ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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まずはお詫びを(´・ω・`)
なんだか今朝タグ不足で一時運営対象として非公開になってました。今はもう直っていますので、その間読めなかった方ごめんなさいですm(_ _)m
お詫びに今朝書き上げたこちらを前倒しで投稿します。

この小説は皆さんの応援&感想&評価を原動力にしておりますので今後とも応援よろしくお願いします(´-ω-)人

ニュアンスで言葉を探したら案外見つかるもんだなーと思いました(今回のタイトル)




第19話【烈震】

激闘に続く激闘。

 

変則トーナメントであるこの『地球最大トーナメント』の決勝戦は三人が同時に戦うことになる。

 

しかし、その為には残る二人が決着をつける必要があった。

 

二回戦第3試合。ヤジロベー対ピッコロ。

 

概ねの勝利予想はピッコロだが、クリムゾンは潜在能力を解放されてからのヤジロベーを評価しきれず何とも言えない顔をしていた。

 

元々、ヤジロベーは金と食事に釣られて参加した達人である。

 

俗と言ってしまえばそうだが、根が善人である彼の実力がことのほか評価されていたので気がつけば混じっていた感が強い。

 

クリムゾンは今回の戦いで意図的に彼がピッコロとぶつかり合うことを予想して対戦者を組み合わせていた。

 

半端な実力者ほど怖いものはない。現状、仮にフリーザが襲来した際に戦線へ投入できるのはラディッツ、悟空、ピッコロの三人。まだまだ実力を隠している桃白々がそれに準じる形だろうか。

 

他の面々は正直対フリーザと相対するには半端すぎた。最悪、なぶり殺しにされるだろう。

 

であるならば、まだ見ぬフリーザ軍が地球へ襲撃してきた場合に備えて待機させておいた方がよほどいい。

 

クリムゾン自身、この戦いは再び戦士らを篩にかける意味もあるのだ。

 

……桃白々などは気づいているようで、敢えて実力を抑えたようだが。

 

この戦いはヤジロベーという未知の強者がピッコロという現時点での最強戦力相手にどこまでやれるかの試合でもあるのだ。

 

そんな風にクリムゾンが考えていると、闘技場の上にヤジロベーとピッコロが並び立った。

 

すでに試合は始まっている。あとは、二人がどう開始するかだ。

 

「使え、ヤジロベー」

 

ピッコロはいつの間に持ち出したのか、手にしていたヤジロベーの刀を彼に向かって放り投げる。

 

ヤジロベーはそれを無造作に受けとると、どうするべきかクリムゾンへと視線を送った。

 

痩せてからの彼の外見は、いわば流浪人のようなものだ。着流し姿は変わらないが、身長などは20センチ以上伸びている。以前の姿を知っている人間からすれば完全な別人である。

 

「貴様に斬られようと俺なら再生できるから心配するな。いいだろう、親父」

 

衆目で父親として呼ばれたクリムゾンは、自身をして見きれぬヤジロベーの実力を警戒し止めるべきかやらせるべきか迷う。

 

そこへ、ラディッツの助け舟が入った。

 

「クリムゾン、やらせてやれ」

 

「ラディッツ! しかしだな……」

 

「首から上さえ無事なら復活できるピッコロは実質不死身のようなものだ。ま、それ以上に気を消耗してしまえばそれまでだがな。俺をがっかりさせるなよ、ピッコロ」

 

ラディッツはピッコロが万が一にも死なないことを強調しつつ、自分を負かしたピッコロがまさか負けはしないだろうなと発破をかける。

 

「あたりまえだ」

 

ピッコロはニヒルに笑いつつ重りとなっているマントとターバンを外す。日々重量を増す二つの装備は重い音を立てて闘技場の床にめり込み、それをヤジロベーが興味無さそうに見つめる。

 

すると、これまで無言だった彼がようやく口を開いた。

 

「……正直興味はにゃーけど、刀を使っていいならちゃっと終わらせるぞ」

 

クリムゾンはヤジロベーの口調がこんなに訛っていただろうかと首を傾げ──その間に両者の位置が移動していた。

 

「ぐむっ……!」

 

「ふむ……」

 

驚くことに、ピッコロは右腕を切り落とされていた。

 

