……そういえば師匠がももしろしろ言うてたぜ。えへへ(白目)
とはいえここまで書いてきた中で彼のキャラクターは大分変化してきたので彼の名前表記はこれまで通り【桃白々】で行こうと思います(本音:出番多いから編集が大変)
この間のピッコロの意味といいこういったちょっとしたミスはちょいちょい出てくると思いますが今後とも生暖かく見守ってください(´・ω・`)
さて、本編は今回次回としばらくは外伝じみたお話が続きます。
ちょっと色々なキャラが設定だけで置き去りになってますので、掘り下げていく予定。
数百はあろうかという無数の気弾が飛び交う中、どこか小柄な人影がそれらを見もせずに避けている。
並み以上の達人であっても視認することすらできないその気弾は、“速さ”に加えて追尾する性質を付加して開発したクリリンの新技である。
かつてヤムチャが扱った繰気弾とは違い、この気弾は一度決めた目標へそのエネルギーが尽きない限り延々と追い続ける。
そしてこれらを気配だけで避けられるようになることが、今クリリンが己に化している修行だった。
しかしクリリンがこの修行をはじめてすでに10時間。とうに集中力は切れ、体に染み付いた反射と経験から対処しているに過ぎなかった。
「ぐあっ!」
──遂に限界が来る。ひとつ当たってしまえば次々と気弾はクリリンに命中し、ただでさえ消耗した体力を削り命の危機が迫る。
(や、やばい……! 仙豆を……!)
どうにか自分を庇いながらクリリンは懐に手を伸ばすが、運悪く防御をすり抜けた気弾が仙豆の入った袋を焼いてしまう。
「しまっ──ぐあぅ!?」
遂には顔面に命中した気弾で一気に集中力が削がれ、クリリンは撃たれるがままになってしまう。
しかしあわやという瞬間、ひとりの男がクリリンの前に立ち塞がり気弾をすべて打ち落とした。
「ひゃ~危ねえ修行してんなぁ、クリリン。……ん? オラも人のこと言えねえな」
顎に手を当てて以前自分がやっていた修行を思い出したのか苦笑する悟空。クリリンはそんな悟空の姿を見上げることでようやく彼を認識する。
「ご、悟空……どうしてこんなところに」
「いやあ、亀仙人のじっちゃんからクリリンが修行に行ったきり一週間も帰ってこねえって聞いたからよ。どこにいるのかクリムゾンのあんちゃんに聞いたら“精神と時の部屋”だっていうから慌てて来たんだぜオラ」
「……そうか。もうそんなに経っちまってたのか。なあ悟空、どうして俺は弱いのかな」
「どうしたんだクリリン、らしくねえぞ」
「へへっ、わかってるよ。それでも、散々修行して付けた力が、敵のボスどころか下っ端にも敵わないなんてさ、悔しいじゃないか……!」
血を吐くようなクリリンの言葉。
彼は悔しかった。悟空やラディッツ、ピッコロといった圧倒的強者にも戦い方を工夫してこれまで互角に鎬を削ってきたというのに、今回の戦いではそれがまるで役に立たなかった気がして。
実際にはクウラ機甲戦隊も決して弱者などではない。むしろ、圧倒的な実力差を有するクウラに仕えその露払いを任されたエリート中のエリートである。ましてや彼らは連携に長けており、トリッキーな戦い方をするクリリンらにも比較的有利に立ち回る結果となったのだ。
悟空は無言で俯くクリリンを見下ろす。そしてふと思い付いたのか、クリリンに声をかけた。
「なあ、クリリン。ちょっと手出してくんねえか」
「え? あ、ああ」
戸惑いながらも悟空へ手を差し出すクリリン。すると、彼が悟空の手を握った瞬間赤い炎のような力が流れ込んだ。
「うわっ! な、なんだ今の!」
「界王拳だ。クリリンにやるよ」
「おいおいいいのかよ!? これってお前の切り札なんじゃないのか!」
クリリンは哀れみから自分に大切な技を渡したのかと少々怒りながら問い詰める。
