ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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超人じゃない人さん、誤字報告ありがとうございます。

今回は勇者コルドの冒険(´・ω・`)(笑)
ちなみに前回感想でフリーザ一族の年齢設定を書いていただいた方がいましたが、この作品では人間のざっと20倍と考えてください。ちなみに冒険に出たコルドは140歳です。7歳(笑)

さて、今回は劇場版でも(個人的に)人気のあのキャラが前半を飾ります!

後半は作者大好きコルド大王のお話! 

それでは本編をお楽しみください。


第35話【楽園】

天界にて。

 

──過ぎ行く時節というものは、時に残酷なほどになにもかもを置き去りにする。

 

ガーリック三人衆及び魔族四天王を引き連れ神を襲おうとした、青い肌に子供のような体躯をしたガーリックJr.は正座の姿勢でそう思った。

 

「……なるほど。遥か昔、神の座を争ったというガーリック。お前はその息子もとい転生体か」

 

「は、はい。その通りにございます」

 

ピッコロの問いかけに、ガーリックJr.は平伏して答える。

 

目の前の神とよく似た顔つきの、その実力はかつての神とは似ても似つかない巨人(ピッコロ)に見下ろされながら、ガーリックJr.は死にたくない一心で全面降伏していた。

 

最初、彼はドラゴンボールで不老不死を得てから神を襲ってその座を奪おうと企んでいた。

 

ところが、部下にどれだけ探させてもドラゴンボールは見つからず、ならばと先に神を強襲すれば、そこにいたのはかつての神を思わせる小さな少年がひとり。

 

神がすでに代替わりしたことなど知らず困惑する一同の前に現れたのは、存在自体の次元が違う巨人(ピッコロ)であった。

 

ガーリックJr.を含めたガーリック軍団一同は全員が魔族であり、凶暴さと極悪さを兼ね備えた凶戦士集団だ。それはすなわち多少の実力差など気にも止めずに挑む蛮勇の持ち主でもある。

 

しかし、その全員がピッコロを前にして平伏するしかなかった。逆らったところで消滅する未来しか想像できなかったからだ。

 

「そうか。俺もまた、かつてはピッコロ大魔王から生み出された転生体だった。しかし出会いを重ね、戦いを重ね、今はこうしてナメックと地上の者を見守る役目を己に課している。お前もまたいずれそうなることを願うぞ」

 

ピッコロはそう言ってガーリックから背を向ける。

 

なんの沙汰もないことにガーリックJr.は呆然としていたが、ふと立ち止まった巨人(ピッコロ)が振り返った。

 

「……ああ、言うまでもないと思って忘れていたが、魔族の本能を満たすような行動は慎めよ。この星にはすでに貴様らなど問題にならん連中が多数いる。ほんの僅か出し抜いたところですぐに誰かに殺されるのが落ちだ」

 

淡々と事実を述べるピッコロ。

 

ガーリックJr.らはそれを疑うことすらなく、ひたすらに平伏して拝聴する。

 

「は、ははっー!」

 

そうして何故か自分が神だという少年デンデに心配されながらガーリック軍団は地上へと戻った。

 

しばらく誰もが呆然としていたが、ふとガーリックJr.はふつふつと己の情けなさに悔しさと怒りが込み上げてきた。

 

なにが神か。あんな化け物に見守られた神などどこにいるのだと、自分がその座を乗っ取ろうとしたことなど棚にあげて激昂した。

 

そして、部下を引き連れガーリックは世界中を回った。どこかに自分達の楽園があるだろうと。

 

せめて巨人(ピッコロ)に見つからない場所がいいとあちこちを探し回った。

 

時々巨人(ピッコロ)が言った通り自分等の力を歯牙にもかけない強者を見かけることもあった。

 

その際気づかれた場合にはこちらから巨人(ピッコロ)の名を出し平身低頭することで事なきを得た。

 

巨人(ピッコロ)様様である。

 

中には共に弟子入りしないかと話しかけてくれる者もいたが、その修行風景を見てガーリック軍団はあっさり諦めた。2本角の魔族らしき男には悪いが、空中で受け身も取れず叩きのめされ続けるのは組手とは言わない。

 

そうしてガーリックJr.はついにたどり着く──! 

