テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~風の青年と輝きの物語~ 作:カイナ
「あぁ~……暑ぅい……」
「大丈夫? ルビア?」
「調査のためとはいえ、こんなに暑いところだなんて……」
「うむ、少し暑いな……」
オルタータ火山。ここを歩きながらだるそうにルビアが呟くとカノンノが足を止めて心配そうにルビアに尋ね、それにルビアが少しぐでっとした様子で呟くとレイがそれに賛同する。とルビアはむっとした顔を見せた。
「レイさんはまだいいじゃないですか半袖だしおへそとか出てるし!」
「あはは……」
ルビアの言い分にレイは「ふむ……」と呟く。たしかに彼女は現在歩兵猟隊シリーズという、腕は肘から先を籠手で、足は膝から先を足防具で覆っているものの逆に二の腕や膝から上は丸出し。胴部分も丸出しで、胸当てがついているぐらい。一言で言えば胸が強調され、露出の多い格好になっている。それに対しルビアの服はもこもことした感じであり、いかにも熱がこもりそうだ。そのルビアのぷんぷんといいたげな文句にカノンノは苦笑を漏らす。
「それにしても、キールが聞いたという情報が気になるな。赤い煙か……」
と、そのガールズトークの後ろでこの仕事に同行、メイン調査を担当するウィルが呟く。
「採掘の際に、有害なガスが噴き出したのか……」
「ここは火山だし、空気の悪そうな所だし……」
ウィルの言葉にぐったりしているルビアが呟くが、ウィルは小さく首を横に振る。
「しかし、他の土地でもあったとなると、火山性ガスなどの類ではない。生物に変化を及ぼす物質など、俺も聞いたことがないしな……星晶との因果関係もまだ……」
「ああ~もう!」
ウィルが冷静に分析しているとルビアが爆発したように声を上げた。
「じっとしていた方が暑苦しいわ! 早く先に進みましょ!!」
「そうだな。とっとと調査を終わらせるとしよう」
ルビアの言葉にレイが頷き、彼女が先頭を歩き始めるとカノンノは術士二人につくようにしながらその後に続いた。
「しかし、触れるだけで生物に変化を及ぼす物質、か……そんなものが本当に存在しているなら、大変なことになるな」
「そうね……どうして、そんな恐ろしいものがいきなり出てきたのかしら……」
「理由はともかく、だ。重要なのは、生物を変質させるというその現象であり、事実」
最後尾を歩くウィルが真剣な目つきを見せながら呟き、それにルビアも頷くとウィルは考え込むように目を閉じた。
「俺の想像をはるかに超える貴重な生体サンプルが採取できるかもしれん。この地上に存在しない、別の何かに変化するだと……」
そう呟いた瞬間、彼はカッと目を見開いた。その勢いは目から光を放っているような錯覚さえ見せる。
「それが本当に事実なら、サンプルをいくら採取しても足りないくらいだ!」
叫び、彼は近くにいたルビアの肩に両手を置く。
「ルビア! その時はぜひ、君も採取に協力してくれ!!」
「えっ……でも……」
「よし! その物質とやらに、早く対面しに行こう!!」
ウィルの突然の申し出にルビアが委縮するとウィルはそう言ってレイを追い抜いて先に歩き出す。
「……な、なんだ?」
「あ、あはは……ウィルさんの病気みたいなものだから、あまり気にしないで?」
レイがきょとんとしているとカノンノが苦笑交じりに答える。
「学者って、みんなこういうものなのかしら……はぁ……」
その後ろではルビアが呆れたようにため息をついていた。それから彼女らはすたすたとウィルの後を追うように歩いていく。
「……カノンノさん」
「なにかな……」
レイの言葉にカノンノは目を細めながら呟くように聞き返す。
「あそこで赤いオタオタにフルボッコにされているのは、ウィルさんのように見えるのだが……」
「うん、ウィルさんだね……」
レイの言葉にカノンノとルビアは頭を抱える。彼女らの目の前ではウィルが赤いオタオタ――オタレドに囲まれウィルはハンマーを振り回してどうにか応戦しているが彼は筋骨隆々な見た目でも後衛型。多数相手には分が悪かった。
「ルビア、私とレイでウィルさんを助けるから援護お願い」
「うん……」
カノンノが大剣オータムリリィを構えながらそう言うとルビアも頷いて杖を構え、レイも自身の剣バスタードソードを右手に握って地面を蹴り、左手で銃を抜く。
「はああぁぁぁっ!」
ウィルがいる方に突っ込みながら、彼に銃弾が当たらない位置にいるオタレドに射撃し、攻撃および威嚇を行う。
