ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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ようやっと決着がつきます。

宿敵との決着があっさりしてしまうのは自分の癖なのかなと思いつつ、よく考えたらこいつらまだ出番あるからかと思って納得しました。
ドラゴンボールCのときもフリーザに出番つくる予定だったんでっせい(´・ω・`)

忌むべきは我がメンタルの脆さよ……

とまあ冗談(?)はさておきみなさんいつも感想評価お気に入りありがとうございます。
タイトル通りこれにてフリーザ一族との戦い、決着となります。
次回からはいくつかサイドストーリーを交えながら来る人造人間編へと進んでいきたいと思います。


第33話【決着】

大猿の力と超サイヤ人の力。ふたつの力をひとつにしたラディッツは圧倒的な速度でフリーザを追い詰めていた。

 

「があっ……! おのれええ!!!」

 

背中に蹴りを受けてつんのめったフリーザは周囲へ滅茶苦茶にデスビームを発射する。

 

周囲一帯を破壊するデスビームだが、それはひとつとしてラディッツへ当たらず逆に隙だらけのところへ蹴りを貰ってしまう。

 

「あ、当たりさえすれば……!!」

 

思わずといった様子でフリーザは呟く。その言葉を拾ったラディッツは不意に動くのを止め、フリーザの前で立ちはだかる。

 

「だったら当ててみろよ。どうした、怖いのか?」

 

笑みすら浮かべて明確な挑発をするラディッツ。激昂するフリーザは気づかないが、彼の目的はフリーザを精神的に揺さぶることにあった。

 

「おのれっ……!! あの世で後悔しやがれっーーー!!」

 

フリーザのデスビームが狙い違わずラディッツの顔面を狙い放たれる。

 

しかしラディッツはデスビームを完全に見切ると、それを相殺できるだけの気を着弾する箇所にまとってダメージを相殺させる。

 

「な……!!」

 

「……星は壊せても、たったひとりのサイヤ人は壊せないようだな」

 

フリーザは戦いていたが、実際にはふたりの実力にそれほどの差はなかった。

 

ラディッツ自身、今の状態がどれほど続くか未知数な部分がある。ゆえに早く決めてしまいたい心理があるが、それでは焦りも生まれてしまう。フリーザを挑発したのは一種の賭けでもあった。

 

「……終わりだ、フリーザ」

 

ラディッツは腕に全身から集めたエネルギーを集中していく。

 

真紅のエネルギーが輝き、ラディッツの姿を照らす。

 

それはラディッツが唯一父親から貰ったプレゼント。

 

エネルギー弾がうまく扱えなかったラディッツを、見かねてバーダックが教えてくれたたったひとつの必殺技。

 

集めたエネルギーを凝縮し、敵に向かって投げ放つという無茶苦茶なエネルギー弾の基礎。しかしそれゆえか威力は高く、バーダックはその技を何よりの切り札にしていた。

 

母ギネはそれを見て“スピリット・オブ・サイヤン”などと大層な名前を付けていたなと、ラディッツは苦笑する。

 

「そ、その技は……!」

 

フリーザは再び目の前に現れた淡い光を見て戦慄する。かつて自らのデスボールであっさり吸収消滅させた技の、なんと恐ろしく雄大なことか。

 

「負けんぞ! 俺は“フリーザ”だっ! 俺が宇宙最強なんだぁーーーっ!!」

 

叫び、フリーザは全身をエネルギーで包んで特攻する。

 

「死ねええええええぇぇーーーっ!!」

 

「これで最後だああぁぁーーーっ!!」

 

それを見てラディッツは右拳のスピリット・オブ・サイヤンを構えたまま突っ込んでいく。

 

ふたつの極大エネルギーがぶつかり合い──激しいスパークの末互いのエネルギーが相殺される。

 

一瞬の静寂にフリーザは嗤う。この状況ならば、まだ構えに余裕がある自分の方が早いと。

 

「俺の、勝ち……! 「まだだぁっ!」 なにぃっ!?」

 

しかしフリーザの勝利宣言は止められる。他でもないラディッツによって。

 

右の拳が止められたならば、左の拳を使うまで。

 

これまでもラディッツは必殺技を常に両手を使って放ってきた。両利きである彼からすればそれは当然のことでもあったが、この場においてはそれこそが役に立つ。

 

──そう、彼のスピリット・オブ・サイヤンは両手にあった。

 

思わず右拳しか見ていなかったフリーザは、自分の胸にめり込む左拳をやけにゆっくりとした意識で見届ける。

 

「はあああーーーっ!!!」

 

「ぐぅおおあああああああああああーーーっ!?」

 

ラディッツの叫びと共に打撃を通して直接エネルギーを叩き込まれたフリーザが、まるで元気玉に巻き込まれたときのようにジグザグに飛んでいく。

 

「こ……こんな……! ばか……な……!!」

 

やがて地面を削り、地平線の果てまで運ばれながらフリーザはゆっくりと消滅していった。

 

荒れた呼吸で肩を揺らしながらラディッツは空を見上げる

 

なぜだかそうすれば、自分の姿を見てもらえる気がして。

 

