テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~   作:カイナ

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第二話 入隊試験

ブラウニー鉱山。カイ、レイはカノンノと共にここに銅の納品を行うためまず銅の採掘へとその少し奥までやってきていた。

 

「せいっ!」

 

「ふんっ!」

 

カイとレイは船を出る時に持たされたマトックで岩の割れ目を打ち、そこから出てくる銅の固まりを拾い集めていく。

 

「……こんなもんか?」

 

「ん~……うん、そうだね。これくらいあれば充分足りると思うよ」

 

カイが袋に銅の固まりをいくつか入れてカノンノに見せ、カノンノからもオッケーを貰う。と、レイがちらりと帰り道を見た。

 

「ならば急ぐぞ。また魔物が集まってきた」

 

「わわ! 急ごう!」

 

「了解」

 

レイの言葉通り帰り道にこの辺を縄張りにしているバットやロックルが集まり始めており、カノンノが慌てて叫ぶとカイもこくんと頷き、強行突破する気なのか刀を抜く。それをちらりと見てレイも剣と銃を抜き、カノンノは呆れたようにため息をつくと二人が採掘した銅を預かり、彼女も大剣を抜いた。

そして魔物の群れを強行突破した三人は鉱山を脱出、バンエルティア号へと戻るとホールへと入る。

 

「アンジュさん! 持ってきたよ!」

 

「あ、お帰りなさい」

 

カノンノがそう言って依頼用のテーブルに銅を置き、アンジュは挨拶を返した後袋の中身を確認する。

 

「うん。確かに受け取りました。それじゃあ、これが報酬ね」

 

「どうも」

「ありがとうございます」

 

アンジュは納品物を確認すると報酬をカイとレイに渡し、二人もお礼を言ってから報酬を受け取る。

 

「まあ、正式なメンバーとなれば大体こんな感じでギルドの仕事をしてもらうことになるんだけど……」

 

「ならば、もう見習いとやらは卒業ということでしょうか?」

 

「そうねぇ……もう一人で仕事をしてもらっても大丈夫だと思うけど……」

 

アンジュからの説明を受け、レイが聞き返すと彼女は口元に人差し指を当てながら何か考えている様子で呟く。

 

「うん。じゃあその前に、一人前のメンバーとなってもらうために最後の入隊試験をしましょうか。ああ、二人一緒で構わないわよ」

 

「それが終われば、正式なメンバーとして採用、ですか?」

 

「うん、そうだね。アンジュさん、入隊試験はどんなクエストですか? 私がやったのと同じですか?」

 

アンジュの言葉にカイが聞き返し、カノンノも彼女に問いかける。

 

「そう焦っては駄目よ、カノンノ」

 

と、それに対しアンジュはくすくすと笑う。

 

「それより、残りのメンバーが帰還したから二人と顔合わせをしてもらわないと」

 

「はい。じゃあ二人とも、残りのメンバーへ挨拶しに回ろう。みんな、下の船倉にいるから」

 

「じゃあ、私はクエストを用意しておくね。行ってらっしゃい」

 

アンジュが見送り、三人はバンエルティア号の地下二回、機関室より下までやってくる。そして部屋の真ん中に来るとカノンノがくるんと回転して振り返った。

 

「ここが船倉だよ。この階は皆の部屋として使ってあるの。それじゃ、挨拶回りをしよっか!」

 

「おう」

「はい」

 

カノンノの言葉にカイとレイが頷く、その時だった。

 

「大体ルビアは!」

「なによカイウスったら!」

 

突然船倉の左奥、正確には船倉に入って左側の壁にあるドアの一番奥の部屋から喧騒が聞こえ、カノンノが「またかぁ」と呟いてその部屋に入っていく。カイとレイもその後に続いた。

 

「二人とも、どうしたの?」

 

「あ、カノンノ! 聞いてよカイウスったら!」

「なんだよルビア! カノンノを味方につけるなんて汚いぞ!」

 

「ふ、二人とも落ち着いてよ」

 

「どうしたんだ?」

 

部屋に入ったカノンノ達を出迎えたのは茶色い髪に前髪だけが白くなっている少年とピンク色の髪をした少女。その内の少女がカノンノに一番に話しかけ、少年がそれに対して叫ぶとカノンノが落ち着くよう促す。と、カイがその後ろから覗き込み、それを見た少女が驚いたように目を丸くした。

