ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

52 / 75
今回は亀仙人vsビドー及びべジータvs天津飯です。
一回戦だけでまだ後14回もあるんだぜ……?
いや書くのは楽しいんだけど組み合わせ考えるのがマジ大変。

それとまた日間載ったようで、評価、お気に入りなどしていただいた方ありがとうございます。この機会にお気に入り登録していただいた方も、今後もお楽しみください。

そして加賀川甲斐さん、ステファノスさん、誤字報告ありがとうございます。
ゆーの助さんは文体指摘ありがとうございました。自分でも読んで物足りないというか“雑”になっていると感じたので、違和感がある部分を訂正報告していただきありがとうございます。
いかんせん未熟なものでこれからも誤字脱字などお見せすることになるとは思いますが、どうぞ今後もお楽しみくださいませ。

では本編です(´・ω・`)


第52話【圧倒】

⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜

 

 

カメハウスにて。

 

亀仙人がいつもどおりテレビで『オマタヒロゲテ・エアロビクス』を眺めてだらしなく顔を歪めている。

 

その横では、ある程度の修行を終えたクリリンが大会参加に向けての仕上げとしてレッドリボン軍に泊まり込む為の荷造りをしていた。

 

その様子を気配で感じ取っていたのか、亀仙人はクリリンの荷造りが終わったのを見計らって不意に話しかける。

 

「クリリン、無理だけはするでないぞ。何事も余裕が大事じゃてな」

 

腰をポリポリとかきながらどこか投げやりにも聞こえる態度で亀仙人はクリリンに告げる。クリリンはそれを受けて苦笑しながら顔をあげ亀仙人を見やる。

 

「呑気っすね~。まあ武天老師様は引退したことですし、俺が代わりにしっかり亀仙流の武名を轟かせてあげますよ! 案外、普通のおじいちゃんみたいに過ごすのも悪くないんじゃないですか?」

 

「なんじゃクリリン。ワシはまだ現役を引退したつもりはないぞい。見よ、この肉体美!」

 

「湿布貼った背中見せられてもなあ……」

 

老人の上半身裸を見せつけられたクリリンは、自分がいない間師父を置いていって大丈夫だろうかと不安な気持ちがよぎる。

 

「変な心配せんでも、ワシも折りを見てウーロンと亀を連れてそっちに向かうわい。お主も修行はほどほどにな。無理をするのは亀仙流ではないぞ」

 

「ありがとうございます、武天老師様。それじゃ、いってきます!!」

 

荷物を担ぎ、白い気のオーラに包まれて飛んでいくクリリン。その様子を見て亀仙人はぼそりと呟いた。

 

「……さて、ワシもそろそろ調整を始めるとするかのう」

 

サングラスを外した亀仙人は、先程とはうって変わって武人の雰囲気を纏わせ地下の闘技場へと降りていった。

 

⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜◽⬜

 

 

アナウンサーがヘリの上から円形の闘技場を見下ろし、喉に取り付けた咽喉マイクで会場を盛り上げる。

 

『さあ、いよいよ注目の第一回戦が始まろうとしております! 全32ブロック、延べ6231名の武道家同士の予選を潜り抜けてきた強者(つわもの)による本気の激突!! 厳選なる抽選の結果、最初にぶつかり合うのはこの二人!! 亀仙流武天老師と、ヘラー一族のビドーだっーーーー!!』

 

アナウンサーの声に合わせるようにして、広大な円形闘技場中央からエレベーターが競り上がってくる。

 

そこから現れたのは、対照的なふたり。

 

赤を基調とした派手なアロハシャツを着て、亀の甲羅を背負った老人亀仙人。

 

ターコイズの肌に、黄色い手袋。白いズボンには、どこか褌を思わせる紺の布が挟まっている。そしてその額には、“M”の文字が刻まれていた。

 

開始(はじ)めいッッ!!』

 

アナウンサーによる開始の声が響くが、両者共にすぐに動こうとはしない。

 

それを臆したと考えたか、ビドーがその表情をイヤらしく歪め亀仙人に近づく。

 

「おいジイさん、サービスだ。一発俺を殴ってもいいぜ?」

 

「なんじゃと?」

 

『おお~~っとビドー選手! 大胆な挑発だ~~!』

 