しかし悟空は笑顔のままクリリンに言い返した。
「ああ、切り札っちゃ切り札だな。けどよ、オラクリリンがずっと悔しがったままよりはずっといいぞ。それにタダじゃねえ。うんと修行したらいの一番にオラと戦ってくれ。手加減なんてしたら容赦しねえぞ」
「悟空……」
クリリンは親友の気遣いと未だに同じ目線で自分を見てくれることにさっきまで向けていた感情がひどく恥ずかしく思えて泣きそうになる。
「……わかった。界王拳、お前よりずっと上手く使ってやるよ。返してくれって言ってももう返さねえぞ!」
どこかおどけて悟空へ笑いかけるクリリン。真っ白な異次元世界で、親友同士の笑い声が響いた。
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ここはレッドリボン軍本部にある宇宙船の発着場。
そこでラフな服装をした黒い短髪の青年が、いつも通り軍服姿のクリムゾンと対峙している。
「……本当に行くのか」
「ええ、迷いはありません。それよりいいんですか、こんないい船を貰ってしまって」
ヤムチャは荷物を背負った方の手で親指を使い後ろにある宇宙船を指し示す。
そこに鎮座するのは白亜の巨艦。全長298m、全高106.8m、全幅148m、総重量37,530トン、収容人員214名。重力波エンジン2基、核パルスエンジン4基搭載という地球最強の戦艦である。名を“ディアンサス”という。船の操作がひとりでも可能であるのがこの船最大の特徴である。
「構わん。君の活躍を評価するならこの程度は報酬としての範囲内だ。ついでに各地でのデータ収集も頼む。フリーザ軍の情報だけを鵜呑みにするわけにはいかないからな」
「ええ、その程度お安いご用ですよ」
ヤムチャはそう言って慌ただしく荷物を詰め込むプーアルへと近づいていく。
なぜ彼が宇宙へ行こうとしているのか。クリムゾンは詳しくを聞いていない。ただ彼から相談を受けたとき、一も二もなくクリムゾンは頷いた。地球を守った影の功労者である彼からの願いである。断る理由など何一つない。
「それじゃ……いってきます」
「……ああ、死ぬなよ」
宇宙船に乗り込み、ヤムチャは去っていく。クリムゾンはそんな彼がどこか眩しく、羨ましく見えるのだった。
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星の海へと旅だったヤムチャ。彼が最初に辿り着いたのはアーリア星という荒れ果てた星だった。
「ここは……ひどいな……」
かつて住まいとしていた荒野以上に荒れ果てた大地にヤムチャは物悲しい気持ちになる。
「ん? いくつかの気がこちらへ向かっている……」
さほど警戒するわけではなかったヤムチャだが、彼を囲むようにしてアーリア人の戦士達が現れた。
「なんと醜い姿だ! 宇宙人か? 狩りの最中にこんな奴に出くわすとはな……だがいい。モアイ様にペットとして献上してやるぜ!」
「……やれやれ、楽しそうな星だな。プーアル、しばらくそのままでいろよ」
(はい、ヤムチャ様)
巨大な芋虫じみた生き物に騎乗するアーリア人。まるで人型の昆虫じみたその姿にヤムチャはやや戦慄するが、ひとまず事を荒立ててはまずいと抵抗せずに捕まる。念のため、プーアルをマントに変化させたまま。
連れていかれた牢屋には、自分を捕まえたのと同じくアーリア人もまた捕らえられていた。
「う、宇宙人だ!? 初めて本物を見た……!」
「モアイめ、とうとう宇宙人にまで手を出したか。どうやら君がフリーザ軍でないのが救いか。だが、君も悪いタイミングでこの星へ来たものだ。この星はモアイが王座に就いてから滅茶苦茶だよ」
