艦隊これくしょん with BIOHAZARD7 resident evil 作:焼き鳥タレ派
──ベイカー邸 実験場
B.S.A.Aによって既に本館や旧館は制圧された。残る実験場に隊員達が突入する。
アサルトライフルを構えながら、流れるような速さで階段を駆け上がり、
ドアを蹴破って隊列を崩すことなく次々と室内に入り込む。
各員、銃を構え
テーブルの上に一台のテレビが置かれているだけだ。
一見したところ行き止まり。すると、隊員の一人が耐BC兵器ベストから、
太いペンライトのようなデバイスを取り出し、部屋の中を照らし出した。
そのマイクロコンピュータが内蔵されたデバイスは、プロジェクターのように、
黄色い光で物質組成の分析結果や生体反応、所有者の負傷状況などを映し出す。
隊員がゆっくりと壁を照らしていると、デバイスに反応。
[空間を検知 爆破による侵入が可能]
「隊長、奥に通路が」
「……工作班、C4だ」
隊員が隊長格の男に手短に報告する。
全身に特殊な工具を身につけた別の隊員に、隊長の男も最低限の言葉で指示した。
彼も防護ベストを装着しているが、他の隊員のものとは異なる。胸に二本のマガジン、
そして、4色の薬品が入ったシリンダー。武器も大型のショットガンを装備している。
工作班の隊員は速やかにデバイスが示した壁にC4プラスチック爆弾を貼り付け、
雷管を差し込んだ。
「設置完了」
「全員下がれ。俺の指示で爆破だ」
全員が一旦部屋の外に出る。最後に避難した隊長が指示を出す。
「発破」
「発破する。総員衝撃備え」
工作班がリモコンのボタンを押すと、小部屋の中で爆発。
煙と轟音、そして衝撃波が入り口から噴出した。
完全に煙が晴れるのを待たず、またも隊員が突入。
隠し扉によって閉じられていた廊下が現れていた。彼らは早足で前進を続ける。
その先には扉。いきなり開けることなく、二人が両サイドの壁に別れ、
一人が片手で開ける。敵襲を警戒したが中は無人。
再び隊員がデバイスを取り出し、室内をサーチ。
部屋全体を照らし終えると、デバイスで調査結果を床に映し出した。
[爆発物を検知 ワイヤートラップの可能性98.1%]
測定の結果、爆発物の位置と距離を表示。その結果を見た隊長が再び工作班に指示を出す。
「工作班、解除だ」
「了解」
工作班の隊員が素早く室内に入り、ワイヤーカッターを取り出し、
手早くトラップのワイヤーを切断、無効化した。
その後に続く部屋にも多数のトラップが仕掛けられていたが、
B.S.A.A隊員はそれらを解除しながら、統制の取れた動きで確実に前進していった。
──実験場 隠し部屋
そんな彼らを見て危機感を覚える者がひとり。ルーカスだった。
監視カメラからB.S.A.Aが突入してくる様子を見て、
慌ててスマートフォンで何者かと連絡を取る。
隊員が建物の見取り図と照らし合わせて、この不自然な空間に気づくのは時間の問題だ。
数コールの僅かな時間も彼を苛立たせる。
「出ろ!早く出ろよ!……ああ、あんたか!?俺だ、ルーカスだ」
『どうした。E型被験体に問題でも?』
「大問題だっつの!俺の家がB.S.A.Aに襲われてる!なんとかしてくれよ!」
『お前の家ではなく被験体について聞いている。エヴリンの監視はお前に任せた筈だ。
そのために”鎮静剤“を渡した。……彼女は今どこにいる』
「ああ、それがよう……ちょっと今外してるっていうか、
ここにはいないっつー表現もできるっていうか」
『……もう貴様に用はない。取引もここまでだ。
家族同様、最終段階への変異を待つがいい』
「ちょっと待った!ちょっとだけ待ってくれよ!連れてくる、今すぐ!」
『B.S.A.Aに囲まれながら彼女を探しに行くつもりか。それとも我々に兵を貸せと?』
「とにかく時間くれって言ってんだろうが!!絶対どっかに……おお!」
ルーカスが当てもなくあちこちを見回していると、いた。後ろに彼女が。
