テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~   作:カイナ

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第三十二話 輝きの勇者達のとある一日

ルミナシアのとある港町。カイはアドリビトムに寄せられたクエストを終えた後、帰り道の道中にあるこの港町に少し寄り道をしていた。

 

「くぁ~。しっかしギルドってのは自由でいいよなぁ、軍だと任務の最中にそうそう寄り道もできやしねぇし」

 

伸びをしながら笑顔でそう言うのは鳶色の髪をした格闘家――ウリズン帝国からの派遣兵士であるステイサムだ。すると黒髪に何故か王冠を乗せた少女――ロッタが彼に冷たい目を見せる。

 

「それならとっとと軍を辞めてギルドに入ったら?」

 

「おっとそりゃ勘弁。軍の方が給料いいしな」

 

「そうなのか?」

 

ロッタの言葉にステイサムはにししと笑う。と、給料という言葉にカイが反応した。

 

「おう。まあギルドってのは規模にもよるから一概には言えねえけどな」

 

「ギルドは民間経営なのに対して軍はやっぱり国がやってるからね。給料が高いというよりも安定してるっていう方が正しいかしら」

 

ステイサムとロッタはギルドと軍の違いについて説明。もう一人の同行者であるカノンノが「へ~」と頷いた。

 

「なんならカイもカノンノちゃんもウリズン帝国軍に志願したらどうだ? 二人ほど強けりゃぜってぇ採用されるぜ?」

 

と、ステイサムが目をキラキラさせながらカイとカノンノを軍にスカウトし始める。

 

「え、えーと……遠慮しようかなぁ……」

 

「俺はアドリビトムを離れる気はない」

 

が、カノンノは苦笑気味に、カイはきっぱりとスカウトを断る。

 

「そーかよ、ちぇっ」

 

ステイサムも本気ではなかったのか食い下がる事もなく両手を頭の後ろに回し、唇を尖らせるだけで話を終える。と、彼は露店に目を向けて「おっ」と声を出した。

 

「わり、俺ちょっとその辺で買い食いしてから帰るわ。あとよろしくっ!」

 

「あ、ちょっとこら!」

 

ステイサムはそう言うや否や道端に並ぶ露店に買い食いに走り、ロッタが注意するが止まる気配はない。

 

「……ったく」

 

ロッタは悪態をついて歩き出し、カイとカノンノも苦笑を漏らしながらその後を着いて行った。

 

 

 

 

 

「あ、ロッタ。お帰りなさい」

「二人もお帰り!」

 

港に停泊していたバンエルティア号。その甲板に上がると本日の甲板掃除の当番であるユンとコハクがモップを手に出迎える。カノンノとロッタも「ただいま」と返した。

 

「ねえ、もう掃除終わったの? 暇だし手伝おうか?」

 

「ん~と……じゃあお言葉に甘えて。私ちょっと中に用事あるから、お願いしていいかな?」

 

「うん!」

 

カノンノが掃除の手伝いを申し出るとコハクは中に用事があると返答してお願い。カノンノが笑顔でそれを了承するとコハクはカノンノにモップを手渡そうと彼女に歩き寄る。

 

「あ、コハクさん。その辺はまだ濡れて……」

 

「え? きゃっ!?」

 

ユンが呼びかけるのと、ユンが注意した地点を踏んだコハクが足を滑らせてバランスを崩すのは同時だった。

 

「おっと!」

 

だがカイがすぐに駆け寄り、コハクを抱きとめるようにして押さえる。

 

「あ、ありがとう……」

 

「気にするな」

 

カイはコハクを右手で抱き押さえる形になっており、足を滑らせてしまった恥ずかしさや照れからかやや頬を赤くするコハクにカイはそうとだけ返す。と、その時カイは船内から鋭い殺気が飛ぶのに気づき、さらにその直後船内から何かが勢いよく飛んでくる。

 

「はっ!」

 

カイは飛んできた物体からコハクを庇うように後ろにやりつつ、左手一本で腰の左側に下げていた刀を逆手で抜いて振り上げ、飛んできた物体を弾く。と、その物体は霧散。どうやら何かのエネルギーで作られた弾丸らしい。

 

「ちょ、カイ待っ」

 

飛んできた弾丸を見たコハクが慌て出してカイに呼びかけるが、その前に船内から再びエネルギー弾が次々と放たれる。

 

「カノンノ、コハクを頼む!」

 

「あ、う、うん!」

 

カイはカノンノにコハクをやや乱暴に投げるように託し、左手に握っていた刀を右手に持ち替えると弾丸を次々と弾いていく。

 

