ごわめっ!? って言うとなんだかモヒカンチック。
評価していただいた方本当にありがとうございます。感謝の極みです。
18歳以上の方は是非他の作品も見てください(´・ω・`)
悪の権化。邪悪の化身。その名はピッコロ大魔王。
可愛い名前とは裏腹に悪行の限りを尽くした男の息子ピッコロは今、緋色の髪をした幼児スカーレットをあやしていた。
「なぜ俺が子供の面倒など……!!」
「負けたろ。ペナルティだよ」
クリムゾンは最近ようやく少し理解できるようになってきた気の修行を行っていた。
丹田に集中させた気を、全身に駆け巡らせ循環させる。
それだけで自分自身の力が何倍にもなったような気になり、全能感がクリムゾンの全身を満たす。
だがそれは見せかけだと知っている。こうして気を循環させられるようになったのもようやくなのだ。実戦での使用など夢のまた夢である。不可能とは言わないが。
ちなみにクリムゾンがピッコロを負かしたのはチェスである。
「……ふう。こんな技術を無意識で扱えるようになるというんだから、達人というヤツはとんでもないな」
「ふん! 才能がないのだからさっさと止めてしまえばいいのだ!」
「ふわぁ!」
「ぬおぉぉ! おい、な、泣くな!」
思わず一人ごちたクリムゾンをピッコロは責めるが、その怒気を感じたのかスカーレットがぐずってしまった。
ここで泣き始まってしまえばピッコロの敗けである。これもまた勝負なのだ。
「やれやれ、天下の大魔王の息子は赤ん坊の面倒ひとつ見れんらしいな」
「何を言うか! この俺を舐めるなよ! そおら首が伸びたぞー!」
クリムゾンに煽られピッコロは自身の首を伸ばしてあやそうとするが、それは逆効果だったようだ。スカーレットは本格的に泣き出してしまう。
「ふぎゃあああああ!!」
「な、なぜだ……!」
戦慄するピッコロ。見かねたバイオレットがスカーレットを抱き上げあやしはじめる。
「というか情操教育的にまず常識を身に付けなさいよ。首を伸ばして子供あやすとか完全に非常識じゃない」
「ぐぬぬ……!」
呆れてピッコロにアドバイスするのはブルー将軍。今日は休日なのだが、クリムゾンの組手に付き合っている。
「ま、何事も経験だ。格闘の修行だけでなくあらゆることを知ることは引き出しの多さに繋がる。引き出しの多さは戦いの場におけるとっさの判断の基にもなるからな」
そう言ってクリムゾンの言葉が締めると、その日のトレーニングは解散となった。
2年前、クリムゾン自ら回収した卵からはピッコロ大魔王の分身が生まれた。
自らピッコロと名乗った彼だったが幼い体では満足に抵抗もできず、半ば誘拐されるようにしてレッドリボン軍本部へと連れてこられた。
反抗的な態度を見せ続けたものの、その時点でのピッコロよりも遥かに実力のあるブルー将軍や人造人間8号ことハチと組手をさせるのを条件に、賭け勝負をクリムゾンに挑まれ気づけば二年が過ぎていた。
すでに体格としては大人と変わりないまでに成長していたが、最近では負けたときの条件が“娘のスカーレットの遊び相手になる”であったり“ハチと一緒に書庫の整理”というものだったりと内容が戦いとはかけ離れたものとなっていたが。
そこはクリムゾンによる口八丁に騙されるような形でピッコロもきっちり約束は守っていた。
「それで、来年の天下一武道会には出場するのか」
「何を今さら。ああ、出場するとも。大勢の人間の前で父を殺した孫悟空を打ち倒し、今度こそ大魔王を名乗って世界を征服してくれる」
「世界征服か。意外と大変だぞ? 俺も大組織を運営している身だからよくわかるが、まず有能な参謀がいなければお話にならん。そもそも、お前は世界を征服してどうしたいんだ」
「し、知れたこと! 世界中の人間を恐怖のどん底に叩き落としてやるのだ!」
「ではその手段はどうする。世界中の人間をただ恐怖させるならばお前の父親のように適当な街を破壊してやるとでも言えばいいが、それではお前に反抗的な人間は恐怖しないな。なにせ一度倒されたという実績がある。お前が勝つかもしれないが、その頃には案外あっさり人類絶滅かもしれない。それからどうするのだ」
「そ、それは……」
クリムゾンの質問攻めを受け、答えに窮するピッコロ。しかしクリムゾンは優しくピッコロの肩を叩く。
「まあ、たっぷり悩め。鍛える時間もまだあるしな。孫悟空も今ごろは天界で修行しているんだろう? 負けるなよ」
そう言ってニヤリと笑うクリムゾンにピッコロは不敵に笑って返す。
「当たり前だ。ピッコロ大魔王の復活を特等席で見ているがいい」
