ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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さんたつさん、誤字報告ありがとうございます。
他の皆さんもいつも誤字報告のお礼が遅れてすいません。書き貯めでやっている部分があるのでどうしても遅れてしまいます。必ず目を通していますので、今後もよろしくお願いします。
また意図的な誤字や造語などは個別にメッセージで返信させていただきます。

なんとこの間の話でUAが10万突破しました! おめでとう私!(笑)
これもみなさんのおかげですm(_ _)m

さて、期待を裏切るようで申し訳ないですがフリーザとの決着は次回になります。
今回はクウラ&コルド大王です。
それでは本編をどうぞ。



第32話【降伏】

ラディッツがフリーザとの戦いを繰り広げている頃、中の都ではクウラと悟空の戦いに巻き込まれた民衆が避難していた。

 

「おかあさ~ん!」

 

わけもわからぬ内に母親を失った少女が泣き叫ぶ。繋いだ手の先にはすでに事切れた母親。このままでは少女も危ないが、手を離すことなどできもしない。

 

少女の上から、割れたガラスが降り注ぐ。

 

落ちてくるガラスというのはその実かなりの驚異である。万が一高層ビルのガラスが一斉に割れて降り注げば、その下にいる人間の命はそうそう助からない。

 

しかし、少女に降り注ぐガラスを一斉にエネルギー波で薙ぎ払う姿があった。ターレスである。

 

「ごほっ……! くっ、ダメージがでけえ。嬢ちゃん、さっさと逃げろ。ママは俺が後でなんとかしてやる」

 

「本当? ママ、元気になる……?」

 

「ああ、本当さ。だから今は逃げな」

 

「おじちゃんはどうするの?」

 

「おじ……そうだな、俺ももう少し頑張ってみるさ」

 

言いながらターレスは超サイヤ人に変身し、流れ弾となっているクウラの気弾を自身のエネルギー弾で相殺或いは弾いていく。

 

「しっかりしやがれカカロット! クウラの糞野郎にいいようにされてるんじゃねえ!」

 

ターレスは上空に飛び上がり、同じ作業を開始する。少しでも犠牲が減ることを願いながら。

 

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「ターレス……! よし、これで集中できる!」

 

「ふん、あの死に損ないか。余計なことを」

 

超サイヤ人となった悟空はクウラと対峙していた。

 

悟空はラディッツやピッコロとの修行で超サイヤ人としての力を限界まで引き出し、さらにそこを超える壁の向こうがすでに半ばまで見えていた。

 

だがお互いの実力は互角。恐るべきことにクウラは、フリーザに対抗して彼以上の気のコントロールを身につけていた。

 

トレーニングによる劇的なパワーアップこそないものの、精緻な気のコントロールによってクウラはパワーを遥かに増幅させていた。

 

「こうなっては貴様をなぶり殺しにするのも面倒だな。いいだろう、お前にひとつ教えてやる」

 

クウラはなぜか纏っていた気のオーラを解除し、一度地面へと着地する。

 

「俺たちフリーザ一族が変身能力のある種族だというのは貴様も知っているな?」

 

「……ああ。変身する度元の姿に戻っていくんだろ。それがどうした」

 

悟空は会話をしながらさりげなく懐の仙豆を取りだし回復する。

 

悟空は、目の前のクウラが自分の動きを阻害するためだけに中の都へと気弾を撃ち込むのを見ていた。

 

ゆえに覚悟する。目の前の敵は必ず倒さねばならない相手だと。

 

「ん? 回復か、くっくっく意外と抜け目がないな貴様。さて、説明の続きだ。貴様は今の俺を通常形態だと思っているようだが、それは違う。俺は一族でただひとり、もう一段階パワーアップするための変身ができるのだ」

 

「……なるほど。そいつがお前の自信の原因か。じゃあオラからも教えてやろう。オラ自身コントロールに自信がないが、実はオラももう一段階変身することができる」

 

ニヤリと笑う悟空。その言葉に僅かだが驚くクウラ。しかしすぐにその表情は笑顔に変わっていく。

 

「素晴らしいな。ではどちらが真の最強か比べることにしよう。そして見るがいい! この姿の俺を見るのは、貴様が最初で最後だっ!!」

 

