Vivid Strike Loneliness   作:反町龍騎

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 今回私にしては長くなってます


七話

 地球。そこにある日本の中のとある街の空を、一人の男性が飛んでいた。金髪逆毛、金色の瞳をした男性は、全身黒一色のバリアジャケットを着ている。

 その男性は通信画面を開き、部下であろう男性と話をしていた。

 

「それで?密輸犯は何処にいるんだ?」

 

『そこから南西に十二キロ行ったところにいます』

 

「了解」

 

 言うと男性は飛行スピードを上げる。瞬く間に遠くへと進んでいく男性。この男性からすれば、現場まで一分と掛からないだろう。

 男性の耳に先程通信していた男性からの情報が入る。

 

『アーリーズ執務官!犯人がいると思われる現場に、二つの魔力反応が!内一つは巨大な数値を示しています!』

 

「分かった。急ぐわ」

 

 更にスピードを上げるアーリーズと呼ばれた男性の耳に、今度はこの世のものとは思えぬ程の咆哮が届く。

 それは、何人もの人の声がスクランブルエッグのようにぐちゃぐちゃに混ぜられたような、そんな声だ。

 

「ッ!なんだ?」

 

『アーリーズ執務官!二つの内の、小さかった方の魔力数値が増大!こ、これは、有り得ない⋯⋯ッ!』

 

「なんだ?何が起きた」

 

『この魔力数値は、ランクに置き換えると、SSSッ!』

 

「はぁ!?」

 

 男性の言葉に驚きを隠せない男性。

 

「SSSだと?有り得ないだろ、そんなの」

 

 言って男性は、またスピードを上げ、現場まで急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現場は荒れていた。

 アリアが咆哮を上げてから、瞬く間に男達が血を吹き出し倒れていく。それは勿論、アリアが男達をそんなふうにしているのだ。腕を引きちぎり、首を握り潰し、腹を貫き内蔵を抉り出し、砲撃で塵一つ残さず男達を殺したりと、残酷な事をやってのける。その所為で、アリアの金色の髪も、白く透き通った肌も、黒いバリアジャケットすらも、紅く塗り潰されている。

 その光景を、傷口を凍らせる事により止血したアイズは、ただ呆然と見ることしか出来なかった。

 

 普段のアリアは、純粋な近接格闘型である。しかし彼女はそれほど魔力が多い訳では無い。だから彼女は、身体強化に全魔力を注ぐのだ。その彼女が砲撃魔法を放つなど、考えられないもので。

 それにアリアはどんな理由があろうと殺しを良しとしない。その証拠に先程のアイズが男を殺した事を叱っていた。

 だからこそ不思議で仕方が無かった。何故アリアは急に、人が変わったように暴れ狂っているのだろうかと。

 

 そう、アイズが考えている間に男達は全員、無残な屍となった。

 周りは死体で埋め尽くされ、血の海と成り果てている。

 そんな場所に、一人の男性が現れる。

 

「管理局執務官、パルトメスト・アーリーズだ。デバイスを解除して投降しろ。そうすればお前達には、情状酌量の余地がある」

 

 アリアとアイズに杖状のデバイスを向けて、投降を促すパルトメスト。そのパルトメストにアイズは訴え掛ける。

 

「待て!俺達は被害者だ、これは正当防衛ってやつだ」

 

「なにが正当だ。たとえそうだとしても、これは過剰防衛って言うんだよ」

 

 アイズの言葉に目を細め、鋭く鮮明な殺気をアイズに放つ。

 パルトメストの殺気にたじろぐアイズ。パルトメストの殺気を感じ取ったアリアは、パルトメストに砲撃を放つ。アリアの砲撃を防御魔法により防いだパルトメストは、アイズとアリア、両方にバインドをかける。

 黄色い鎖が二人の自由を奪う。しかしそれは一瞬の事で、アリアはすぐにバインドを腕力という力で強引に引きちぎる。そして地面を蹴り、空にいるパルトメストへ肉薄する。

 

「プラズマランサー」

 

 パルトメストの周囲に十数個の黄色い槍が現れる。それはどれも電気を帯びている。その槍を全て、アリアに放つ。アリアはそれを殴って壊し、掴んで握り潰し、ときに砲撃で消滅させる。

 それを見たパルトメストは片眉をピクリと動かす。そしてアリアの拳が届く距離まで近づかれたパルトメストは、杖状のデバイスを仕舞い、左手に付けているブレスレット型のデバイスを展開する。現れたのはガンナックル。この男は、近接戦闘も得意である。

 

「がああああああああぁぁぁァァァァァッ!」

 