「瞬迅剣!」
そしてウィルに飛びかかっていたレドオタに鋭い突きをくらわせる。
「大丈夫ですか、ウィルさん?」
「あ、ああ……すまん、助かった」
「もうウィルさん! 後衛なんですから一人で先行しないでください!」
「む……返す言葉もない」
ウィルはレイに対してお礼を言い、カノンノの正論での注意にうつむき気味になって返す。それからレイは銃を上空に向けて引き金を引き、バンバンという銃声が響き渡る。
「さあかかってこい!!!」
相手の意識を自分に向けるための挑発。それを受けたのかオタレドや赤いチュンチュン――ボーボーがレイとカノンノに向かっていき、レイは銃を腰のホルスターに収めると背負っていた盾を左手に構える。
「いくわよ、アイシクル!」
ルビアが詠唱と共に氷のマナを凝縮、それを解放するとオタレドが突如地面から生えた氷の棘に貫かれる。
「空蓮華!」
そこにカノンノが剣を支えにして蹴りを入れ、続けて大剣を振り下ろしてトドメを刺す。
「お仕置きだ……ライトニング!」
「剛・魔神剣!!」
ウィルはボーボー目掛けて落雷を落とし、動きを止めたところでレイが剣を地面に叩き付け巨大な衝撃波を放って動きを止めたボーボーを自分が狙っていたオタレドごと打ち倒しさらにオタレドは左手に握った盾でぶん殴って追撃する。そして盾をその場に放り捨てると素早く再び銃を抜いた。
「ヒートバレット!」
そして左から右に振り抜くようにしながら銃弾を連射、魔物達を威嚇し足止めする。
「氷結よ、我が命に答え、敵をなぎ払え!」
「飛散せよ流転の泉!」
その時、ウィルとルビアが魔術の詠唱を終えた。
「フリーズランサー!!」
「スプレッド!!」
ウィルとルビアの周囲に水のマナが集中。ウィルの周囲から氷の槍が弾丸のごとく放たれ、さらに火山に住む魔物達は未経験だろう水流が押し寄せ、魔物達を押し流し氷の槍が貫いていった。
「みんな、良くやった」
魔物の全滅を確認し、ウィルがハンマーの柄を地面に置くように構えてそう言うとルビアが彼にジト目を向け、その意味を悟ったのかウィルはごほんと咳払いをする。
「その……すまなかった。少し熱くなってしまった……」
「まったくもう。ウィルさんがこの中で一番大人なんだから」
「か、返す言葉もない……」
ルビアの説教にウィルはしゅんと小さくなる。とその時火山の奥の方から妙な、ズゴゴゴゴ、という音が聞こえルビアが音の方を見た。
「何かしら、今の音……」
「ここは近年、安定した状態と言われているが、見たところそうでもないらしいな」
ルビアの呟きにウィルもすぐ真剣な表情に変わり、呟く。
「ここの火山活動が、活発になっているって事?」
「ああ。星晶の採掘は、自然にも影響を与えてしまう」
「星晶も、土地に恵みを与えるマナそのものでもあるからなのね」
ウィルの呟きにカノンノが尋ね、ウィルがそれを肯定するとルビアが続け、それにウィルは再び頷いた。
「この火山でも、採掘は行われた。マナの恵みがなくなり、不安定な状態になっているのだろう」
「星晶がエネルギーとして使用されるようになるまで、人々は世界樹が生み出すマナだけで生きていたのに……昔の人は、マナを生み出してくれる世界樹に感謝をささげていたのに、今の人や文明は星晶をむさぼるばかり。感謝する事すら忘れているわ」
「星晶を採掘し尽くしてしまうと、もう人々は今のような豊かな暮らしは出来なくなるな」
ウィルの説明を聞いたルビアはどこか悲しそうな様子で言うとウィルは腕を組んで呟き、「だが」と続けた。
「もっと恐ろしいのは世界樹が生み出している非物質のマナをエネルギー利用する技術が出来た時だ。そうなれば、人々はこの世界の生命を支えるマナまでも奪い尽くすだろう。一時の繁栄と引き換えに世界樹は枯れ、世界は滅亡してしまう」
「星晶に頼らない世界になればいいな……早く、オルタ・ビレッジが実現すればいいのに……」
ウィルが口にする最悪の未来を聞いたルビアが呟き、カノンノもうんと頷く。
「……」
と、レイが無言のまま火山の先に歩きだしカノンノがそれに気づくと三人も彼女の後について行った。
「レイ! 待ってよ!」
カノンノが大慌てで叫ぶ。歩き出したレイはまるで何かに導かれているかのように、入り組んだ火山の道である岩の上を迷うことなく歩いているのだ。魔物も襲い掛かってくるがそのほとんどを剣と銃で威嚇し、追い払っていた。まあその代わりウィルとルビアという術士二人を守りながら戦っているカノンノの負担が大きくなっており、三人はレイを見失わないようにするのが精一杯という有様になっていた。
