ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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朝投稿だZE☆

タイトルには()がつく(´・ω・`)

※タイトルのナンバリングミスりました( ̄▽ ̄;)


第26話【日常】

「きゃあ~~~!」

 

絹を裂くかのような女性の悲鳴がレストランに響き渡る。

 

同時に複数の銃声が天井を穿ち一気に場が静まっていく。

 

「動くんじゃねえ! てめえら全員俺達の人質だあ!!」

 

口から汚く唾を飛ばし、目出し帽を被った太めの男が叫ぶ。手には乱雑に札束を詰め込んだスポーツバッグが握られている。

 

横には痩せぎすの男が同じように目をぎらつかせ、サブマシンガン(MP5)片手に睨みを効かせる。

 

そんな騒ぎを背景に、さきほどまで皿の山を築いていた腰まである長髪の男が動こうと立ち上がりかけ、対面でコーヒーを飲んでいた真紅の長髪をオールバックにした男に止められる。

 

「……いい、お前が動くとこの店が消えかねん」

 

「だがいいのか? お前とて目立ちたくはないだろう」

 

「仕方あるまい」

 

ラディッツと奥の席で遅い昼食を取っていたクリムゾンは、自身の懐から本日持ってきたリボルバー(S&W M29)を取り出す。

 

「……人質を取ったか」

 

「危なくなったら俺はすぐに動くぞ」

 

ラディッツに釘を刺されそれにクリムゾンは苦笑しながら、ゆっくりと銃を片手に銀行強盗らしき男達へと近づいていく。

 

「な、なんだテメエは!? こっちに近づくんじゃねえ!?」

 

気配を少し消して近づいた影響か、クリムゾンがすぐ側に来るまで気づかなかった太めの男が銃を向けて叫ぶ。

 

「ここっ……! このおおおんな! ぶちころずぞっ!」

 

薬でもキメているのか、ぎらついた目でクリムゾンを睨む痩せぎすの男が銃口を人質にとった女性店員に向けている。

 

女性は恐怖の余り涙を流しながら失禁しているが、痩せぎすの男が構う様子はない。

 

──銃声が響いた。

 

クリムゾンの目にも止まらぬ早業によって一発しか聞こえない銃声の間に三発放たれた弾丸は、サブマシンガンの撃鉄と銃身を破壊し、さらには女性店員のスカートに穴を空け、痩せぎすの男が泡を吹きながら血まみれの股間を押さえて失神する。

 

その様子を見ていた男性陣が思わず縮こまった。

 

「く、来るんじゃねえっ!!」

 

太めの男が近くにいた子供を抱き寄せ窓ガラスへと近づく。

 

子供を奪い取られた母親らしき人物が半狂乱になるが、どうにか父親がそれを押さえる。

 

彼から一瞬、すがるような目線を向けられたクリムゾンの手に知らず力がこもる。

 

「へ、へへっ! 知ってるぜっ! テメエの銃の威力はよ!? さっきみたいに後ろが壁ならともかく! 俺に向かって撃ってみな! 割れたガラスが下に降り注ぐぜ!」

 

地上25階にあるこのレストランは、景色を一望できる一面のガラスが売りでもある。

 

しかし、今現在の場面においてはそれはデメリットでしかなかった。

 

「そらどうしたっ!? 撃てるもんなら撃ってみやがれ! そのときゃこのガキもろとも飛び出してやるぜ! このヒーロー気取りが……お、おいテメエまさかっ!?」

 

ゆっくりと、まるで視線を集めるかのようにクリムゾンは銃口を太めの男へと向ける。

 

男は子供を抱いたために銃を取り出せず戸惑うが、どうせ撃てはしないだろうと冷や汗を流しながら笑みを浮かべる。

 

──ドウンッ!!──

 

先程よりも不思議と響く銃声が、太めの男へと放たれ、その額を撃ち抜いた。

 

