うちはの火影を放置してこちらを書き続け、期待している皆さんの期待を裏切るような形にしてしまって申し訳ないです(--;)
まあ、地味に最近構成はいじってるんですが(言い訳)
とはいえまだまだこの作品のお話が続くのも事実。ここまで読んでいただいた方、評価していただいた皆様、感想を書いていただいた皆様、お気に入りしていただいた皆様、そしてありがたいことに支援イラストという形で二度も挿し絵をくださった丸焼きどらごん師匠様。来年もがんばります。
ま、死なない程度(笑)に頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします。
……うん、笑えねえ。
孫悟飯少年によって空けられた武舞台の大穴は工兵部隊では修復不能という結論が出た為、反重力装置などを増設して対処する形となった。
さて、武舞台の上ではすでに選手が登場している。
ガンメタルブラックに輝くカッチン鋼の鎧と剣をひっさげ、腕を組んで対峙するのはコルド大王。初代勇者フリーザであり、現在のフリーザ軍を統べる宇宙の重鎮である。
レッドリボン軍総帥であるクリムゾンへの心酔はセル事件以降さらに度を増し、遂には鎧に“RR”の装飾が施されるに至っていた。
クウラと同じく常に通常形態を維持できるほどに研ぎ澄まされた彼の戦闘力はかつてのフリーザを超え、人造人間17号でも変身前では勝てないだけの力を手にいれていた。
そんなコルド大王と対峙するのは、仮面を着けた青年。剣を背にした姿を知る者がいれば、容易にその正体に気づくであろう。
彼の名はゼノ──またの名をトランクス。故郷を失い、流転の果てに現れた放浪の戦士である。
一回りほど体格が変わるほどに鍛え直された筋肉の鎧は、彼がこの一年どれだけ自らを鍛え直したかが分かる。
しかし何よりの特徴として、顔の殆どを覆った仮面が目立つ。
再び長く伸ばしたのか、仮面の後ろから溢れた髪が風に靡いている。
なぜ彼が仮面を着け、名を変えたのか。それには、ある理由があった。
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トランクスがこちらの世界にやってきて一ヶ月。
彼の記憶とセルの記憶から魔人ブウが封印されている場所を無事発見したクリムゾンは、礼として彼の頼みを聞こうと告げた。その際、トランクスから頼まれたのが“老界王神に会わせてほしい”という内容だった。
セルの記憶にすらない老界王神なる人物は、トランクス曰く彼の世界ではZソードという剣に封じられていた存在らしく、その封印された理由がその老人の持つ究極の潜在能力解放にあると聞いたクリムゾンは俄然興味を持った。
そして目的さえ決まればクリムゾンの行動は早い。さっそく、トランクスを連れて向かうことにした──界王神界へと。
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突如として瞬間移動で現れたクリムゾンの来訪に、シンとキビトの驚きようは凄まじかった。
キビトは神聖な界王神界へ人間が足を踏み入れたことを怒るが、クリムゾンはどこ吹く風といった態度である。
「手順も弁えず強引な行動で申し訳有りません。界王神様、今回は頼みがあってやってきました」
しかし実直に頭を下げて頼み込むトランクスの姿に、さしものキビトも溜飲が下がったのかシンの後ろに下がって押し黙る。クリムゾンの視線が怖かっただけでもあるが。クリムゾンは脅してさっさと事を進めようと思っていただけに、トランクスの態度を見守るように後ろで控えることにした。
「まず先に言っておきます。俺は、この世界の人間ではありません」
トランクスは正直に自らの立場と過去を告げた。過去を、未来を変え、その結末として帰るべき世界を失ったことも。
界王神は絶句した。しかし同時に不安になった。時の改変など、
考えた末、界王神は一度深く息を吸い自らの意思で行動することにした。
「……ご苦労、なされたのですね。時を改変した貴方を、本来ならば私は裁かねばならないのでしょう。ですが、苦痛と悔恨にまみれた貴方を裁く資格が私にあるとも思えません。私は、不完全な界王神ですから……」
自嘲するように呟く界王神。その変化を、クリムゾンはただ黙って見つめている。
