイ君、アリーシャさん」
「「はい?」」
アンジュが呼びかけ、二人が返事をする。
「今、このルミナシアが危機的状況なの……戦力になる人は歓迎するわ。私達に力を貸してもらえないかしら?」
「……分かりました! 俺でよければ、力になります!」
「私も助力します」
「決まりね」
スレイとアリーシャはアンジュの話を聞き、アドリビトムへの入団を決意。アンジュもにこっと微笑むが、ルカはその隣で引きつった笑みを浮かべる。
「ディセンダー様。あなたのお力になれるよう頑張ります!」
「お、おう……つーかディセンダーって呼ぶの止めてくれ……」
アリーシャは再びカイの方を向き直し、彼の手を握ると深く礼をする。それに対しカイは嫌そうなしかし相手に純粋で悪意がないためどう指摘すればいいのか分からない、という様子を見せていた。
「……」
アリーシャに手を握られているカイを見たカノンノは妙にぶぅと頬を膨らませており、それに気づいたルーティはくすくすと笑っていた。
「……」
「マクスウェル様、お気づきですか?」
それらを遠目で見る二人の精霊――精霊王マクスウェルことミラと氷の精霊セルシウス。ミラは難しい目を見せ、セルシウスも何かに勘付いている様子でミラに話しかける。ミラも「ああ」と頷く。その二人の視線の先にはアドリビトムへの入団手続きを取っているスレイの姿があった。
「あの人間のドクメント……普通とは違う」
「ええ……基本的には何の変哲もない人間のドクメント……しかし、ドクメントの一部に精霊に近い部分があります」
「……調べてみる必要がありそうだな」
ミラとセルシウスはそう話し合い、スレイ達に気づかれる前にその場を去っていった。
《後書き》
今回はアルマナック遺跡のイベントに例によってその遺跡で仲間入りするリフィル達のイベントを捻じ込み、そのついでにゼスティリアより参戦、スレイとアリーシャの仲間入りです。なおミクリオ達天族は登場する予定ありません……流石に設定考えるのが面倒くさいです。あと俺ゼスティリア未プレイだからあまり無理矢理に増やしたくない……。
ちなみにアリーシャがカイを「ディセンダー様」と呼ぶのは彼女が原作で天族を様付けで呼んでいる事の再現兼、
今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。