ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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まだまだ続くよベジータ編!

ということで今回後半から例のごとく回想シーン突入。バトルは短いです。

うーむ、ワンピース化しないように気を付けねば( ̄▽ ̄;)

そしていつも評価&応援していただきながら、今回の感想返す前に更新で申し訳ないです。皆さんからの感想への返事を書くのも楽しみなので、後で書かせていただきますね。

それでは本編をどうぞ。


第22話【複製】

シュウシュウと炎のように吹き上がるラディッツのオーラを受け、べジータは思わず怯んでいた。

 

“ありえない”と。

 

「ぐおっ!?」

 

腹部へ衝撃が走り、大きく吹き飛ばされるべジータ。岩山をいくつも破壊し、ようやく自分が殴られたのだと自覚する。

 

「ぐうっ……!? お、おのれぇラディッツ! 王であるこの俺になんたる不敬なぐおぁっはあ……!!」

 

「ああああっ!!」

 

喋りだした最中追撃に来たラディッツに顔面を殴られ、べジータの舌が切れる。

 

口中に広がる鉄錆びの臭いを味わいながら、べジータは必死に己の困惑と戦っていた。

 

(ありえん……! ありえんありえんありえん!! 伝説の(スーパー)サイヤ人は王族であるこの俺のみのはず! こんな、下級戦士の男が俺の領域にまで侵略してくるなど……!!!)

 

内心で葛藤を続けながらも、べジータの全身は滅多打ちに殴られ続ける。

 

臨界を越えたラディッツの怒りが、肉体のリミッターをも外していた。

 

──だが。

 

不意にラディッツの連打が受け止められる。

 

「下級戦士がぁ……! あまり調子に乗るんじゃないっ!!」

 

べジータは捉えたラディッツの両拳を掴んだまま、器用に爪先でラディッツの顎を蹴りあげる。

 

通常時であれば首から上が吹き飛びかねない威力の蹴りに、怒りで半ば理性を失っていたラディッツは正気を取り戻してしまう。

 

「ベ、ベジータァ!」

 

それでもラディッツは食い下がり続ける。彼自身、わかっているのだ。今の状態がそう長く続かないことくらいは。

 

だが止まれない。止まらない。

 

この状況を作り出す為に自ら命を絶ったクリムゾンの為にも。

 

そして今度こそ家族を守るためにも。

 

「このまま腕をへし折ってやるぜ……!!」

 

「ぬがあっ……!」

 

ねじあげられた腕がミシミシと鳴り、肘の関節が悲鳴をあげる。激痛に次ぐ激痛。ここまで何度も仙豆で回復できたとはいえ、ラディッツの限界は近い。

 

故に後のことなど考えない。ラディッツは抑えられた両腕が折れるのにも構わず、むしろ固定されたことを利用して全力の頭突きを食らわせる。

 

「がああっ!!」

 

「ぐあっ!」

 

ベジータの形のいい鼻梁が潰れ、鼻血が溢れる。

 

予期せぬタイミングでの反撃による一瞬の混乱。

 

ラディッツは頭突きを止めない。すでに腕がおかしな方向にねじ曲がっているが、獣のごとく唸り声をあげてベジータの顔面を自らの額で叩き潰さんと頭を振り続ける。

 

「この……! くそったれがあっ!!」

 

ベジータは一思いにラディッツの両手を握り潰して拘束から逃れると、思いきり胸へと向かって蹴りを入れる。

 

ボキボキとラディッツの肋骨が折れ砕け、肺に刺さったのかラディッツが吐血する。

 

ベジータは鼻血を出したまま忌々しげにラディッツを見下ろすと、自身最大の技であるギャリック砲を繰り出す動作に入った。

 

「頭に来る野郎だぜ! もういい、この星も貴様も! まとめて宇宙の塵にしてくれるっ!!」

 

高まるベジータの気に、戦いの様子を見ていたクリリンや天津飯らの間で絶望の雰囲気が広がる。

 

しかし、このタイミングを狙っていた男がいた。ベジータにとって、獅子身中の虫であるひとりの男が。

 

「ぐあっ……! な、なにぃ!?」

 

咄嗟に避けるも、リング状のエネルギー波がベジータの脇腹を抉る。

 

ベジータは下手人を見て驚き、思わず高まった気が霧散しかける。

 

「ターレス……! きさまぁ!」

 

「今だ! カカロットォ!」

 

ターレスの合図に従い、ヤムチャによって最後の仙豆を与えられ回復していた悟空が、ラディッツによる戦いの間準備していた元気玉を振りかぶる。

 

「飛んでけえええっ!!」

 