エヴリンが後ろに手を組みながら、じっと彼を見つめていた。
「待て……待てよ。エヴリンは、今、ここにいる。証拠に写メ送るからよう」
ルーカスはカメラで写真を撮ると、メールに添付し、送信した。
数秒で相手もメールを確認したようで話を再開した。
『……いいだろう。引き続き彼女をお前に任せる。
但し、B.S.A.Aに彼女が渡ることがあれば、
二度と先進国に足を踏み入れることはできないことは承知しておけ』
「わかってるよ!こっちにゃエヴリンがいる!ぜってえやってやるから!切るぞ」
通話を切ったルーカスは、すぐさまパソコンや電子部品の山を押しのけ、
エヴリンの前に膝をついて目を合わせた。彼女の肩に手をかけて話しかける。
「よぉ、エヴリンじゃないか。
どこ行ってたんだ、急にいなくなるから心配したんだぜ?」
「……あっち」
エヴリンは無表情で答える。
「だめじゃんか、ありゃあ何ていうか……危ないもんだからな。
どうせ、ろくでなししかいなかっただろう。もう俺のそばから離れるんじゃねえぞ」
「危なかった。マーガレットも、ジャックも、イーサンに殺された。
ところで今の人、誰?」
「ああ、今の電話か?あいつは、医者だよ。ほら、なんつーか俺、病弱っぽいだろ?
栄養剤もらってるんだよ」
「ふぅん。それで、外の奴ら、どうするの?」
するとルーカスはエヴリンの両手を握り、すがるような声色で彼女に助けを求めた。
「助けてくれよぉ。悪い奴らが俺の実験データを盗みに来たんだ。
見つかったら殺されちまう。お前の力でなんとかしてくれ。俺達、“家族”だろ?な?」
しばらくエヴリンはルーカスの目を見ていたが、ぽつりと一言つぶやいた。
「……嘘つき」
「へ?」
「お前は、私を拒んでる。せっかく力をあげたのに、家族になるのは嫌がってる。
力のために私を利用しているだけ」
「何言ってんだエヴリン。俺はお前の、兄貴なんだぜ?それを……」
「いくら待っても、ちっともジャックやマーガレットみたいになってくれない!
お前が変な薬で私を拒んでるせいだ!」
怒りを迸らせるエヴリン。気づいてやがったか……!
ルーカスはどうにかエヴリンをなだめようとする。
「なぁ、なぁ、落ち着いてくれよ。俺だって急に人間をやめるのは怖かったんだ。
わかってくれよエヴリン。でも、お前を妹だと思ってたのは本当なんだぜ?
……そうだ、証明する!俺がお前の味方だって。外にいる連中を皆殺しにする。
お前の家を守ってやる。まぁ……二人だけンなっちまったが、お前と俺の家だ」
「本当?」
「マジだって!でも、それにはちょっとだけお前の協力も必要なんだ。
手伝ってくれ頼む!」
「……いいよ」
「よっしゃ!B.S.A.Aの連中、死ぬほど後悔させてやるぜ」
ルーカスはパソコンに向かうと、
ベイカー家の敷地にある電子制御されている装置のコントロールシステムを起動した。
──実験場 牛舎
B.S.A.A.の一行は更に実験場の奥に進み、広大な牛舎にたどり着いた。
隊員の一人が隊長に話しかける。
「ここは吹き抜けになっているようですね」
「二区画に分かれている。向こうに渡るには一度2階に上る必要があるな」
ゔあああ……
その時、角から1体のモールデッドがよたよたとした足取りで現れた。
そいつは隊員達に向かってくるが、
「排除しろ」
「射撃開始!」
隊長の指示で隊員が前後二列に並び、
前列が片膝を付き、後列が立ったままの姿勢でアサルトライフルを構える。
6名の隊員がモールデッドにバースト撃ちで5.56mm NATO弾を浴びせる。
広い天井の高い牛舎には、長く銃声が響いた。
大量の弾丸を浴びたモールデッドは両腕を弾き飛ばされ、胸を貫かれ、
ものの数秒で後ろに倒れたまま動かなくなった。
「……前進を続けるぞ」
B.O.Wの襲撃にも動じることなく、皆、任務を再開した。
最前列の隊員が突き当たりに2階への階段を見て、銃口を向けながら近づく。
