あれだ、同じパターンの繰り返しになる具体的な原因としてキャラに死人が出なさすぎてるんだなと今更ながら理解。緊張感がないんですよね。
……とまあ不穏なことを言いつつ今後も頑張ります。それでは本編をどうぞ!
ターレスは中の都上空で暇そうに浮かんでいた。
他の場所で戦いが始まっていることは察していたし、フリーザらとクリムゾンらが対面したのも感じ取っている。
どう転ぶかはまだわからないが、そのときに備えて動くのが自分の役目であるとターレスは自覚していた。少々自堕落ではあったが。
「……ようやくお出でなすったか。アンタ、強えだろ?」
寝転がるように空中に浮かんでいたターレスだが、さきほど一瞬戦闘力を解放して呼び寄せた相手が近づいてきたのを感じて笑顔で起き上がる。
「貴様がさきほどの戦闘力の正体だと……? 尻尾から見るにサイヤ人のようだが……はて、それほどに強力な戦士がいた覚えはないぞ」
「そりゃないだろうさ。俺もここまで強くなったのはここ一年ほどでのことだからな。アンタ、名前は?」
ターレスは自分の前に現れた腕を組む男へと名を問う。
「我が名はゼラート。コルド大王直属護衛軍隊長にして、最強の戦士。貴様ごとき一分で片付けてくれる」
全身の筋肉を隆起させ闘志をむき出しにするゼラート。どこかコアラにも似たその顔を眺めながら、ターレスは嬉しそうに微笑む。
「いいねえ。是非やってみてくれ!」
ターレスは気を解放し、ゼラートへと向かっていく。予想よりも早い速度に驚いたのか一瞬ゼラートは眉をしかめるが、すぐに切り替え高速で突っ込んできたターレスの膝蹴りを際どいところで回避する。
「ひゅう! さすがだな、じゃあこいつはどうだ!」
ターレスは更に速度を上げて連続の回し蹴りを次々と叩き込むが、ゼラートは冷静にそれらを捌き機会を待つ。
「終わりだ!」
「貴様がな」
ターレスが大袈裟にかかと落としを仕掛けるのにタイミングを合わせ、ゼラートはカウンターの要領で彼が着込んでいたバトルジャケットを砕き、深々と胸に拳を捻りこむ。
「ごほっ……!!」
その威力にターレスは口から涎を吐き出し、さらに追撃で振るわれたハンマーパンチで地面へと叩き落とされてしまう。
ゼラートは中の都を背後に背負う形で死体を確認しようと降り立ち、満身創痍であろうターレスの姿を探す。
「貴様の敗因はこの俺の戦闘力をたかだか20万前後だと侮ったことにある。言ったはずだ、俺は最強の戦士。本気で戦闘力を解放した俺の実力は150万を超える……!!」
これ見よがしに気を解放し、荒れ狂う暴風と化すゼラート。ターレスはそんなゼラートを嬉しそうに見つめながら、大してダメージを負っていない体を浮かび上がらせて構える。
「そーだよなぁ、俺強いよなぁ。いやありがとうな、最近周りが強すぎて自分が強くなった実感がなくてよ。……じゃ、本気でやろうか!」
まるでゼラートの話を聞いてないかのように独白しながら、ターレスは一気に超サイヤ人へと変身。ゼラートのスカウターを破壊する。
ゼラートはそのあまりに急上昇した戦闘力に動くことさえできない。
「ば、馬鹿な……! まさか伝説の超サイヤ人だとでもいうのか……!?」
そして思い付く。さきほどまで上回っていた自身を遥かに圧倒するエネルギーの正体に。ゼラートはかつて聞いた伝説の存在を思い起こす。
「さあな。でもそれなら、伝説の超サイヤ人は四人はいることになるぜ?」
もはやゼラートにターレスの動きを捉えることはできなかった。
再び始まったターレスの猛攻に、ゼラートは一方的に打ちのめされていく。
それもそのはず。超サイヤ人になったターレスの戦闘力は推定数値5000万。有り余るエネルギーが、ゼラートの全身を打ち付け追い詰めていった。
「そらぁ!」
「ぐは……! こ、こんなことが……!」
地面へと叩きつけられたゼラートは、すぐ近くで自らを見下ろすターレスに戦く。
「……オーバーランストライク!」
それでもゼラートはせめてターレスを負傷させようと、最大威力のエネルギー波を繰り出す。だが、恐るべきことにターレスはそれを片手で防いでかき消してしまう。
「少し効いたぜ。はあっ……!!」
「ぎいいやああああっ!!」
エネルギー波を受け止めたターレスの手から紫の極光が解き放たれ、ゼラートを飲み込んでいく。
悲鳴をあげる彼を飲み込んだエネルギーはまるで噴火するかのように上空へ解き放たれ、ゼラートを肉片ひとつ残らず消滅させた。
「ま、ざっとこんなもんだろ。さて、他の連中は……「ほう、それが超サイヤ人か」なにっ!?」
ターレスは後ろからした声に驚き振り向くも、そのときには既に胸の前で臨界寸前のエネルギーが渦巻いていた。
「死ね」
「ぐあああああああ!?」
