皆様相変わらずの感想&評価&お気に入り本当にありがとうございます。もはやテンプレのようなこの一言ですがきちんと心をこめてタイプさせていただいておりますm(_ _)m
ドラゴンボールで一番の悪役はやっぱりフリーザだよね、と思ってみたり。
順調に修行を続けていた達人らを見守るクリムゾンの元に、その凶報が入ったのは突然だった。
深夜3時。ナメック星へと向かわせたピッコロから緊急回線による通信が入ったのである。
『……クリムゾン、よく聞いてくれ。あんたの計算よりもフリーザが来るのが早かった。馬鹿デカい“気”がナメック星に向かってるのを最長老様が察知した。今から避難しきれていない残りのナメック星の住民をネイルと俺で運ぶが……正直間に合わないかもしれん』
「わかった。ならば最低限のナメック星人を連れて逃げろ。これは命令だ」
ピッコロの声は鬼気迫るものであり、それが冗談や嘘の類いではないことをすぐに察したクリムゾン。そもそもピッコロが嘘をつくことなどないが、そういった可能性を信じたくなるほどに事態は最悪な方向へと向かっていた。
またピッコロがナメック星にやってきてからクリムゾンは何度か通信でやり取りをしており、ナメック星における唯一の戦士タイプのネイルの存在についても聞き及んでいる。
『……悪いが、その命令には従えない。あんたには育てて貰った恩があるが、俺にはこの星が蹂躙され、同族達が殺されていくのを見過ごすことはできそうにない。……親父、あんたと過ごした日々、悪くなかったぜ。フリーザの野郎は俺が足止めする。死ぬなよ──』
「おいピッコロ! 返事をしろっ!」
強制的に通信機を壊したのだろう。何度クリムゾンが呼び掛けても、ノイズが聞こえるだけでピッコロからの返事が聞こえることはなかった。
「……あのバカ野郎。はじめて面と向かって俺を親父と呼んだかと思えば!」
クリムゾンは貴重なコンソールが壊されやしないかとハラハラする通信士をよそに、自身の感情を制御しようと拳を握りしめる。
皮膚を突き破り滴る紅い血が、しばしの間をおいてクリムゾンに冷静さを取り戻させた。
「各基地の特殊保管庫に通達。至急ドラゴンボールを本部まで緊急輸送せよ。これはあらゆる作戦行動よりも優先される。総帥命令だ。急げっ!!」
クリムゾンの命令を受け、レッドリボン軍は慌ただしく動き始める。
風雲急を告げる事態は、地球から穏やかさを瞬く間に奪っていくのであった。
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「……よかったのか、本当に。お前だけでも逃げてよかったのだぞ」
通信機を握りつぶし、うつむくピッコロへ向けてネイルは声をかける。
彼は目の前の才能ある若き龍族であれば、他にいくらでも選択肢があることを暗に仄めかすが、それをピッコロは一笑に付した。
「構わん。ここで逃げ出せば俺は俺としての戦士の誇りを失うことになる。だが子供や老人はせめて逃がそう。俺達が時間稼ぎをすれば、十分可能だろう」
「死ぬことになるぞ」
「お前もな。だが、戦って死ぬなら本望だろう。……すまないな、悟空。決着はつけられそうにない」
「何か言ったか?」
「……いいや。さあ、手早く住民らを避難させてしまおう──もう来たのかっ!?」
ピッコロは怖気が震う感覚を生まれて初めて味わった。
知識として、フリーザという存在が強いことは知っていた。
だが度重なる修行とパワーアップによって、ピッコロは内心どこかで“うまく立ち回れば勝てるんじゃないか”といった考えがなかったわけではなかった。
だが、今間近に迫ってきている気配はその僅かばかりの希望を限りなく打ち砕かんばかりに禍々しく強大であった。
「こ、これほどか……!」
「……倒そうとは思うな。雑談でも何でもいい。俺が乗ってきた宇宙船にみんなが乗り込む時間を稼ぐぞっ!」
ネイルとピッコロはフリーザの宇宙船が降り立とうとしている場所へと気を解放して向かう。