その時だった。積み上げられた干し草からブレード・モールデッドが
叫び声を上げながら陰から現れ、隊員に飛びつき、右腕の巨大な刃で斬りつけた。
その刃は強固なベストを貫通し、致命傷には至らずも彼に深手を負わせた。
「あっ、がああ!!」
「イーグル!」
敵の急襲を受けた部下の名を叫ぶ隊長。弾くように素早く手を動かし、
ホルスターに装備したハンドガン・アルバート.W.モデル01を構え、
ブレード・モールデッドに照準を合わせる。銃声二回。
大型拳銃2発が二度目の攻撃に移ろうとしていたB.O.Wの胴に食い込む。
奴は大きく後ろによろける。その隙に隊長は跳ねるようにダッシュして隊員の前に移動。
B.O.Wが体勢を立て直した瞬間。
「ふんっ!!」
その丸太のように太い腕で、岩のような拳を奴の頭に叩き込んだ。
肉が砕ける生々しい音を立ててブレード・モールデッドの頭部が粉砕され、
そいつは完全に動かなくなった。
敵の沈黙を確認した隊長は、すぐさま隊員の手当てを始めた。
「油断大敵だ。さあ、飲め」
隊長はベストのポケットから小さなケースを取り出し、
急速な止血効果と体力増強効果のあるタブレットを3粒隊員に飲ませた。
「……すみません、レッドフィールド隊長。流石は、オリジナル・イレブンですね……」
「おべんちゃらなら生きて帰ってからにしろ。
……こちらチームアルファ、負傷者1名。収容を乞う」
『チームブラヴォー、了解。医療班を派遣する』
無線で短いやり取りを終えた隊長、クリス・レッドフィールドは
負傷した隊員に話しかける。
「お前は撤収しろ。戦える怪我じゃない」
「行かせてください、薬も、効いてきました」
「どうにか生きている程度の体力しかない。命令だ、退却しろ」
「すみません……」
「ここからは俺が先導する。2階に進むぞ」
「了解」
そして、部下が1名減ったクリスが率いるチームアルファは階段を上った。
突き当たりに小部屋があったが、ターゲットは見つからず。
彼らは引き続き1階を見下ろせる狭い木の廊下を歩く。
すると右手から甲高い声を上げ、4つ足のモールデッドが素早く走り寄ってきた。
クリスは再びアルバート.W.モデル01を抜き、
向かってくるクイック・モールデッドの頭部を狙い、銃撃。
しかし、僅かに狙いが逸れ、弾丸は前足に命中。
腕に焼けた弾丸が食い込んだそいつは、
かすれたような鳴き声を上げて一瞬前進をやめた。
その瞬間、クリスはB.O.W.に駆け寄り、
「はぁっ!!」
鍛え上げられた脚力でクイック・モールデッドの頭部を踏み潰した。
黄土色の体液と肉片が床に広がる。
弾薬節約のための判断だが、生身でB.O.Wを圧倒するクリスの姿を見て、
後ろの隊員たちが思わず息をつく。
「行くぞ」
廊下を進むと行き止まりだったが、
1階を見下ろすと牛舎の東区画に下りられるようになっていた。
幸い床に干し草が敷かれており、それほど高さもないため問題なく飛び降りられそうだ。
「隊長、どうしますか」
隊員の一人が指示を乞う。確かに下りられそうだが、戻る道が見当たらない。
クリスは辺りを見回す。よく見ると、そばにはエレベーターリフトの塔。
1階にはその操作盤らしきものがある。もとより危険は承知の任務。クリスは決めた。
「飛び降りるぞ。このエレベーターから先に進めるだろう」
「了解」
彼の指示が下ると、クリスを始め隊員達が次々と1階に飛び降りる。
高く積まれた干し草以外にはエレベーターと操作盤しかない。
操作盤を調べてみると、バッテリーからバチバチと火花が散っている。
この様子では一度使ったら壊れそうだ。
「動かすぞ。全員、警戒を怠るな」
「了解」
クリスが操作盤の昇降ボタンを押した瞬間、
牛舎に派手な灯りが点灯し、隊員達に緊張が走る。
続いて、天井辺りに設置されているスピーカーから男の声が聞こえてきた。
『レディース・アンド・ジェントルマン!さあ皆さんご注目!