エネルギーの奔流に焼かれ、ターレスが中の都へと飛んでいく。
ターレスを撃った張本人──クウラは、それを詰まらなそうに見つめながら、中の都へと一瞬で作り出した巨大なエネルギー球を投げ飛ばすのだった。
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一方、ヤムチャ、クリリン、天津飯の三人はもっとも苦戦していた。
クウラ直属唯一無二の最強配下。クウラ機甲戦隊に。
「まったくしぶとい連中だぜ! 地球人てのはまるでゴキブリみてえな連中だな!」
力任せに殴り飛ばして死にかけにしてやったはずの天津飯が蘇っているのを見て、緑色の肌を持つパワーファイターのドーレが思わずぼやく。
すでに何度殺したかわからないほどに彼はクリリン達に致命傷を与えていた。
「ちくしょう……! 力の差がありすぎる上に、奴等戦い慣れてやがる! このままじゃじり貧だぞ!」
最後の仙豆で回復した天津飯は自らの力の無さに激昂するが、敵は待ってなどくれない。
「もういい! 俺が全員を切り刻む。お前達はその後こいつらを跡形もなく消してしまえ!」
そう言って機甲戦隊リーダー格のサウザーが手刀にエネルギーを纏って三人へと向かってくる。
だがこれまでもそうだったように、追い詰められた状況でこそ輝く男がこの場にはいた。
「太陽拳!!」
いつの間にかサウザーの前に現れた球状の気弾が炸裂し、サウザーの網膜を焼く。
「ぐああっ!?」
目を閉じたサウザーを連続で飛び交う気円斬が襲うが、それらは見えていないにも関わらず全て避けられてしまう。
「……ヤムチャさん、時間を稼げますか。ぶっつけ本番で、どうにか元気玉をやってみます……!」
成功する保証など殆どなかった。だがそれでも、クリリンはこのまま負けるよりはいいと考える。彼らが負けたとき、犠牲になるのは彼らが守る南の都なのだから。
「……任せておけ、狼牙風々拳の真髄を見せてやるぜ!」
遠距離が避けられたのならば至近距離と、ヤムチャは今だ視界のないサウザーに迫る。
(せめて二人が逃げる隙を作る! この俺の命に代えても!!)
激しい乱打を仕掛けるヤムチャ。だが悲しいかな。戦闘力は宇宙において遥か強者の彼であっても、その全力攻撃はまるで通じていなかった。
「ひとりでは無茶だ! ヤムチャ!」
慌てて天津飯が援護しようとするが、その前にドーレが立ちふさがる。
そして視界の回復したサウザーは、驚くほど無造作にヤムチャの体を両断した。
「ヤムチャ……!」
「ヤムチャさん……!」
一瞬で絶命したヤムチャを見て、天津飯とクリリンの叫びがこだまする。
そして仲間の死に動揺した天津飯を、ドーレが正面から羽交い締めにして力任せに締め上げいく。
「ぐあああああああっ!」
天津飯は全身の骨を砕かれながら悔やんだ。
この場で敗北が避けられないのならば、生き残らせるべきはヤムチャだったと。
稀有な能力を持つ彼は援護に回れば戦場を選ばない。
全てが遅かったことを悔いながら、天津飯はせめて目の前の男だけでも道連れにしようと覚悟を決める。
「ごぶっ……! 死ぬなよ、クリリン……!!」
「天津飯っー!」
天津飯は最後の気を振り絞り自爆する。大爆発が空に広がり、クリリンは爆風に煽られながら今を挽回する手段を模索する。
──しかし天津飯の犠牲も、クリリンの死を僅かに遅くするだけに過ぎなかった。
「ぐああっ!? あのハゲ野郎、俺の腕を持っていきやがった! ちっくしょぉ、許さねえ!」
爆煙から現れたドーレが失った右手を押さえながら唸る。彼はクリリンの姿を見つけると、重傷を負っているとは思えない速度で近づいていく。
「なぶり殺しにしてえところだが時間がねえ、さっさとくたばれ!!」
「ぐうっ……!」
首を締め上げられるクリリン。もはや持って数秒の命なのは間違いない。
そして彼の首が砕かれんばかりに締め上げられた瞬間──螺旋の閃光がドーレの胸を横から貫いた。
「ごぉえっ!」
「ドーレ! ぐぎゃっ!」
カエルにも似た茶色の肌のネーズが驚き声をあげるが、次の瞬間には彼もまた横合いから蹴り飛ばされ首の骨を砕かれた。
「何者だ!」
現れたターバンとマントをつけた男──ピッコロは、気を失ったクリリンを抱えたままサウザーをにらみつける。
サウザーは目の前に現れたナメック星人の底知れない実力に怖気を震わせるが、自らの必殺サウザーブレードならば十分に勝算があると考え、両手にそれを発動させる。
「名乗らんならばそれでいい。だがドーレとネーズの仇は討たせてもらおう!」
エネルギーを解放し、一直線に突っ込んでくるサウザー。クリリンを抱えているからか、ピッコロはそれを避けようともしない。
(取った……!)