「よし、当日は皆で応援に行くか。仕事はブラック補佐に投げよう」
「いいわね、あたしもうんとお洒落していかなくちゃ♪」
「総帥の命令とあらば。スカーレット、可愛いお洋服着ましょうね」
「きうー♪」
「ピクニックじゃないんだぞっ!!」
今日もレッドリボン軍は平和である。
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「……セルの進捗はどうだ」
「あまり芳しくないな。心配か?」
ここはレッドリボン軍地下深くにあるドクターゲロの最重要研究室。ここでは様々な細胞を取り込んだ究極生物セルの研究が行われている。
「1178番台の検体だが、やはり魔族の特徴を取り込んだおかげか飛躍的にエナジーの量が上がったな。だが同時に日光への耐性が極めて低くなってしまった。少量の紫外線を浴びるだけで死んでしまう。これでは失敗だな」
「そうか。他の人造人間にはまだ転用できそうにないな」
クリムゾンは
これらは全員人造人間への改造の為に選ばれた素体達だ。元々レッドリボン軍に所属し、自ら志願した者もいるが、中には誘拐してきた者もいる。
今クリムゾンが見つめる双子の男女も、そうやって拐われてきた者だった。
「運命、か」
「どうした? センチメンタルになるなど、近頃のお前らしくもない」
「いや、未だ晴れない絶望の未来を思うと、俺のしていることは正しいのかとな」
「ふん、物事に正しいも正しくないもあるものか。あるのは結果のみよ。それをどう判断するかは後の人間が決めればよい」
「あんたらしくもないマトモな言葉だな。だが至言だ。よく覚えておくよ」
クリムゾンは今現在の達人らを含めた曖昧な戦闘力を数値化する技術が欲しかった。
だが武器を含めた場合や、体調などによる変化で細かく増減する戦闘力を数値化する為だけに、激務を続けるドクターゲロに任せるわけにはいかない。
彼ならできるだろうが、手が足りないのだ。とはいえ半端な実力の科学者に任せるわけにもいかないだろう。
……何か参考になるものでもあればいいのだがとクリムゾンは考える。
まさか後に自分がイメージした通りのモノが手に入るなどとは思いもせずに。
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そして時は過ぎ、あっという間に第23回天下一武道会の日がやってきた。
クリムゾンは悪名を利用し、『レッドリボン軍ご一行様』と書かれた場所に抽選で選ばれた兵士一個中隊を率いて応援に来ている。
兵士らによって作られた『ガンバれ! マジュニア!』の横断幕を掲げたメタリック軍曹が非常にシュールであった。
「よ! 久しぶりだなクリムゾンのあんちゃん」
「孫悟空か! 大きくなったな!」
固い握手を交わすふたり。悟空は笑顔を浮かべながら端の方で小さくなっているピッコロを指差してクリムゾンに小声で話しかける。
「……神様が言ってたピッコロを育ててる人間ってクリムゾンのあんちゃんだったんだな。確かに邪気は感じるけど、それほど悪人ってわけじゃねえみたいだし。オラ、強くなることしか考えてなかったから正直尊敬してるぞ……」
「悟空、お前は勝てるつもりでいるかもしれんが、俺の息子は強いぞ。せいぜい全力で戦うんだな」
「ははっ! 当ったり前だろ! じゃあな!」
そう言って控え室へと戻っていく悟空。クリムゾンは気にしていなかったが、息子と呼ばれたピッコロは実に複雑そうな顔で俯いていた。
「それではこれより! 天下一武道会を開催いたします!」
アナウンサーの掛け声により戦いの火蓋が切って落とされる。
クリムゾンはどんな結果になろうとも対処できるよう、武舞台をじっくりと見据えていた。
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戦いは順調に達人らが勝ち進めていった。
桃白々が出場していたことには驚いたが、弟弟子である天津飯にあっさり負けてしまったことがショックなのかしばらく項垂れていた。
かつて最強の殺し屋と呼ばれた男は人生の転機に立たされているのだろう。
続いての試合はいつの間にやら結婚の約束をしていたらしい悟空が相手選手である美少女チチと結婚してしまった。
まだ言葉にしただけだったが、クリムゾンは笑いながら祝いの言葉を悟空へ送った。
さらに次の試合。対戦はクリリンという悟空の親友と、ピッコロの戦いである。