ビドーは顎髭を生やした自慢の顔をビシッと親指で指し示しながら、さも当然のように言ってのける。

 

“お前と俺ではまるで格が違う”とでも言うように。

 

事実、亀仙人の戦闘力は139と、ビドーからすれば吹けば飛ぶような数値である。

 

だが彼はよく考えるべきであった。亀仙人が参加した予選ブロックに限らないが、フリーザ軍の呼び掛けに応えて現れた強者の中には戦闘力にして数千から数万クラスの猛者達が複数存在したのだ。

 

亀仙人はそれら全員を一瞬で打ち倒してここに来ている。その時のことをビドーは知らないが、もし知っていても目の前の老人から感じる圧力は到底自分を脅かすものには感じられなかったからだ。

 

「ふむ、それでは遠慮なくいかせてもらうがよいかの?」

 

「ああ、いつでもいいぜ。さっさと殴──ぅるごあっはぁ!?」

 

凄まじい打撃音が響くと共にビドーは遥か遠くへ殴り飛ばされる。二人が対峙していたそこには、一瞬で筋骨隆々の状態へと変身した亀仙人がいた。

 

『亀仙人の一撃がヒィィィィット!! とんでもないパンチを前に、ビドー選手たまらず吹き飛んだーー!!』

 

「ほれ、さっさと起きてこんかい。まだ元気いっぱいじゃろうが」

 

「こぉぉのクソジジイがぁぁぁぁ!!!!」

 

亀仙人からの挑発に侮辱されたと感じたビドーは、腹部に拳状の殴打痕を残しながら立ち上がり吠える。

 

ビドーはそのまま体内のエナジーを解放。エメラルドの肌に赤い髪をした魔術による変身形態となることで、戦闘力を爆発的に上昇させる。

 

「ははぁ……!! これでもうテメエは俺に勝てねえぞ、ジジイ!!」

 

『あーーっと! ビドー選手変身致しました!!』

 

アナウンサーの言葉を補填するように、会場に設けられたモニターではスローモーションで変身シーンが再生される。

 

ビドーは自身の絶対勝利を揺るがぬモノと断じて亀仙人を煽る。もはや油断はないとばかりに。しかしその様子を見ていた一部の面々は一様に彼の敗北を確信した。

 

「くたばれぇ!!」

 

ビドーが飛びかかり、その圧倒的なパワーを活かして亀仙人を握りつぶさんと迫る。

 

それに対する亀仙人の返答は、まさかの手四つであった。

 

「はっはっは! 正気かよジジイ! いいぜ、だったらテメエの手からまず握り潰してやらぁ!!!!」

 

身長的には現在の亀仙人が圧倒しているが、ビドーは相変わらず自身の有利を疑わない。その様子を見ていたクリムゾンが、ふと呟いた。

 

「なるほど、そういう()()()()か」

 

──ゴギュッ──

 

肉と骨が同時に潰れるような音を会場に無数に設置された小型マイクが拾い、亀仙人の手が潰されたと思ったウーロンと亀は思わず目をつぶる。

 

「くくっ……くくくくっ……く、くぎゃああああああああああ!?」

 

しかし現実は逆であった。潰されたのはビドーの手である。

 

「な、なぜだぁ!? どうなってやがるんだテメエは!?」

 

ビドーは愚者ではあったが、無知ではない。相手のパワーをある程度以上探る程度のことはできるし、ましてや一撃を受けたのである。本来なら、受けたダメージを考えれば彼とてもっと警戒が出来たはずであった。

 

だがビドーが感じる亀仙人のパワーは変わらない。仮に彼がスカウターを着けていたならば、その戦闘力の数値が一切変わらないことを見て驚愕するだろう。しかもそれは刹那のタイミングのみ戦闘力を爆発させているわけではないのだ。

 

「……チュンめ、わしの専売特許を勝手に使いおって」

 

二百年ぶりほどに呼んだ兄弟子の名前だったが、その口調とは裏腹に桃白々の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「降参せい。それとも、降参したくなるまで痛め付けてやろうか? お主なかなかの悪党のようじゃしの。ワシは手加減せんぞ」

 

視線を読ませぬよう着けていたサングラスを外し、亀仙人は凄む。完全に気圧されたビドーは、目の前のわけがわからない存在に無惨に殺される自身を想像してあっさり心が折れてしまった。