「血気に逸り、功を焦って死んだ貴方の世界の私はさぞ満足だったでしょう。ちっぽけな自分の正義感を満たす為だけに行動した末路。その結果が世界の、宇宙の滅亡だと言うならばさもありません。……クリムゾンさん、いつぞやは失礼いたしました。あれから過去の資料を探したりもしたのですが、やはり魔人ブウ襲来の際にその殆どが失われてしまっていました。今の私は、学ぶことすらできないただ立場のみを賜った愚かな神です。どうぞ、お笑いになるならば笑ってください」
「……そこまで言われて笑う馬鹿がどこにいる。やれやれ、正直に言って私は“神”が嫌いだ。身勝手で、自分の都合だけで行動する貴様らが大嫌いだ。逆恨みも入っているだろうが、運命を定める力があるわけではないと知った今、ただ立場に胡座をかくだけならばここで殺してしまおうかとも考えたが……今しばらくは待ってやろう」
最高神である自らをあっさりと殺してしまおうとしたクリムゾンの言葉には、一欠片の偽りも含まれていない。
シンもキビトもすでに分かっている。目の前に立つ男がその気になれば、自分達などあっさり消されてしまうことを。
「クリムゾンさん、界王神様をあまり責めないであげてください。俺には、彼らの力が必要なのですから」
「すまんな。どうにも思春期のガキを見ているようで小言が多くなってしまったようだ」
「思春期、ですか」
年齢的な意味で言えば圧倒的に年上であるシンだが、精神的にはむしろ格下であることを自覚していたのでその言葉を素直に受け止める。
「話を進めさせてもらいます。俺の頼みとは、15代前の界王神様による潜在能力の解放です。かつて破壊神ビルスによってZソードに封印された、老界王神様のね」
「15代前ですって……? キビト、貴方は何か知っていますか?」
「い、いえ! Zソードは真の勇者にのみ抜けるものとしか……!」
困惑する二人だが、クリムゾンはすでに行動していた。
「トランクス、あちらの方向にそれらしき剣がある。先に行くぞ」
「あ、待ってくださいクリムゾンさん!」
瞬間移動で移動したクリムゾンを、空を飛び追うトランクス。
トランクス、シン、キビトが追い付いた頃にはすでにZソードの柄をその手にしていた。
「ぬっぐぐぐぐぐ……!!!」
Zソードはわずかに動くものの、抜くことは叶わなかった。
「なんという重さだ。材質に興味があるレベルだぞ」
「お、重いのですか?」
「なにか、特別な力で封印されているとかではないのか」
シンとキビトの疑問を受けたクリムゾンは、トランクスに変わるよう顎で示し、自身はZソードの立つ崖を観察し始める。
「トランクス、お前でも通常形態では無理だ。超サイヤ人に変身して抜いた方がいい。……そうだな、どうせなら今のお前の全力を示してやれ」
ニヤリと笑うクリムゾンに、トランクスは万感の思いを秘めて変身する。
「はぁっ!」
超サイヤ人2。超サイヤ人を超えた超サイヤ人であり、すでに界王神の実力は遠く置き去りにしている。その上トランクスはこの形態でかつての悟空の超サイヤ人3に匹敵する実力を手にしていた。それは気を満足に探知することができないシンでさえ、その全身から迸る金色のオーラに圧倒されるほどに。
「こ、こんな……! 人間がこれほどの力を持つだなんて!!」
シンの言葉には、感嘆と、畏敬と、そして恐怖が刻まれていた。
その内心を察知したクリムゾンは、静かに以前計測した戦闘力を告げてやる。
「戦闘力200万程度のお前には刺激が強すぎたか。……宇宙は広い。恐らくお前が宇宙を基本的にはただ観察するのみに努めたのは、自分ならばフリーザであってもなんとかなると考えたからだろう?」
まるで心を読まれたかのようなクリムゾンの言葉に、シンは戦慄して彼の方を向く。
「そう、驚くな。これまでのお前を観察していれば、お前がどういうスタンスで界王神としての立場を全うしてきたか理解もできる。それと相変わらず自覚していないようだが、お前の命はお前だけのものではないぞ」
「……以前も仰っていましたね。“まさか知らないとは”と。お願いです、教えてください。私の命が私だけのモノでないというのは、どういう意味なのですか……?」
「それは「それは僕が教えてあげるよ」……破壊神か」
いつの間にか、そこには痩せぎすな猫の獣人がひとりの付き人を伴って現れていた。
丁度Zソードを引き抜いたトランクスは、突如として現れた破壊神ビルスの存在に戦慄する。彼が現れたのが、自らを破壊する為だと考えたからだ。
「やれやれ、人が眠りこけている間に随分と好き勝手してくれちゃって。お前、“破壊”しちゃおうか」
脅しでもなんでもなく、淡々と告げられる事実。破壊神の実力を知るトランクスは、クリムゾンを守るために動こうとする。
だが対するクリムゾンの態度は実に堂々としたものだった。まるでそう来ることがわかっていたかのように。