「……ダック、お袋、親父……! 勝ったぞっ!!」

 

晴れ渡った空に高らかと宣言されたラディッツの声に続くように、レッドリボン軍で勝どきがあがった。

 

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一方クウラと悟空の激戦は、その戦場を遥か上空にまで広げて行われていた。

 

赤黒いオーラを纏うクウラと、蒼電と金色のオーラを纏う悟空。

 

二人の戦いは極限を超え、打撃ひとつが雲を吹き飛ばし大気を震わせる。

 

「だだだだだっ!!」

 

「りゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

悟空の連続かめはめ波と、クウラの連続デスフラッシャーが激突し、星々の瞬きを思わせる輝きを生んでは消えていく。

 

その余波は複数の台風を生み出しては蹴散らし、ピッコロが地上を守るために大型の結界を張らねばならないほどだった。

 

「せえりゃっ!!」

 

「だあっ!」

 

クウラの蹴りを悟空がよければ、悟空はクウラの尻尾をとらえてジャイアントスイングによってクウラを投げ飛ばす。

 

悟空の膝蹴りをクウラが受け止めれば、クウラの裏拳が悟空の股間を捉え悶絶させる。

 

ふたりにとって誤算だったのは、究極的なレベルであるこの戦いにおいて、互いのエネルギーの消耗もまたけた違いだったということだ。

 

しかし真剣勝負を続けるふたりはそのことに気づかない。

 

“目の前の敵を打ち倒す”。ただそのことに向いた意識は、次第にお互いの心から邪念を拭い去っていた。

 

「ぜえ……ぜえ……ぜえ……!」

 

「はあ……はあ……はあ……!」

 

ふたりの戦いは、もはや空を飛ぶこともできなくなったことで地上戦へと移っていた。

 

お互いの体を包んでいた強大なオーラはもはや残り少ない。それでも二人は互いに勝利を確信して笑い合う。まるで親しい友のように。

 

確実に刻まれたダメージと疲弊は立っていられるのが不思議なほどにふたりの体を蝕んでいるが、それでもどちらもが敗けを認めないのは、このふたりがとびっきりの戦闘狂だからだろう。

 

クウラと悟空はまるで鏡写しのようにとっておきのエネルギーを拳に込める。

 

「オラの……勝ちだ!」

 

「貴様の……敗けだ!」

 

クウラと悟空の拳がクロスするように互いの顔を捉える。

 

まるで大質量同士がぶつかり合ったかのような衝突音を残して、両者は共に気絶した。

 

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戦いは終わった。

 

だが事態の収拾にはまる二週間かかった。

 

激しい戦いによって荒れ果てた大地の修復もそうだ。これには結局ポルンガを使用せざるを得なかった。

 

また、巻き込まれて死亡した一般人やヤムチャ、天津飯らを生き返らせる為に地球のドラゴンボールを復活させる必要があり、当然と言えば当然だがナメック星人から新しい神が選ばれた。

 

希望者が思った以上に多かった為抽選方法は難航したが、最終的には最長老の鶴の一声でデンデに決まった。

 

これによりドラゴンボールはいくつかの改良が加えられ蘇り、犠牲となった人々は一人残らず蘇ることができた。

 

以下が新しいドラゴンボールの願いを叶える条件である。

 

・死後何年経っても、蘇生が何度目であっても復活できる。ただし自然死は対象外。

 

・願いの範囲によって大勢の人間を同時に蘇生できる。

 

・叶えられる願いはひとつ。

 

今後デンデのパワーが増せば叶えられる数などは増える可能性があるとのことだったので、クリムゾンは先行投資としてデンデが欲しがっているものを全て用意して神殿に送った。神殿の増築もついでに聞いたが、それはミスターポポに却下された。

 

また、気絶したクウラは捕らえられた。額にはベジータと同じく、緊箍児を取り付けられている。

 

戦闘力を100万までしか上昇できないように調整されており、彼は実に不思議そうな表情で現状を受け入れていた。

 

なお戦闘力100万という規格外の数値であるが、宇宙規模で見れば十分規格外の強さを誇るこれも、彼からすれば本来の強さの1パーセントにも満たない。

 

本来なら更に引き下げることもできるが、これはレッドリボン軍の傘下に下ったフリーザ軍を、今後も円滑に運用させるために最低限必要と見られた数値であるからだ。

 

そう、フリーザ軍は正式にクリムゾンもといレッドリボン軍の傘下となった。

 

しかしフリーザ軍の戦闘員のみに限っても、総数85万人以上という大組織である。これをレッドリボン軍がそのまま運用することは物理的に不可能であるため、組織を大幅に改革するのは今後の活動方針のみにとどめ、現状は今の地上げ業を継続することが認められた。

 

とはいえ今後不必要な地上げは禁止されており、また無理矢理居住している種族を絶滅させるような手法も禁止された。そして今後は人の住めない環境の星の資源調査や環境開発がフリーザ軍の主な任務として割り振られた。後者はすでに似たようなことをしていたこともあり問題なかったが、前者は部下の管理を徹底しても到底上手くいくかはわからなかった。