 

「ま、まいったぁ。俺の、敗けだぁ……」

 

『勝者! 武天老師選手!!』

 

この大会において敗北の条件は四つ。場外、降参、気絶、死亡である。

 

両手を砕かれ失禁するほどに戦意喪失したビドーは項垂れ、自らの敗北を宣言する。洗脳されていても、彼にとっては亀仙人への恐怖が勝ってしまっていた。

 

だがこの結果に面白くない人物がいる。

 

バビディである。彼は自らの魔術でビドーを死なせようと企んだが、それも亀仙人に防がれてしまった。

 

「うあああああぁぁぁぁぁ~~~~~!!」

 

ぐるぐると回転しながら亀仙人の用意した小瓶に封印されていくビドー。小さなお札をそれに貼り付けると、亀仙人はなに食わぬ顔で退場していった。

 

「な、なんだそれ!? ぐぐぐ、どいつもこいつもぉぉ……!!」

 

バビディは捌け口のない怒りに顔面を歪ませるが、その様子は駄々をこねる子供そのものだった。

 

そしてトワは思う。果たして、このまま彼らに敵対するのが本当に自分にとって正しいのかと。

 

迷いながらも、彼女もまた見極めを必要としていた。すでにその姿勢は、先程までのだらしなくソファーに寝転がった姿ではなくなっている。

 

戦いは、まだ始まったばかりであった。

 

 

__________________________________

 

 

続いての第二回戦。対峙する戦士の組み合わせは意外なものであった。

 

「べジータ。お前に恨みはないが、手加減しないぞ」

 

「手加減なんぞしてみろ、速攻でぶっ殺してやる」

 

概ねの予想ではこの戦い、圧倒的にべジータが優位である。そのことは天津飯もわかっていた。だが、だからといって素直に負けてやるようなつもりはない。

 

(今の俺に出せる全力……!! 全てをぶつけてやる!!!!)

 

開始(はじ)めいッッ!!』

 

アナウンサーが叫ぶ。瞬間、天津飯は手を合わせ中に四角を作るような独特の構えを取る。

 

「はっ!!」

 

瞬間、爆光が闘技場を包む。天津飯の放った開幕での気功砲によって闘技場の表面が正確に抉れていく。

 

「パパッ!」

 

会場に来ていたチビトランクスが思わず叫ぶ。それほどに天津飯の一撃は凄まじいものであり、その威力はかつてセルジュニアに仕掛けた超気功砲ほどではないにせよ並みの戦士なら一撃で消し飛ぶような威力である。

 

だが天津飯は会心の一撃を加えたにも関わらず、油断せずに下がりながら再び気を溜め始めた。

 

そしてそんな天津飯に反撃をくださんと、上空からべジータが現れる。

 

「そんな時間を与えるかっ!!」

 

べジータは己の右手首を掴み、全身のエネルギーを掌に凝縮させてかめはめ波と同じ性質を持った必殺技の発射準備を整える。

 

天津飯は咄嗟に気功砲で反撃しようと考えるが、相手の攻撃がそれ以上だと悟ると別の技による回避行動に出た。

 

「四身の拳!!」

 

「ギャリック砲!!」

 

赤いエネルギー波が闘技場ごと天津飯を襲い焼き尽くす。バリア装置を組み込まれ遥かに丈夫な筈の闘技場の表面が砕け、粉塵が舞い上がる。

 

「「「新・気功砲!!」」」

 

しかし、分身の一体を囮に逃れていた天津飯は三方向から新気功砲を発射する。

 

「うおっ!?」

 

べジータの回避力を考慮した、()ではなく()での攻撃。さしものべジータも回避することは叶わず、衝撃を受けて大きく上空へと吹き飛ばされる。

 

──瞬間、空が黄金に輝いた。

 

「はああああああああああっっ!!!!」

 

天地を貫かんばかりに輝く黄金の光柱(こうちゅう)が出現する。

 

「……来たかッッ!!」

 

黄金の粒を従えたマスター超サイヤ人が、天空さえも従えたと言わんばかりに降臨した。

 

「戻れっ……!」

 

落ち着いているつもりでも、焦りを含んだ声が急いで別れた分身を呼び戻す。パワーの四分の一を失ってしまったが、天津飯はまだ諦めていない。そしてべジータは一体化する天津飯を止めるでもなく、静かに武舞台へと降りてきた。