そして火山の最奥地だろう、採掘場のような場所にやってくるとレイはぴたりと足を止めた。そこにカノンノ達も追いつくが、そこにいるものを見るとルビアがぎょっとした目を見せる。
「む、虫っ!?」
ルビアのいう通り採掘場には虫がおり、カノンノも若干引いている。が、レイは気にする様子を見せずにその虫を拾い上げた。
「黒くて、羽があって……背中がてかてかしている……」
虫を観察し、ぼそりと呟く。
「そ、それは!!」
と、レイが拾い上げた虫を後ろから覗き込んだウィルが声を上げた。
「ここにしか生息しない貴重な生物、“コクヨウ玉虫”だ!!」
「こんな環境で虫が?……動かないわ。死んでる?」
ウィルの説明口調にルビアが尋ねるとウィルは辺りを見回し、何か植物を見つけるとそっちの方に歩いていく。レイもコクヨウ玉虫を元いた場所にゆっくり下ろすとウィルの方を見た。彼は腰を下ろして何か植物を観察しているようだ。
「コクヨウ玉虫は、この苔を食するのだが……こいつも枯れているな……不安定な地熱のせいで枯れたのだろう。やはり、星晶の採掘が原因かもしれんな」
ウィルはそう呟いて立ち上がり、残念そうな目で苔とコクヨウ玉虫を見る。
「コクヨウ玉虫に、この苔……どちらも貴重な種だというのに……」
彼がそう呟いた瞬間いきなりひび割れた地面から何か、赤い煙のようなものが浮き出るように現れた。
「これって、赤い煙!?」
ルビアが一歩下がって叫び、レイはルビアとカノンノを庇うかのように数歩前に出る。と、赤い煙はまるでまとわりつくようにコクヨウ玉虫と苔に向かっていく。そして吸い込まれるように煙は消えていった。
「この煙の動きは……なんだ、今のは……あの赤い煙、まるで意思があるように動いていた……」
ウィルはそう呟き、考えるように顎に手を当てる。
「これは、単なる有毒なガスなどではなさそうだ」
そう呟いたウィルはその直後、自分の視界の端で何かが動いているのに気づき、その動いたもの――コクヨウ玉虫の方に歩いていくと屈みこんでその虫――さっき赤い煙にまとわりつかれていたものだ――を見た。
「む?……まだ生きているようだな。ならば、こいつを持って帰るか」
「ええ~! 気持ちわる~い!!」
ウィルの言葉にルビアがブーイングを出す。が、ウィルはコクヨウ玉虫を懐から取り出したハンカチでくるむように持ち上げた後、フィールドワークで使うのだろう小さなカゴに入れる。
「だが、今の赤い煙が生物変化の要因かもしれない。調べれば何か分かるだろう」
「それじゃあ、早く戻りましょう! こんな場所、もうこりごりだわ!」
ウィルがそう言うとルビアはそう言って元来た道を戻ろうとし、ウィルも「むぅ」と唸ってその後を追い、カノンノも歩き始める。が、その場所を出る前に振り向く。採掘場の中央で、レイはぼうっと立ち尽くしていた。
「レイ、どうしたの?」
「……ん? ああ……」
カノンノの呼びかけにレイはようやく気付いたように頷き、カノンノと一緒に採掘場を去っていった。
「今回、赤い煙が本当に現れたのは、収穫だったね」
「あの場で生物変化は確認できなかったが、現れたあの赤い煙……奇妙な事に、生きている虫にしかまとわりつかなかった。持ち帰った虫を調べてみたが、取り立てて変化はない。ほんのわずかだが餌も手に入れられた。しばらく飼育してみようと思う」
アドリビトムの拠点であるバンエルティア号でウィルが報告、それにアンジュは「はい」と頷いた。
「ですが、管理はしっかりとお願いしますね?」
「もちろんだ」
アンジュの念を押すような言葉にウィルはにやり、と笑みを浮かべながら頷いた。
その頃甲板。カイはここで新しく買ったアイアンサーベルを手になじませるため模擬戦を行っていた。今回の相手はルカである。ちなみにカイは武器と一緒に防具も新調し、サバイバル活動に適したオーバーオールであるサバイバルオーバーオールに同じくサバイバル活動に適したゴーグルのサバイバルゴーグルを額にかけ、籠手には小さな金属板をあしらった水色が基調となっている布のガントレットであるトランクガントレットと足には同じくトランクレギンスを装着していた。
「弧月閃っ!」
ルカは剣を振り上げて三日月の軌道をえがくかのごとく相手に斬撃を見舞うがカイはそれをバク宙でかわしながら懐から苦無を取り出し左手に握った。