いよいよお待ちかねの、牛舎ファイト!今夜の挑戦者はぁ~?B.S.A.Aの命知らず共だ!
さぁ、正義の味方のお相手を務めるのは?モールデッド大勢、以上!楽しませてくれよ』
「全員散開!戦闘態勢!」
クリスはルーカスの声に耳を貸さず、隊員に指示を飛ばした。
突然動き始めたエレベーターが下りてきたのだ。その中に大勢のB.O.W.の姿が見えた。
彼は大型のショットガン・
エレベーターを待つ。他の隊員もエリアの四隅でアサルトライフルを構える。
うげあああああぁぁ!!
無数のB.O.W.の呻き声が徐々に近づいてくる。
そして、ガコンというエレベーター到着の音と共にシャッターがせり上がる。
すると一斉に多種多様のモールデッドがなだれ込んできた。
「射撃開始!」
散らばられると厄介だ。クリスは短期決戦に持ち込むべく、
エレベーターに向かってトールハンマーを構える。
銃身を冷やすため、バレルに開けられた多数の吸気口が特徴的なショットガン。
クリスはモールデッドがエレベーターから出た瞬間、
その群れに向かってトリガーを引いた。
直後、ギザギザの銃口とやはり細長い吸気口から12ゲージ弾が放たれ、
4体のモールデッドを後ろにふっ飛ばした。
まさしく神の鉄槌の如くその力を振るうクリスの銃。
しかし、散弾の及ばない足元からクイック・モールデッドの群れが、
隊員に向かって這い寄る。
「ファイア!」
隊員がアサルトライフルで床を薙ぐ。1体撃破。
だが、動きが素早く狙いにくい体勢の、クイック・モールデッドを
倒し切ることができなかった。奴らが隊員に飛びかかり、鋭い爪で斬りかかる。
「があっ!」
「ファルコン、しっかりしろ!」
「しゃがんで狙え!真正面に向き合うんだ!」
クリスは素早く戦況を判断する。早くも1名が負傷。
しかもエレベーターからは次々とB.O.Wが降りてくる。
今度はブレード・モールデッドが3体。他の隊員の状況は?
負傷した1名を他1名が手当てしている。つまり戦えない。
残る3名が四つ足の相手をしている。ここで食い止めるしかない。
再びトールハンマーを構え、ブレード・モールデッドの頭部を狙い、
1発ずつ確実に命中させる。1体が死んだが、2体は後ろに転んだ後、起き上がってきた。
牛舎に響く怒号、銃声。それに混じってスピーカーから
男の声が彼らの戦いを楽しむように実況する。
『おおっと、四つ足が死んだぞ!流石はB.S.A.A!でもひとりが死にかけだぁ!