 

「えっ!? えっと、誰?」

 

「ああ、今日入団したカイとレイ。まだ見習いで、今挨拶回りに来てるんだ」

 

「そうなのか? 俺はカイウス・クオールズ。よろしくな」

「あたしは、ルビア・ナトウィック」

 

「カイ」

「レイだ」

 

目を丸くした少女にカノンノが説明すると少年――カイウスが快活に笑って名を名乗り、少女――ルビアも名前を名乗る。それにカイとレイも自分の名を名乗り返した。

 

「アタシはアンジュさんがいた教会で、神官の見習いをしてたの。アンジュさんの後輩、ってところかな」

 

「アンジュさんが村の教会にいた頃、俺、よく出入りしててさ、ギルドを立ち上げるから一緒にやらないかって言われて、ここへ来たんだ」

 

ルビアの次にカイウスがそう言う、とルビアの眉が吊り上がった。

 

「あら、カイウスったら、アンジュさんに誘われたのはあたしよ? あなたは、俺も行くってついて来ただけじゃない」

 

「なんだよ、それ! 大体、お前じゃアンジュさんの足を引っ張るだけだろっ! お前がそうなった時に助けてやろうって思って、付き合ってやってんじゃないか!」

 

ルビアの言葉にカイウスも売り言葉に買い言葉とばかりに叫び、二人は顔を突き合わせる。

 

「も~」

 

それにカノンノは呆れたように声を漏らし、カイとレイは面食らったように黙り込む。

 

「あ……」

 

と、ルビアが我に返ったように声を漏らして三人の方を向いた。

 

「ご、ごめんなさい……カイウスとは幼馴染で、いっつもこんな調子なの。だから、気にしないでね」

 

ルビアがそう説明する横でカイウスも申し訳なさそうに顔を背けていた。

 

「それじゃあ、カイ、レイ。これからよろしくね」

 

「ああ」

「よろしく頼む」

 

二人が微笑みながら、ルビアがそう言うと二人も頷いて返す。と、ルビアがちらりとカイウスを見た。

 

「ねえカイウス、今レイさんを見てなかった?」

 

「はぁ? 挨拶するんだから相手を見るのは当然だろ?」

 

「そうじゃなくって、何か見惚れてなかった?」

 

 

「……二人とも、行こっか」

 

ルビアとカイウスがまた口喧嘩しそうな雰囲気を感じ取ったのか、カノンノは二人を回れ右させると背中を押して部屋を出ていく。それから三人はどうせ近いからとその隣の部屋に入った。

 

「あーん? あ、カノンノ。ん? あんたら誰?」

 

と、赤い髪をショートカットにした少女がソファに座りながらいかにもめんどくさそうな様子でカノンノに声をかけた後、その後ろに立つカイとレイを見てめんどくさそうな声を出す。

 

「ちょ、ちょっとイリア。今度入ってきた、新しい仲間だよ。アンジュさん言ってたでしょ?」

 

「あー新人さん、そんな事言ってたっけね。そんじゃま、自己紹介しないとねー」

 

銀髪の少年――何かエミルと同じような気配を感じるとカイはふと思った――が慌てたように少女に言うと少女は思い出したようにうんうんと頷いて、よっこいせ、と言って立ち上がる。

 

「あたしはイリア・アニーミ。好物は肉。よろしく~」

 

「僕は、ルカ・ミルダ。イリアと、それからリーダーのアンジュとは同じ故郷なんだ」

 

「あたしはアンジュのギルド発足に賛同してついて来たの。ウチの故郷の村がまた貧しくってさー! 貧しい上に教育もない村だから、将来あたしが学校を作ろうと思ってね。ここで、稼がさせてもらってんの」

 

少女――イリアに続いて少年――ルカも名を名乗り、次にイリアがそう自分がここにいる理由を将来の夢も交えて説明。次にどこか不服そうな表情を見せた。

 

「あたしのパパ、村長やってんだけど村の領主国に綿の単一栽培を押し付けられたの。領主国はパパが言いなりになると分かると手のひら返したような態度になって、村はされるがまま! いろいろ知ってれば、村も守れただろうし。教育って必要よね~……」

 

怒った次には顔を上にあげてどこか悲しんでいるような様子を見せる。

 