 

無数の魔族が住む魔神城へと。

 

「お、おお……! ようやく、我らに安住の地が……!!」

 

ガーリックJr.は思わず瞳に涙を浮かべる。この星の居心地のどれだけ悪いことか。

 

旅をすれば自分達以上の達人に出会う環境など冗談ではない。

 

ぶっちゃけガーリック軍団はもう引きこもりたかった。もう一回封印されたいとも言う。

 

──しかし、魔神城の住人らはそうとは考えていなかった。

 

彼らは宝玉“眠り姫”に秘められた魔力を用いて、太陽を消し去ろうと計画していたのだ。

 

慌てたのはガーリックらである。同じ魔族の上位者として歓迎されたのはいいが、そんなことをしでかそうとすれば自分達もろともここら一帯が更地にされかねない。というか勝手に責任者にされかねない。

 

その様子にガステルという魔族はガーリックJr.らを鼻で笑ったが、ぶち切れたガーリックJr.の変身形態に殴られて沈黙した。

 

そうして魔神城の魔族対ガーリック軍団という奇妙な戦いが始まった。数で勝る魔神城の魔族軍団だったが、腐っても神に成り代わろうとしたガーリックJr.率いる軍団である。あっさりとそれらを蹴散らし勝利することができた。

 

しかしひと安心したガーリック軍団の元へ、ひとりの男が現れる。

 

──キシュン──

 

──キシュン──

 

濡れた床をこするような不快な音を感じて、ガーリックらは一斉にそちらを向く。

 

そこには、奇妙な環を頭に嵌めて尻尾を生やした魔族らしき男が立っていた。

 

「なんだ、もう終わってしまったのか。貴様ら、ここで異常なエネルギーが発生したとの報告を受けて俺は派遣されてきた。何があったのか説明してもらおう」

 

その男、クウラはクリムゾンに派遣されて魔神城の鎮圧に赴いていた。

 

ガーリックJr.は再び絶望した。

 

目の前の男には以前出会った巨人(ピッコロ)のような容赦はない。逆らえば死あるのみ。返答を誤ればその場で殺される、と。

 

一同は再び土下座し、誠心誠意気持ちを込めて説明した。

 

それを聞いて戦えなかったことが不満だったのか、クウラは話を聞くと鼻を鳴らして帰っていった。

 

危機は去ったのだ。

 

「ガ、ガーリックJr.様……!」

 

ガーリックJr.は放心していた。もはや野望などどうでもよかった。ただただ生きていることに感謝した。

 

その祈りが神に祈りを捧げるものに似ていると気づいて、ガーリックは決めた。

 

「……もう、魔族やめる」

 

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それから半年後。魔神城はその名をガーリックランドと名を変えて、遊園地としてオープンしていた。

 

今日もガーリック三人衆や魔族四天王は忙しく働き、キャストである魔族らも精力的に活動している。

 

今の時間はオープン前の朝礼の時間である。

 

「みなさんおはようございます。レッドリボン軍の協力で我らがガーリックランドは早くも軌道に乗りつつあります。ですがここで油断することなく、今日も事故なくお客様を楽しませていきましょう」

 

ニコニコと笑顔で朝礼をするガーリックJr.。その姿をピッコロと融合したかつての神が見たら「誰だお前は」と言いそうであるが、本人である。

 

かつてのガーリック三人衆は協力してランド内にあるファミリーレストランを経営している。

 

魔族四天王は警備員として活躍し、また時おりレストランを手伝っていた。

 

中でもガッシュはその甘いマスクと美声から女性人気が現在鰻登りであり、彼のみすでにグッズ販売までされている。

 

しかし本人的にはそれは不本意な結果らしく、ストレスが溜まるとレストランでスイーツ作りに励んでいた。逆にそれがレア度を生み出しスイーツを含めて更なる人気を招いているのだが、本人は気づいていない。

 

ガーリックJr.は思う。平和が一番だと。

 

あの日クウラに威圧され、ガーリックJr.の心は完全に折れた。

 