「くおおぉぉぉらあああぁぁぁぁ!!!」

 

そして弾丸の雨が止んだかと思うとそんな怒号と共に黒髪長髪で背の高い男性が怒りに燃えた目で船内から飛び出し、カイにガンをつける。

 

「テメエ、コハクに近寄るんじゃねえ!!! コハク! もう大丈夫だからな!!」

 

「もう……」

 

男性はカイにガンをつけた直後コハクに呼びかけ、しかしコハクはむしろ恥ずかしそうに顔を手で覆っていた。

 

「……コハク、知り合いなの?」

 

カノンノがきょとんとした様子でコハクに尋ね、コハクは小さくこくり、と頷いた。

 

「えっと……私のお兄ちゃん」

 

「あーお兄さんかぁお兄さん……お兄さん?」

 

コハクの言葉にカノンノはうんうんと頷く。が、直後ドスの効いた顔をしている長身の男性を見上げる。

 

「ええええぇぇぇぇぇっ!!??」

 

直後カノンノの驚愕の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

「俺はヒスイ。ヒスイ・ハーツだ。あっと、コハクが世話になってるみてえだな。ありがとよ」

 

「あ、は、はい。えっと、カノンノ・グラスバレーです……」

 

落ち着いた後、男性――ヒスイは己の名前を名乗った後、カノンノに対しコハクが世話になっている事に対する感謝の言葉を投げかけ、カノンノも曖昧に頷いて名乗った後に首を傾げる。

 

「えっと、それでその、ヒスイさんはなんでここに?」

 

「あぁ。話せば長い事になるが……」

「一言で言うと、私が誘拐されたって勘違いしてこのギルドに私の捜索依頼を出しに来たそうなの……まったくもう、ほんと恥ずかしいんだから」

 

カノンノの質問にヒスイは神妙な顔をして語り始めようとするが、すぐにコハクが一言で説明。恥ずかしそうに顔に手を当てる。

 

「なんだよ、兄が妹を心配する。ごく当たり前の事じゃねぇか……こんな悪い虫がくっつくかもしれねえだろ!」

 

「……俺?」

 

ヒスイはそう言ってカイをびしっと指差し、カイは不思議そうな表情でそうぼやく。

 

「カ、カイはそんな人じゃないよ! カイにはカノンノがいるんだからそんな失礼な事言わないで!」

 

「コ、コハク何言ってるの!? わ、私とカイはそんなんじゃ……」

 

失礼なヒスイにコハクは毅然と言い返し、だがその中の一言にカノンノは慌て出す。

 

「っていうか」

 

コハクはヒスイを睨みつけ、その睨みにヒスイが怯む。

 

「ぐふっ!?」

 

直後ヒスイの腹にコハクの蹴りが突き刺さり、彼は吹き飛ぶと甲板に叩きつけられる。正に無言の腹パンならぬ無言の腹キックだ。

 

「喧嘩はダメって……いつも言ってるよね?」

 

そしてコハクはにっこり笑顔で、甲板に倒れ伏すヒスイにそう呼びかけたのであった。

 

「ヒスイ! アンジュさんがアドリビトムへの入団申請が終わったって! あ、カイにカノンノ、ロッタもお帰りなさい」

 

するとその時シングが船内から顔を出してヒスイに呼びかける。

 

「ん? アドリビトムに入るのか?」

 

「おうよ。妹を、コハクを守るのは兄である俺の役目だからな!」

 

カイの言葉にヒスイは立ち上がってそう宣言する。

 

「もう、ヒスイは心配性だなぁ」

 

が、シングは呆れたように笑ってコハクの横に立つ。

 

「コハクはこの通り、俺が全力で、しっかり! 守ってるってのに!!」

 

「だから、それが全力で心配だって言ってんだッ!」

 

シングの言葉に対しヒスイは怒号を上げて突進、「おら離れろッ!」とシングとコハクを引き離し、シングにしっしっと手を振る。

 

「てめえとコハクを二人っきりになんて絶対させねえからなっ!」

 

そしてびしっとシングを指差して宣言。コハクはまた呆れたようなため息を漏らした。

 

「まあえっと……カイ、手伝って欲しい事があったらいつでも呼んでね。こう見えてお兄ちゃんも、結構頼りになるんだよ」

 

一応ヒスイのフォローに回るコハク。するとシングもそのフォローに気づいたのかうんうんと頷いた。

 

「そうそう。枯れ木も山の賑わい……ってね!」

 