 アリアの両拳によるラッシュ。デタラメに見えて、実は正確に、精密に、的確に、その上パルトメストを倒せる程のものを放ってきている。パルトメストはそれを冷静に捌き、反撃の隙を窺う。

 

 何秒経っただろうか。一向にその隙が出来ない。先程からずっと両拳によるラッシュを続けている。普通ならば焦ってしまう。だが焦ってはいけない。ここで焦ってしまうと、かえってこちらが隙を見せてしまう事になる。だから焦らず、冷静に捌く。

 

 そろそろ疲れてきた頃だろう。ラッシュのスピードが少し落ちている。もう少しで、アリアに隙ができる。その時だった。パルトメストの足元から、魔力反応がした。このラッシュを捌きながら、その魔力反応に対応するのは、パルトメストでも無理だろう。そうして、パルトメストとアリアの両方の足が凍った。

 

「⋯⋯止まれ、二人とも」

 

 それを放ったのはアイズ。アイズの氷だ。

 

「凍結の変換資質か。珍しいな」

 

 氷を見て、そんな事を呟くパルトメスト。そのパルトメストに構う事なく、アイズは叫ぶ。

 

「アリア!どうしたんだよ!お前らしくもねぇ事すんなよ!」

 

 アイズの言葉に耳を貸す事無く、アリアは唸り、脚力により強引に氷を砕く。

 

「ふむ、魔法力が高いのか、単なる馬鹿力か。はたまたその両方か」

 

 顎に手を当てぶつぶつと呟くパルトメスト。そのパルトメストに容赦もお構いも無く、アリアは殴りかかる。

 右の大振りを掴み、驚く。

 

「――こいつ、自分の魔力じゃなく、外からの魔力を、使っているのか?」

 

 その技術は集束系魔法のもの。だがこれはこんな近距離で、しかも攻防の最中に出来るものではない。

 

「チッ。聞いた事のあるレアスキルの中で、一番厄介なもんか」

 

 アリアのこの状態と記憶の中で当てはまるものでもあるのか、パルトメストは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「『強制執行』か。クソ厄介なスキル持ちやがって」

 

 パルトメストの言った強制執行。このスキルは、自分が大切に思っているもの(人でも物でも)を傷付けられると、強制的に発動してしまう。制御する事は出来ず、発動すれば本人の身体能力や魔力の限界を超えた力を使ってしまう。その力に耐えられない為、意識が飛んでしまう。

 そしてアリアが集束系魔法の技術を近接距離で動きながら使えるのは、スキルのお陰と言っていい。

 

「六番艦ミスリル、聞こえるか?」

 

 再度放たれたアリアのラッシュを捌きながら、パルトメストは自分が乗っていた艦船に通信する。

 

『こちらミスリル。アーリーズ執務官、状況は?』

 

「悠長に説明する暇はねぇから単刀直入に説明するぞ。応援を求める」

 

『ッ!あのエース・オブ・エースが⋯⋯。了解、直ちに応援を向かわせます』

 

「出来るだけ早めにな」

 

 そう言うと、パルトメストは弾いていたアリアの両拳を掴む。

 

「あんま好き勝手してると、お兄さん本気で怒っちゃうぞ」

 

 口調はふざけている様であるが、顔も態度も至って真剣。アリアの空いた腹に蹴りを入れ、アリアが怯んだ一瞬を狙って、身体中に電気を走らせる。

 

「エレクトロソニック」

 

 パルトメストオリジナルの、身体強化魔法。魔力により上げた身体能力の内、電気により反応速度だけを、更に向上させる魔法。認識してから反応出来る人間の限界を、二つか三つ超える魔法。これが近接戦闘において、パルトメストの使う十八番である。

 そのパルトメストの攻撃をまともに食らってしまうアリア。コンクリートに叩きつけられる。

 

「アリアッ!」

 

 そのアリアに駆け寄るアイズにパルトメストが、

 

「そいつに近づくな」

 

「うるせぇよ公僕」

 

 パルトメストを睨むアイズ。そのアイズにバインドをかけ、パルトメストは、

 

「死にたくなけりゃ退いてろ」

 

 そう、冷たく言った。その時だ。パルトメストの目の前で、血潮が舞った。

 

「ガハァ⋯⋯ッ!」

 

 その血誰の血。

 答えはアイズ、答えはパルトメスト。二人の血だ。その二人に血を撒かせたのは、他でもないアリアだ。アリアの漆黒の細い砲撃が、二人の腹を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がああああああああぁぁぁァァァァァッ!」

 

 アリアの咆哮。勝利を確信してのことか、ただ叫んだだけか。

 