するとどうだろう。つい先程まで戦って傷ついた魔族達が自分と重なって見えて、ひどく慈しむ気持ちが湧いてきたのだ。恐怖のあまり頭がおかしくなったと言ってはいけない。

 

そこでガーリックJr.は自らの魔力と把握する限りの財宝を使い、魔神城を大改築。魔族に対応した全天候対応ドーム型のアトラクションパーク施設を展開したのだ。

 

さすがに部下の誰もがこの事態に困惑したが「だったらピッコロ倒してこい」と言われれば誰も逆らえなかった。

 

そうして不満を抱いた部下達もいざ運営がはじまってみればこれが思ったよりも楽しく、またどこからか話を聞いたクリムゾンが観光客を魔神城へ案内するツアーを企画したことでガーリックランドは爆発的に流行することになった。

 

窓から見える暗い景色も、もはや一種の名物である。ガーリックJr.は、その景色を見ながら「どうかもう誰にも絡まれませんように」と常より欠かさない神への祈りを捧げるのだった。

 

その祈りはデンデに届いていたが、日々受けとる度に微妙な顔つきだったそうな。

 

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宇宙における段違いの強者はいくらでも存在する。しかしその中において最強であり最も特別なのはフリーザ一族であるというのが、コルド大王を初めとしたフリーザ一族三人にとっての常識だった。

 

しかしその驕った考えは改めさせられた。強制的に。

 

圧倒的に戦闘力で劣る地球人の男。クリムゾンによって。

 

コルド大王はかつて“最強はフリーザ一族でなくてはならない”と考えていたが、それも今回の件で“最強となった者がフリーザの称号を受け継げばよい”といったものへと変わっていた。

 

とはいえ、それは力があれば誰でもいいというわけではない。

 

自らが認めたあのクリムゾンのように、底の知れない恐ろしさと強さを併せ持った者でなければならないだろう。

 

そうでなければ、ただ強い力を持つ者によって“フリーザ”という存在そのものが葬られるだろう。

 

(……そうとも、今回は運が良かったのだ。くくっ、忠誠などいくらでも誓おうとも。あのクリムゾンは後何十年生きていられる? ワシとて齢は重ねたが、まだ500年は生きる。奴が没してからが全ての始まりよ。今は頭を垂れ、足元に跪こうとも、100年先は違うのだからな)

 

コルド大王がクリムゾンに忠誠を誓っているのは事実である。だがそれはあくまで彼そのものにだ。彼の組織ではない。

 

ならば彼が死んだ後、その座に自らが就けばよいとコルド大王は考える。

 

幸いにも若返ることすら可能とするドラゴンボールが地球とナメック星には存在するのだ。ゆくゆくはそれを用いて若返り、不老不死になるのもいい。

 

だというならば後100年程度の忠誠がなんだというのか。これは壮大な先行投資なのだから。

 

そう、野心と忠誠は両立するのだ。

 

ふと、コルド大王はクリムゾンに任された調査のひとつに他勢力の調査が入っていたことを思いだし近くに控える部下へと訪ねる。

 

「おい、スラッグの動きはどうなっている」

 

「は、はっ! ただいまフリーザ軍の総力を上げて捜索しておりますが、どうやら“代替わり”の直後らしく潜伏している模様で……!」

 

声をかけられたことに冷や汗を流しながら必死に告げるフリーザ軍の兵士。彼はコルド大王の直轄護衛軍がなくなった影響で繰り上がり的に側近とされていた。

 

名をタゴマという。

 

「……ふむ。代替わりか。前回から200年ぶりとなれば……少々厄介かもしれんな」

 

コルド大王は過去の記憶を思い起こす。スラッグが宇宙における一大勢力と化したきっかけとなる“代替わり”をかつて行っていたことを。

 

魔に落ちたナメック星人のみが行えるとかつてスラッグ自らが語ったこの秘法は、自らの転生体を全生命力を賭けて生み出す行為である。スラッグはこれを定期的に行うことによって、ナメック星人としての限界を遥かに超えて強くなってきた。

 