「てめぇ!! 意味わかって言ってんのか!?」

 

「あ、あれ……何か違った?」

 

シングの言葉にヒスイが怒号でお返しするとシングは引きつった笑みを浮かべてそう返すのであった。

 

 

 

 

 

「えーと、ひーふーみー……これとこれを買ったから次は……」

 

「カノちゃーん、まだー?」

 

一方バンエルティア号が停泊している港町。イアハートはルキと共に買い出しにやってきていた。ちなみにイアハートは買い出しメモを確認しながら町の全体図とにらめっこし、荷物は全てルキが持っているのだが両手に抱える程の荷物を苦もなく持っている辺り流石の怪力である。

 

「はいはいちょっと待って。これはあの店として、これはここの店に売ってるだろうから……」

 

ルキをあしらいながらイアハートはどこで何を売っているのかを再度確認する。そして道順を決めたのかうんと一つ頷き、メモを見ながらくるりと踵を返し歩き始める。

 

「きゃっ!?」

 

だが前方不注意だったせいで他の歩行者とぶつかり、そのまま尻もちをつく形で倒れてしまう。

 

「すまない、大丈夫か?」

 

「あ、こちらこそすみません」

 

が、すぐにぶつかってしまった相手が謝罪しながら手を差し伸べてきたためイアハートも反射的にその手を取りながら謝る。

 

「!」

 

と、その相手は自分の顔を見て驚いた様子を見せており、イアハートは首を傾げた。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、ああ……いや、知り合いに似ていたものでな。失礼」

 

イアハートの疑問の声に相手はそう言って一言謝罪、イアハートは相手に立たせてもらってからもう一度ぺこりと頭を下げる。

 

「その、ありがとうございました。それとすみませんでした」

 

「気にしなくても構わない。我も前を見ていなかった」

 

イアハートの謝罪の言葉に相手も気にするなと返し、イアハートは頭を上げるとそこでようやく相手をちゃんと見る。キリッとした吊り目に凛とした顔立ちや綺麗な姿勢はまるで騎士のようだが何故か右目には眼帯をつけており、すらっとした体型だが大きく膨らんでいる胸が相手が女性であると主張している。

 

「……」

 

そこを見てイアハートはつい自分の胸を見てしまった。

 

「どうかしたか?」

 

「あ、いえなんでもないです! その、失礼します!」

 

不思議そうに見てくる眼帯の女性に対しイアハートはそう言い、やや引きつり気味の笑顔を浮かべてぺこっと頭を下げ、「ほら行くよルキ!」と言ってすたすたと足早に去っていく。

 

「……?」

 

眼帯の女性も不思議そうにそれを見送るが、やがてまあいいと呟く。

 

「さて……名物の菓子屋というのはどこにあるのか……ラザリス様の口に合えばいいのだが」

 

そして眼帯の女性――ジルディアディセンダーことレイはそう呟いて町の全体図とにらめっこを始めたのであった。

 

 

 

「ふぅ、びっくりした」

 

「ん~……」

 

レイから離れてからイアハートが呟くが、ルキは話を聞かず考える様子を見せる。

 

「どうしたの、ルキ?」

 

「ん~、いや……さっきの女の人、なんか妙な感じがね……ま、いっか。細かい事は気にしない」

 

「そうそう。さっさと買い物済ませて帰っちゃお」

 

イアハートとルキはそう話しながら歩いていく。

 

「おろ?」

 

「どうしたの?」

 

と、ルキが変な声を出し、前を歩いていたイアハートが振り返る。

 

「んにゃ、あれアルヴィンじゃない?」

 

「ん?」

 

ルキがそう言い、両手が荷物で塞がっているため顎で示しイアハートもそっちを見る。そこにいるのは確かにアルヴィンだ。ローブで顔を隠している誰かと何か話している様子で、しかしもう話は終わったところなのか二人は互いに背を向けると離れていく。

 

「おーい、アールヴィーン!」

 

「うおっ!?」

 

ルキが大声で呼ぶとアルヴィンはびくっというような感じの反応を見せ、ルキとイアハートを見てほおっと息を吐く。

 

「なんだ、お前らか……買い物か?」

 

「うん、買い物当番だし」

「アルヴィンはどうしたの?」

 

アルヴィンの言葉にルキが肯定、イアハートが首を傾げて問いかける。と、アルヴィンは苦笑いを見せた。

 

「まー、いや、そのな……男には色々あるもんなんだよ」

 

そしてキリッとした顔でそう言ってみせる。

 

「「へー」」

 