捕らえられていた二人のアーリア人の内、青い甲殻のアトラという若者(?)はヤムチャにアーリア人を襲った悲劇を語った。
イエティなる遺伝子操作の化け物を従えるモアイ王は、本来の王族であるアトラを初めとしたアーリア人を恐怖で支配し、今となっては国民をおもちゃにする毎日だという。彼の妻であるレムリアもまた、モアイ王に奪われ凌辱されていた。
「許せんな」
静かに激昂するヤムチャ。彼は立ち上がると、牢の前へと歩いていく。
「ん? なんだ宇宙人。なにか用……なにぃ!?」
ヤムチャの行動を問いただそうとしたアーリア人の戦士は、目の前で鋼鉄の手錠を平然と引きちぎられて驚愕する。
さらにヤムチャは牢屋の入り口である分厚い金属の檻を無造作にこじ開け、怯えるアーリア人の戦士を見下ろしながら言った。
「モアイ王に会わせてもらおうか」
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円形闘技場のごとき場所に自身の玉座を置き、戦士らを戦わせて暇を潰していたモアイ王はもはやその光景にも飽き飽きしていた。
「暇だな……なに? 宇宙人を捕らえただと? 面白い、可愛ければワシのペットにしてやろう。なあ、レムリア」
嫌らしく笑う紫色の甲殻をしたモアイ王。他のアーリア人と違い王の証でもあるのか、赤いマントを羽織っている。
彼が向ける視線の先にはアトラから奪った妻、桃色の甲殻を持つレムリアが座らせられている。
「君がレムリアさんかい?」
そこへヤムチャが前ぶれなく現れ、モアイ王を無視して問いかける。
「な、一体どうやって牢から出たのだ!?」
驚愕するアーリア人の戦士。牢屋の前にはヤムチャを止めようとしたアーリア人の戦士らが死屍累々といった体で気絶しており、アトラともう一人は呆然としていた。
「ふっ、それなりに腕に自信がありそうだな。いいだろう、お前ワシと賭けをしろ」
「賭けだと?」
訝しむヤムチャ。そんな彼の様子が愉快なのかモアイ王は値踏みするような視線でヤムチャを見下している。
「そうとも。ワシ自慢のイエティと戦って見事勝った暁には、なんなりと好きなものを褒美としてくれてやる!」
高々と宣言するモアイ王。ヤムチャはその様子を見て不敵な笑みを浮かべる。
「その言葉、覆せると思うなよ」
「ふっはっはっは! イエティを出せい!」
モアイ王の言葉に従い、円形闘技場中心にある昇降機から全高6メートルはあろうかという巨大なアーリア人が現れる。
彼こそはイエティ。遺伝子操作によって巨大化した肉体を持つ最強の戦士である。
「グガアアアアアアッッ!!」
もはや理性なき彼が従うのはモアイ王ただひとり。モアイ王はそんなイエティとヤムチャの大きさの対比にほくそ笑みながら命令を下す。
「やれいっ! 八つ裂きにしろっ!!」
振り下ろされた指に従って、イエティが動き始める。
ヤムチャは油断することなく構え──一瞬で百以上の拳をイエティへと叩き込んだ。
「ゴグッ……ガ……!」
雷鳴がごとき音と共に全身を凹まされ、倒れ伏すイエティ。モアイ王は思わぬ瞬殺劇に指を振り下ろした体勢のまま固まっている。
「さあ、約束を守ってもらおうか」
力強く宣言するヤムチャ。モアイ王は形振り構わず部下の戦士らへと命令を下す。
「こ、殺せっ! 殺せぇ!!」
「狼牙風々拳」
剣を掲げて飛びかかってきた戦士10人。口に当たる部分から怪光線を発射した戦士20人。それらすべてが、さきほどのイエティのとき以上の
「レムリア!」
そしてヤムチャが再びモアイ王へ詰問しようとしたとき、そこへ正気を取り戻したアトラがやって来てしまう。その姿を見て好機と考えたモアイ王はレムリアの首を無造作に捕まえると、近くの戦士から剣を奪い取りそれをレムリアへと突きつける。