スカウターの存在を知るピッコロは、あえて気配を消して隠れるよりも露骨に存在感を示すことによる威圧を狙っていた。
そしてその目論みは、ある意味では成功していた。
フリーザ自身が最初に宇宙船から降りてくるという最大級の警戒をもってして。
「おやおや、これはこれはどなたかと思えばナメック星人の方々ですね。私の名はフリーザ。この宇宙の帝王を自称させていただいております。どうやら、聞くまでもなく用件はご存じのようですね」
浮遊する卵にも似た玉座に座るフリーザは余裕たっぷりといった様子で側近であるザーボンとドドリアのふたりを引き連れハッチの近くからネイルとピッコロを見下ろしていた。
「残念ながらあなたの目的までは知らないな。だが帝王フリーザの名はこの辺境ナメック星にも轟いている。俺たちはこのナメック星における唯一の戦士だ。あまりに強い力を感じたので、念のためこちらへ向かわせてもらった次第だ。無闇に警戒させてしまったのなら謝罪しよう」
ネイルはピッコロから、交渉は自分に一任しろと言われていたが実際にその様子を見て驚いていた。
かつて最長老を前にしたピッコロからはどこか幼ささえ感じたものだったが、今隣に立つ男からは弁舌でまず状況を有利にしようとしている様子が見て取れる。
「これはご丁寧にどうも。私の目的はこの星にあるというドラゴンボールです。素直に差し出せば、お互い無駄な犠牲を出すこともないでしょう」
フリーザはほんの僅かな稚気を込めて自身の戦闘力を解放する。
その圧倒的で邪悪な気にネイルとピッコロは後ずさりしそうになるがどうにか堪え、それに対抗する為に自身らも今度は本気で気を解放する。
「ほぉ……! 戦闘力45000に、戦闘力78000ですか。すばらしい、部下に欲しいくらいです。どうでしょう、私に忠誠を誓うのならば部下にしてあなた方を生かしてあげてもいいですよ」
ドドリアとザーボンが自身らを上回る戦闘力に驚愕しながらも、それ以上に二人のナメック星人を迎え入れようとするフリーザの態度に焦燥感が募る。
万が一目の前のふたりがイエスとでも言おうものならば、その与えられるポジションは間違いなく自分達の立場だからだ。
「悪いがお断りしよう。それよりもフリーザ殿。
ピッコロはなんでもないように聞くが、その戦闘力は徐々に更なる高まりを見せつつあった。
「皆殺しにします。ドラゴンボールの力が本物であるなら、それを使うことが許されるのはこの宇宙の帝王であるフリーザのみです。有象無象の雑草がごときナメック星人が、万が一にもドラゴンボールを作るようなことがあっては困るんですよ」
ニヤリと笑ってなんでもないように言い放つフリーザ。彼に従うということは、生き残ると同時にナメック星人を皆殺しにする役目を与えられることを示すのだろう。
だからこそピッコロは万感の思いを込めて帝王へと叫ぶ。
「
『ネイル! 俺が時間を稼ぐ! お前は少しでも多くのナメック星人を宇宙船へ連れていけ!!』
「ピッコロ!!」
テレパシーでネイルにそう告げたピッコロは、とうとう全身の気を解放してフリーザ一味へと向かっていく。
狙いはフリーザの首ただひとつ──と見せかけ、ピッコロは八本の指からそれぞれ怪光線を無数に発射した。
「ぐあっ!?」
「ぎゃっ!」
それを受けてフリーザの背後に控えていた上級兵士が頭や首を貫かれて絶命する。
さらには怪光線は彼らのスカウターまで破壊していた。
「でやぁっ!!」
ピッコロの怪光線は止まらない。移動しながら無数に発射される怪光線は一見ランダムに見えながらその実正確にスカウターを破壊していった。
「おのれナメック星人め──ぐあっ! ……しまった! フリーザ様、こいつの狙いはスカウターです!!」
少しでもダメージを減らそうとすでに変身したザーボンは自身も攻撃を受けた際にスカウターが破壊されたことから、不意に全員のスカウターが破壊されているのに気づきフリーザへと警告した。