「で、でも村長は、村のみんなを思って決めたんでしょ?」

 

「わかってる。村長なんだから、みんなのために決断したの。ただ、知らないことが多すぎて、痛い目を見たってだけ」

 

そこにルカがそう言うとイリアは悲しそうな表情でうつむき、そう呟いた後再びカイ達を見る。

 

「あたしはね、パパのためにも学校を作りたいの」

 

「親思いなんだな」

 

イリアの言葉にカイはふと微笑を浮かべながら呟く。

 

「その前に、イリアが勉強した方がいいんじゃない……」

 

そこにルカがぼそりと声を漏らすと、イリアはそれを目ざとく聞きつけたようにルカを睨み付けた。

 

「言うわね~? あんたのよーに、村の中でも商家の坊ちゃんで、家庭教師がついてりゃあ、学も身につくわねぇ」

 

「あ、でも、僕はその商家を継がされるのが嫌で家出してここに来たんだし……」

 

「わかってるってば。あんたはここでお金貯めて、あんたがなりたい医者の勉強して村のみんなが待ち望む医者になれば親も諦めてくれるわよ」

 

イリアの睨みながらの言葉にルカはぼそぼそと喋り、それにイリアはこくこくと頷きながら返す。

 

「二人とも、夢があるんだな」

 

「まあね~。そういうわけでガンガン稼ぎたいから仕事で組みたい時は呼んでちょうだい。んじゃ、よろしくー♪」

 

カイの言葉にイリアはにししと笑いながらそう言い、よろしくと締めた。それにカイとレイもよろしくと返し、三人は部屋を出ていく。それから三人はさらに隣の部屋へと入る、と黒髪を長く伸ばし、足を出した服装をしている少女がそれに気づいて目を向けるとにこりと微笑んだ。

 

「あっ、君達が新しく入った、カイとレイ?」

 

「ああ」

 

「話は聞いてたよ」

「初めまして! 俺はシング。シング・メテオライト!」

 

少女の質問にカイが頷き、少女がそう言うとその横に立っていた明るそうな少年――シングがやはり快活な声で自己紹介をする。

 

「わたしはコハク・ハーツ。よろしくね」

 

「俺達の故郷は、いつもアドリビトムに助けてもらっててさ」

 

「お礼にわたし達も何か手伝えないかなって思って、このギルドに加入させてもらったんだよ」

 

「この船に乗ったことで、初めて村を出たんだ。ホント、世界には知らない事ばっかりで毎日が驚きだよ」

 

そういうシングは無邪気に目を輝かせており、コハクもうんと頷いた。

 

「きっと君達も、この仕事が気に入るはずだよ。それじゃあ、一緒に仕事をする時はよろしくね」

 

コハクの言葉に二人も会釈で返し、三人は部屋を出る。

 

「あっ!」

 

と、そんな元気な声が聞こえてきた。そう思うと緑色の髪をショートカットにした元気な雰囲気を見せる少女が、赤髪を短髪にしお腹を出した服装の青年を引っ張って三人の元に駆け寄る。

 

「初めまして! あなた達が新しい仲間になるのね? わたしはファラ。ファラ・エルステッド。アンジュとは故郷が同じで、ギルドを立ち上げた時からのメンバーなの」

 

「俺はリッド・ハーシェル。同じく、ギルド発足当時からのメンバーだ。よろしくな」

 

少女――ファラの次に青年――リッドが名を名乗り、カイとレイもよろしくと返す。と、リッドがため息交じりに口を開いた。

 

「俺は元々故郷の村で猟師をやってたんだ。でも、領主国が俺達の村に綿の栽培を強制させようと、畑を広げるために猟をする森まで焼いちまったんだよ」

 

「わたしは農家出身なんだけど、綿の栽培を強制されたから、自分達の食糧すらまかなえなくなっちゃったの」

 

「綿じゃ腹一杯にはならねえからなあ」

 

リッドの次にファラが残念そうな表情でそう言い、それにリッドが大きくため息をつきながら返す。と、ファラが再び快活に微笑んだ。

 

「でも、このギルドで働けば、村に不足している物資を集めて届けることも出来るんだ」

 

「ま、そういうことだな。じゃ、これからよろしくな」

 

ファラに続いてリッドもそう言い、二人もよろしくと返す。それから三人はリッドとファラが部屋に戻るまで歩きながら話し、そのついでに奥の部屋に挨拶に入った。

 