勝利を確信したサウザーの手刀がピッコロの眼前に迫り──あっさりと片手で止められた。
「なっ……!?」
「……仇を取るだと? こっちの台詞だっ!!」
サウザーはもう片方の手刀を振るう間もなく力任せに上空へと放り投げられ、余りの勢いに体勢を整えられず錐揉み状態に飛んでいく。
ピッコロはそんなサウザーへと目掛けて口から怪光線を発射し、彼を骨も残さず消滅させる。
すると、意識を取り戻したのかクリリンが苦しげに目を開けた。
「ピ、ピッコロ……お前、どうしてここに……」
「ターレスがやられた。そっちには悟空が向かっているが、どうなったかはわからん。フリーザはラディッツが請け負った」
「大丈夫、なのか……?」
「さあな……だが今のあいつは腹を括ってる。この俺に向かって“手を出すな”とまで言いやがったんだからな。……天津飯にヤムチャは、やはりやられてしまったのか?」
「あ、ああ……情けない話だぜ……!」
クリリンは実に悔しげに俯く。ピッコロは持っている仙豆をクリリンに与えて回復させると、レッドリボン軍本部へ向かうように言って他へと飛んでいった。
「ちくしょう……強くなりてえな……!!」
クリリンの涙が、南の都の上空にこぼれた。
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スーパーノヴァ。
クウラ最大の威力をもつ技が中の都へ迫る。
ターレスは全身の火傷に苦しみながらどうにか抵抗しようと
しかしそんなターレスの前に、ひとりの男が現れる。
「間に合った! 界王拳!!」
赤いオーラを纏いスーパーノヴァを受け止めた悟空は、界王拳ではパワー不足と判断して一気に超サイヤ人へと変身する。
「うぎぎぎ……はあああああっ!!」
さらにかめはめ波でスーパーノヴァを押し返し、正面で睨み付けるクウラへと向かって飛ばす。
しかしクウラは詰まらなそうにスーパーノヴァを受け止めると、あっさりとそれを消してしまった。
「……やっぱつええんだな。おい、悪いことは言わねえからさっさと仲間を連れて自分の星へ帰れ! オラをこれ以上怒らせるんじゃない……!!」
僅かに蒼電を全身から迸らせ、悟空はクウラへ向かって警告する。
「なにを言うかと思えばくだらんことを……。だがそのパワーには興味があるぞ。この俺の強さは宇宙一だ。それに匹敵するパワーが貴様にあるというならば、俺はなんとしても貴様を殺さねば気がすまん!」
言うなり飛びかかってくるクウラ。悟空も黄金のオーラを迸らせて向かっていく。
とびっきりの最強対最強の戦いが、今始まった。
コルド大王直属護衛軍隊長ゼラート。
その実力は特戦隊や機甲戦隊を置き去りにし、形態によってはフリーザやクウラさえ上回る実力をもつ。
まんま噛ませ犬な彼ですが、ピッコロ、ターレス、桃白々、ヤジロベー以外だったらぶっちゃけ詰みます。でも役割的にはボージャック戦でのゴクア。
そして仲間で初の犠牲者発生。対象はヤムチャと天津飯。どうにか隙を突いてみんなを逃がそうとしたヤムチャさんでしたが、戦い慣れた機甲戦隊相手には無茶が過ぎました。南無。
そして天さんは自爆。餃子が使ったことから使えるんでない? ということで。鶴仙流なんだろうか( ̄▽ ̄;)
クリリンはなんだかんだで生存となりますが、逆に自分を追い詰められる結果となりました。原作でのヤムチャがサイバイマンの自爆で死亡した直後を強調した形ですね。
他の戦いがどうなったのか。
そして今回の戦いがどうなるのか。
フリーザ一族対地球の戦士の戦いはまだ始まったばかりです。
次回もお楽しみに!