対するヤジロベーも、肩を打たれたのか着流しを破かれ打たれた部分が赤黒く腫れ上がっている。とてもではないが普通なら両者ともに戦えはしないだろう。

 

「ぬおあっ!」

 

「よっと」

 

ピッコロは切り落とされた腕を再生させ、ヤジロベーは何をしたのか砕けたはずの腕をぐるぐると回すと赤黒く変色していた部分が元に戻っていた。

 

この何事にも興味がなさそうで、それでいて底が掴めない態度。それこそがクリムゾンの警戒する理由でもある。

 

食欲の減衰したヤジロベーは目に見えて無欲になった。行住坐臥(ぎょうじゅうざが)全てにおいて虚空を見つめるような態度ではどこに意識があるのかもわからない。

 

欲があるならばいい。食事でも、金でも、女でも。クリムゾンとて一線は譲らないがあらゆるものを与えてやれるだけの力がある。しかしかつてはあったであろうそれが、今のヤジロベーにはないのだ。

 

何も必要ではないということは、あっさり何もかもを捨ててしまえるのと同じことだからだ。無欲こそ、最も恐ろしい感情なのだ。

 

そして試合は再び動き始める。

 

「うわたぁっ!」

 

ピッコロが気を解放し、白い炎のようなオーラを全身に纏いながらヤジロベーへと突っ込む。

 

クリムゾンが知る限り本気の二歩手前といった状態であり、この時点でピッコロの戦闘力は推定1000万を凌駕しているはずなのだ。

 

だが、ヤジロベーはそれを回避している。もちろん見てからではない。ピッコロの動きを予想しているのだろうが、それとて圧倒的な力の差があれば体が反応についていかないはずである。

 

そう、まるで約束稽古を淡々と消化するようなその様子に、クリムゾンは怖気を覚える。

 

そして予想通りの解析結果を、これまで戦士らの戦いを分析してきた義眼のハイパースカウターが報せる。

 

レッドリボン軍本部にあるスーパーコンピューターとも繋がったこの義眼は、クリムゾンが捉えた戦闘をスーパーコンピューターへ送り解析。判明した詳細をクリムゾンの脳へと直接届ける。

 

それによってクリムゾンが知ったのは驚愕の事実だった。

 

「誘導、されているのか……」

 

「そのようだな……」

 

クリムゾンとラディッツはそれぞれ義眼と肉眼の違いはあれど、ヤジロベーの隠した実力に本気で戦慄していた。

 

ラディッツなど、相性の問題からまともに戦えばヤジロベーに勝てないのではと思い始めている。それほどに驚異的だったのだ。

 

そんな二人の驚愕と同じかそれ以上の衝撃を受けているのはピッコロとて同じだ。

 

所詮地球人と侮っていたわけではないが、これほどの実力を隠していたなどとは思わなかった。

 

ピッコロは一向に当たらない攻撃を一度諦め距離を取ろうと下がるが、それをヤジロベーは許さなかった。

 

バックステップする動きに合わせるようにするすると動くと、今度は自ら刀を縦横無尽に振るう。

 

ピッコロも今度は回避に専念しているのか、細かい傷をいくつも負いながらも先程のような致命的な一撃は貰っていない。

 

それでも追い詰められつつあるピッコロは、遂に心臓にあたる位置をヤジロベーの刀に貫かれてしまう。

 

「ピッコロっ!!」

 

クリムゾンは思わず立ち上がり叫ぶが、ラディッツはむしろよくやったと言わんばかりに笑んでいた。

 

「……ぐっ、ようやく掴まえたぞ!」

 

胸を貫かれながらも、刀を尋常ではない握力で掴み押さえ込むピッコロ。

 

ヤジロベーの戦法は何らかの方法で異常に切れ味を増した刀による攻撃と、相手の動きを誘導することによる回避術だ。

 

ならばとピッコロはあえて返す刀につっこんで自らの肉体でその動きを固定したのである。

 

それでも刀が刺さる場所を、咄嗟に心臓へと調整するヤジロベーの超絶技能は心肝寒からしめるものであったが。

 

半不死のピッコロだからこそ取れる戦法である。

 

そして刀を抜くことも退くこともできなくなったヤジロベーの眼前にピッコロの貫手が突き出された。

 