が、当の二人からは冷たい目で見られるのであった。

 

「あー、まあ、ちょっと用事があっただけでな。んじゃ、俺はこれで」

 

そう言い、アルヴィンはすたすたと妙に足早に去っていく。

 

「ルキちゃん、イアハートちゃん」

 

「んお? あ、今度はゼロスだ」

 

「フォックスさんも、こんにちは」

 

「ああ。買い出しご苦労様」

 

と、さらに声をかけてきた男性――ゼロスにルキが返し、イアハートはゼロスと一緒にいるフォックスに挨拶を返す。ゼロスはどこか焦ったような顔をしており、フォックスは対照的に色黒な肌に爽やかな笑みを浮かべている。

 

「ところで、買い物はまだ残っているのだろうか?」

 

「え? あ、はい」

 

「なら、俺とゼロスも手伝おう」

 

「「「えっ!?」」」

 

フォックスの申し出に驚いたような声を出すのはイアハートとルキ、そして何故かゼロスだ。

 

「驚く事は無いだろう? 女性を助けるのは当然だ。なあ、ゼロス?」

 

「あ……ああ、そ、そうだな」

 

フォックスの言葉にフェミニストであるはずのゼロスはどこか歯切れの悪い様子で頷いており、フォックスはルキの持つ荷物を取るとそのままゼロスにパスする。

 

「のわ、ちょ、重っ!?」

 

いきなり渡された荷物の重さにふらつくゼロスだがフォックスは気にすることなく自分はふらつかない程度の荷物を持つ。

 

「では行こうか」

 

「あ、はい……」

 

フォックスの言葉にイアハートもこくりと頷き、イアハートを先頭にルキが続き、その次にゼロス、最後をフォックスが歩いて彼女らは買い出しを続けていった。

 

 

 

 

 

「あいてててて……」

 

一方闘技場。腕に自信のある戦士達が時には一人で、時には信頼できる仲間と共に、時にはちょっと気が合った同志と共に魔物やまた別の戦士達と真剣勝負を行う場。金髪のツンツン頭の少年――カイル・デュナミスは腕に傷跡を残しながら、闘技場の戦闘場から退場していた。

 

「だ、大丈夫か、カイル?」

「大丈夫?……」

 

同行していた彼の兄貴分――ロニと、仲間であるリアラがカイルに問いかける。それにカイルは「ああ、大丈夫大丈夫」と返した。

 

「あー。やっぱり俺ってまだまだだなぁ……でも、ここのチャンピオンに挑戦するっていうスタンさんはやっぱりすごいや!」

 

「そうだな……」

 

カイルの言葉にロニが頷くと、この闘技場の支配人――モルモが「これよりこの闘技場のチャンピオン、マイティ・コングマンと挑戦者スタン・エルロンのエキシビジョンマッチを開始しまーす」という声を響かせ、観客達が大盛り上がりを見せている光景を見る。

 

「遅れて申し訳ありません」

 

と、戦いで怪我をしてしまった選手を手当てするための看護スタッフがやってきたらしく、カイルとロニは声の方を見る。そこに立っているのは救急箱を携えた、オレンジ色のふわふわとした髪が特徴的で、瞳の色はまるで世界を照らす太陽のような優しげに光る赤眼の、華奢な身体に看護服を着た人物だった。その女性的な顔立ちでの儚げな微笑にロニはもちろん一瞬カイルですら見惚れてしまう。と、カイルが見惚れたのにリアラがむっとした表情を見せた。

 

「えっと、カイル君、ですよね? 怪我の場所は?」

 

「あ、は、はい! えっと、右腕です。それと脇腹と……」

 

「えーっと……あ、ここですね。今薬を塗って包帯を巻きますから。じっとしていてください」

 

怪我の場所を聞かれたカイルは我に返って怪我した場所を教え、看護師も怪我の場所を確認すると手際よく薬を塗り、包帯を巻いていく。

 

「な、なんか手馴れてますね……ここのお仕事とか長いんですか?」

 

「あ、いえ。この仕事を始めたのは少し前で、ここで住み込みで働き始めたんです。まあ看護というか治療の経験は長いですが」

 

「住み込み?……って事は、もしかして戦争で……」

 

看護師の話を聞いたカイルはもしかして戦争で家や帰る場所を無くしてしまったのではないか、自分は聞かれたくない事を聞いてしまったのではないかと焦ってしまうが、看護師は穏やかに微笑む。

 

「いえ、ちょっと説明がし辛いんですけどね。モルモ……この闘技場の支配人とは旧知の仲で、行き場のない僕達をスタッフとして雇ってくださったんです」

 