ただし代替わりの際には一時的に戦闘力が極端に下がってしまうこともあり、必ず潜伏するのだ。ここ100年ほどはフリーザに敗北したことがよほど腹に据えかねたか、何やら企んでいるようであったが、どうやら今のスラッグは自らの生を捨ててでも欲しいものがあるらしいとコルド大王は推測する。

 

ふと、コルド大王は遥か昔を振り返った。

 

彼が生まれた1000年前はまさに動乱と暴虐の時代だった。

 

それを成した者こそは、今もなお語られる“伝説の超サイヤ人”である。

 

かつてコルド大王はその長い経験から、フリーザに警告したことがある。

 

“破壊神と魔人ブウには手を出すな”と。

 

しかしどちらも滅多に地上世界へ干渉することなどなく、魔人ブウに至っては広い銀河のどこかで封印されているという話である。それでも戦って勝てない存在であると判断したのがその二つの存在であった。

 

なぜコルド大王にとって破壊の原点とも言える伝説の超サイヤ人のことをフリーザに警告しなかったのか。

 

その理由はふたつある。ひとつはフリーザの潜在能力である。

 

コルド大王の最高傑作とも言える彼は生まれたときよりずば抜けた戦闘力を有し、その潜在能力に至ってはいずれ破壊神をも超えかねない至高の領域を感じさせた。

 

そしてもうひとつの理由は、かつて伝説の超サイヤ人を殺したのが他ならぬコルド大王だからである。

 

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1000年もの昔。銀河を破壊と混乱の渦に巻き込んだ存在があった。

 

伝説の超サイヤ人。

 

当時、突然変異というものはそれほど認知されていなかった。ましてや、惑星を単体で破壊する生命体など正気の沙汰ではない。

 

それもそうだろう。バリアによって生身で宇宙空間を移動し、星々を片手間で破壊するようなものなど確認されていなかったのだから。

 

しかしこれが後に、一万年ぶりに破壊神を現世に干渉させるきっかけともなった。

 

現れた“伝説の超サイヤ人”によって、宇宙は乱れに乱れた。その溢れるエネルギーと闘争本能の赴くままに、当時最強だった銀河帝国の艦隊を一方的に蹂躙する様を見たコルドは感動すら覚えたものであった。

 

コルドが生まれたのは、そんな“伝説の超サイヤ人”が暴れ始めた頃であった。生まれた当初より自我を持っていた彼のパワーはすさまじく、後に開発されるスカウターがあればその戦闘力は53万を記録していたであろう。彼もまた突然変異の存在であった。

 

そして人々は彼に希望を抱いた。フリーザ一族が代々銀河帝国における盟主のひとつとして力を持っていたことも関係したかもしれない。彼ならば、いずれあの破壊と暴虐の化身に勝てるのではと誰もが思わずにはいられなかったのだ。

 

ゆえにコルドは惑星フリーザにおいて代々引き継がれる()()の称号“フリーザ”の名前と、過去に神より賜ったと言われるカッチン鋼の剣と鎧を装備し最低限成長するのを待って討伐に向かわされたのだった。

 

こうして冒険に出た若きコルドであったが、彼の目的は“伝説の超サイヤ人”などになかった。潜在的に有した圧倒的な力と残忍さをひた隠し、コルド・フリーザの帝国を作ることこそが目的だったのだ。

 

これは勇者の名を持つ軍隊、フリーザ軍の設立がなされる100年ほど前の話である。

 




みんなおいでよ! ガーリックランドへ!
ここには楽しいアトラクションがいっぱい! ひとつとして偽物じゃない色んなキャスト(魔族)がみんなを待ってるよ!
今なら来場者全員にアクアミストをプレゼント! 
ナレーター:神谷明

(´・ω・`)「すべて嘘ですっ!」デデーン


ということでガーリックJr.登場。思いっきりある人の影響受けまくってます。むしろこいつ登場させるのにこの展開以外思い付かなかった(笑)
なお善人が狂気に陥って悪落ちってパターンはありますが、では悪人が狂気に陥ったならば?
一応はそんな発想から書いてます。

そして後半はコルド大王立志伝。
色々設定違うのはご了承ください。チルドとか。あれ個人的にあまり好きくないのです。
次回丸々1話使うかもです。

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