「やれるものならやってみろ。その瞬間、貴様も死ぬ」
「なに?」
「お待ち下さいビルス様! ここは私の領域ですよ!?」
クリムゾンに手を向ける破壊神の前に立ちはだかるシン。その行動の意味を理解してすらいないだろう。にも関わらず、まさか庇われるとは到底思っていなかったクリムゾンは驚いて目を見開いている。
「……魔人ブウだっけ? なるほど、自分だけの命じゃないことすら知らないだなんて、面倒なことが起きたもんだ。説明してやれウィス!」
「ビルス様、自分で言ったんですから説明を人に振らないでくださいよ」
「うるさい、さっさと説明しろ」
呆れたように嘆息するのは、神官じみた服装をした青い肌に白髪のウィス。その容姿は、先頃クリムゾンらに捕らえられたトワという暗黒界王神にどこか酷似していた。
「はじめまして、私はウィス。こちらにおられるのは破壊神ビルス様でございます。そして界王神様、先程の貴方の疑問に端的に答えるのならば、すなわち貴方の命とビルス様の命は繋がっているということなのです」
「な、なんですって……!?」
驚きどおしのシン。もはや無知を通り越してここまで来ると庇護欲すら感じさせるのだから、哀れみも優に通り越すというものである。
「そういうことだ。で、お前。さっき言ってた言葉の意味、答えてもらおうか?」
偽ることは許さぬと、変わらずクリムゾンに向けて掌を向けたままのビルス。クリムゾンはシンを下がらせ自らがその前に立つ。
「お初にお目にかかる、私の名はクリムゾン。地球にて、レッドリボン軍を率いる総帥をしている。そして質問に答えよう。私はそこの界王神に生体ナノマシン“タナトス”を植え付けてある。すでに細胞レベルで同化したアレを破壊するのは、お前とて不可能だと私は考えているがね。ちなみにタナトスの発動条件は私の死、あるいは私による任意だ。だがお前ならひょっとしたらタナトスだけを破壊できるかもしれんな。なあに、賭けるのは自分の命だ。安いものだろう?」
ニヤリと嗤うクリムゾン。ビルスは自分が後手に回っていることを無理矢理理解させられる。
「……お前、なんのつもりだ」
「備えだよ。お前みたいに何でも相手より上にいると勘違いしている馬鹿を相手取る為のな」
至近距離で睨みあうクリムゾンとビルス。一触即発の事態に周囲の誰もが息もできずに押し黙る。
「……フムフム。ビルス様、これ無理ですね。私でもどうにもできません」
シンをペタペタと触っていたウィスがお手上げと言わんばかりに両手を上げ降参のポーズを取る。
「それはいいことを聞いた。残念だったな、ビルス。代替わりできる界王神はお前が眠りこけている間に全滅したぞ。さあ、わかったらどきたまえ。私はその剣に封印された老人に興味がある」
「僕がそれを分かってて許すとでも……?」
「許さなくて構わんよ。精々歯軋りしながら見守りたまえ」
後ろ手にヒラヒラと手を振ってトランクスの下へと歩いていくクリムゾン。
「クソォッ!!」
沸き上がる怒りにビルスが八つ当たりでした地団駄によって地割れが起きるが、クリムゾンは振り向きもせずZソードへ近づく。
「さて、用意はいいかトランクス。老界王神を起こすぞ」
「は、はい。ですが本当に大丈夫なのですか? 破壊神ビルスの力は、俺もよく知っています」
「俺はよく知らん。だが正しく破壊神と言ったところか。表面上で気を感じることができないのは超サイヤ人ゴッドと同じだが、それ以上にとんでもなく強いのが理解できる。まさに、備えあれば憂いなしだったわけだ」
クリムゾンは言いながらZソードをトランクスに構えさせると、この為に選別した超能力のひとつを励起し、手刀を構える。
「……今の私の手に絶対触るなよ。不可視の単分子ブレードだ。感覚すら無く切り裂くぞ」
スッと通されたクリムゾンの手刀によって、Zソードがあっさりその刀身を切り落とされる。
──気がつけば、彼ら二人の後ろにシンやキビトと同系統の服装をした老人が立っていた。
「んん? なんじゃ、ビルス様もいるんか。これは一体どういう状況じゃて」
非常に痩せ細った体格にチョビヒゲを生やした老人。彼こそは15代前という途方もない過去の時代に封印された界王神である。しかし復活したはいいものの、自分を封印した当人が苦い顔でこちらを睨んでるのを見て彼は訝しむ。
そんな状況を打開するべく、クリムゾンはビルスが話しかけるより早く彼の前へと割り込み
「はじめまして、老界王神殿。お名前は?」