高まる気に合わせてクウラの姿が一回り大きくなる。叩きつけられるように吹き寄せる気の風を流しながら、悟空もまた超サイヤ人の壁を超える為に構える。

 

「はあああああぁぁっーー!」

 

その姿になったがゆえに理性を失った最初の戦いを、悟空はよく覚えている。

 

神とミスターポポに精神と時の部屋をわざわざ改造してもらい、単純に時間が過ぎるだけの空間にしてもらうことで出口が消滅するデメリットをなくしてもらった悟空は、そこで十年以上の間を修行して過ごした。

 

あまりに出てこない悟空に痺れを切らしてラディッツとピッコロが呼び戻しに行ったのだが、そのときに起きた戦いは筆舌に尽くしがたいほどの激戦だった。

 

どうにか悟空を止めたピッコロとラディッツだったが、以後その姿には決してなるなと念を押されていた。

 

だが、目の前で高鳴る気を前に今のままでは絶対に勝てないことを理解した悟空は覚悟を決める。

 

「うああああああっっーー!!」

 

全身から蒼電を迸らせ、髪の毛をこれまでの超サイヤ人以上に逆立てた姿。これまでの修行で得てきたマイナーチェンジではなく、明確に増幅した気がクウラをして警戒心を抱かせる。

 

悟空は、変身が終了したクウラを見つめる。

 

ピッコロに匹敵する身長にまで至ったクウラ。両腕からは攻撃的な突起が生え、上半身の外殻は肩当ての部分が大きく肥大化している。

 

気を練り上げ増幅する技術を持ったクウラは、今かつてない強さを手にして降臨した。

 

「……フッフッフッフッフ! さあ、始めようか!」

 

クウラの言葉を合図に口を更なる外殻が覆う。

 

地球そのものが破壊されかねない戦いの火蓋が、切って落とされた。

 

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クリムゾンは各地の状況をスパイロボによって確認しながら、そのときを待つ。

 

スポッターの役割を与えられた15号は消耗したエネルギーを補うためか、懐から出したスキットルの液体エネルギーを口にする。すでに流れ弾も来ないためか、暇そうに佇んでいた。

 

「……ヤムチャと天津飯が死んだ、か。 ターレスは無事、重傷で動いている辺りはさすがサイヤ人だな。残りの状況はどこも互角、周囲への被害を考えるとあまり長引いてはこちらが不利だな。ラディッツがサテライトシステムを? ……そうか。こうなっては最悪地球のダメージをリセットする為に、ポルンガを召喚する準備を進めてもらったほうがよさそうだな」

 

クリムゾンは義眼を仕込んだ際に電脳化処置を施している。義眼と連動したこれによって高速で情報処理をする彼は、現在の状況を正確に把握することができる。

 

現状を把握したクリムゾンは、遠く戦っているコルド大王と人造人間らの方向を見つめる。

 

「さあて、コルド大王。悪いがお前を孤立させたのには理由(わけ)がある。そこに気づかなかった時点で、()()()の敗けだ」

 

クリムゾンはコンテナとは別のホイポイカプセルを展開すると、そこから現れた小型冷蔵庫のようなモノを慎重に開く。

 

中から出てきたのは70口径サイズの銃弾4発。もはや砲弾のカテゴリーに入ってもおかしくはないそれらを、クリムゾンは慎重に“シャーリーン”へ装填していく。

 

「後はタイミングだな。任せたぞ、グレイ少佐」

 

クリムゾンはコルド大王と激戦を繰り広げる人造人間13号ことグレイ少佐の名を呼びつつそのときを待つ。

 

__________________________________

 

人造人間2体とコルド大王の戦いは激しさを増していた。

 

ひとえにその原因は、最終形態となったコルド大王の予想以上の強さにあった。

 

「元祖“フリーザ”というデータに間違いはないようだな。14号、合図をしたら捕まえろ」

 

「コルド、大王!」

 

13号は距離を図りつつ、遠距離からS・Sデッドリィボンバーを連続で発射する。

 

しかしコルド大王は落ち着いてそれらを捌きながら、近づいてきた14号を蹴り飛ばす。

 

