クリムゾン総帥復活の真相はそんな大した仕掛けじゃないのですが、盛り上がったようでなによりです。
今回はターレスがすごい主人公してる。
……あとたまになんだけど、自分で書いててクリムゾンをクリリンて読む瞬間がある( ̄▽ ̄;)
レッドリボン軍本部に戻った一同は、クリムゾンが用意させておいた祝勝会に参加する形になった。
クリムゾン復活の流れは、その用意が済むまでの間全員が集まって休憩している最中に行われていた。
「俺の復活を不思議がっているようだが、それほど大それた仕掛けをしたわけじゃない。ドラゴンボールを使っただけだよ」
酒を飲みながら語るクリムゾン。各々はそれぞれ飲み物を飲んだり軽食を取ったりと好きにしているが、彼の話を聞くために顔だけはそちらへ向けられている。
「だが、あのとき神龍が現れた様子はなかったぞ?」
レミー・マルタンを飲みながらラディッツが当然の疑問を持ちかける。
「それはそうだ。俺が願いを叶えたのは今から半年以上前の話だからな」
そんなラディッツへ、クリムゾンはマッカランのロックを呷りながら答える。
彼の説明によれば、半年前に神龍を呼び出し“今後自分が寿命以外で死んだ場合、一時間後に復活させてくれ”と頼んでおいたらしい。
予知のことから時間にも干渉できると考えたクリムゾンの発想だったが、この願いは成功しクリムゾンは少なくとも一回だけならば死んでも生き返れるようになっていたのだ。
「……とはいえ、さすがに二度とごめんだがな。生き返ったせいなのか、それとも願いが変則的だったからか、自分で頭を吹き飛ばして意識を失うまではっきりと覚えている。ああ、今回のことはバイオレットやスカーレットには言うなよ。余計な心配をかけたくない」
クリムゾンはさらに杯を煽る。空になったそれにラディッツが並々と注ぐと、クリムゾンも返杯して彼の杯をコニャックで満たす。
「言われるまでもない。そういえば、捕まえたベジータやナッパはどうするんだ。まさか人造人間の実験にでも使うのか」
人体実験。誰もが眉をしかめるようなことをこの場で口にしたラディッツの言葉に反応し、一同の視線がクリムゾンへ向く。
「確かに生身の人間を人造人間へ改造する方法はあるが、まだ完全じゃない。だいたい、奴等が人造人間に改造されたところで素直に従うようなタマに見えるか?」
クリムゾンの言葉に全員が黙る。ターレスなどは笑っていたが。
「そういえば、ターレスといったか。お前、今後はいったいどうするんだ?」
唐突に話を振られてターレスは戸惑った。ラディッツやクリムゾンがキツい蒸留酒を飲んでいるので自分もと頼んだウォッカが、一口しか飲めず杯に残っている。
「……どうするかな。今さら銀河パトロールに自首するなんざガラじゃねえし。かといって、あんたら相手に戦う意味もねえしな。ま、どうでもいいさ。どうせ俺の寿命は残り一年くらいしか残っちゃいねえしよ」
「どういうことだ」
「ああ、あんたらには話してないんだっけか。俺はな、そこにいるカカロットとラディッツの親、バーダックってサイヤ人のクローンなんだよ。テロメアだかなんだか知らないが、俺には生来そいつが不足している。俺という存在の期限がもうすぐ……って、だけ……だ」
突然ターレスが倒れる。話題が話題なだけに心配してクリリンが駆け寄り、ヤムチャも近くへやって来る。
「……寝ちゃってるよ。って酒臭っ!? クリムゾンさん、こいつ何飲んだんですか?」
ヤムチャが肩を貸し、酔いつぶれたターレスをソファーまで運ぶ。
「ウォッカだな。こいつは70度くらいあるぞ」
さらりとボトルを眺めて言い募るクリムゾン。クリリンは悟空が酒に強くないのを思いだし、サイヤ人にも色々いるのだなと苦笑する。
その後祝賀会が行われ、後ほどベジータとナッパはレッドリボン軍本部地下にある耐久実験場へと投獄されることになった。
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目を覚ましたターレスが感じたのは、ひんやりとした感触が額を濡らしていることだった。
「あら、目が覚めましたか?」
「……頭がいてえ。ここはどこだ」
ターレスは聞こえてきた女の声に質問する。
言葉こそ命令調だが、起きがけに体調が優れないことなど初めてなのが彼から余裕を奪っていた。
「クリムゾン総帥、私の主人の家にある客間です。あなた、急性アルコール中毒になりかけていたみたいですよ」
「きゅうせい……よくわからんが世話になったな」
起き上がろうとするターレスだが、うまく体が動かない。どうやら酒だけでなく、溜まった疲労まで顕在化してしまったらしい。
「ドクターゲロの診断では、しばらく体を休めた方がいいとのことです。それでもサイヤ人だから一日寝てればいい程度らしいですけど。ああ、それと大事なことを言い忘れていました。あなたの寿命、もう普通の人と変わりないみたいですよ」
「なっ! ど、どういうことだっ!」