「そうだったんですか……」

 

看護師はそう説明し、治療を終える。

 

「これで大丈夫だと思いますが」

 

「んーっと……」

 

カイルは立ち上がり、少し屈伸したり腕をぐるぐる回したり身体を捻ってみせる。

 

「うん、大丈夫です。ありがとうございます」

 

身体の確認を終えたカイルはぺこりと頭を下げる。それに看護師もよかった、と微笑む。

 

「あの、実は俺も少し治療をしていただきたいのですが……」

 

「はい? え? えっと、あなたも参加していたんでしたっけ?……」

 

突然ロニが口を開き、看護師は呆けた声を漏らす。

 

「いえ、実は先ほどあなたを見た時、私のハートが撃ち抜かれてしまったのです。どうか私とお付き合いをし、このハートの治療をお願いいたします!」

 

ロニは看護師の両手を取って口説き始め、カイルとリアラが「また始まった」とぼやく。

 

「え、えーっと……す、すみません。その治療は出来ません」

 

看護師の申し訳なさそうに笑いながらの言葉にカイルは「あ、またフラレた」と呟き、ロニががーんとした表情を見せる。

 

「あ、いえいえ違います! その、付き合うのは無理ということで……」

 

すると看護師は慌てた様子を見せ、その様子を見たリアラが何か察したような表情を見せる。

 

「あ、もしかして、もうお付き合いしてる方がいらっしゃるとか……」

 

リアラはどことなくわくわくした様子で尋ね、しかし看護師は「そういうわけでもなくって」と呟いて頬をかく。

 

「あの、僕そういう趣味はないから……」

 

「「「……はい?」」」

 

看護師の言葉に三人の呆けた声が重なる。

 

「いえ……僕、男なんですけど」

 

直後の看護師のさらなる言葉に三人が固まった。

 

「ミアハー! 次の患者さんがもうすぐ来るよー! 結構重症だから手伝ってってー!!」

 

「あ、うん、分かった! すみません、僕はこれで」

 

女の子の呼び声を聞き、ミアハと呼ばれた看護師は頷き、カイル達に一礼をすると走り去っていった。

 

「おと、こ?……」

 

「と、とっても綺麗だったのに……自信なくすなぁ」

 

「そ、そんな! リアラだってとっても可愛いよ!」

 

「カイル……」

 

「リアラ……」

 

ミアハの正体にカイルが唖然とし、リアラは相手が男の娘だったという事実にしょんぼり、それに慌てたカイルがリアラを元気づけるとカイルとリアラは互いの名を呼んで二人だけの世界に入る。

 

「……」

 

その横でロニは未だ硬直していた。

 

 

 

「ごめんごめん、お待たせ。ちょっと絡まれちゃってた」

 

「あはは。男の人?」

 

「うるさいなぁ……」

 

ミアハはさっき自分を呼んだ桃色の髪の少女に謝り、それに少女が笑いながら慣れたように悪戯っぽく問いかけるとミアハは唇を尖らせる。と、桃色髪の少女はミアハの後ろに回り込んだ。

 

「はいはい。早くみんなのお手伝い! 後で食事持っていくからね」

 

「うん、よろしく」

 

ミアハの背中を押しながらの桃色髪の少女の言葉にミアハはよろしくと言った後、思い出したように「それと」と続けた。

 

「僕達、明日シフト空いてるのでいいんだよね?」

 

「うん。いつものように登録しとく?」

 

「お願い。やっぱ腕が鈍るのはまずいしね」

 

二人はそう話し、桃色髪の少女は「りょーかいっ」とおふざけの敬礼を取った。

 

「じゃあ明日のチーム戦、登録しておくね。登録人数は私とミアハの二人で、チーム名はいつものように“チーム・テレジア”」

 

桃色髪の少女はそう言ってすたたたと走り去っていく。

 

「お願いねー」

 

その後ろ姿に向けて、ミアハは呼びかける。

 

「カノンノー」

 

カノンノ、と。




《後書き》
さて、まさか二か月空くとはなぁ。読者様残ってるかなぁと不安になるのも仕方がない。
今回は日常編兼仲間入り編兼ディセンダー達編でした。本来出す予定なかったけどジルディアディセンダーレイもちらっと登場、久しぶりだから口調とか立ち振る舞いを結構忘れてた……一人称「我」は覚えてたんだけどなぁ。
とまあそれはさておき後々の話のためのフラグも色々混ぜ込んでおきました。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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