ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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にわめー(´・ω・`)

今回はブルマとクリムゾンの交渉がメイン。

その内ドラゴンボールの願いがどこまで叶うのか? といった部分も考察したいですね。


第2話【交渉】

リノリウムの床材が敷かれた一室に通されたクリムゾンは目的の人物が部屋にやってくるのを待っていた。

 

カプセルコーポレーション会長であるブリーフ博士手ずから入れてもらったコーヒーは美味く、芳醇な香りとコクが疲れた体に染み渡る。

 

そうしてしばらくすると、自動ドアが開いて警戒心バリバリの男女が部屋へと入ってきた。

 

後ろの長髪の青年は知らないが、青い髪をポニーテールに纏めた目の前の少女がブルマだろうと、クリムゾンはあたりをつける。

 

「わざわざお時間をいただいてすいません。今日は私のお願いを、せめてお話だけでも聞いてくださればとお呼びだしさせていただきました」

 

「……それで、レッドリボン軍の新総帥がわざわざこんな美少女を捕まえて何が頼みたいっていうの」

 

辛辣なブルマの言葉ではあったが、無理もなかろう。笑顔で彼女の言葉を受け止めるクリムゾンであったが、少なくとも話を聞いてくれるつもりだとわかってひと安心していた。

 

なにせレッドリボン軍の評判は最悪。世界最悪の軍隊としてその名が知られ、これまでの悪行から名前を聞いただけで震え上がる一般人も多い。

 

「これは手厳しい。とはいえあなたのような美少女に睨まれるのは男として実に心苦しいところです。我がレッドリボン軍が繰り返してきたこれまでの悪行を否定はしませんが、私が総帥となった以上()()()()()そうはならないよう努めたい。それは、わかっていただけますね」

 

クリムゾンが向けた隻眼より迸る僅かな殺気を感じて、ブルマの後ろに控えていた青年ヤムチャが俄に警戒し出す。

 

「はは、まあそう警戒なされずに。こんなところで何かしたりはしませんよ」

 

両手を前に出し、降参するようなおどけた仕草でヤムチャを嗜めるクリムゾン。

 

ヤムチャは、そんな目の前の人物を相手に自分がどこまで対抗できるかを冷や汗を流しつつ考えていた。

 

「今回私がここに来たのは、まず質問がしたかったのです。ブルマさん、あなたはドラゴンボールを知っていますか?」

 

その質問をした瞬間、明らかにふたりの体が強張った。

 

嘘をつけない人種というのはいるが、こうもわかりやすい辺りこの二人は心底善人なのだろうと、クリムゾンは少々羨ましくなりながら微笑んだ。

 

「ご存じのようですね。我がレッドリボン軍では、近々軍をあげてドラゴンボールの捜索をしようと考えています。ですが、当軍におけるレーダーの精度はあくまで大体の座標がわかる程度。今現在、もし無理に探そうとすればそれなりに無茶をせざるを得ないでしょう。……例えば、現地の村人を何人か殺して無理矢理作業させるとか、ね」

 

そう言った瞬間、飛びかかりそうになったヤムチャをブルマが手を上げて制する。

 

「お願いじゃなく、脅迫しに来たのかしら?」

 

あくまで屹然と。怯えながらも自分に堂々と意見をする目の前の美少女にクリムゾンは嬉しい気持ちが溢れてくる。

 

“この少女を屈服させ、組み敷いて凌辱するのはどれほど楽しいのだろう”と。

 

だがそんな内心はおくびにも出さず、クリムゾンは変わらぬ笑顔で答える。

 

「ですから、()()()ですよ。あなたが持っていると思われる、高性能のレーダー。それを貸与させていただきたい。勿論、対価は支払います。金銭的な対価で世界一のお金持ちであるあなたを満足させられるかはわかりませんが、なんなら珍しい鉱物や生物でもいいですよ。ああ、我が軍お抱えの科学者でもいい。彼らの中には()()()()家に帰れない人も多々いますので……」

 

「……最低の悪党ね。いいわ、貸してあげる」

 

「ブルマッ!」

 

「いいのよ、ヤムチャ。どうせここで私が断れば、罪もない人たちが苦しむことになるわ。ただし条件は貴方達が捕らえた科学者達全員の解放よ。それが飲めるのかしら?」

 