部下が頼りにならねえと苦労するなぁ、隊長さんよ!』
「お前がターゲットだな!どこにいる!」
クリスは応戦しながら謎の声に向かって叫ぶ。
『全員生き残れたら教えてやるよぉ!生き残れたらの話だがな!』
敵の増援はとどまるところを知らない。
エレベーターからまたモールデッド3体が降りてくる。
1体では脅威にはならないが、他種、それも大勢となると話は違ってくる。
クリスがブレード・モールデッドの相手をしている隙に近寄り、
大きな爪を持った腕を振り下ろす。
「ぐぁっ!」
とっさにガードしたが、小さくてもダメージはダメージ。
積み重なればまともに戦うこともできなくなる。
またトールハンマーでなるべくブレード・モールデッドを巻き込むよう反撃する。
隊長に支給されるショットガンは、大きな銃身を存分に活かして、
炎と散弾の嵐を叩きつける。
通常のモールデッド2体の胴を砕き、残る1体の両腕を引きちぎって後ろに転倒させた。
ブレード・モールデッドは脅威となる右腕の刃を破壊され、
ただ呆然と立っているだけだった。
『流石は隊長さん、やるなあ!でもこんなもんじゃ終わんねえぜ、
観客がつまんねえってご立腹だからな!まあ観客は俺達しかいねえけどな』
ドスン、ドスン。大きな気配。エレベーターから重い足音と共に新たな影が現れた。
ゔっ、ゔっ、ゔおああああ!!
そいつはエレベーターの中から滝のように液体を吐き出した。
殺したモールデッドに降りかかると、その肉をあっという間に溶かしていく。
どうやら奴が吐いているのは強力な酸だ。
大きく太ったモールデッド2体がその姿を現した。
「全員、遮蔽物に退避しろ!」
「了解!総員退避!」
クリスはトールハンマーを構えたまま全員に叫ぶ。
現在チームアルファが戦っているエリアの中央には、
四角く押し固められた干し草が積み上げられている。
あの酸を食らったらひとたまりもない。
射程が長く広範囲に渡る攻撃に対し、散り散りに戦っていては全滅は免れない。
隊員を干し草に退避させたクリスは、一人戦う覚悟を決めた。
酸を吐くファット・モールデッドがエレベーターから降りた瞬間、
防護ベストからグレネードを外し、ピンを抜いた。
そして肥満体2体に向かって投げつける。
重心を低くして爆発に備えると、一拍置いて手榴弾は大爆発を起こした。
ファット・モールデッドは2体とも転倒。
トールハンマーのダメージを受けていた他種のモールデッドは、全て粉々になった。
その機を逃さず、クリスは肥満体に近づき、
トールハンマーの銃口を頭部に当て、至近距離で撃った。
その巨大な頭が大きく損傷する。
しかし、返り血を浴びたクリスのベストから白い煙が上がる。
こいつは、全身の体液が酸でできているのか!
肉体にダメージこそ受けなかったものの、この巨体に体術は効きそうにない。
体液が吹き出すナイフも不可。ショットガンの近距離射撃もできない。
厄介なB.O.Wがいたものだとクリスは内心愚痴るが、状況がよくなることもない。
弱点は頭部しか考えられない。クリスはアルバート.W.モデル01に持ち替え、
地道に先程トールハンマーの12ゲージ弾を叩きつけた1体に集中攻撃を開始した。
だが、いくら強力とは言え、ハンドガンで与えられるダメージには限界がある。
敵はまだ2体。クリスは再びグレネードを取り出し、
のそのそと追いかけてくるファット・モールデッドに投げつけた。
1,2,…爆発。手榴弾は2体を巻き込んだ。
1体がやはり衝撃で転び、クリスからダメージを受け続けていたもう1体の頭が吹き飛び、
床に大の字になって倒れていた。その時、異変が起きる。
ファット・モールデッドの死体が風船のように異様に膨張し始めたのだ。
瞬時に異常を察知したクリスが藁山に身を隠す。
次の瞬間、グチャアッ!と音を立てて死体が破裂。
肉片がやはり死んだモールデッドを溶かしながら飛び散った。
危なかった。あれの直撃を受けていたらベストも貫通していただろう。
『おおっと、1人死んだぞ!マジにイケてるぜアンタ!