 

だがクリムゾンは気にしない。運営するのは現役復帰させられたコルド大王だからである。

 

マイクロマシンの激痛にすっかり降参したコルド大王は、クリムゾンに脅され上記の方針に従うことを誓わされた。また、その行動は常にスパイロボによって監視されることになっており、年に一度地球へ直接報告しに来るようにも命じられた。

 

ちなみに1年という期限はコルド大王の体にすっかり馴染んだマイクロマシンを調整する為の期限であったりもする。

 

踏んだり蹴ったりのコルド大王ではあったが、生きていることの喜びを実感した彼に否やは無い。

 

そしてこれは特に周囲から反対されたが、彼は戦闘力を抑えられてはいなかった。マイクロマシンによって肉体を内側から支配していると言えばそれまでだが、なにより彼自身が精神的に完全敗北したクリムゾンへ奇妙な忠誠を誓うようになってしまったのが原因でもある。

 

心を読める複数の人間がコルド大王を相手に詰問したが、いずれも彼の忠誠心を示す結果しかでなかった。

 

そして一ヶ月後。ようやく事態を沈静化させたレッドリボン軍本部にて、少々の改造を受けたコルド大王の宇宙船は出発を控えていた。

 

「それではクリムゾン総帥。不承コルド、今後も御身の為に粉骨砕身して働く所存でございますので、どうぞこれまでのことは寛大な処置をいただけるよう伏して願い申し上げます」

 

三メートル近いコルドは最敬礼の形をとるが、それであっても相手に威圧感を与えてしまう。

 

しかしクリムゾンはそんなことは気にせず、大仰にコルド大王の忠誠を受けとる。

 

「気にするな、これまでの貴様らの行為は全て不問に処す。……が、今後妙な動きを少しでも見せてみろ。地獄の方が手ぬるく感じるほどの悪夢を見せてやる」

 

クリムゾンが見せる凄みに、コルド大王は怯える。

 

その横ではクウラが、クリムゾンの持つ違った形での強さに興味を引かれたのか、考え込むような顔つきになる。

 

それでも事態は彼の為だけに待ってはくれない。着々と進んでいく発進準備。なのでクウラは、思っていたことをその場で発言することにした。現状は無許可で発言するだけで緊箍児から痛みを与えられるようになっているので、まずは無言で挙手をするはめになったが。

 

「発言を許可しよう。なにかあるなら言ってみろ、クウラ」

 

クリムゾンはその一挙一動を見逃さないとでも言いたげに冷たい視線でクウラを見つめる。

 

「……軍の状況が落ち着いたら俺を地球に移住させてほしい」

 

「なっ!?」

 

クウラの発言に全員が驚く。特にクリリンは明らかにその言葉に反発した。

 

すでに生き返ったとはいえ、彼の部下にヤムチャや天津飯を殺された恨みはあまりある。

 

だがそれで折角の平和な状況をぶち壊すわけにもいかない。天津飯とヤムチャから肩に手をおかれ諌められたのもあり、クリリンはこの場での決定権を持つクリムゾンを見やる。

 

クリムゾンはしばし悩んだ末に、条件付きで認めることにした。

 

「……いいだろう。ただしその覚悟が本当か見極めてやる。1年後までにフリーザ軍をまとめておけ。それが出来たならば当分は俺の元で働いてもらおう。楽な仕事は与えんから覚悟しておけ」

 

「……恐悦至極に存じます」

 

やはりその態度は慇懃無礼だったが、クリムゾンはひとまずこの厄介な存在が手元に来ることにホッとした。

 

戦闘記録を見たクリムゾンをはじめ一部の者は気づいたが、クウラの気を扱う習熟度は悟空や桃白々に匹敵する。いずれ経験を積めば、彼ら以上の領域に到達する可能性さえあるだろう。

 

加えて勝利するためには手段を選ばない容赦のなさもある。

 

下手に物理的な距離をとって何らかのきっかけでクウラが決起するのを見逃せば、今度こそ取り返しのつかない事態に陥るかもしれない。

 

この為、実はクリムゾンは最初クウラの処刑を決めていた。が、今回決着がつけられなかった悟空たっての願いにより、戦闘力を制限するに留めたのである。

 

……こうして、フリーザ一族の襲来という未曾有の大事件は幕を閉じた。

 

これより数年後、ナメック星人はナメック星に似た環境の星をコルド大王が無償提供したことで半数がそちらへ移り住むことになる。

 

しかしそれよりも前に、一人のナメック星人が寿命を迎えようとしていた。

 

 




「当ててみろよ」のシーンを書いててなぜか「当ててんのよ」のシーンが脳内に出てきた自分は疲れているんだろうか。うん疲れてるわ(笑)

最後のは不穏なものではなく、そろそろ……という話ですね。とはいえ長くなったので次回です。

前書きでも書きましたが、みなさんほんと感想&評価ありがとうございます。
こんな自己顕示欲全開な作者ですがどうかこれからもご贔屓いただけますようよろしくお願いしますm(_ _)m

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