「ん?……誰だ?」

 

「新入りの人だよ」

 

「ああ、アンジュさんが言っていましたね」

 

部屋にいた、銀髪の青年はカイ達を見て怪訝な目を見せるがカノンノが紹介すると奥の方の椅子に座っていた金髪ロングの少女が頷き、にこっと微笑んだ。

 

「こんにちは、初めまして。わたしは、シャーリィ・フェンネスと言います。そして、こっちはわたしの兄の……」

 

「セネル・クーリッジだ。元はギルド専属のマリントルーパーをやっていた。ここへはつい最近、加入したばかりだ」

 

少女――シャーリィが青年に手を向けると青年――セネルも自己紹介をする。と、再びシャーリィが口を開いた。

 

「元々は故郷のギルドに所属していました。でも、私たちの国は戦争で焼け野原となってしまって……」

 

「それで、こっちのギルドへ移ったわけだ。故郷のギルドは解体してしまったからな」

 

「でも、バンエルティア号のおかげでいつでも故郷のみんなを助けに行けます」

 

二人は交代交代で喋り、シャーリィが思い出したように二人を見た。

 

「そういえば、研究室のウィルさんには会いましたか?」

 

「ああ」

 

「ウィルさんも、わたし達と同じ故郷、同じギルドにいたんです。それじゃあ、これからよろしくお願いします」

 

シャーリィの朗らかな笑顔での挨拶に二人も会釈で返し、三人は部屋を出るとカノンノが「ここが最後の部屋だよ」と言って部屋のドアを開けた。

 

「新入りか。さっき、話を聞いた」

 

そこにいたのは水色っぽい銀髪を長く伸ばし、よく見ると後ろで三つ編みにしている青年。彼は物静かな口調でそう呟くような声を出した。

 

「俺は、ヴェイグ・リュングベル。アニーやクレアと同じ、ヘーゼル村の出身だ」

 

青年――ヴェイグはそこまで言うと一旦黙る。

 

「ここへは最近入ったばかりで、俺から教えられることは少ない。ギルドのみんなは、それぞれ故郷での事情があってここへ来ている」

 

「ああ。アンジュさんに誘われて、夢があって、手伝いをしたくて、故郷のギルドが解体して……いろいろ聞いた」

 

「そうか……よければ、力になってほしい。俺から言えるのはこれくらいだ」

 

「ああ。頑張るよ」

 

ヴェイグの言葉にカイがそう言い、それを聞いたヴェイグが真面目な顔でそう言うとカイも真面目な顔で返答した。

 

「それじゃあ、挨拶も済んだし、アンジュさんの所に戻ろう」

 

「ああ。じゃあヴェイグ、これからよろしく」

 

カノンノの言葉にカイが頷いてヴェイグにこれからよろしくと言い、それにヴェイグも無言の首肯で返した。

それから三人は部屋を出ていき、一階のホールへと戻っていく。

 

「はい、二人ともお疲れ様」

 

三人がやってきたのに気づいてアンジュがカイとレイの二人に話しかける。

 

「やっとアドリビトムメンバー全員との顔合わせが終わったね。さて、あなた達が、正式なアドリビトムの一因となるための入隊試験を用意しておいたよ」

 

その言葉にカイとレイが好戦的な笑みを見せる。

 

「カノンノも一緒だから、きっと難なくクリアできると思うけど……カノンノの手助けいらないって感じね……」

 

二人の笑みを見たアンジュは苦笑交じりにそう漏らし、三人がクエスト用紙に名前を記入すると真剣な表情を見せた。

 

「最後の入隊試験、まずはその説明をよく聞いてちょうだい。今回行ってもらうのはルバーブ連山。そこにいる、ガルーダを倒してきてもらいます」

 

「これが終わったら二人も正式なアドリビトムの一員になれるから。頑張ろうね!」

 

「「ああ」」

 

アンジュの説明の次にカノンノが元気づけるように言い、それに二人もこくんと頷いた。

そして三人は船を出ていき、ルバーブ連山へと向かう。その麓へとやってくるとカノンノが口を開く。

 

「今回の目的は、ここでガルーダを探して退治する事なんだけど……そうだなぁ、ガルーダに会うにはちょっと奥へ進まないといけないかな」

 