すがるようにターレスはバイオレットの腕を掴む。少し力が強かったのか顔をしかめたので、慌ててターレスは手を放す。
「す、すまねえ」
「……いいえ、無理もないでしょう。ですがあなたの寿命の件は嘘ではありません。ドクターゲロの診察ですから。信じるか信じないかはあなた次第ですけどね?」
少し意地悪く言ってくるのはバイオレットなりの仕返しだったのだが、ターレスの胸中はそれどころではなかった。
「……俺が、まだ生きられる。そんな、あいつらになんて言えばいいんだ」
ターレスは自身の代わりにベジータに殺されてきたといっても過言ではないクラッシャー軍団の面々のことを思いだす。
自分など置いて逃げ出せばよかったものの、ベジータに従うようになってもクラッシャー軍団は誰一人離れようとしなかった。
しかしスーパーサイヤ人のパワーを制御できていなかったベジータによって、気まぐれにひとりまたひとりと殺されていったその姿は決して忘れられない出来事であった。
特にダイーズなど、死の直前までターレスのことを心配していたのだ。
そのときもターレスは“どうせ俺もすぐにお前達のところへ行く”と伝えていた。
「……なぜだ! なぜまた俺だけが生き残るんだ……!」
特別親しみがある仲間ではなかった。だが、今生き延びている事実がまるで仲間達の命を横取りしてしまったようで、ターレスはひどく居たたまれない気持ちになる。
しかしその答えは予想もしない方向からやって来た。バイオレットから連絡を受けてきたクリムゾンだ。
「簡単だ。仲間がお前に“生きろ”と言っているんだよ」
「俺に、生きろと……?」
実際は神精樹の実を食べたことによる突然変異ではあるのだが、それをわざわざ今教えてやる必要はないとクリムゾンは考える。
「そうとも。無駄に生きるか、戦って死ぬかはお前の勝手だがな。しばらく面倒を見てやる。その間に答えを探すんだな」
そう言ってクリムゾンはバイオレットを伴い部屋を出ていく。
ターレスはふと、布団から盛り上がる己の一部を確認して自分が全裸になっていることに気づく。
柔らかな感触。甘い香り。
人妻の刺激的な色気は童貞のターレスには刺激が強すぎた。
その後どうしていいかわからなかったターレスは、後日そのことをラディッツに相談して彼に頭を抱えさせるのだが、そのことはまた別の話である。
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クリムゾンは地下にある研究所でベジータと対面していた。
「気分はどうだね、ベジータ君」
「……最高だとでも言ってほしいか」
クリムゾンが思わずどこから手を付けて言いか悩むほどの重傷であるベジータだったが、ラディッツの助言に従い腕を繋ぐなどの最低限の治療を済ませただけで、翌日には怪我が既に回復し始めていた。
そんなベジータだが、今は両腕と両足を付け根から拘束されていた。もちろん衣服は下着に至るまで一切着けることを許されておらず、股間には直接尿道と肛門に管が挿され洗浄機能を兼ねたカバーが付いている。おまけにまかり間違っても抵抗が出来ないように、神経の集中した尻尾の付け根には超強力麻酔薬を注入する管が刺されている。
「動けない、といった点を除けば拘束としてはかなり至れり尽くせりだがね。正直、君の存在を考えれば手足を切り落として汚物まみれの泥にでも漬けておいていいくらいなのだが」
「だったらそうしたらどうなんだ。俺を殺す度胸もないくせにデカい口を叩くんじゃ──がっ……!」
クリムゾンに暴言を吐いた瞬間、ベジータの身体に電撃が走る。それも外からではなく、内側からだ。
「さすがに丈夫だな。その電撃は君の内側から迸っている。電極は繋いだ腕の中だよ。殺す度胸と言ったが、私にそんなものは必要ない。君を殺すのになんら精神的高揚も痛痒も抱かないからだ……言っている意味がわかるかな?」
クリムゾンはベジータの顎を持ち上げ自分の方へと向かせる。
ベジータはその顔へ唾を吐きかけてやりたかったが、全身が痺れてまともに口が動かなかった。
「君の
最後にクリムゾンは慇懃無礼にベジータへ礼をすると、その部屋を後にした。
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続いてクリムゾンが訪れたのはナッパの元だった。
こちらは抵抗があまりになかったので全身にリング状の拘束具を付けるに留まっている。
「やあ、ナッパ君。元気にしているかな」
クリムゾンは特殊ガラスの向こう側で項垂れているナッパへとインカムを使って話しかける。
「俺は、やっぱり殺されるのか……?」
ナッパはここに来て、死ぬのを恐れていた。
これまで無数の命を奪ってきた。戦いに明け暮れ、殺し殺される世界に生きてきたのがナッパだ。
しかし、数年前ベジータが神精樹の実を手にしたときから
ベジータ王となってからの彼に神精樹の実を分け与えられ、ナッパもまた激しくパワーアップした。