一方でフリーザは座る玉座を破壊され地上へと降りると、怪光線によって重傷を負ったドドリアを盾にしながらイラつきを隠さず指示を出す。
「……いいでしょう。このフリーザに抵抗するというなら見せつけてさしあげましょう。“格の違い”というものをね……!」
「フ、フリーザ様……ぐげっ!」
フリーザは尻尾で持ち上げたドドリアの首をへし折ると、その死体をピッコロへと凄まじい勢いで投げつけた。
「ぬおっ!」
あまりの勢いにピッコロは攻撃を止め、横っ飛びに回避することでそれを避ける。
「ほぅ、宇宙の帝王自ら俺の相手をしてくれるとは光栄だな……!」
ピッコロはせめてもの強がりとして笑って煽るが、フリーザは冷や汗を流すその様子から微笑ましいものを見るような様子で両腕を広げて構える。
「ザーボンさん。宇宙船をできるだけ離れた場所へ移動させておきなさい。少々、力みすぎてしまうかもしれません……!!」
フリーザは一言告げると、ピッコロへと向かって突撃する。
その圧倒的な速度を目に捉えることもできないピッコロだったが、自身の戦闘経験からフリーザの到達時間を見切り回避に合わせて膝を叩き込む。
──が、圧倒的な力の差というものをピッコロは実感することになる。
「があっ……!」
「ほほほ、失礼。勢いあまってもいでしまいましたよ」
膝からもがれたピッコロの足を無造作に放り投げ、フリーザはにやけた表情を崩そうともせずゆっくりと近づいてくる。
ピッコロは地面へと向けて気功波を放ち目眩ましを起こすと、再生能力によって足を生やし気配を隠して移動する。
「かくれんぼですか? 無駄ですよ」
言うなりフリーザは目から放った怪光線を横凪ぎにして土ぼこりを吹き飛ばすと、その威力によって周囲一帯の岩山までもが消し飛ばされた。
「おや? 少々やり過ぎてしまいましたかね。死体も残らないとは……なにっ!?」
突如として地面から生えてきた手に捕まったフリーザ。ピッコロは彼が呆気に取られた一瞬の隙をついて、そのまま地面へと無理矢理引きずり込む。
ダメージこそないだろうが、帝王を自称する人物が土汚れに晒されるなど屈辱の極みだろう。
ピッコロは途中で目から怪光線を放ち自ら腕を切り離すと、大きく距離を取って念のため再び気を消してその場に隠れる。
「はあ……はあ……はあ……さすがに再生能力の使いすぎだな」
言いつつ、ピッコロは懐から残り二粒の仙豆を取り出すとその内ひとつを口に入れて消耗した体力を回復する。
さらに万が一の為にもうひとつを口のなかに入れておき、ピッコロは地面を割り出てこようとするフリーザへと遠方から狙いを定める。
「かあああああっっ……!!!」
恐らくこの場にフリーザ軍の兵士がスカウターを持っていれば、その急激な上昇によって軒並みスカウターを破壊することができただろう。
ピッコロは自身最強の技を持ってフリーザへと急襲する。
「魔貫光殺砲!!」
螺旋を伴う最強の破壊光線が地上から出てきた直後のフリーザへと直撃する。
確実な手応え。──しかし、その結果は宇宙の帝王の怒りをより刺激するだけの形になった。見た目のダメージはせいぜいボディーアーマーを破壊したのに加えて、軽い火傷を負わせたぐらいだろうか。
ピッコロは彼我の絶望的な戦力差にため息を吐きたくなるが、まだ戦いは始まったばかりだ。
「さあ、せいぜい足掻かせてもらうとするぞっ!」
元大魔王と帝王の激戦は、こうして幕を切って落とされた。
『一生残る恐怖と衝撃でね! 一生残る愛と勇気をね!』←物書きする際にもっとも参考にしていること。
次回に繋げる伏線も大事ですが、やっぱり毎回読んだ際の衝撃(イャンパクト)がないと詰まらないですよね、とまるで週刊漫画のようなことを言ってみたり(´・ω・`)
いやまあそれがどんだけ難しいかって話なんですけどね(苦笑)
あと前回の鳥に似た兵士ですけど、“彼”が死んだとは言われてませんよ。遺書を残しただけです。
複数の思惑が絡むのって楽しいですよね(´・ω・`)
次回は早めに投稿します。