「おい、妙なもん流し込むでないわ。ワシは……そうじゃな。マジョーラとオルドで、マルドといったところじゃな」
「……まさか気づかれるとは。お見それしました、ソレは無効化しておきましょう」
言うなりクリムゾンはスナップをする。すると、流し込まれた生体ナノマシンが速やかに老界王神の体から消滅する。
「フム、いきなり無礼なやっちゃ。ひとまずは状況を説明せんかい」
「いいでしょう。では先に食事などは如何ですか? 簡単なモノになりますが……」
そう言ってクリムゾンはカプセルハウスを使い、界王神界に食事をするための大型ハウスを出現させる。
「トランクス、手伝ってくれ。マルド殿、10分ほど待たれよ」
そう言ってクリムゾンはトランクスを補助に瞬く間に食事の準備を整えていく。
これまでの調査で地球の食文化が宇宙においてトップクラスのモノであることは判明している。であるならば、無礼を謝罪する意味も込めてまずは胃袋を掴んでおくことに越したことはない。クリムゾンはそう考えた。
なぜかビルスやシン、キビトにウィスといった面々も食事に参加したがむしろこれをいい機会だと考えたクリムゾンは彼らにも同じ食事を振る舞うことにした。
「……すごいな、これは」
「ええ、ちょっと地球を破壊するのが惜しくなりますね」
「いや、ちょっとどころじゃなく惜しいぞ」
不穏な会話をするビルスとウィス。
「食文化、ですか。私は本当に何も知らなかったのですね……」
「このワインというのは、もうないのですかな?」
シンやキビトも満足そうに舌鼓を打ち、ひょんなことから始まった奇妙な会食は円満な内に終了した。なおキビトはワインを3本開けて酔いつぶれた。
「ご馳走になったのう。さて、なにやらワシに頼みがあるようじゃが、はて? お主と面識はないはずじゃが、なぜそんな申し訳ない視線を向けてくるのかのぅ」
老界王神ことマルドは自身を見つめるトランクスへ問いかける。
そこでトランクスは先程シンに語ったときと同じように、自らに起きた顛末を語った。意外なのは、そこに食いついたのがウィスだったということだった。
「私が送り間違えた……? 変ですねえ。不可逆の破滅の因子だなんて、そんなものがあるならとっくに全王様案件の筈ですし。……ん~、これは時の界王神様に相談が必要かもしれませんねえ」
「おいおい、あいつに言う必要があるほどのことか?」
「念のためですよ」
「ふーん……」
“破滅の因子”については、クリムゾンも引き続き調査を進めていたが何もわかることはなかった。しかし、天使という肩書きを持つウィスが口にした
「破滅の因子が何なのか、そもそもそんなものが存在するのか、俺にはわかりません。ですが、これだけは言える! 俺には、力が足りないんです。今度こそは、絶対に守り抜く為の力が欲しいんです……!!」
それは魂の慟哭だった。老界王神マルドはトランクスの心の叫びを聞き、静かに頷いた。
「よかろう。どうやらワシが封印されてる間に界王神の知識もずいぶん滅茶苦茶になったようじゃしな。その元凶をどうにかしてくれたお主らが言う頼みじゃというなら、ワシごときが助力を惜しまぬ道理はない。別の世界でもずいぶん色々あったようじゃしの。……宜しいですかな? ビルス様」
力強く断言されたマルドの言葉に、ビルスは無言でお手上げのポーズを取って了承する。
「では始めるぞ。……そうさな、お前さんに秘められたパワーをざっと見る限り……儀式に5時間、能力の解放に20時間といったところかのう」
「わかりました。よろしくお願いします!」
力強いトランクスの言葉に老界王神ことマルドは柔らかく微笑みながら頷くと、外で儀式が開始された。
そしてクリムゾンは、了承を取りその光景を見守ることにした。あまりにふざけたマルドの態度に苛つきはしたが。
結果的には思った以上に大きかったトランクスの潜在能力が解放されるまでの27時間、彼は金色の瞳を輝かせ観察し続けることになる。
それが彼にさらなる覚醒を促すヒントとなるのだが、それはまだ後のことである。
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“
クリムゾンは、限界を超えて解放されたトランクスの今の状態をそう名付けた。
強くなる上で、鍛えるという行為は常に無駄との戦いとなる。
無駄なトレーニング、無駄な休息、無駄な摂取。
それら全てを乗り越え、本当の強さを手にいれる者はほんの一握りだろう。
そも、理想の強さがあるのならば誰もがそれを目指す。しかし現実は種族や環境といった違いから、その強さは各個人で変わってくる。