「な、なんで……!!」

 

疑問の声をあげながらガラスにもたれて倒れる男。慌てて拘束から抜け出した幼子が、母親の胸へと飛び込む。

 

クリムゾンは──自分の手を貫通させて男に銃弾を放っていた。

 

どんなに強力な弾丸も、遮蔽物ひとつ隔てれば威力は遥かに減衰する。

 

手近な使えるものとして、クリムゾンは自らの手を選んだのだ。

 

「無茶をするな、お前は」

 

「この程度、大した無茶には入らんよ」

 

冷や汗ひとつ流さず冷静に自身の出血へと対処するクリムゾン。致し方なかったとはいえ、このまま怪我を放置していては今後に色々と差し支えるだろう。

 

彼は懐から器用にカードを出すと、ラディッツに店内全員分の会計を済ませてくるように言う。

 

ラディッツは苦笑を浮かべながらそれに従うと、クリムゾンも後を追うように歩いていった。

 

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迫り上がってくる壁が床だと気づくのに数秒を要した。

 

喉が乾き、全身が熱をもって怠気を感じる。

 

厳しい訓練だとは聞いていた。

 

だが、なにも組手の度に死にかけにしなくてもいいんじゃないかとターレスは思った。

 

「何を休んでいるっ! さっさと立ち上がれっ!!」

 

倒れこむターレスの前に立ちはだかるのはピッコロだ。神との融合によって得た本来の資質はすさまじいものであり、再び差が開いた悟空からは「いい目標ができた」と言われている。

 

「む、無茶言うぜ……」

 

一方で、今のターレスは両腕の骨を砕かれている。とはいえそれでも動けるのがサイヤ人であるのをピッコロはよく知っているからこそ檄を飛ばすのだが。

 

事実、激痛をこらえつつターレスはしっかりと両腕を使って立ち上がろうとしている。

 

「そのうちホントに死んだらどうしてくれるんだよ……」

 

やや厭世的に、やる気がないかのように見える態度でターレスは立ち上がる。

 

その様子と内に秘めた気を感じ取ったピッコロは、ようやく彼の潜在能力を引き出すことができそうだと内心で嘆息する。

 

彼とて、別に好きでターレスを痛め付けているわけではない。だが後に来るフリーザはかつてのとき以上にパワーアップしているとの話だ。更に言うのならば、スカウターのログには今現在存在する三人のフリーザ一族全てが向かっているとの報告があった。

 

となれば、最悪パワーアップしたフリーザをピッコロが抑えたとしても残る二人に対抗する人員が必要となる。

 

であるならば、ターレスには少なくともスーパーサイヤ人になってもらわねばならない。

 

そうしてそれから更に数時間、ピッコロを相手に無茶苦茶な格闘術を基礎から叩き直されていたターレスにも限界が来た。

 

そうして倒れかけ死にかけているターレスに、小さな足音がとてとてと近づいてくる。

 

「だ、大丈夫ですか!? すぐに治しますね!」

 

今回治療役を買って出ていたデンデが、ターレスの負傷を治療する。彼は二ヶ月ほど前、ナメック星人が住む保護区に現れた恐竜に襲われていたところをターレスに助けられたことがあった。

 

今回はそのときの恩を返すつもりで来たのだが、彼の想像以上にターレスの修行風景は常軌を逸していた。

 

「……父さんもそうでしたけど、こんなに厳しい修行をしなければいけないんですか?」

 

そんなデンデに付き添うような形でやって来ていた悟空の息子である孫悟飯も、ターレスが起き上がるのを手伝いながら以前から疑問に思っていたことを聞く。

 

孫悟空の息子である彼は、クリムゾンの協力でその恐ろしいまでの潜在能力をコントロールできるようになったこともあり、経過観察も含めてなにかとレッドリボン軍に訪れることが多い。

 