「分かった。んじゃ急ぐか」

 

カノンノの言葉にカイがそう言って戦闘を歩き、レイも無言でその後を追うように歩きだしカノンノもさらにその後を追う。それから少し歩いて分かれ道が見えると、カイは特に考える様子もなく右側の方に歩いていく。

 

「あ、待って! ガルーダがいるのはその方向じゃないよ!」

 

「……そうか」

 

カノンノの注意にカイはそう呟いて元来た道を戻り、左側の道に入って峠を歩き出す。峠を歩いて少しするとカイが腰の左側に差していた刀を抜き、レイも僅かに遅れて背負っていた剣を抜き腰の後ろに差していた銃を左手に握る。オタオタが三体にアックスビークが一体、前方に立ちふさがっていた。カイとレイは互いに武器を構えるとニヤリと不敵な笑みを浮かべ、カイが地面を蹴ってアックスビーク目掛けて突進、レイはオタオタ三体に銃を向けた。

 

「りゃあっ!!」

 

カイはアックスビーク目掛け突進しながらまず一回回転しつつジャンプ、勢いをつけて右手に逆手で握った刀を思いっきりアックスビーク目掛けて叩きつける。しかしアックスビークはそれを斧のように進化した嘴で受け止め、まるで鍔迫り合いのような状況になる。が、カイはにやりと笑うと左手を腰の後ろにやる。

 

「らぁっ!」

 

追撃といわんばかりにアックスビークの右目に叩き付けられる左手。と、その目から血が流れ始め、アックスビークは痛そうに悲鳴を上げてのけ反り数歩後ろに下がる。カイの左手には一本の短剣が握られていた。これでアックスビークの目を突いたのだ。その証拠に短剣は血に塗れており、それを振った拍子か何かで飛んだ血の僅かな飛沫がカイの口元につく。が、カイは気に留める様子もなくアックスビーク目掛けて踏み込みつつ右回りに回転、その間に右手の刀を順手に持ち替えるとアックスビークの目の前に地面目掛けて刀を差し入れる。

 

「地裂斬!」

 

地面を掬い上げるように刀を振るい、地面から衝撃波を放ちアックスビークを怯ませる。しかしカイはさらに踏み込み、刀を順手のまま右から左へと薙ぎ、さらに刃を返して左から右に薙ぐとそのままの勢いでくるんと回転。

 

「刹月華!!」

 

アックスビーク目掛けて右後ろ回し蹴りを叩き込む。それは偶然だろうかさっき短剣で抉った右目に直撃、アックスビークは痛みに悲鳴を上げて地面に転がりのたうち回る。カイはそれを見下ろしながら刀をアックスビークの心臓目掛けて思い切り突き刺し、トドメを刺す。そしてアックスビークが動かなくなったのを確認すると刀を引き抜き、左右に振って血を払うと腰の鞘に収めた。

 

一方カイがアックスビークに突進していった頃、こちらはレイ。彼女は左手に握った銃を三体のオタオタに向けたまま動いておらず、痺れを切らしたのかオタオタの方が転がって突進してくるのを見るとレイは勢いよく銃を右に振る。

 

「ヒートバレット!」

 

銃を右に振り、左に振り払うようにしながら銃を連射。オタオタに銃弾が突き刺さるのを見ながらレイは銃を左に振り払う勢いを利用するように右手の剣を、切っ先を地面にこすらせながら振り上げる。

 

「魔神剣!」

 

叫びと共に剣から放たれる地を這う衝撃波。それは右のオタオタに直撃し、レイはそれを視界の隅で確認しながら銃を投げ捨て、背負っている盾に手を伸ばしながら真ん中のオタオタに突進。

 

「瞬迅剣!」

 

勢いよく剣を突き出してオタオタを吹っ飛ばし、ついでに左から攻撃してくるオタオタを左手に握った盾で防御、そのまま押し返すと身体をさっき魔神剣を当てたオタオタの方に向ける。

 

「散沙雨!!」

 

剣による連続突きがオタオタを幾度も貫き、最後の一突きでオタオタが沈む。それをちらりと見ただけでレイは振り向く。丁度最後のオタオタが飛びかかってきていた。

 

「虎牙――」

 

飛びかかって来たオタオタにカウンターの要領で剣を振り上げ、レイもジャンプする。

 

「――破斬!!」

 