とはいえ、トランクスの至った“
体への負担も、変身の手間も、精神的な変化もない。
まさに究極の強さ。本人の限界を超えて潜在能力を引き出すとは老界王神マルドの言葉だが、今のトランクスなら破壊神とさえ戦うことが可能かもしれない。
しかも、彼自身まだ強くなり続けるつもりだと言うのだから恐れ入る。
そうして地球に戻った彼は次に、自分自身が二人存在するという矛盾を解決する為自らの名前を変え顔を隠して生きることを決意した。仮面はブルマによって造られたモノであり、スイッチひとつで外すことができる。
己の存在そのものを対価にしてでも愛する者を守ろうとするその姿に、クリムゾンは畏敬の念さえ覚えたほどである。
──そして、始まった試合。クリムゾンはあっさりトランクスが勝つかと思っていたが、驚くほどにコルドは善戦していた。
「その鎧、すさまじい強度だな。傷ひとつ付かんとは……」
仮面のままに語るゼノ。剣を構え、隙なく向き合うその姿からは紛れもなく戦士の風格が漂う。
「……ふっ、総帥の前で早々無様な敗北は喫せぬのでな」
強がり笑ってみせるコルドだが、そのダメージは大きい。カッチン鋼による鎧は表面的なダメージを通さないとはいえ、当然だが衝撃は響く。むしろゼノが有する圧倒的な力量差を前に、直撃を避け続けているコルドの力量が流石と言えた。
試合が始まってから5分。コルドには、この5分が永遠にも感じるほどに長く感じられた。
(一太刀だ、一太刀入れば必ずやヤツを斬り伏せる自信はある。だが、問題はどうやってそれを当てるかだが……骨身を切らせるか)
決意し、覚悟を決めたコルドの目から放たれる圧力が増す。
「勝負を仕掛けるか……いいだろう、来い!」
トランクスもまた、これまで散々にコルドを打ち据えてきた剣──新生Zソードを構える。
クリムゾンによって切り落とされたZソードだったが、その後クリムゾンによって持ち帰られブルマを初めとした地球の科学者勢によって再構成された。
重さという、本来であれば強度とは不可避の性質を持つZソード。その尋常ではない重さを活かす為に、レッドリボン軍とカプセルコーポレーションが出資者となり魔改造が施された。
魔法的な力によってもたらされたZソードの重さはそのままに、その刀身を包み込むように用いられた稀少金属はカッチン鋼とまでいかないものの極めて特殊な性質を持つ。あらゆる衝撃を吸収する性質を持ったそれを、ヴィブラニウムといった。
「はあっ!」
究極の力を有したゼノ──トランクスが瞬間移動もかくやという速度でコルド大王へと近づく。
これまでは経験則による読みからトランクスが狙う場所を察知し鎧や剣で防いできたコルド大王だったが、彼は驚くことにそのまま振り下ろされる剣へと腕を差し出し踏み込んだ。
「ぐぅ……! 掴まえたぞ!」
剣を腕の半ばまで食い込ませ、無理矢理筋肉で止めたコルド。無防備なゼノへ向かって、横凪ぎに勇者の剣を振るう。
「……間一髪だな」
「こ、これほどに差があるか……!!」
片腕とはいえ、コルドの剛力によって振るわれた剣は間違いなくゼノに直撃していた。しかし、ゼノはあろうことか薄皮一枚を切り裂いたところで剣を指で挟み食い止めていたのだ。
「むうぅあ!」
それでもコルドは諦めず、頭突きによって距離を取ろうとする。が、ゼノは自身もまた頭突きによってコルドを迎撃すると、鎧の隙間がある首へと足刀をめり込ませる。
それによって浮いたコルドの顎を狙い、ゼノの拳先がぶれる。次の瞬間、脳を揺すられたコルドは力なく武舞台へと横たわった。
ということでクリムゾンさん上げの回でした(えっ)
未来トランクスことゼノは文字通り不退転の決意を持って強くなることを誓っています。
結果としてアルティメット化してからも修行し続け、通常時でもかなりマッシブです。
さすがにムキンクスではないですが(笑)
まあ冗談はさておき個人的なこだわりとして肉弾戦する人が細いのが嫌なのです。ジャックハンマーのマックシングはまた別です。あれは理由ありますし。拳と拳でがんがんぶつかり合うんだから、そこは筋肉モリモリマッチョマンの変態であるべきだろうと。そんな私の格闘ゲームにおける理想的な体型はソル・バッドガイ。時点でストⅢの主人公(名前はアレックスだっけか)とかです、はい。
では次回予告をどうぞ。
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蛮勇誇る武闘の地で、咲き誇る麗しき花。
人の手で造られた彼女が舞うのを、最強の殺し屋が迎え撃つ。
次回【