戦わなきゃいけねえ時を乗り越えてこそ男になれるんだよな、隊長さんよぉ!』
相変わらずやかましいルーカスの実況を無視し、
アルバート.W.モデル01で残った1体の頭部に、
9mmパラベラム弾を正確に打ち込んでいくクリス。しかし、敵の体力は尋常ではない。
アルバートの一撃もまるで意に介さず、くぐもった声を上げ、
また吐瀉物による攻撃を開始しようとした。
瞬時に視線を走らせ改めて戦況を確認。
乱戦で気づかなかったが、よく見ると2階へ上がる階段が。もうグレネードもない。
とにかく敵が動きを止めた瞬間を見計らって階段を駆け上がった。
階段を上りながら藁山を見る。負傷した者もいるが隊員は全員健在。
2階に上りきった瞬間、後ろからまた不気味な酸を吐く声が。
そこは広いスペースになっていたが行き止まりだった。
ファット・モールデッドが鈍重な動きで階段を上がってクリスを追いかけてくる。
トールハンマーで近づいてくる敵の頭部を狙うが、
せっかくの高火力武器も、ショットガンの特性上、
体液の飛沫を浴びない距離から撃っても大したダメージが期待できない。
そして、とうとうファット・モールデッドが2階に上がってきた。
追い詰められたクリス。アルバート.W.モデル01での攻撃を繰り返すが、
やはり効いている様子がない。近づいてきた肥満体が、今度は両腕を大きく広げ、
巨大な爪で挟み込もうとしてくる。すかさずしゃがんで回避したが、一瞬の差だった。
大振りの攻撃をかわされ動きが止まっている敵から、ダッシュで距離を取るクリス。
打開策が見つからない。クリスはとにかくこの隙に
アルバート.W.モデル01をリロードしようと腿のポケットから弾薬ケースを取り出し……
ハッと気づく。あの巨体に有効なダメージを与える方法は、もうこれしかない。
クリスは意を決して弾薬ケースを手に、再び肥満体と向き合う。
奴も再びこちらを捕らえようと、向かってくる。
「おおお!!」
彼は敵に向かって駆け出すと、真正面から鉄の拳を浴びせた。
やはり目立ったダメージこそないものの、痛みは感じているようだ。
肥満体が絞め殺される牛のような声を上げる。
そこを見計らい、クリスは手にした弾薬ケースを奴の口に押し込んだ。
すかさず後ろに駆けて距離を取り、アルバート.W.モデル01を構える。
今度は頭部、というより奴の口を狙う。
火薬の詰まった弾丸が大量に収納された弾薬ケースを狙って。
クリスは頭部全体より小さな目標を狙い、一瞬だけ息を吸うと、トリガーを引いた。
アルバートが火を吹き、発射された弾丸が一直線に飛翔。肥満体の口を貫いた。
そして弾薬ケースが誘爆し、ファット・モールデッドの中で爆発を起こした。
内部からの高圧力に耐えきれず、奴の頭部が粉々になる。
頭を失ったB.O.W.はゆっくりと、そしてその体重で床を揺らして倒れた。
死体がまた急激に膨らむ。クリスは手すりから1階に飛び降りる。
その直後、2階からブシャッ!とファット・モールデッドが弾ける音がした。
さすがにクリスも少し息が上がったが、すぐ任務に戻る。まずは周囲の安全を確認。
もうエレベーターには何もいない。敵の全滅を確認した彼は隊員を呼ぼうとした。
その時、
『デブがダウン、試合終了!しゃーねえ、まあ所詮こんなもんだろ。
エヴリン、次はもっと面白えもん見せてやる。あいつのオツムを……』
『嘘つき……』
『え?』
『お前はあいつらを殺すって言った。だから私もいっぱい作った。
でもダメだった!私達の家を守ってくれなかった!やっぱりお前は裏切り者なんだ!!』
『お、おいエヴリン落ち着け、次は絶対うまく行くからよ!俺が何週間もかけて……』
『うるさい!!』
『待てって、おい、やめてくれ!そんなもん出すんじゃねえ!』
『やっぱりお前も、私の手で家族にするしかないよね……』
『やめろ!やめ……ああ!がああっ、あああ!!……ブツッ』
そこでスピーカーの音が途切れた。
藁山の影から集まってきた隊員たちがクリスに問いかける。
「一体、何があったんでしょうか……」
だが、クリスは答えることなく無線で本部に連絡。
「HQ、こちらチームアルファ、レッドフィールド。
ターゲットは死亡、もしくは完全変異。オーバー」
『了解。死体もしくは変異体を発見するまで任務を続行せよ。アウト』
「了解、アウト」
そしてクリスは負傷した隊員の様子を尋ねる。
「聞いたとおりだ。俺達は任務を続行する。……ファルコン、怪我の具合はどうだ」
「問題ありません!タブレットを3錠飲み出血も止まりました。行かせてください」
「わかった。全員エレベーターに乗れ」
「了解」
クリス達は大きな貨物用エレベーターに乗り込むとボタンを押した。
すると、ガシャンと一揺れしてエレベーターはクリスたちを上階へ運び出した。
全員の間に張り詰めた空気が流れる。一体この先に何があるというのか。
誰もが無言のまま待ち続ける。
やがて、最上階に到着したエレベーターが停止し、扉が開いた。
そこは壁と床が木造の小さなスペース。
やはりクリスを戦闘にチームアルファは進み続ける。隊員の一人が奇妙な物を発見した。
「隊長、奇妙な遺留物を発見しました」
「なんだ」
それは椅子に座った焼死体だった。なぜこんなところに?