共に達人である武人同士の戦い。クリムゾンは座っていることもあり、気を循環させて強化した動体視力でどうにか動きを捉えることができたが、常人には何が起きているかの見当もつかないであろう。
そんな中、明らかに一般人のような風体だった男の奇妙な雰囲気にクリムゾンは気づいた。
観客を含めた全員が熱狂するなか、ひとり冷静に武舞台を眺めている。
どこか厳かで不可侵な雰囲気。……そう、まるで“神”を思わせるような。
「決まったっー! クリリン選手場外!!」
「く、くそっ……!」
「いい腕だ。またやろう」
「え? あ、ああ」
ピッコロに腕を差し出され立ち上がったクリリンは、見た目から感じていたのとは違う雰囲気に困惑しながらもその手を取り立ち上がる。
天津飯などはその様子を見て警戒心を露にしていたが。
続いての試合、ヤムチャ対シェン。シェンと名乗るのは、先ほどの見た目一般人の男だ。
クリムゾンはかつて発破をかけたヤムチャがどれほど腕をあげたのか楽しみにしていた。
ヤムチャの動きは早かった。常に低空に身をおき、まるで獣が地面を這い回るかのように高速でシェンを翻弄していく。
さらには途中追加で繰気弾なる誘導弾まで繰り出し、試合は一方的にヤムチャ有利かと思われた。だが、本気を出したシェンが気合い一閃ヤムチャへ激烈な一撃を決め場外となった。
そのときの様子を見て、どうやらピッコロはシェンの正体に気づいたようだ。
準決勝が始まるまでの間、昼休憩が設けられた。
クリムゾンはレッドリボン軍で用意した簡易食堂へと悟空達一行を招き、全員で食事をとることにした。
「さ、遠慮せず食ってくれ。こんな形でしか応援できんが、皆の活躍を応援しているぞ」
「ひゃーっ! これ全部食っていいのか!?」
「もちろんだ。悟空が食い過ぎたら追加で作らせるから安心して他のみんなも食べてくれ」
悟空との掛け合いをきっかけに食事が始まった。
「ヤムチャ君、大分腕をあげたな。私も鍛えているが、以前のような態度は取れそうにないよ」
「は、はあ。でもあれだけ鍛えても負けてしまいましたし……」
「ああ、それは仕方ない。君が戦ったのは恐らく人間じゃないからね」
「え?」
「よく観察してみるといい。君なら見抜けるはずだよ」
そう言ってヤムチャから離れていくと、続いてクリムゾンはブルマの元へと近づいた。
「やあ、相変わらずお美しい」
「お褒めの言葉をいただきどうも。……ていうか結婚したのね。あなたみたいな悪党が結婚して子供を作って幸せな家庭を築いてる、なんていうのを見ると、なんとも言えない気分になるわね」
どこか不貞腐れたような態度を取るブルマだったが、クリムゾンはさして気にしていないようだった。
「どうやらボーイフレンドにご不満がおありのようだが、彼は彼なりに頑張った結果を出しているよ。少なくとも人間では、私の知る限り五本の指に入る実力者だね」
「……へえ、あたしを放って鍛えたのは無駄じゃなかったわけだ」
「なるほど、一緒にいられない寂寥感というやつかな。ではひとつアドバイスしよう。もし君が彼とこの先も一緒にいたいなら、さっさと彼を武道から引退させた方がいい」
「え……?」
「話を聞く限り、彼はどうやらストイックな環境で鍛えてはじめて成果が出るようだからね。一緒にいるとどこか甘えてしまうんだろう。もちろん一緒にいれば彼のような男は甘えが強く出てしまう分、これまで君が彼に惚れていた魅力のひとつを失うことになるだろうがね」
「そんな……! あたしは!」
「ま、最後に決めるのは君だ。なに、そのときが来ても君ならもっといい男を捕まえるよ」
やや一方的に言い切ると、最後にクリムゾンは黙って水を飲むマジュニアことピッコロの元へとやってきていた。
「……何のようだ」
「つれないな。寂しければパパに甘えてもいいんだぞ?」
「ふざけるな」
「はっはっは、冗談だ。正直この後の決勝が楽しみだよ。お前が勝つか、それとも孫悟空が勝つか。俺の見立てでは、お前の方がやや有利といったところだがな」
クリムゾンの評価にもピッコロは沈黙したままだが、その様子から彼がやや喜んでいるのをクリムゾンは察する。
「……とはいえ父親と同じような失敗をするんじゃないぞ。彼を殺せとは言わないが、慢心して負けましたなどとなったら一生そのことでイジってやるからな」
「黙って見ていろ。大魔王が勝利する瞬間をな」
そう言ってピッコロは水の入ったコップを持ったままどこかへと去ってしまった。
間もなく、準決勝が始まる。
あれですね。エロシーン入れなくていいのが気分的にすごい楽ですわ(笑)
でもそのうちムラムラしてエロシーン書きたくなるんだろうなあ……