最近は幼馴染みのスカーレットだけでなく、仲良くなったナメック星人のデンデとも遊んでいることが多いようだ。今回はそのデンデが修行を手伝うとのことだったので、少しでも手伝いになればと付いてきていた。

 

「ふう……何度受けても不思議なもんだぜ」

 

デンデによって瞬く間に完全回復した体調を確認するように拳を握るターレス。戦闘力もさきほどより増したのを感じるが、ピッコロとまともに戦えるまで後どれだけ死にかければいいのかと思うと辟易する。

 

そして思い出したように悟飯への疑問に答えた。

 

「……厳しい修行の理由か。ま、なんせ相手はあのフリーザだからな。カカロットやラディッツよりも弱い俺が強くなるには、無茶を繰り返すしかねえのさ」

 

ニヒルに笑う様子に悟飯は不思議そうな顔をする。

 

「辛くないんですか?」

 

「辛いさ。苦しいし、ピッコロは怖えし、ピッコロは厳しいし、ピッコロうるせえし……正直楽なことはなにひとつねえよ。……けどな、俺もサイヤ人なのさ。今もこうしている間に確実に強くなっていく自分を感じるとな、それをぶつけられる相手がいるってだけでわくわくしてきちまうのさ」

 

「そういうものですか……」

 

「ははっ! ガキにはまだわかんねえよ!」

 

笑いながら悟飯の頭をポンポンと撫でるターレス。自分とカカロットの顔が似ていることから、いずれ子供が生まれたらよく似た顔になるのだろうかと考える。

 

「休憩は終わりだっ! 来いっ! ターレス!!」

 

悟飯が離れたのを確認し、これ見よがしに気を解放するピッコロ。

 

「……待ってくれる辺りあんたも人がいいというか、子供好きというか」

 

「よし、手加減なしで殴ってやる。死にたくなければ必死で避けろ」

 

「おいおいちょっとまっ!? うおっ! 死ぬ! 死ぬって!」

 

唸りをあげる豪風と共にピッコロが襲いかかり、ターレスは必死でそれから逃げる。

 

戦士達の実力は着々と上がっていた。

 

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レッドリボン軍によって与えられた一室。そこが、今のベジータにとっての仮住まいだった。

 

彼はクリムゾンに許可を取り借りてきた複数の本を読みふける。

 

その額には、黒い色をした『緊箍児』なるアイテムが嵌まっている。これはベジータの脳と直結しており、無理に外そうとすれば死んでしまうようにできている。

 

これによって戦闘力をかつてのラディッツと同程度まで下げられたベジータは、時折ラディッツの訓練に助言を告げるだけで後の生活はそれほど束縛されていなかった。

 

それもそのはずであり、ここレッドリボン軍本部に勤める兵士達は有事の際にはパワードスーツを身に纏うことで戦闘力を2000まで上昇させることができる。

 

今のベジータがいくら不満を抱いたところで、実力が上でありなおかつ数の暴力まで備えた相手に歯向かう気は起きなかった。

 

「……」

 

二冊目の本を読み終わり、ベジータは嘆息する。

 

その心に、かつて失ったはずの誇り(プライド)が燻っているのを感じてベジータは苛立たしげに本をベッドへと投げる。

 

納得したはずだった。納得ずくで、“力”を手にいれたはずだった。

 

ところがどうだ。

 

仮初めの力に溺れた自分は下級戦士と見下していた男達に敗北し、囚われの身となってその知識のみを買われて生かされている。

 

情けない。

 

できることなら自殺してしまいたいほどの屈辱だったが、半端に残った力がベジータに僅かな希望を残していた。

 

「あれ~? ここどこ~?」

 

ふと、扉が開いて見知らぬ女が入ってきた。青い髪をショートカットにしたその女をベジータは知らないが、彼女はクリムゾンにとって、何よりレッドリボン軍にとっての重要人物である科学者。ブルマだった。

 

「……部屋を間違えているぞ。さっさと出ていけ」

 