だが、考えてもわからないことに、いつまでもこだわっても仕方ない。
胸のあたりにメモが貼り付けられている。短くこう書かれていた。
1408
次はお前だ
「隊長、これは……」
「間違いない。鉄格子のドアのパスワードだ」
牛舎に来る前、パスコード入力装置の付いた、開けられない鉄格子のドアがあった。
その右上に、入力装置と連動した鉄骨を降らせるトラップがあったが、
デバイスにより発見していたため誰も引っかかることはなかった。
安全のため適当な番号を入力し、トラップを発動させておいたところ、
隠し通路が現れた。C4による爆破や強引に蹴破ることも考えたが、
この隠し通路を探索するほうが、確実性が高いと考え、
その結果牛舎に到着することになったのだ。
クリスは部屋の柱に取り付けられたボタンを見つける。
デバイスでサーチすると、ボタンは奥の階段の昇降装置に繋がっており、
トラップの類は見つからなかった。
ボタンを押すと、やはり階下に下りる狭い階段が現れ、
クリスたちは一列になって下りていった。
「隊長。間違いありませんよ、ここは」
確かに、階段の先は一度通ったところ、
パスコードで開くドアのある部屋のすぐ近くだった。
敵は殲滅済みだが、やはり全員が武装を解くことなく素早く部屋に入った。
クリスが格子から内部の様子を確認してから入力装置に1408を入力。
すると、今度は問題なくドアが開いた。
「中は真っ暗だ。総員、ヘッドライト点灯」
「ヘッドライト、用意よし」
そして、クリスがドアに手をかけようとした瞬間、無線連絡が入った。即座に応答する。
「チームアルファ、レッドフィールド。どうした。オーバー」
『チームブラヴォー、シーゲルだ。済まないが、
今すぐ中庭のトレーラーハウスに戻ってくれ。オーバー』
「何があった。オーバー」
『捜索者と電話が繋がった。……ただ、本人かどうかは疑わしい。
直接話して判断を乞いたい。オーバー』
「わかった、すぐ戻る。レッドフィールド、アウト」
『すまない、いつ切れるかわからない。急いでくれ。シーゲル、アウト』
捜索者とは、B.S.A.Aへの通報者のひとり、ミア・ウィンターズの夫、イーサンだ。
彼から電話があったというのか。ミアもゾイという女性も無事だったのなら、
なぜ一緒に脱出しなかったのか。考えていても仕方ない。クリスは隊員達に告げた。
「調査は一時中断。トレーラーハウスに戻る」
表には出さないが、隊員達は少なからず動揺した。
ただクリスに続いて実験場から外に出るだけだ。戻るのに手間はかからなかった。
トレーラーハウスは実験場入り口の目と鼻の先だ。
クリスは隊員を入り口に待機させ、別働隊によって安全が確保されているエリアの
トレーラーハウスに入った。
中にはクリスに無線をよこしてきたブラヴォーチームの隊員が居た。
耐BCベストのせいでかなり窮屈そうだ。
クリスは余計な前置きを省いて要点だけを尋ねる。
「生存者からの連絡か?」
「いや、こちらからの連絡だ。ここに置いてあったメモに掛けてみたら、
どういうわけか繋がった。こんな番号存在しないはずなのに。とにかく出てくれ」
受話器を受け取ると、クリスは相手を驚かせないように落ち着いた口調で話しだした。
「もしもし、B.S.A.A.チームアルファのレッドフィールドだ。