そして勢いをつけて剣を振り下ろし、オタオタを一刀両断にした。オタオタ三体の全滅を確認し、レイは剣についた血を、剣を左右に振って払ってから背中の鞘に収め、盾も背負い直してからさっき投げ捨てた銃を拾おうと辺りを見回す。

 

「ほれ」

 

と、さっきアックスビークの方に突進し、アックスビークを倒し終えたカイが銃を彼女に差し出し、レイは黙って銃を受け取ると弾丸を再装填してから腰の後ろのガンベルトに差しておく。

 

「……ふ、二人って……ほんとに強いね……」

 

そしてカノンノは頬をヒクヒクと引きつかせながらそう呟き、次にカイの顔を見る。

 

「カイ、口に血がついてる」

 

「あん? あぁ、さっきのアックスビークを斬った時のか」

 

「待ってて、今拭くから」

 

「いらねえだろ」

 

カノンノの指摘にカイはそう呟き、カノンノはハンカチを取り出そうとするがカイはあっさりそう言うと舌を出してぺろりと口元の血を舐め取る。それはまるで獲物を前にした肉食獣の舌なめずりのようにも見え、カノンノは驚いたように目を丸くする。と、その顔を見たカイとレイが不思議そうな表情を見せ、カノンノはすぐに愛想笑いで誤魔化してから、再び三人は峠を歩いていく。その先にいる魔物はカイとレイが率先して、カノンノも魔術で援護して倒していき、ルバーブ峠の最奥へとやってくる。そこには薄紫色の体毛をした巨大な鳥の魔物が羽ばたいていた。

 

「カイ、レイ、ガルーダだよ!!」

 

その姿を見たカノンノが叫ぶ。

 

「この魔物を退治したら、入隊試験は合格だよ。準備はいい?」

 

「ああ」

「うむ」

 

彼女の確認の言葉に二人は頷き、武器を構える。

 

「行くよっ!」

 

そしてカノンノの合図と共に二人は一気に地面を蹴り、ガルーダ目掛けて飛び出した。

 

「苦無閃!」

 

カイが素早く苦無を投げ、その苦無が突き刺さった痛みにガルーダは唸り、ガルーダは自分を狙う敵の存在に気づく。

 

「裂空斬!!」

 

しかしそこにレイが縦に回転しながらガルーダを斬りつけ、ガルーダはたまらないというように上空に逃げようと羽ばたく。

 

「落ちろ、ライトニング!」

 

だが逃がさないといわんばかりにカノンノが叫び、ガルーダを落雷が撃ち動きを止めさせる。

 

「閃走牙!」

 

そこにカイが刀を腰に構えて突進、ガルーダに突き刺す。しかしその皮膚はなかなか硬く、僅かに突き刺さって血が出る程度の結果に終わった。と、ガルーダが嘴を剥いてカイに突き刺そうと顔を振りかぶった。

 

「ちぃっ!?」

 

咄嗟に体重をかけていた右に飛ぶが左肩に嘴が当たり、防具のガードが無い部分に当たってしまったのか血が流れ始める。

 

「チャージバレット!」

 

しかしカイがどいた事を契機としたかレイは素早くガルーダの懐に踏み込むと銃弾を一発至近距離から放つ。と、ガルーダは思いっきり回転して巨大な翼でレイを弾き飛ばした。そしてそのすぐ後に一気に羽ばたくと上空へと飛び出す。

 

「逃げちゃう!」

 

「逃がすか! レイ!」

 

「ああ!」

 

カノンノの声にカイはそう返して刀を投げ捨ててレイの方に走り、レイも心得たというように頷くと背負っていた盾を取り、剣を一度地面に置いて両手で盾の端を握り、カイがその盾に足を乗せる。

 

「飛んで……」

 

レイは両手に力を込め、力強い目でガルーダを睨み付ける。

 

「けーっ!!!」

 

そして盾を一閃、それに合わせてカイもジャンプし、一気に上空のガルーダへと追いつくとその背中に掴まる。ガルーダもそれに気づいて振り落とそうとするがカイはそれに耐えて短剣を抜くとガルーダの背中に思いっきり突き刺した。

 

「ギャーッ!!!」

 