ブルマはせめて少しでも無茶な条件を突きつけようと強気に睨む。

 

「飲みましょう。私の父が命令して連れてきた科学者達や、何らかの理由で無理矢理働かされている連中は全員解放しましょう。なあに、ドラゴンボールを簡単に手に入れられるというなら安いものです」

 

クリムゾンはコーヒーの残りを飲み干すと立ち上がる。ヤムチャは思った以上に完成されたその体格にわずかに怯む。

 

「坊や、世の中には理不尽なことがたくさんあります。どうかもっと鍛えてください。私が警戒してしまうくらいにね」

 

ヤムチャは自分が完全に呑まれてしまっているのを自覚していた。だがもしもの場合にはせめて盾になろうと覚悟まで決めていたが、そんな覚悟を見越してかクリムゾンは優しく彼の肩を叩いて部屋を出ていこうとする。

 

「ねえ、クリムゾン。貴方はいったいドラゴンボールに何を願うの……?」

 

ブルマの質問に、クリムゾンは少々考える。答えるべきか、否か。

 

「……そうですね。ドラゴンボールで世界征服、なんてくだらない目的じゃないことは確かですよ。──そう、俺が欲しいのは知識。不足の事態に備えるための、先の知識が欲しいんだ」

 

そう言って、初めて素で話しかけ振り向いたクリムゾンにブルマは一瞬目を奪われる。警戒し対峙していた時は感じなかったが、目の前の青年は間違いなく美形。それも超一級の端正な顔立ちだったからだ。

 

「それでは、レーダーは後に部下が受け取りに来ます。くれぐれも後になって駄々をこねぬようお願いしますよ。それでは」

 

ブルマはやや熱くなった頬を冷ますように手で扇ぎながら、ドラゴンレーダーにある仕掛けをする決心を固めた。決してあの男に興味が湧いたわけではないと自分に言い訳をしながら。

 

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専用の防弾リムジンに乗りながら、クリムゾンは備え付けの冷蔵庫から高級ウイスキーのグレンフィディックをグラスに注ぎ微笑む。

 

「そのご様子では、交渉はうまくいったようですね」

 

リムジンを運転するブラック補佐は、後ろの席で酒を飲む唯一無二の総帥に話しかける。

 

「ああ、ひとのいいお嬢さんで助かったよ」

 

クリムゾンは交渉がうまくいったことを祝いながら、ひとり杯を呷る。

 

焼けつくような熱さが喉から胃の腑に落ちていき、鼻から抜ける薫りが彼に満足感を与えた。

 

「だが全てはここからだ。我々の今後の為にも、な」

 

「はい、委細承知しております」

 

その後ブラック補佐は、カプセルコーポレーションにレーダーを受け取りにいかせる部下としてブルー将軍を指名した。

 

ブルー将軍自身は以前クリムゾン総帥に格闘戦で負けてから異常な執着を見せており、叛逆の際にも誰よりも早くクリムゾンへの支持を表明した幹部のひとりであった。

 

その熱狂的な様子から自分に対して否定的な考えを持つブルマの元へ向かわせるのをクリムゾンは躊躇ったが、ブラック補佐から一言激励してやれば滅多なことはしないだろうとのことだったのでそれに従うことにした。

 

その際にブルー将軍とバイオレット大佐の間でひと悶着あったりするのだが……ここでは割愛する。

 

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ブルマ特製のドラゴンレーダーはドクターゲロをして唸らせる代物だった。

 

“ここまで小型化できるものか……”とは彼自身の言葉である。

 

またドラゴンレーダーを貸与される際にブルマからいくつか条件が出された。

 

というのも、当然だがクリムゾンは小型のドラゴンレーダーをドクターゲロに解析させるつもりであったが、ブルマから“分解したら木っ端微塵に爆発するようにしておいた”と言われて断念せざるを得なかったのだ。

 

また、捜索期間も限定された。期限は一ヶ月。その間に集まらずとも小型ドラゴンレーダーを返却するよう契約を交わした。

 

そしてブルマから小型ドラゴンレーダーを貸与する為の条件である科学者達の解放は速やかに行われた。

 

元々父親が進めていた誘拐行為であり、なまじ反抗的な人間を内部に無理矢理入れればそれは後に災いの種となるとしてクリムゾンは徹底的にこれらを解放し、場合によっては金銭による補償までした。