静かに、決して怒りをぶつけるようなことなくベジータは告げる。

 

これはクリムゾンから“身内にその牙が向いたら即座にお前は死ぬ”と断言されている為であり、普段のベジータならばひっ叩いてでも追い出しているところだ。

 

「あによ~いいじゃないの~」

 

近づかなくともサイヤ人の鋭敏な感覚が、ブルマから漂う酒精の臭いを感じ顔をしかめさせる。

 

仕方なく人を呼んで対応しようとしたベジータだったが、続いてのブルマの行動に驚き対処が遅れてしまう。

 

「……なんのつもりだ」

 

やや殺気さえ滲ませてベジータは自分を押し倒したブルマに問いかける。気配に反応したのか緊箍児から緩慢な痛みが走るが、その警告をベジータは気にも止めずに睨み付ける。

 

「なによぉ、こんな美女に押し倒されたんだから男がやることはひとつでしょぉ?」

 

語尾を間延びさせ、少し崩れた化粧にも関わらず非常に整った顔立ちで美女(ブルマ)は艶然と微笑む。

 

やや乱れた服からちらつく下着を見つめ、ベジータの中にわずかに欲望が芽生える。

 

──だが、男ならば据え膳とも言えるそれをベジータははね除けた。

 

やんわりとブルマを持ち上げ、自分と入れ替わりになるようにベッドへと座らせる。

 

「断る。当て馬だか八つ当たりだか知らねえが、あまり俺を見くびるんじゃない……!」

 

まるで子供を叱るように窘められ、ブルマの顔が怒りに歪む。

 

「……なによ! いいじゃない! あんた悪人なんでしょ! めちゃくちゃにしなさいよ!」

 

「断る、と言ったはずだ。犯されたきゃその辺の路地裏で股でも開いてろ」

 

「こ、この~~っ!!」

 

ブルマは怒りのあまり掴みかかるが、元より弱くなったとはいえ戦闘力で言えば宇宙でも強者の部類に入るベジータには敵わない。

 

ぽかぽかと軽い打撃が何度か続き、持っていたカバンでもベジータを叩くが財布や化粧品が散乱するだけで彼には何らダメージはない。……と思いきや散らかった部屋を見てベジータは顔をしかめる。意外ときれい好きなサイヤ人であった。

 

「なによ……なによなによなによ……! みんなしてわたしをバカにして……あたしだって……あたしだって、うっ、ひぐっ、う゛え゛~~~~!」

 

「な、なんて迷惑な女だ……!!」

 

遂に泣き出したブルマを見て、ベジータはその傍若無人ぶりに戦慄する。最悪吐かれようものなら彼のストレスゲージがマッハである。

 

人を呼ぶにもこの場面を見られて勘違いされるのを恐れたベジータは一先ず話を聞いてやることにした。

 

長い夜になるとも知らずに。

 

結局ベッドに座らせた以外触れることもせず、ブルマが寝るまで話を聞き続けたベジータ。

 

その様子を監視モニターで見ていたクリムゾンは、彼のわずかな変化に口許を歪めるのだった。

 

──余談ではあるが、手を出されなかったことに何か感じるものがあったのか、その後定期的にブルマはベジータの元を訪れるようになったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず言わせて欲しい。シティーハンターがしたかっただけなんだ。
手を貫通させたら弾道エラいことになるよね、とか。そもそも男二人でなんでそんな場所で飯食ってんのとか。突っ込んだらキリがないのはわかってるけどやりたかったんだ。
ああ、あの場面のラストだけBGMに GET WILD 流してください(笑)

ターレスくん頑張るの巻き。彼、ショタに人気です。そういうキャラ付けともいう。親戚のお兄さん的な。

ベジータとブルマ。ブルマの愚痴はそれはそれはもう長かったそうな。キングベジータはこうして着々と精神力が鍛えられていくのであった(笑)

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