この場にいる戦士達と桃白々の協力によって作られた、“超元気玉”とでもいうべき高密度のエネルギーがベジータへと向かっていく。

 

ベジータはそれに対抗しようとギャリック砲を撃とうとするが──全ては遅かった。

 

「ぐおおおあああああああ~~~~~っっ!!!!!」

 

直撃に伴い、ベジータはまるで津波に呑まれたかのように全身をひきつらせ、悲鳴をあげながら稲妻に囚われたかのようにジグザグに飛んでいく。

 

もはや悲鳴か断末魔かわからないほどの叫びと轟音の果てに元気玉が消滅し、エネルギーから解放されたベジータが高所から落下してきた。

 

さしものベジータも、まるで動かない。その様子に死んだことを確認しようとヤジロベーが近づき──起き上がったベジータの反撃を受け刀を折られ吹き飛んだ。

 

「……ぜぇ、がっ、ひゅ……! き、きさまら~!」

 

片目が潰れ、正しく満身創痍ではあったがベジータは生きていた。……それも風前の灯火ではあったが。

 

ベジータは気づいた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お……! おお……!!」

 

叫ぶこともできない。なぜなら、次の瞬間には全身を桃白々の指拳が打ち据えたからだ。

 

「無駄だ。いかに貴様にありあまるパワーがあろうとも、その技は貴様の“気”そのものを利用してその身を縛る。どれだけ抵抗しようとも痺れるだけよ」

 

「では念のため残りの手足も折っておこう」

 

ヤムチャによる回復により復活したボラが、無造作にベジータの手足を無茶苦茶な方向へとへし折っていく。

 

「ぐが……! が……!」

 

まるで捕らわれた標本のように無惨に扱われるベジータを見て、ナッパは状況についていけず焦っていた。

 

目の前には消耗したとはいえヤムチャと呼ばれる男によって復活したナメック星人が立ちはだかっている。

 

“動けば殺す”と言わんばかりに睨み付けるその様子からはむしろ動くことを期待しているようにすら思える。

 

ナッパは過去を振り返る。そう、全てはたった今ベジータを裏切ったターレスというサイヤ人の生き残りに出会ったことから始まった。

 

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そこがどんな惑星だったか、ナッパもベジータも覚えてなどいない。

 

ただ、情報にあったのと比べて()()()()()()()()だというのが気になっていた。

 

「なあベジータ、馬鹿でかい木があるだけだぜ。本当にこんな星に価値があるのか?」

 

「……さあな。稀少な鉱物資源でもあるのか……ん? スカウターに反応があるぞ。なかなかの戦闘力だ。丁度いい、奴等からこの星のことを聞き出すぞ」

 

「へへっ、荒っぽくな!」

 

そうして二人は出会った。フリーザ軍に一応は所属しながら好き勝手に動く愚連隊。

 

クラッシャー軍団と。

 

「お前はベジータ……! なぜこんなところに!!」

 

同じくスカウターを見て警戒していたのであろう。

 

五人ほどの集団の中心にいたネックレスをした男ダイーズがその姿を見て驚く。

 

「んん? 俺を知っているとは……その格好を見るに貴様らもフリーザ軍か。けっ、せっかく戦闘力の高い連中がいたかと思えばご同輩かよ」

 

ベジータは下手に喧嘩を売るわけにもいかず、渋々昂った感情を抑え込む。

 

「だがこの星を侵略するのに他の部隊を動かすなど聞いていないぞ。それに前情報とは随分と星の様子も違う。なにか知っているなら話してもらおうか」

 

そう言ってベジータは好戦的な笑みを浮かべる。

 

焦ったのはクラッシャー軍団達だ。

 

この星を苗床に選び、今日まで育ててきた神聖樹。その実を食すのがここにいるほぼ全員の望みでもある。

 

「……ンダ」

 

「……ああ、わかっている。なあベジータ、ひとまずターレスを呼んでくるから待っててくれないか? あんたらと同じサイヤ人で、俺達のボスなんだ」

 

唯一神聖樹の実を食すことを望まない、望んでも食べることのできないサイボーグ戦士のカカオが、ベジータ達の相手をするダイーズへと警告する。

 

ダイーズは小さくわかっているとだけ呟くと、ひとまず自分達のボスを事態に巻き込もうとベジータへ提案しだした。

 

「サイヤ人だと? ラディッツとナッパ以外に生き残りがいたのか」

 

「ああ、少し特殊だがな。戦闘力でいうなら、あんたと変わらないくらいには強いぜ」

 

「馬鹿な、純粋なエリートサイヤ人は王族である俺とこのナッパ以外にはいない。仮に多少強かったとしても、この俺と変わらないなどとは、冗談キツいぜ」

 