もはやドドリアやザーボン、ギニュー特戦隊でさえ相手にならないだろう。
だがそれまでだった。ベジータはナッパの戦闘力が一定の水準まで上昇すると、それ以上にパワーアップする可能性を極力封じてきた。
はじめはナッパもそれを拒絶し、戦いのなかで強くなろうとしたが、ベジータから時折与えられる神精樹の実はそんな意思をことごとく踏みにじり、“強くなる”ことによるえもいわれぬ快感がナッパの脳を侵していった。
そして同時に強くなっていくことが、ナッパの心に厭世感を満たしつつあった。
戦えば必ず勝つし、苦戦することもない。常に上から相手を見下すことができる。
かつての戦闘への貪欲さなど消え失せ、サイヤ人の誇りなどもはや消え失せてしまった。
それゆえベジータが敗れたのを目の当たりにしたとき、ナッパは一気に怖くなってしまった。
自分よりも圧倒的に強い敵。かつてなら例え互角以上の相手でも死ぬ気で挑むことができた相手に、ナッパはもはや歯向かう感情すら抱けなかった。
そんなナッパの心情をどこまで見抜いているのか。
クリムゾンはうっすらと笑みさえ浮かべている。
「君の態度によるな。ちなみにそのリングは、君が俺に関わる人間へ危害を加えようとした瞬間サイズをナノ単位まで縮める。厚さ1ミクロンの中心部ごとな。するとどうなると思う? 今リングを付けられている場所が軒並み切り落とされるんだよ。手も、足も、尻尾も、首も。……このリモコンで装置を解除しない限りな」
クリムゾンはこれ見よがしに手元のリモコンをナッパに見せつける。
──ナッパの目が、少しずつ濁っていく。
しかし、クリムゾンの態度は変わらない。
「その上で君を勧誘しよう。どうだ、私の下で働かないか? しばらくは君が使い物になるまで鍛えてくれて構わない。戦力になった後戦う相手はあのフリーザ軍だ。サイヤ人なら因縁の相手だろう? どうだね」
言いながらクリムゾンは特殊ガラスの防壁を解除し、驚くべきことにリング状の拘束具まで解いてしまう。
「さあ、君は自由だ。私に従うというならその場で跪くがいい。ただしこの部屋を仕切っている線を越えたら、君は死ぬことになる」
言いながらクリムゾンは特殊ガラスのあった場所の溝を示す。
ナッパの答えは当然──クリムゾンを人質に取ることだった。
爆発的にエネルギーを高めて突進したナッパはそのままクリムゾンの首を掴んで壁に叩きつける。
「はっはっはっは! 俺から返事も聞かねえ内に拘束を解いちまうとは馬鹿な野郎だぜっ! せいぜいてめえは俺の人質として──なんだいこりゃ?」
ナッパはたった今壁に叩きつけたクリムゾンの全身が薄れていくのを目にする。
わずかな時間でナッパの手に残ったのは、クリムゾンの姿を表面に投影していた無貌のロボットの姿だった。
『残念だよナッパ君。実に残念だ』
壁に仕掛けられたスピーカーからクリムゾンの声が響き、ナッパの全身から冷や汗が吹き出す。
『だが同時に安心もしている。君が半端に有能でなくてよかった。君が自分のことしか考えられない屑でよかった。君が傲慢で凶暴なサイヤ人でよかった』
「ま、待ってくれ! これは、ちょいと魔がさしただけなんだっ!?」
『……ひとつだけ教えておこう。さきほど解除したように見せたリング状の拘束具だが──実はまだ取れていないんだ』
「え? げびっ」
瞬間、ナッパはバラバラになって床に転がる。
血を吹き出しながら倒れる体の前に落ちた首が、なにが起きたかまるで理解せずに口をパクパクと動かしてからその動きを止めた。
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たった今ナッパの処刑を完了したクリムゾンは、掃除用のロボットを動かし床に流れた血の一滴も残さず回収するように命じる。
「ほっ、やはり殺したか」
「ああ、あの男は問題がありすぎた。なによりあの程度の戦力なら間に合っている。死体は精々セルの研究に役立ててくれ」
ドクターゲロは予想通りといった表情でにやつきながらクリムゾンを見るが、クリムゾンは何事も起きていなかったと言わんばかりに言い返す。
「ふっくっく、貴様はやはり恐ろしい男よ。懐柔しようと思えば手段はいくらでもあったじゃろうに。だが、それだけの切り替えができるからこそ仕え甲斐がある。せいぜいわしもお前を利用しつつ、助けになってやるとするかな」
「ああ、今後ともよろしく頼む。もし何か俺を害するようなことを企んでいるなら、せいぜい俺にバレないようにしてくれ」
「ふ、そうさせてもらうとするかの」
怪しく笑みを浮かべる二人だが、彼らのやることは多い。
次に備えて動かねばならない。次の次に備えて動かねばならない。
レッドリボン軍を支配する二人の思惑を、未だ誰も知らない。
ターレス「お、俺は童貞だ!」
ガン×ソードホント好き。結構色々と参考にしている部分もあるのでまだ観てない人は是非見てほしいです。
あと本編にまったく関係ないけど、人妻ってもう響きがエロい。