「ふん、人造人間だとぉ? くだらんガラクタめがっ!」

 

コルド大王は倒れた14号へ近づき踏みつけると、向けられた両腕を捉えて力任せに引きちぎる。機械部品が飛び散り、人工筋肉を動かす循環液が溢れだす。

 

「さあ、次は貴様がこうなる番だぞ!」

 

コルド大王はグレイ少佐こと人造人間13号を見ながら言うが、13号は余裕の態度を崩さない。

 

「なるほど、大したパワーだ。だがスピードが伴わないのは、年齢からくるものかな?」

 

嘲笑するように言い放つ13号。その言葉に表情を歪めたコルド大王は人差し指を構え、連続でデスビームを発射する。

 

フルパワーデスビームとも呼ばれるその技は、かつてのフリーザが放つそれより(はや)く、重い。

 

しかし13号は器用にも、待機状態のデッドリィボンバーを使ってデスビームを相殺していく。

 

「おのれ小癪な……! ならばこれでどうだ!」

 

続いてコルド大王が展開したのはデスボール。その大きさは圧倒的なもので、地球に被弾しようものならその被害は星の消滅にまで及ぶだろう。

 

だが13号はコルド大王のフルパワーデスボールともいえるそれを見て笑みを浮かべる。

 

“この瞬間を待っていた”と言わんばかりに。

 

それまで着けていた手袋を脱いだ13号は、その両掌にある()()()()()()()を露にする。

 

この装置は、恐ろしいことにエネルギー体が対象であれば瞬時にそれを吸収することを可能とする。更にこれと連動したエネルギー炉をドクターゲロは開発していたが、永久式の方がパワーは大きい。さてどうするかとなったところで、クリムゾンから“どちらも搭載すればいい”という鶴の一声があり、これを13号へと後付けで搭載する形になった。

 

「この星ごと消滅せよっ!!」

 

遂に放たれたフルパワーデスボール。

 

だが迫り来る破壊の宝玉を、13号は余裕の表情で受け止めあっさりと吸収してのける。

 

「なっ……!?」

 

さしものコルド大王も驚愕し固まるが、それこそ13号──グレイ少佐の狙い通りであった。

 

13号の体内に搭載されたエネルギー炉は3つ。永久式がひとつに、エネルギー吸収式がふたつだ。これはそもそも13号がある人造人間のテストベッドとして開発された経緯から来ている。

 

しかし被験者がクリムゾン少佐の元部下となったことで急遽使い捨ての用な仕様は変更となり、ならばと初めから全てのエネルギー炉を搭載して現在の形となった。

 

これにより、13号は切り札としてふたつのエネルギー炉を一時的に満たすことでさらなる形態へパワーアップ変身することができる。

 

だが今その必要はない。とどめを刺すのは彼ではないからだ。

 

そして未だ空中で無防備にしているコルド大王を見上げて、13号はニヤリと笑った。

 

「さて、位置はこんなものでよろしいかな。大佐殿」

 

『充分だ、グレイ少佐』

 

地球が丸いのは誰もが知っているだろう。あまりにも超長距離を狙撃するには、その丸みが邪魔になる場合がある。地平線までの直線距離はわずか4キロほどにしか過ぎないからだ。

 

だがそれも上空へ浮き上がってしまえば話は変わる。

 

遠方40キロという途方もない距離。そこからクリムゾンは衛星経由で誤差を修正しつつ、“シャーリーン”の引き金を引いた。

 

「……! なんだ? なんのつもりだ?」

 

着弾にほんの僅かだがたじろぐコルド大王。

 

そう、如何に威力をあげようとも所詮は弾丸。戦闘力にして億を超えるコルド大王には、()()()()ダメージを与えない。

 

しかしコルド大王には、重ねて同じ場所へのダメージが残っていた。

 

それは変身によって表面的な傷が塞がっても、完全には回復できないほどに。

 

着弾した弾丸に込められていた()()は、コルド大王に気づかれることなく侵食していく。

 

さらに、狙撃は一度だけで終わらなかった。

 

二度、三度、四度と。立て続けにコルド大王はまったく同じポイントに狙撃を受ける。

 