「おまえの負けだ」

 

「おれの負けだな」

 

ヤジロベーはあっさりと自らの敗北を認めると、ピッコロからさっさと刀を抜き去り、どこから取り出したのか仙豆をその口に放り投げる。

 

「食っとけ」

 

ヤジロベーはピッコロの紫の血で汚れた刀を懐紙で拭うと、それをしまって闘技場から去っていった。

 

__________________________________

 

 

いよいよ決勝戦のときがやってきた。

 

すでに闘技場にあがっている三人は油断なく対戦相手であるふたりを警戒している。

 

悟空は重りのない胴着を着た状態で笑みを浮かべ、ピッコロも同じく重りとなるマントとターバンを外し指の関節をポキポキと鳴らしている。

 

クリリンもなにか秘策があるのか、密かに気を高めながら悟空とピッコロの両者どちらをも警戒していた。

 

最初に動いたのはピッコロだった。

 

彼は滑空するように構えながら闘技場を低空飛行すると、おもむろにクリリンへと向かって飛び上がり連続の蹴りをお見舞いする。

 

「わっと!」

 

クリリンは表面上慌てて避けているように見せながら、自身の仕掛けを発動するタイミングを計りピッコロと同じように闘技場の上を滑空していく。

 

そして射線が重なった両者へ向けて、悟空がいきなり大技を繰り出した。

 

「波ぁっ!!」

 

悟空の掌から放たれた極太のかめはめ波がふたりを襲う。

 

ピッコロは最小限後ろに下がることでそれを避けるが、クリリンは驚くことにその場に留まった。

 

「かめはめ波返し!」

 

するとどういうことか、両の掌を構えたクリリンに直撃したはずのかめはめ波は悟空へと向かって跳ね返っていく。

 

「いいっ!?」

 

驚いた悟空は自分が放ったときよりも勢いを増したかめはめ波を界王拳を発動してなんとか避ける。

 

通りすぎたかめはめ波が闘技場の壁を大きく破壊し、カメラロボを数機破壊する。

 

「うあたぁっ!」

 

大きく回避した悟空の隙を逃すピッコロではなく、界王拳を発動した悟空へ向かって自身も気を解放して向かっていく。

 

ラディッツとの戦いを思わせる雷鳴がごとき衝突音が鳴り響くなか、クリリンが仕掛ける。

 

「そぉれ!!」

 

闘技場の床に手を置いたクリリンに合わせるように、闘技場の床から紫電が迸る。

 

萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)!!」

 

満遍なく床に浸透した己の気を利用し、効果範囲を最大限に広げた気を応用して発生した電流が悟空とピッコロを襲う。

 

「ぐあぁうっ……!」

 

「うあっくっ……!」

 

電流にまかれ動きを止める二人。手を離してもある程度持続するのか、クリリンは両手を上にあげて気を高める。

 

「はああ……! 気円縛!」

 

人造人間12号をも無力化した拘束用の技がふたりに放たれる。例え長時間持続できなくとも、ふたりを倒してしまえばそれだけでクリリンの勝利となる。

 

「く、くそぉっ!」

 

「こんなものでっ!」

 

しかし抵抗も空しく、ふたりは電撃で動けない間に拘束されてしまう。

 

「よっしゃあ! 大金星だぜ!」

 

クリリンの気は緩んでいない。勝利の雄叫びも冷静な思考を伴わせた挑発じみたものである。

 

“こんなもので終わるお前達じゃないだろう”と。

 

「界ぃぃぃ王ぉぉぉぉ拳んんッッ!!!」

 

「大魔王の本気をおがませてやる……!!」

 

悟空は叫びながら己の上限である10倍界王拳を。

 

ピッコロは集束した気を限界突破させ全身に纏い輝かせる。

 

「……へへっ、そうこなくっっちゃ」

 

クリリンは解放された圧倒的な気に吹き飛ばされながらも、満足げな表情をして背中を地面に付けた。

 

クリリンの敗北を視界の端で確認したふたりは、対面するお互いの様子を見て笑みを浮かべる。

 

「強くなったな、孫」

 

「おめえもな、ピッコロ」

 

互いに万感の思いを込めた言葉。しばしの静寂の後、空気を()ぜさせぶつかったふたりの衝撃波により闘技場の八割が吹き飛んだ。

 