 

なお、これほどまでに彼が金銭的余裕があるのは彼が元々レッドリボン軍のフロント企業を取りまとめる立場にあり、そこから組み上げた資金を資産としてプールしていたからである。桃白々への依頼料もここから出ていた。

 

「と、いうわけで。ドラゴンボールの探索は迅速に行う必要がある。そこで少数精鋭での行動とすることにし、適宜状況に従って軍の援護を求めるものとした。何か質問はあるか」

 

クリムゾンは真紅のマントをはためかせ、目の前に集められた三人の男女へ問いかける。

 

「一つよろしいでしょうか」

 

「言ってみろ、バイオレット」

 

「なぜ同行するメンバーに()()がいるのでしょうか」

 

クリムゾンに発言を許された紫色の髪をしたショートヘアの美女バイオレット大佐は、わざとらしく睨みながら自分の横にいる軍服姿のブルー将軍を指差す。

 

「ちょっとあなた、仮にも上官に向かってその態度はないんじゃない?」

 

「私は総帥直属だから准将の貴様と身分差はない。それで、総帥。お答えいただけますか」

 

クリムゾンはなぜ浮気した言い訳をするような雰囲気になっているのかと疑問を抱いたが、それを口にすると非常にややこしい事態が待ち受けている気がして言葉にはしなかった。

 

ちなみにこの二人は忠誠心以上に能力的に軍において最も優秀な人員である。ブルー将軍はかつてクリムゾンに敗北して以来肉弾戦で最強と呼ばれるまでに体を鍛えたことから、今回総帥の護衛として抜擢されている。

 

バイオレット大佐は情婦である以上に情報処理能力に優れ、ドラゴンボール探索において無駄を無くすための参謀としての役割を期待していた。

 

「今回は迅速な行動が必要であるがゆえに、チームワークといった都合のいい言い訳は考慮していない。あるとすれば、それはスタンドプレーから生じるチームワークだけだ。よって今回は個人としての能力が優秀な人物を選抜した。他に疑問はあるか」

 

バイオレットは情婦でもある自分への味方となってくれることを期待し、ブルー将軍は立場を優先してくれると考えたが、クリムゾンの冷たい視線に両名共に黙りこむ。

 

「俺は、どうすればいい」

 

そう言って口を開いたのは、身長2メートルを越える大男。目元から頬にかけてと、額の右半分にかけて継ぎ合わせたような傷跡が特徴的だ。

 

話し方はどこか朴訥そうな雰囲気だったが、彼こそはレッドリボン軍の頭脳ドクターゲロによって開発された人造人間8号だった。

 

「ハチ、お前は荷物持ちだ。パワーがあるのは聞いているが、戦闘にはとても向かない性格だとも聞いている。よって、お前を戦闘に参加させるつもりはない。なに、伝説のピッコロ大魔王でも出てこない限り出番はないさ」

 

クリムゾンは冗談めかして人造人間8号をハチと呼ぶ。そのことにドクターゲロは難色を示したが、クリムゾンは“毎回フルネームで呼ぶのは面倒だ”と一笑に付した。

 

「わかった」

 

人造人間8号ことハチはどこか嬉しそうに微笑む。クリムゾンはしかしそのことには構わず、各員の装備を確認する。

 

「基本的には大型のジェットで移動するから、その場その場で装備を整え迅速にドラゴンボールを回収する。場合によっては深海に行かねばならない可能性もあるだろう。……さすがにマントルの中にまでは行っていないと思うが。その場合にはまた別で対策しよう。ひとまずは発見を優先し、困難な場合には場所を本部へ報告する。では行くぞ!」

 

「「はっ!」」

 

「わかった」

 

そうしてドラゴンボールの捜索が始まった。一ヶ月という短い制限を設けられて。

 

 

 




ブルマとクリムゾンの交渉はまあ、彼女の性格を知っていればある程度手段の予想はつきますよね。というかアニメの悪役によくある失敗が相手の性格をまともに調べもしないで失敗するパターンてありますよね。まあ王道展開ですが。今回はそこをある意味ついてみました。えげつねえ展開ですが(笑)

人間関係の描写がまだまだ足りませんが、今回は展開の早さを優先して書いておりますので。まあそれとなくは書いていきますので。


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