「こんなものでワシをどうするつもりだ。侮辱するのも大概に……ぐぅっ!?」

 

突然コルド大王が苦しみ始める。

 

見れば、撃たれた腹部からまるで蟻の群れが溢れるかのように赤いみみず腫が広がっていく。

 

「なんだこれはっ!? 言え、貴様ら一体なにをしたっ!?」

 

13号はコルド大王に向かって円盤状のホロイメージ投影機を投げつける。それはコルド大王の前で止まると、40キロ以上離れた場所にいるクリムゾンの姿を映し出す。

 

『どうもコルド大王。プレゼントはいかがですかな? それは、あなた方フリーザ一族用に調整した特製のマイクロマシン。ま、要するに“毒”ですな。意外でしたか? このような手段があることは』

 

クリムゾンは苦しみ悶えるコルド大王をホロイメージ越しに笑いながら見下ろす。スパイロボによってナメック星で採取したフリーザの細胞。ドクターゲロはわずかな期間でそれを利用した武器を作り出していた。

 

やがてコルド大王は、喋ることもできずゆっくりと降下を始める。

 

「ぐうっ……うぐぐ……!」

 

『喋るのも辛いでしょうからそのままお聞きください。コルド大王、取引をしませんか? イエスなら指を一本。ノーなら二本立ててください』

 

コルド大王は人差し指を立てる。彼の全身をまともに動くことができないほどの激痛が襲う。息をすることすら苦痛でしかない。正常な判断からはほど遠い状況にあった。

 

『今のあなたを苦しめているものを取り除く手段はありません。マイクロマシンはあなたの細胞からエネルギーを取り出し自己増殖します。もちろん、メディカルマシンは役に立ちません』

 

コルド大王は早く話を進めろと言わんばかりに必死で指を一本立てる。

 

『ああ、取引の話でしたね。すいません、折角の発明なので自慢したくなってしまいまして。おや? 痙攣が始まりましたね。あまり時間がないようだ。では用件を言いましょう。──コルド大王、レッドリボン軍に下れ。貴様が生き残るにはもはやそれしかない』

 

コルド大王は震えながらも意地で指を二本立てる。それを見たクリムゾンの表情が愉悦へと変わっていく。

 

『素晴らしいプライドの高さだ。だがいいのか? 後五分もしない内にマイクロマシンは貴様の脳にまで到達する。励起した状態で脳にまで達すれば死、あるのみだ。残り一分ともなれば、指を動かすこともできなくなるぞ』

 

コルド大王の指の本数は変わらない。だが体を支えることも難しくなったのか彼はその場に倒れてしまう。そこまでいっても、まだ指の本数は変わらない。

 

『息子達に希望を抱いているのか? 残念だがふたりともすでに虜囚の身だよ。ああ、フリーザは既に殺したんだったか。抵抗が激しかったらしいからな』

 

事も無げに言ってのけるクリムゾンに、コルド大王の全身が痙攣とは違った要素で震える。

 

ちなみにふたりを捕らえたなど嘘である。フリーザはパワーアップしたラディッツと激戦を繰り広げているし、悟空もまたクウラを相手に苦戦を強いられているものの戦っている最中である。

 

だがそんなことはスカウターに頼るコルド大王が知るところではない。

 

やがてそれから三分が経過し、残り一分も目前。コルド大王は、クリムゾンとレッドリボン軍に全面降伏した。

 

 




クリムゾン「どうだい体は正直だぜぇ!」
コルド大王「そんな悔しい……! でも……!ビクンビクン」

ということでコルド大王陥落。
伊達に軍人じゃないので、クリムゾンさん戦後処理まで考えてます。フリーザ軍がその後凋落の一途を辿ると言っても、それに伴って起きる混乱は起きない方がいいに決まってますからね。ちなみに元祖フリーザはオリネタです。フリーザ一族ってくらいですから襲名するんじゃないかなと思い付いたので。

あ、スキットルはちなみに昔の映画であるようなウイスキーとか持ち運びする金属の入れ物です。ググると出ます。ってこの作品読んでいただいている年齢層なら説明しなくても伝わりそう(笑)

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