「――うるせぇよ」

 

 アリアの顎を、腹を貫かれた筈のパルトメストが殴る。アリアは二、三十センチ宙に浮き、後方へと吹き飛んだ。

 アリアに貫かれたアイズは倒れているのに、同じく貫かれた筈のパルトメストは何故無事なのか?その答えはエレクトロソニックである。

 反応速度を上げた事により、アイズがレーザーに貫かれてから自分が貫かれるまでの間に防御魔法を発動していたのだ。だから無事だったのだ。

 しかし、完全に間に合う事は無く、腕を盾にして少しだけレーザーが腹に迫るのを遅らせたことで、腕が傷付いてしまったのだが。

 

「手こずっちまうな」

 

 苦渋の表情を浮かべるパルトメスト。アリアを睨みながらしみじみと思う。

 

(早く応援来ねぇかなぁ)

 

「がああああああああぁぁぁァァァァァッ!」

 

「うるせぇっつってんだろッ!」

 

 アリアとパルトメストによる両拳のラッシュ。拳同士がぶつかる事でできる衝撃により、周りの建物にヒビが入り、死体に至っては、何処かへ飛んでいってしまうものもある。

 そんなラッシュを先にやめたのは、パルトメストだ。なにもやめたくてやめた訳では無い。アリアのクロスカウンターが、パルトメストの左頬に突き刺さる。

 幸いそれで吹き飛ぶ、という事は無かったが、その所為で今度は腹に拳を埋め込まれる。

 

「ゴフッ」

 

 喀血するパルトメストに、追い打ちの回し蹴り。これには流石のパルトメストも吹き飛ばされる。地を舐めるパルトメストに追い打ちを掛けようとしたアリアに何重ものバインドが掛かる。

 

「アーリーズ執務官!応援、到着致しました!」

 

「――遅せぇよ」

 

 憎まれ口を叩いても、表情は喜んでいる。そのパルトメストの元に、応援に駆けつけた局員の中で一番階級が上であろう男性が駆け寄る。

 

「アーリーズ執務官、無事ですか?」

 

「――なんとかな。それより、お前等に頼みたい事がある。あんま言いたくはないんだが⋯⋯」

 

 暗い顔をするパルトメストを怪訝に見つめる男性。

 

「⋯⋯何でしょうか?」

 

「⋯⋯俺があいつにブレイカーを放つ。ただ、俺のはなのはのと違って威力がデカイ分、チャージが長いんだ。まあでも、ほんの十数秒でいい」

 

「それだけなら、どうとでもなりましょう」

 

「――なるかなぁ?あいつは、俺に土を付ける程だぜ?お前等じゃ、どう足掻いても死体になるだけだ。だからあんまり、言いたくはないんだがな」

 

「⋯⋯構いません。アーリーズ執務官の為になら、私たちは死ねる覚悟があります!」

 

「気持ち悪いから止めろ。それと、⋯⋯死ぬなよ、頼むから」

 

「はい!」

 

 男性はパルトメストに敬礼し、アリアの元へと向かう。

 

「皆聞け!アーリーズ執務官が、ブレイカーの準備をする!それが完了するまで、俺達で時間を稼ぐぞ!」

 

『おぉッ!』

 

 男性達の雄叫び。そして皆、自分の得意な事でアリアを攻撃する。しかしアリアに有象無象の下手な攻撃など効かず、男性達を次々に倒していく。いや、殺していく。

 一人は腕が千切れ、一人は臓腑が零れ、一人は関節が曲がってはいけない方向に曲がっている。

 男性達は一人ずつでは埒が明かないと、数人で砲撃を放つが、アリアの砲撃に男性達ごと飲み込まれる。

 その男性達の後ろで、巨大な魔力反応がした。

 

「集え雷光 我が元に来たれ正義の光」

 

 この戦場にある魔力をかき集める。一つ一つが集まりあって、巨大な黄色い魔力球が出来上がる。そしてパルトメストは、トドメにこの言葉を口にする。

 

「リミッター解除。正義、解放ッ!」

 

 パルトメストの魔力数値が増大する。そして、デバイスは殺傷設定。それで放つ魔法は、高町なのはと共に、エース・オブ・エースの称号を与えられた管理局最強の魔導師にして、犯罪者から金色の鬼神と恐れられるパルトメスト・アーリーズの必殺魔法。

 

「サンダーレイジブレイカー!」

 

 辺り一面を、神々しいまでの光が包む。

 その中で、一人の少年の絶叫が、響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイズがアリアの死を知ったのは、病院で目が覚めてからの事だ。

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