「レムリアァッ!」
「アトラッ!」
悲痛な声をあげる二人。知らずヤムチャの拳に力がこもる。ヤムチャは
「その子を離すんだ」
「フ、フフ……! 一歩でも近づけば即座にこの女を殺す……! ワシが王なのだ! 貴様らに奪われてなるものか……!!」
「モアイ! 貴様ぁ!!」
この期に及んでもまだ自らの玉座を守ろうとするモアイ王の姿にアトラは怒りが抑えられず叫ぶ。しかしヤムチャはそんなアトラを冷静に制すると、不自然にモアイ王の後ろへマントが辿り着いたのを見て行動を起こした。
「動くなと……! ぐあっ、なんだ、前が、前が見えんっ!!」
マントの状態でモアイ王の視界を塞いだプーアルの援護に合わせてヤムチャが動く。
「牙狼疾風拳っ!!」
怒りを込めて叩きつけられた拳がモアイ王の首から下を消し飛ばす。
「やりましたねヤムチャ様!」
マントから
「あ、ああ。プーアル、いい加減その姿は止めないか……?」
抱きつかれた際の柔らかな感触と甘い香りに理性を奪われそうになってヤムチャは情けない声で尋ねる。
「ヤです! それにせっかく二人きりの旅なんですからヤムチャ様も女の子の方が嬉しいと思います!」
言いつつプーアルはささやかな膨らみをこれでもかとヤムチャの腕に押し付け彼を慌てさせる。
(……クリムゾンさんの言ったとおりでした。ヤムチャ様が好きならいっそ人間の女の子に変化してしまえばいい。考えもしませんでしたよ。……フフフ、もう少しですね)
天真爛漫な笑顔の裏で既成事実へのカウントダウンが進んでいることなど知る由もなく、ヤムチャは困惑し続ける。
彼らの後ろでは再会したアトラとレムリアが愛の抱擁を交わしていた。
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それから二日後。ヤムチャは宇宙船の前で見送りに来たアトラとレムリアを前にしていた。この二日“一緒に寝たい”と人間形態のプーアルに言い寄られて一睡もしていない為、その目の下には隈があったが。
「もう行ってしまわれるのですか」
「ああ、あまり復興を手伝ってやれなくてすまないな。けれど後は、君たちならなんとかなるはずだ。二人の今後に祝福があることを祈っているよ」
名残を惜しむレムリアの言葉にヤムチャは笑顔で応える。
復興を手伝ってやれないとヤムチャは言ったが、彼はモアイ王の迫害によって怪我を負ったアーリア人全てを癒していた。その数10000人。平気な顔をしているが、実際には疲労困憊である。
「お任せください。そしてヤムチャさん。アーリア人を救ってくれたあなたの行いは今後も語り継がせていただきます!」
すっかりヤムチャのファンと化したアトラが彼の手を握り感謝を表す。
「ははっ、お手柔らかに頼むよ。……それじゃ、また機会があれば会おう!」
颯爽と宇宙船に乗り込んで立ち去っていくヤムチャ。次なる星はいずこか。それは星々の瞬きだけが知っている。
ディアンサスの元ネタ初見でわかった人いたらスゲーと思う(´・ω・`)
まあ気になる方がいればカタログスペックそのままググってくだされ。
クリリン強化フラグ来ました(´・ω・`)
舞空闘劇が今から10年ちょっと前だと言うことに時の流れの残酷さを見せつけられた気分です( ̄▽ ̄;)
そして後半は怒濤のヤムチャ! 最初いつも通りダイジェストで済ませようかと思ったんですが笑顔な動画でアーリア星を見たら書かずにはいられなかった。来訪者が違うだけでこれだけ結末に違いが出るという一例ですね。ていうか旧アニメのオリジナル回最近知りましたよ( ̄▽ ̄;)
こういうお話は面白いから機会があれば他の話も拾いたいのでなにかいいエピソード知ってる人がいれば教えて下さい。