ガルーダの悲鳴が響くがガルーダは痛みを我慢して再びカイを振り落とそうと上空を暴れ回る。しかしカイは深く突き刺した短剣に掴まって耐え、左手一本で短剣を握ると右手に精神を集中、それと共に右手に闇のマナが結集する。

 

「滅掌破っ!!!」

 

「ゴッ……」

 

背中に思いっきり闇のマナを込めた掌底を叩き込み、ガルーダはバランスを崩したか気を失ったかひゅるるるると錐揉みしながら地面に落下。タイミングを合わせてカイもそこを脱出する。

 

「後は頼んだぜ」

 

下の方で剣を構え、ガルーダを睨んでいる少女を見てそう呟きながら。

 

「はああぁぁぁ……」

 

少女――レイは力を込めて剣を右手で握り締め、ガルーダが地面に墜落するのと同時に剣を振り上げる。

 

「剛・魔神剣!!!」

 

叫ぶと共に振り下ろされる剣。それは巨大な衝撃波を生み出し、ガルーダを呑み込んだ。そして衝撃波が消えた後、そこにいたガルーダはぴくりとも動かない事をカイとレイは確認し、各々の武器をしまう。

 

「ん……」

 

そしてカノンノも自分の目でガルーダの絶命を確認し、頷く。

 

「クエスト達成! 入隊試験、合格したことを見届けました。おめでとう、カイ、レイ」

 

カノンノはそう言ってぱちぱちぱちと拍手する。

 

「さあ。戻ってこの事をアンジュさんに報告しないとね!」

 

そういうカノンノにカイとレイは頷く。と、彼女は次にため息を漏らした。

 

「それにしても、二人とも戦い方無茶苦茶だね。特にカイ、魔物に飛び乗るなんて……私の魔術かレイの銃弾で撃ち落とせばよかったじゃない」

 

「結果は同じだ」

 

カノンノの言葉にカイはしれっとそう言い、カノンノはまた「もう」と声を漏らしてカイの出血している左肩を見る。

 

「じゃあとりあえず、治癒術で治すから肩出して」

 

「ほっときゃ治るだろ?」

 

「駄目! あーもー問題児だなぁ!」

 

カイのきょとんとした言葉にカノンノはそう叫んでカイの左腕を左手で握って押さえつけ、無理矢理左肩に右手をかざす。

 

「癒しの力よ、ファーストエイド!」

 

呪文と共に手から暖かい光が溢れだし、カイの左肩の傷にその光が移ると傷跡が綺麗に消えていく。

 

「へえ……」

 

「よし。じゃあ下山しよっか」

 

カイが驚いたように傷口があった場所を見ながら声を漏らし、カノンノは満足そうに頷くと下山道を歩き始める。カイとレイもその後に続いた。

 

そしてバンエルティア号のホールに戻ると、アンジュは嬉しそうなカノンノの顔を見てふふっと微笑んだ。

 

「無事、入隊試験をクリアしてきたようね。おめでとう。これで、あなた達も正式なアドリビトムの一員よ」

 

アンジュの言葉にカイとレイはこくんと頷く。

 

「これから二人は正式メンバーとして働くから、このギルドのメンバーと自由にパーティを組んでいいのよ。仲が良い人達と組んでもいいし、クエストに合わせて仲間達とパーティを組んでね?」

 

「「はい」」

 

その言葉に二人は頷き、「はい」と返す。

 

「それじゃあ、このパーティはここで一旦解散ね。アンジュさんが言ったけどあなた達はもう一人前のギルドメンバーだから、好きな人とパーティを組んでいいんだからね。もちろん、誘ってくれたら私もいつでも組むからね! じゃ、これからもお互い頑張ろう!」

 

「おう。よろしく頼む」

「よろしく」

 

カノンノはにこっと明るく笑いながらカイとレイにそう言い、二人もそれに頷いて返すとカノンノと握手する。アンジュもそれを見てふふっと微笑んだ。




カイナ「長くなったわー。一万文字とか久々に書いた気がする……」

カイ「入隊試験合格っと」

カイナ「さて次はどうするか。ちなみに前回はちょっと戦闘シーンの描写があっさりしてるような気がしたので、今回は戦闘シーンの描写に力を入れてみました。最近買った某ハンティングゲームを参考にした描写も交えましたけど。ま、今回は特に言う事もないだろうし今回はこの辺で。感想はいつも心待ちにしております。それでは」

カイ「また次回」
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