「曼珠沙華!」
「わわっ!? し、真空破斬っ!!」
放たれる炎を纏った苦無。それを見たルカは焦りながらも地面に足がつくと同時に大剣を振り回すように回転、力を解放して思いっきり振るい苦無を薙ぎ払った。だが、カイも地面に着地すると同時に地面を蹴る。
「影走斬!」
「うあっ!!」
一気に加速し、素早くルカへの間合いを詰めて刀を一閃。ルカは痛そうな悲鳴を上げた。
「そこまでっ!」
そこでクレスが右手を上げて模擬戦終了を宣言。カイはふぅと息を吐いて刀を鞘に収めた。
「どうかな、カイ? 大分馴染んできた?」
「ああ。もうなんとかなりそうだ」
「そっか、よかった……」
クレスの言葉にカイが頷いてそう言うとルカは安心したように頷いてすぅ~はぁ~と呼吸する。
「呼吸を意識して……」
特殊な呼吸法で大気中の気を体内に取り込み、体力を回復する特技、集気法。クレスとカイが会話している間にルカはそれの練習を行っていた。
「ん?」
「誰か来たか?」
と、クレスとカイが人の気配に気づき、直後船にうさんくさいおっさんと、長身で露出が多くグラマラスな体型をした綺麗な女性が船に乗り込んできた。
「よう、少年。アドリビトムってギルドはここでよかったかな?」
「……」
おっさんの言葉にカイは僅かに身構える。なんか左手に苦無をこっそり握り臨戦態勢まで取っていた。
「あらー。おっさん、そんなに怪しい? おっさんの魅力に胸がどきどき?」
「あら、この人があなたの魅力を分かってくれる人だったらいいのだけれど」
「……ジュディスちゃん……」
と、何をどう思ったのかおっさんはふざけたように笑いながらそう言い、それに綺麗な女性がそう言うとおっさんはがくんっと肩を落として呟く。それをちらりと見てから次はジュディスと呼ばれた女性がカイに話しかけた。
「私達、ここで働きたいの。リーダーはどちら?」
「……呼んできます」
女性の言葉にカイは静かにそう呟き、船内に入っていく。それからほんの少し間をおいて船内からカイとアンジュが姿を現した。
「このギルドのリーダーかしら?」
「はい、私がこのギルド、アドリビトムのリーダー。アンジュです。何かご用でしょうか?」
女性の問いかけにアンジュはそう言い、笑顔を浮かべて用を伺う。と女性は自らの胸にふわりと優雅な動作で手を当てた。
「私はジュディス。そして彼が……」
「俺はレイヴン。ここにユーリのあんちゃんいるっしょ? 俺達、あいつが元いたギルドの仲間なのよ」
女性――ジュディスは自分の胸に手を当てて名を名乗った後うさんくさいおっさんの方に手を向け、それにおっさん――レイヴンが名乗り、続けて説明する。それから再びジュディスが口を開いた。
「エステルの依頼を受けた後で彼、指名手配になったでしょう?」
「そーそー。そのせいで俺達のいたギルドまでガサ入れが入っちゃって、エステル嬢ちゃん誘拐の手引きをしたと疑いがかけられてるのよ」
ジュディスの言葉に続けてレイヴンが困ったように肩をすくめるが続けて「ま、手引きをしたのはウソじゃないんだけどね」と言って飄々と笑う。
「そんで、ガルパンゾをしばらく出た方がいいんじゃないかねって」
「ユーリがここで仕事をしてるって噂を聞いたから来てみたの。どうかしら? ここで働かせてもらえない?」
「オッケーよ。それじゃあ、加入の手続きをするね」
レイヴンとジュディスをアンジュは快く受け入れ、それを聞いたレイヴンは安心したように空を見上げて大きく息を吐く。
「ふい~。やっと逃亡生活とおさらばなのね。んじゃ、これからよろしくな、少年!」
「……ああ」
レイヴンの言葉にカイはまだうさんくさくて怪しいとでも思っているのか、少し怪訝な目を向けながら静かに頷いた。
今回は火山での赤い煙編。レイの戦い方がまだ完璧に把握できない……カイの方はもう頭の中で勝手に飛んだり跳ねたり斬ったり投げたり蹴ったりしてくれるのに、これがキャリアの違いというやつか……。
カイ「いや、違うと思う……」
ちなみにウィルとルビアが唱えていた詠唱文は彼らは原作では唱えていません。ただ詠唱がないと描写させ辛いんで別シリーズのキャラが同じ術を使う時に使っている詠唱の中で合ってそうなものを転用させました。これからも度々そういうのが出てくると思いますのでご了承ください。
さて次回は赤い煙のさらなる謎になるはずです。ご意見ご感想があれば歓迎いたしますのでお気軽にどうぞ。それでは!