 

「余裕のつもりか?」

 

「まさか。まだ何か、取って置きがあるのだろう? さあ、全てをぶつけてこい! 俺はそれを乗り越えて勝ってみせるッッ!!」

 

黄金の気が勢いを増した炎のように吹き上がる。

 

それを見た天津飯が、ならばとまるで元気玉のように大量の気を自身に吸収していく。

 

「……よくぞ見抜いた。ならば受けてみるがいい! この俺の、究極気功砲をッッッ!!!!」

 

天津飯は四妖拳の要領で腕を六本に増やし、正面にて六角形を作るようにして指先を合わせる。

 

「天と地の気を練り合わせ昇華させた我が武の極み!! 受けてみよッーーーー!!!!」

 

まるで天津飯の全身から放たれたかのような勢いで極大の気功砲がべジータを襲う。

 

べジータは逃げない。それはサイヤ人としてのプライドなどではない。

 

(ブルマ)が見ている。息子(トランクス)が見ている。

 

彼にとって戦う理由はそれで十分だ。ちっぽけなプライドだと、笑う者がいれば笑わせてやればいい。

 

べジータにとってそれは、全てに優先するのだから。

 

──やがて極光が収まり、壊れた武舞台の一部が落下するのをピッコロが防ぐ。

 

武舞台の上では力尽きた天津飯が満足げに倒れ、べジータは何かを確信したかのように自分の掌を見つめていた。

 

『勝者!! べジータ選手!!』

 

爆発するような歓声が観客席を包むが、べジータの耳にはただ家族からの声援だけが届いていた。そして彼は、そんな自身を応援する家族に不器用な笑顔を向ける。

 

父親(べジータ)は、誇らしげに勝利を掴んだ腕を掲げるのだった。

 

 

__________________________________

 

 

戦いを終え、ナメック星人の治療を受けた天津飯が起き上がると、そこにはべジータが控えていた。

 

「起きたか? 随分と無茶をする。後少し消耗していたら死んでいたぞ」

 

「……ふふっ、最後の最後で臆したか。俺もまだまだだな」

 

天津飯は上体を起こしながら自嘲するように呟く。

 

「馬鹿者、死んで何になる。生きるのを臆すな、死を恐れろ。終わりは誰にでも訪れる。先を歩くのは常に生きているものだ。……まったく、説教をしに来たわけではないんだがな。……ん? どうやら客が来たようだな。もう俺は行くぞ」

 

「あ、ああ」

 

思った以上のまともな言葉に天津飯が呆気に取られていると、べジータと入れ違いに豹牙天龍、陳小拳、餃子が入ってくる。その後ろにはナム、チャパ王、ギランがいる。

 

「師匠! ご無事で何よりです……!!」

 

天龍が涙ぐみながら天津飯の手を握る。天津飯はその暖かさに、自分の命が自分だけのものではないことを悟る。

 

天津飯はべジータが見せた不器用な優しさに苦笑いをしながら、入ってきた梁山泊の面々に敗けたことを詫びるのだった。

 

 




ということで亀仙人無双&べジータ対天津飯でした。
そしてさっそくすいません、またもやキャラが消えてました。今回はチャオズですね(苦笑)
この調子で果たしてこのトーナメントは別の意味で無事消化できるのかと戦々恐々としておりますm(_ _;)m
亀仙人の謎パワーアップにも一応理由付けはしてありますのでまあそれは次の戦いでも。全部書いちゃったら盛り上がらないですしね。一応今回のお話でヒントは出てます。

それと前書きであんなこと言ってましたが、ぶっちゃけこのトーナメントも例のごとく半分は勢いで進んでます(爆)
ある程度アイデアを散りばめ、そこから「この組み合わせで書いてみたいな~」で書いてますので。
なのでぶっちゃけると、このトーナメントで誰が優勝するか本気で作者もわかりません(爆)
まあ盛り上がる対戦はもちろん作っていきますのでどうぞお楽しみくださいませ。では次回予告をどうぞ~

__________________________________

馬鹿と呼ばれる男がいる。
父親と呼ばれる男がいる。
親馬鹿、わがままと言うなかれ。
次回【力闘】。こんな父親、他にはいない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告