「はああああああっっ!!」

 

「かああああああっっ!!」

 

どちらも天才。気の量、戦いのセンス、タフネス。サイヤ人とナメック星人の歴史上においても若くしてこれほどの力を振るった者は存在し得なかった。

 

それほどの力を持った二人が全力でぶつかり合う。レッドリボン軍の人工島の耐久力はすでに限界を迎えていた。

 

なおクリリンは手早くラディッツに回収され避難している。

 

「ク、クリムゾンさん……! これってちょっと不味いのでは……!!」

 

アナウンサーが鳴動する人工島の様子に怯えながらクリムゾンに問いかけるが、そのときにはすでにクリムゾンは避難の指示を出していた。

 

「全職員に緊急避難命令を通達! 島が崩壊する可能性も考えろ!!」

 

インカムをつけ部下に指示を出すクリムゾン。観客はおらず、この人工島施設には試合を円滑に進めるための施設修繕スタッフなどが勤めるのみだったのが幸いし、避難は迅速に処理されていく。

 

離れた場所からモニターで試合を観戦していた達人らもそんな避難を手伝うように動くなか、ふたりの激戦はさらにボルテージを上げていっている。

 

「だだだだだだっっ!!」

 

「ららららららっっ!!」

 

悟空が両手から連続でかめはめ波を繰り出せば、ピッコロもそれに負けじとエネルギー弾を連続で発射する。

 

しかしピッコロのそれは大半が悟空のかめはめ波を弾くように放たれ、いくつかは悟空へ向かうでもなく明後日の方向へ飛んでいく。

 

悟空はそれに気づいていたが、ならばと畳み掛ける為に一度気を溜める構えを取る。

 

そして──自身の周囲に無数に浮かんだエネルギー弾を発見した。

 

「うあっ……!」

 

「気づいたか? だが遅いっ! 魔空包囲弾!!」

 

ピッコロが両腕をクロスさせるように閉じる動きに従ってエネルギー弾が次々と命中していく。

 

いかにサイヤ人として規格外のタフネスを有しているとはいえ、これには悟空も一溜まりもなかった。

 

しかし、悟空は追い詰められれば追い詰められるほど強くなろうとする人間である。

 

「界王拳……!! 20倍だああああ!!!」

 

臨界突破の界王拳による気の奔流が、悟空を囲み降り注ぐエネルギー弾を誘爆させて一掃する。

 

「さすがに体が持たねえ……! これで決めるぞピッコロ!!」

 

「ふん……! 来い!」

 

両者が取った構えは互いに両の掌を開いたもの。

 

ただし悟空はそれを腰だめに構え、ピッコロは臍の前辺りで指を合わせるようにして構える。

 

両者の高まる気が、周囲の海に竜巻を生み出す。雷霆(らいてい)が海面を舐め、地鳴りのような音が周囲の音を埋め尽くす。

 

「……ラディッツ。この島、結構金かけたんだけどな」

 

「……愚弟がすまん」

 

最後まで残ったクリムゾンはラディッツに抱えられながら島から離れていく。

 

そしてふたりが離れるのに合わせるようにして、悟空とピッコロそれぞれの必殺技が放たれた。

 

「かめはめ波!!」

 

「激烈光弾!!」

 

ふたつのエネルギーの極光が、レッドリボン軍所有の島を飲み込んでいく。

 

その後、海にぷかぷかと仲良く浮かんで気絶していたふたりはクリリンに回収されるのであった。

 

 




ヤジロベーの変化後は完全に別人で考えてます。あの色合いの着物着たルパンの五右衛門で想像してください(´・ω・`)ダレダコイツ
あ、それと彼の個性が半ば消滅したので無理矢理名古屋弁喋らせてます。こちらのサイトを使わせていただきました→http://www.8toch.net/translate/

そしてクリムゾン総帥、やらかしたのはあんたの息子もやで……
と書いてて思いました(笑)

今回神コロ時の技を使いましたが、それは単純に自分があの技好きだからです。特に魔空包囲弾。ゲームで使いまくりましたわ。

いやにしても今朝はほんとビックリでした。とりあえずタグは最小限にしようと思っているので、なにか必要そうでしたら教えてください。考えて対処します。

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