君は、イーサン・ウィンターズなのか?」
『B.S.A.A!?やった!ああそうだよ、俺がイーサンだ!助けに来てくれたのか!』
「そうだ。君の居場所を知りたい。何か外から見える目印になるようなものはないか」
『それが……』
「どうしたんだ。小さな情報で構わない。君を助けるには手がかりが必要だ」
『まず、約束してくれ。俺は多分、今から信じられないことを言う。
それでも切らずに話を聞いてくれるか?』
「約束する。君の状況を教えてくれ」
『俺は今、70年前の異世界にいる』
「シーゲル、やっぱりイタ電だった」
クリスは受話器をシーゲルに突き返した。
「こっちから掛けるイタ電?どういうことだ?」
『おい待て、約束するって言っただろ!そっちの状況だって知ってる!
……そうだ、2階の娯楽室!俺はそこのバーカウンターにある
ビデオテープをルーカスに見せられて、気がついたらここにいたんだ。
あのテープを調べてくれ!』
必死に叫ぶイーサンの声を聞いた瞬間、クリスが反応し、受話器を取り直した。
「ちょっと待て、なぜターゲットの名前を知っている。B.S.A.Aの機密情報だぞ」
『俺がイーサン・ウィンターズだからに決まってるだろ!
化け物の家族に追い回されてたんだから間違いない!
ミアやゾイから聞いてないのか!?』
「ミアもゾイもB.S.A.A.の医療施設で治療中だ。
なるほど、君がイーサンだということはわかった。
異世界に居ると言ったが、そちらはどういう状況だ」
『切るなよ?こっちの世界じゃ、海が深海棲艦っていうB.O.Wに支配されていて、
艦娘っていう軍艦の転生体の女の子が砲や魚雷で戦ってる。実際見たんだ、本当だよ!
というか、俺もクルーザーに乗って奴らと戦った!』
「オーケー、落ち着け。とりあえず娯楽室のテープを調べればいいんだな?」
『ああ!だけど無闇に再生するなよ?あんたまでこっちに来たらどうしようもなくなる』
「わかった。一旦切るが、心配するな。ルーカスの名前が出た以上信じざるを得ない。
ビデオを技術班に回して分析してもらう。結果が出たらまた掛ける」
『頼んだぞ……』
そしてクリスは電話を切った。そばで会話を聞いていたシーゲルがクリスを見る。
「本当に、信じるのか?」
「イタズラにしてはこちらの事情を知りすぎている。
あるいは精神に異常を来たしている可能性もあるが、
いずれにせよ救出はしなければならない。
シーゲル、2階のチームに連絡してテープを確保してくれ」
「わかった。別に損害を被るわけじゃないからな。すぐに伝える」
クリスは無線で連絡を取るシーゲルを残して、再び実験場の入り口へ戻った。
途中、明かりの灯る本館の2階を見ながら。
──廃鉱
その頃、ルーカスはその重い身体を引きずりながら、ひたすら廃鉱を進んでいた。
『はぁ…はぁ…あのクソガキ!俺の身体をこんなにしやがって!
殺す、殺す、エヴリンもイーサンも、ぜってえぶっ殺す!』
彼が通る度、近くの鉄骨、朽ちたフェンス、壊れた発電機が身体に吸い寄せられ、
融合していく。
『もうすぐ、あと少しで俺の城だ……ああ、クソ重え!』
その異形は、あらゆる金属を飲み込みながら冷たい坑道を這い進んだ。
*クリス達のデバイスは6で使っていたやつです。
彼のデバイスだけ使いにくそうだなぁ、と当時思いました。