ベジータはダイーズの言葉を一笑に付す。サイヤ人のエリートとは、すなわち王族の血を引くものである。大猿化を制御できる血を持つものがサイヤ人のエリートであるのだ。

 

しかし対面するダイーズの表情に浮かぶどこか余裕じみた顔色はベジータに一抹の不安を抱かせる。

 

「……随分と騒がしいから来てみれば、これはこれはサイヤ人の王子ベジータ様じゃないですか。俺の名はターレス。見ての通り、こいつらクラッシャー軍団をまとめている。……それで、かつての王族が俺達みたいなチンピラ相手に何用で?」

 

慇懃無礼に、自信に満ちた足取りでターレスはベジータへと近づいてくる。

 

旧型のバトルジャケットよりも更に古い肩当ての大きなタイプをつけたサイヤ人の男の容姿は、どこかもう一人の生き残りであるラディッツを彷彿とさせた。

 

「貴様はラディッツの血縁者か?」

 

ベジータの素直な疑問にターレスは一瞬奇妙な顔をするも、隠し立てすることもないと真実を告げる。

 

「ラディッツ……確かバーダックの子、だったな。血縁者といえばそうだが、正確には違う。俺はサイヤ人といっても、元々クローンなのさ。そのバーダックのな」

 

かつて、ツフル人によって恐ろしい試みが行われたことがあった。

 

それは戦闘民族サイヤ人を生体兵器として利用しようと試みたもの。

 

戦士として優秀な能力を持つサイヤ人を選別しクローニング。

 

予め脳に処置をして自分達ツフル人に逆らえない戦力を作ろうとしたのだ。

 

その野望は半ばでベジータ王による侵略によって防がれることになるが、技術は残っていた。

 

後にそれを発見したフリーザは、実験的に数人のサイヤ人から細胞を提供させクローンを作り上げた。

 

しかしツフル人用に調整された培養槽ではフリーザに忠誠を誓うようなクローンサイヤ人は生まれず、生まれたクローン達は次々と始末されていった。

 

しかし、たったひとりのクローンが生き残った。

 

彼はただひとりフリーザに逆らわず、表面上ではあったが彼に忠誠を誓った。その容姿がかつて自分に最後まで逆らった男にそっくりだったこともあり愉悦を覚えたフリーザは、彼に独自の裁量権と自由に星々を侵略する権利を与えた。

 

自らの恐怖を喧伝するために。

 

フリーザの統治する範囲は遠く広い。そのため、全ての地域に目を光らせようと思えば自ずと無理が出る。そこで必要となるのが、ならず者じみた存在である。

 

フリーザ軍に所属する彼はある程度フリーザの命令に従うが、その与えられた目的はもっぱらフリーザに反抗的な惑星や勢力への牽制。それを行うのがサイヤ人であるなら戦力としては十分だし、何より凶暴なサイヤ人に慈悲などない。

 

“次はお前らがこうなるぞ”と、わかりやすい形で銀河にフリーザの恐怖を広げる為の装置。

 

それこそがターレスであり、後に彼が結成したクラッシャー軍団であるのだ。

 

フリーザが彼にそこまでの裁量を認めたのには理由がある。

 

それが、彼がクローンであることだ。

 

人工的に造り出されたターレスの寿命は、本来であれば10年と持たない。生まれた時点で成熟した体を持ち、そのまま死ぬ。もちろん子供を残すこともできない。

 

膨大な寿命を持つフリーザからすれば、ほんの10年少々の間宇宙で好き勝手させたところで痛くも痒くもないのだ。ましてやそれが自分のためであり、かつて反抗した男と瓜二つであれば尚更である。

 

しかしそんなターレスに転機が訪れた。

 

ある星を侵略した際に発見した神への供物となる神具。“神精樹の種”。

 

星の生命を食らい成長するこの樹は、瞬く間に成長しひとつの奇跡を現出させる。

 

その名もそのまま“神精樹の実”というこれは、食らうものに吸い上げた星の力を宿す。

 

元は神にのみ食らうことを許されたというこの実を、ターレスは偶然手にすることができた。

 

それは、死を約束された模造品のプロローグ。

 

彼自身の、運命への反逆。

 




ということでベジータフルボッコ→ナッパドン引き→過去回想はターレスとの邂逅でした。

ちなみにターレスの設定は前作ドラゴンボールCの初期案です。最初はこのCもCalamityじゃなくcloneだったんですよね。

まあその他に関してはあとがきやら何やらでネタバレするのも何ですし、次回もお楽しみください(´・ω・`)♪

とりあえずストックが尽きたので次話が明日も投稿できるかは不明ざます。

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